森絵都のレビュー一覧
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森さん、既読20冊。私の中でどうも定まらぬ作家さんです。結構幅が広くて、時々外れもあるのだけれど、今回は見事にフィットした楽しい話でした。
舞台は占領軍時代。民主主義の教育を命じられた日系二世の米兵と、その教え子となった4人の日本人の娘の物語です。とにかく登場人物たちのキャラがみんな秀逸で可笑しい。強欲で自己顕示欲の塊のような仁藤鞠子子爵夫人、上野の夜の街上がりで鋭い捨て台詞を放つヤエ、手配した太鼓にもれなく付いてきた師匠。そんな極端なキャラをストーリの中で自由に振舞わせる。何とも可笑しく、しばしば軽く声をあげて笑ってしまいます。仕込んでおいた「隠れキャラ」によって物語の後半に描かれる全体の俯 -
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ネタバレ爽やかで、優しい青春。文章も簡潔で、読みやすくて、面白い。
登場人物達のキャラクターがはっきりしていて、透き通るようなわかりやすさ、その人のやさしさ、強さ、主人公や周りの人に対する愛情が感じられて心地よい。人間らしさ、汚さ、弱さのようなものは洗浄されているように思えた。そういう深さのようなものはないかもしれないが、書きたいものに対しては、これでいいのだと思う。
真ちゃんのリズムに関するタイトル回収のセリフにはビビッときた。もうここで終わってもいいくらい、気持ちよかった。いろんな人やことに心を乱されて、現実はままならないし、ぽっかりと空いた未来は不安しかない。そんな中を生きていくための指針として -
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戦後の日本は、順調に変わりつつあると言うが実際そう簡単ではなく、食糧難に住居不足、失業者の急増など問題は山積みで、民主的な生き方に耳を傾ける余裕がない。
占領政策への懐疑が広まる前に、日本民主化を進めるべく、GHQが始めたのは日系2生のリュウを教師にして仁藤子爵夫人の邸宅で4人の女性の授業が始まった。
邸宅に集められた4人の女性の共同生活は、波乱に満ちていたが、徐々に彼女たちの思いが明らかになる。
第四章からの4人が書く豊富が、後々になってよくわかり、自由研究からはやるべきことが見えてくる。
後半からは彼女たちが気になって、ページを捲る手がとまらなかった。
旧態依然とした世界観はそう簡単 -
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小説とYOASOBIの曲、MVと…合わせて楽しむことでそれぞれの魅力が何倍にもなる、すごい組み合わせ。まさに「はじめての」読書体験だった
アンドロイドと所有者の話を描いた島本理生の「私だけの所有者」、鏡写しのような同じ見た目だけど全く状況・中身が違う世界を描いた宮部みゆきの「色違いのトランプ」は、ちょっと切なく、悲しくもあり、愛もありと心動かされた。
そこにYOASOBIの「ミスター」「セブンティーン」という楽曲があり、歌詞全体はもちろん、細部の言葉遣いやMVのアニメーションも原作をしっかり解像度高く表現していて、感動がそのまま音楽でも忠実にあって、何回も聴いてしまう。
森絵都の過去3回同 -
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戦後、多様な背景を持つ女性達に民主主義を教える実験をすることになった日系アメリカ人
自身も民主主義が唱える理想に疑問を抱きつつ、試行錯誤しながら女性達に様々なことを教えていくという話
視点が変わると全く感想が異なるという最後のくだりは面白く、二転三転する展開に驚いて楽しく読めた
一点読みにくいと感じたのは、打ち明け話系は思わせぶりにその場では内容をあかさずに後からこんなこと言ってたんだよ、と書かれているシーンが多かったこと
これは1,2回ならいいが、度々このようなシーンが出てきて「またか…」とストレスを感じるので、この書き方はやめた方がいいと思う -
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【2025年145冊目】
あの時、手を取ったことをずっと後悔している。親友だった梨利と気まずい関係になってから、梨利につきまとっていた勝田のことも疎ましく思い始めていた中学生のさくら。そんなさくらの唯一の居場所が智さんのアパートだった。けれど、智さんの様子はどんどんとおかしくなっていって――。
危なかった、外で読んでましたが泣きそうでした。堪えた堪えた、危なかった。最初はつきまといをする勝田に「何歳であろうが、誰かに付き纏う人間って怖いのね」と恐怖を感じていましたが、だんだんとさくらを取り巻く人間模様がわかってくるにつれ、不思議と勝田への警戒心も薄れていく結果に。
親友だった梨利と距離が -
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#あしたのことば
#森絵都
#新潮社
#YA
#読書記録
言葉にまつわる短編小説。
言葉は大切にしたい。
出すことも
出さないことも
大事な場面がある。
言葉に救われることも
傷つくこともある。
小説を読むことの良さの一つに
誰かの人生を擬似体験できることがある。
ゲームやSNSでは
代わりにならない良さが
小説にはやはりある。
時間をかけてじわじわと
自分の中に言葉を育み続けたい。
#Tomorrow'sWords
#MoriEto
#Shinchosha
#YA
#ReadingLog
A short story about words.
I want to cherish w -
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久しぶりに“本”を読んだ感覚。
私の周りには死ははびこってはいない。というか、常に少し距離がある。現実味を感じられない、というのが一番近いかな。
それもあってか、いざとなると狼狽するのが目に見えている。
後悔をなくすことはできない、と思っている。ただ減らすことはできる。そのことは常に肝に銘じて生きているつもり。
人におすすめしたい本だけど、近い家族を亡くしたことのない私には、その経験がある人がこの本をどう感じるのかがわからないので、気軽には勧められない...
最後の章は電車では読めなかった。
いい本読んだな。
とりあえず、来月少し走ってみよう。 -
Posted by ブクログ
戦後アメリカの占領下になった日本では、民主主義の心が根付かずGHQは手を焼いていた。そこにきて、実験として4人の20歳前後の女子が集められ、半年間の特別民主主義教育が行われることになった。教師を務めるは日系アメリカ人の軍の通訳リュウ・サクラギ。果たして彼女たちは先進的な女性に生まれ変われるか?!
というストーリー。まず思ったのは、森絵都はこういう作品を書くんだ?!ということ。10代の頃は随分たくさん森絵都のジュブナイル小説を読んだ。繊細で少年少女の心に寄り添うような透明度の高い作品を生み出す人というイメージ。それが、いつの間にかこんなにページ数のある、重厚感ありそうな大河やプロジェクトXのよ