森絵都のレビュー一覧
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タイトルが気になっていて、読みたかった本でした。
「風に舞いあがるビニールシート」
家族仲間がいて腰を落ち着けて“ここが自分の居場所“と言えるところがある。それ自体がすでに平和であり、幸せなのだ。ビニールシートが風に捲れ、煽られ、もみくちゃになって飛ばされるように、いとも簡単に自分の居場所や存在そのものが奪われてしまう世界が、今この時にも存在する。
そのような人たちを護り助けたいと願う国連職員のエドと里佳の関係を描いた章。せつないけれど最後は熱いものがこみあげてくる力強い物語でした。
お仕事小説とひと言で言い表わせないくらい、どの章も深く内容が豊かで、「守護神」「ジェネレーションX」も好き -
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ネタバレ楽しい読書だった。
気づけば頬を緩めるような文体だった。
多分、重いテーマについて深く掘り下げて
いくような作品ではなく、70,80年代のどこにでもいる女性の生涯の刹那を切り取っていることと、作者の作風からそう感じたのだと思う。
しかし、タイトルの永遠についてハッとするようなシーンがあり、
それが太陽は数十億年後、なくなりそれに伴い、
永遠の象徴だった地球もなくなってしまうと紀子が知って、永遠ではないのか、、と思い、こうしてはいられない! と奮起するシーン。
終わりのことなんて全く意識していなかった紀子が明確に永遠の終わりを感じたところでもあり胸にきた。
また、永遠の終わりについて 春 -
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ネタバレ森絵都さんの作品が好きで手に取りました。
凄く好きでした。。
私は永遠の出口という作品が断トツで好きなのですが、同じくらい好きな作品となりました。
この物語の主人公は中学生の女の子さくらであり、
新学期の進路調査アンケートに「不明」と書いてしまうほど、将来に期待感などなく、ノストラダムスの予言の通り、本当に二〇〇〇年が来ないのではないかと不安を抱いています。
さくらは、不良グループとの付き合いで万引きをしたり、親友の梨利と不和を起こしたりと、人間関係に疲れていますが、宇宙船を設計しているという不思議な男性、智さんと出会い、智さんの家で飲むミルクコーヒーが安らぎのひとときです。
ただ、穏や -
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中高生のときに、とても好きで読んでいた森絵都さん。
きっと面白いだろうと期待して手に取ったが、想像以上に面白かった。最後の吾郎のスピーチには胸がいっぱいになって泣いた。
戦後から現代に至るまでの国の教育方針や、学校vs塾の構図がどのように移り変わってきたのか等、勉強になることも多かった。
何より作品に出てくる登場人物が皆、「教育」というものに真摯に向き合い、変化を受け入れながら本来のあるべき姿を考え、自分なりの理想を掲げて情熱を燃やしている姿がとてもカッコよかった。こんなに夢中になれることがある人って滅多にいないと思うけど、そういう人が業界や世界を変えてきたんだろうと思った。私も自分なりの -
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中学時代に心酔していた森絵都さんの作品。カラフル、ラン、DIVE!!などの代表作は読んでいた一方、不覚にもデビュー作を読んでいなかった。
大人になった自身にどう刺さるかドキドキしながら、本を開いた。登場人物、綴られた台詞、文体のリズム、全てが心地よく爽やか。十何年経っても変わらず好きなものがあることは幸せだ。
↓以下内容について
まだ自分の軸というものが確立していない年頃(いい大人でも軸がない人は多いが)様々な周囲の変化に大きく心が揺れてしまう。
そんな時、大人の大人らしいもっともな意見を聞くと、自分だけ周りが見えてないことに気づき途方もなく寂しくなる。そんな感情が自分にもあったことを思 -
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ネタバレ私だけの所有者「ミスター」
主人公のナルセに対する呼び方を見て、曲名はここからきてるんだなと思った。
アンドロイドと人間が混在する世界のは、いつか私たちの世界が人間のようなアンドロイドの開発を突き詰めていったときに到達するかもしれない、もしもの世界たりえるような気がした。
「きみたちの権利は最低限、保障されている。ただし〜人であると同時にものである、とようにしか言いようがない」は言い得て妙だと思った。確かにロボットと言うには人間味がありすぎるし人間とするには機械的だしはたして生命と言えるのか、と疑問に思う。アンドロイドの権利を保障しようとしたら、結局、モノ扱いとヒト扱いのどっちつかずになるしか -
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ネタバレタイトルの通り、再会やもう一度会いたいという気持ちをテーマにした短編集。各短編につながりはなく独立しているっていうのも潔くて良い。最近は連作短編が多くて、最後の伏線回収もなんだか食傷気味で…とこれはこの本のレビューとは関係ない話。
つながりがないだけでなく、結構個性がバラけた作品を集めている、と言っても捨て作があるんではなく、全編通して全部好みっていう読者は少ないんじゃないかなと思える程度に嗜好性がバラけている。
「カブとセロリの塩昆布サラダ」と「テールライト」の振り幅はすごいなぁ、と思えるのだ。
かと思えば、表題作や「むすびめ」のような、ど真ん中にも正々堂々と突っ込んでくるし。
力量な -
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面白かった。超大作ではあるけれど、1つの物語ではあるのだけれど、主人公が移り変わっていく、オムニバス形式なのが私には新鮮で良かった。導入の吾郎の魅力に惹きつけられ、千明と共同で頑張っていくところに野心を見て、でも2人に諍いが生まれていくにつれて、読むのが辛いというか、読み込みにくくなり…。でも千明単独編からは、千明の人間らしさや葛藤がよく分かり、私はこの箇所が一番好きだった。一郎編もよかった。一郎を経て、教育が巡り満ちた満月のようになったのでは。
家族が複雑な点もまた魅力的で、なにか欠けているような、それでいて満ちているような。
教育のことも色々と考えされられた。とくに、塾や習い事などは子 -
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ネタバレ1年A組、後半戦。
秋、後期のクラス委員を選出したり、合唱発表会やマラソンなどの学校行事が進められながらも、1年A組の生徒達のありふれたようでいて、それぞれ個性あふれる多感な日々が過ぎていき、とうとう三学期、修了式を迎える。
有終の美を飾るのは、学級委員のヒロ。
季節の移り変わりと多感な中学生の心情の変化の描写が素敵で、心に沁み渡ります。多感ではありつつも、あっけらかんとしていて、ただただ平凡な子ども達の姿にホッとしてしまいました。小さな悩み、決して本人達にとっては小さくはないけれど、生きていくことに絶望するほどではない、でもこの子達の今の生活の大半を占める悩みや障壁に、クラスメイトや先 -
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中学生なんて、なるときは、だれでもなる。
中一。千鶴は小五の時からの大親友、彩菜とクラスが離れてしまった。出席番号が一番の千鶴の席は、窓際の最前列。一番すみっこの角。早いうちに隣、後ろの席の子達といかにして仲良くなるかが肝心だ。
隣の席は、同じ北見小学校で恐れられていた久保さん。後ろの席の子は話しかけやすそう。
先手必勝!出席番号が一番の生徒は、相手から話しかけてくるのを待ってなんかいられない。
『鈍行列車はゆく』千鶴
中学生の群像劇、オムニバス。
繋がりながら、毎話主人公が変わる。短編。
中学生になったばかりの青々しい心情に懐かしさを感じました。大人となった今では些細なことでも、こ -
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ネタバレ中学生の時に1回目、大人になって2回目を読んだ。
無敵だった中学生の時に読んだ時は、孤独とは無縁で、ウジウジしている主人公・環に共感できず、特別面白いとも思わなかった。ただ、死後の世界をこんな風に描いた作品は見たことがなく、天国地獄や輪廻転生からの解脱を信じれない当時の自分にとって、すごくしっくりきた。
その事が印象的だったので、大人になって読み返すと、なんて面白い本なんだ。と
とても仲良し家族とは言えない家族との歪な会話を、それさえ懐かしいと言いつつ、職場や周りの人の関わりを煩わしいと言い、孤独と言いながら人を避ける環の矛盾のような心情に共感し、その中で変わっていく環に胸が熱くなる。
読んだ -
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ネタバレなんとなく閉塞感がありつつも、これが普通に平凡なんだろうと過ごしてきた日常や環境、そこに疑問を持ち、もっとどうにかしてやろうと変化を求め行動するきっかけ。
そんなきっかけを描いた短編が7編。中にはショートショートや詩のような短いストーリーもあるが、それはそれできっかけの瞬間だけを切り取ったかのような精錬度合いが味わい深い。
居心地の悪さやケツの座りの悪さを、「みんな我慢してるんだから」と辛抱することは大切だろうし、ある種ラクなのかもしれないが、ちょっとでも居心地よく…というか楽しく過ごせる環境にするために行動することは、良いことだと思いたい。
せめて、人がやってるそれを「和を乱す」的なこ