森絵都のレビュー一覧
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ネタバレGHQは、日本に民主主義を広めるため、ある実験を始めた。
その実験とは、東京の屋敷に集められた四人の女性に「民主主義のレッスン」を施すことである。日本に新たな価値観が浸透し得るのか見極めるため、日系二世の青年・サクラギが奮闘する。
堅苦しくなく、よみやすいエンタメ小説。
お固そうなテーマでこのボリューム。歯応えのある読書になりそう、と身構えて取りかかったが、かなり読みやすい。美央子、吉乃、孝子、ヤエ、クニと、いずれも個性豊かで、かなり良いキャラクターが揃っている。とても一筋縄ではいかない彼女たちを御しきれず、右往左往するサクラギ先生の当惑顔も癖になる。物語に散見される笑いどころは、まさに朝ドラのそれで、どこか品のあるコミカルさだ。
小難しい所に切り込みたくないのだが。
デモクラシーを根付かせるってすごく難しい。作中でもサクラギ先生が何度か取り上げていたが、目に見える成果が出るものではない。「基本的人権の尊重」だとか「思想の自由」だとか、色々な角度から掘り下げることが可能であるが、「多様性の受容」という面から鑑みるに、仁藤夫人をとっちめるエンドで良かったのかなあ、というわだかまりは残る。小説としては、デモクラシーを真の意味で解さない分かりやすい敵役がいて…というのは盛り上がるし、実際に面白かったのだが、多様性の受容という観点からすると、仁藤夫人の考えだって、まああってしかるべきなのだ。しかし、物語としては非常に面白かったので、重箱の隅をつつくようなつまんない指摘は無粋というものだ。
卒業旅行が良かった。
教室でデモクラシーについて学び、東京の町に出て考え、進駐軍から本場の風を感じた生徒たちは、日光の小学校に社会科の授業参観に赴く。放課後、校長宅で女性蔑視の発言を受け、戦後デモクラシーの現実を知るというシーン。
デモクラシーを知っていても、受容する土台が全くなっていない。舞台が東京であったからうまくいっていたことなのだと突き付けられた。サクラギ先生の悔しさを思うと、胸が痛んだ。
旧態依然とした教員たちの価値観を変えるのは難しいと思ったが、その価値観をデモクラシーに染めるということも、なんとなくデモクラシーに反する気がする。デモクラシーって難しいな。新しい価値観を教えるというのは少し違って、知識として吸収して、自分の価値観と違うものだったら、反発せずにそっと置いておくというのが多様性の受容なのかな、と思った。やー、、難しい。 -
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やはり小説は面白い。
いや、森絵都さんの小説は面白いと強く感じる作品だった。物語はフィクションであるが、戦後初期にワープしたかのような臨場感がある作品。以前新聞で見た上野孤児の写真が目の前に広がるかのような鮮明な描写もあって面白かった。小説はその世界に没頭できるのが醍醐味だと思うが、まさにタイムスリップしてまた令和に戻ってきたような読後感だった。
民主主義を教える教師、和田や教頭が美央子達の意見に豹変するシーン。生々しく思えた。そりゃ、そんなすぐ変わらないよな。。
この終戦80年で日本はよくここまで成長したなと思う。女性初の首相誕生に沸いた令和に生きる自分。
上野の桜は外国人観光客で賑わい、駅ナカはスーパーも食事もスイーツも揃う。カルティエ展が催される程、煌びやかな一面も見える街になった。
孝子達は今95歳以上の設定だろうか。戦争で家族や家、何もかもを失った彼女達、いや世の男性も含めて、何かに没頭することで心を強くし、戦後を生き伸び、それが日本の経済を作ってきたのだと考えた。やはりこの時代を生きてきた人たちの反骨精神や学びへの意識の高さは、戦争を経験した人ではないと持ち得ない、そんな気もしている。 -
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「宇宙のみなしご」や「カラフル」「DIVE!!」「ラン」などで有名な児童文学を中心とする小説家の短編集。紀子(のりこ)の小学三年生から高校三年生までの10年間を、10の短編で描いており、姉妹、親、学校の先生、友達との関係、恋、卒業など青春時代の多くのテーマに触れている。子どもが大人になっていく激動の10年間を一人称視点で追体験し、またその過程のいろんな葛藤や気持ちをなぞりながら、自分自身をかえりみることもできる、貴重な経験をさせてもらえる本だと思う。これは、多くの名作児童文学がそうであるように、子どもにも大人にもわかる共通のテーマと、シンプルな構成や文体をとりつつも、背後にある人生の様々な側面の複雑さを感じさせる内容になっているからなのではないかと思った。
とはいえ、実は自分は大人になる前の、中学生くらいの頃に読んでいた。当時からすれば高校三年生のことは分からずじまいであった。
その頃から、表題作であり第一編の「永遠の出口」がずっと自分の中に残り続けている。取り返しのつかないこと、もう永遠に経験できない逃した機会を追い求め続けてしまう心についての作品である。主人公は10歳にしてこの「永遠」への執着の出口をみつけるような描かれ方がされているのだが、これはなぜなのかずっと気になっている。私自身が30歳近くになったいま、自分は永遠の出口を見つけられていないが、ときどき考える参照軸にしたいと思っている。
なお、最近の森絵都の作品である「出会いなおし」を読んでみると、こんな一節があった。
年を重ねるということは、同じ相手に、何回も出会いなおすということだ。会うたびに知らない顔を見せ、人は立体的になる。
ーーー『出会いなおし』(森絵都,2017)
長い目で人を立体的に見ていく、というのがこの人(森絵都)とって大切なテーマなのではないかと想像させられた。「永遠の出口」も主人公紀子を様々な時代から様々な側面で立体的に描き、良いところも悪いところも温かい色合いで映している。時代を経て想像しない形に変わっていく人のあり方に人生の深みや面白みがあるというものの見方のように見えた。
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いつかパラソルの下で…
この後には何が続くのか。
勝手に前向きな爽やかな内容なんだろうなと思って読み始めましたが、不穏なスタートでいきなり裏切られました。でも森先生らしいタッチで描かれているため、シリアスなシーンでもどこかコミカルで、ときどき心の中でニヤリとしてしまいました。
森先生の作品は色の表現が美しく、読んでいるときれいな彩りが目の前に広がる感じが好きです。
この作品は後半になるにつれて鮮やかさが増していき、読後は爽やかな気持ちでいっぱいになりました。
いつかパラソルの下で…自分だったら何がしたいかななんて考えることそのものが楽しみになるような、すてきな作品でした。
とてもおもしろかったです!
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Posted by ブクログ
ネタバレ人生に迷った時に、踏ん張ろうと思える短編集!
一押しは、「犬の散歩」です!
平和な日本に生まれ、両親に育ててもらい特に何も無く大人になれて、好きな人と結婚して。主人公と同じで、自分は恵まれていると思いつつも、世の中の不運に対して何もできずにここまで生きてきました。
「自分になにができるのかと考えることは、自分の無力さと向き合うことだ」
世の中の不運を教科書やニュースで幾度どなく感じてきましたが、見ないふりしていたのは、自分の無力さと向き合うことが怖かったからなのかもしれないと思いました。
主人公と義母の掛け合いに心が暖かくなり、涙ぐみながら読んでいました。
私も自分の牛丼が欲しくなりました。
全編を通して、人生って出会いの繰り返しだなと感じました。どの短編でも主人公と、主人公が出会った人との掛け合いが印象的で、その掛け合いによって主人公が少しずつ変わっていきました。自分が何をするか、どういう選択をするかということには、選択肢に繋がる出会いが必要。出会いは運命で、運の要素が強いものですが、それを選びとるのは自分自身。ひとつひとつ選んでいくその繰り返しの中で、自分が大切にしたい価値観が強固になっていき、人生になるのではないかと感じました。