森絵都のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
いつかパラソルの下で…
この後には何が続くのか。
勝手に前向きな爽やかな内容なんだろうなと思って読み始めましたが、不穏なスタートでいきなり裏切られました。でも森先生らしいタッチで描かれているため、シリアスなシーンでもどこかコミカルで、ときどき心の中でニヤリとしてしまいました。
森先生の作品は色の表現が美しく、読んでいるときれいな彩りが目の前に広がる感じが好きです。
この作品は後半になるにつれて鮮やかさが増していき、読後は爽やかな気持ちでいっぱいになりました。
いつかパラソルの下で…自分だったら何がしたいかななんて考えることそのものが楽しみになるような、すてきな作品でした。
とてもおもしろかったです!
-
Posted by ブクログ
今だからこそ、たくさんの人に読まれるべき物語。
直木賞候補だったが、ぜひ受賞してほしかった。
序盤にサクラギが発した言葉「与えられた物語を信じてはいけない」が伏線となり、教え子の孝子が「新しい物語」と新年の抱負として書き初めをし、物語の結びには「終わりのない物語をつくる」
それぞれの意味するものは少しずつ違うけれど、よくできている。
戦争とはどんなものなのか、私はあまりにも知らなすぎる。アメリカで日系アメリカ人たちが強制収容されていたということも、初めて知った。
それをあの有名なルーズベルトが行ったということも。
日本でどんなに物資が不足しても、飢えに苦しむひとがたくさんいる中でも、食べ物もなんでも、あるところにはしっかり確保されている。というのも今に通じる救いのないリアル。
戦争で家族も夢も住む家も何もかも失った、みんなそうなんだと歯を食いしばって生きている人もいながら、何一つ失ってはいない階級の人たちがいるという残酷。
美央子はことあるごとに、あの戦争さえなければと心の中で思っていた。それが当時の人たちの心の叫びなのだろうと思うと、戦争は人々の人生を台無しにするものなのだと改めて感じる。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ人生に迷った時に、踏ん張ろうと思える短編集!
一押しは、「犬の散歩」です!
平和な日本に生まれ、両親に育ててもらい特に何も無く大人になれて、好きな人と結婚して。主人公と同じで、自分は恵まれていると思いつつも、世の中の不運に対して何もできずにここまで生きてきました。
「自分になにができるのかと考えることは、自分の無力さと向き合うことだ」
世の中の不運を教科書やニュースで幾度どなく感じてきましたが、見ないふりしていたのは、自分の無力さと向き合うことが怖かったからなのかもしれないと思いました。
主人公と義母の掛け合いに心が暖かくなり、涙ぐみながら読んでいました。
私も自分の牛丼が欲しくなりました。
全編を通して、人生って出会いの繰り返しだなと感じました。どの短編でも主人公と、主人公が出会った人との掛け合いが印象的で、その掛け合いによって主人公が少しずつ変わっていきました。自分が何をするか、どういう選択をするかということには、選択肢に繋がる出会いが必要。出会いは運命で、運の要素が強いものですが、それを選びとるのは自分自身。ひとつひとつ選んでいくその繰り返しの中で、自分が大切にしたい価値観が強固になっていき、人生になるのではないかと感じました。