森絵都のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
森絵都さんによる震災・福島の原発事故被災地でのペットレスキューを追ったルポルタージュ。
めぐり合わせというものは不思議なもの。先日、1年ほども積読状態だった桐野夏生『バラカ』を読み、そして、馳星周『少年と犬』を読んだばかり。そんな時に、たまたまこの本と出会った。森絵都さんなので、小説かと手にとったら、ペットレスキューの話し。これは、読まねばなるまいと購入。
震災2ヶ月後の2011年5月から11月にかけて、現地でのレスキューの様子やボランティアの思い、そして何よりペットたちの様子が、記されている。
作家である森さんの筆致は、穏やかで静かな装い。重い現実を前に、声高に正義を叫んだり、誰かを糾弾 -
Posted by ブクログ
交通事故で死んだ厳格だったはずの父の思いもよらない浮いた話によって家族が翻弄される話。周りからしたら当たり障りのないような他人事扱いされる内容で、現実の日常から少し外れたくらいの話は親近感というか生々しい雰囲気が漂っていた。
最後に野々が感じたような、うまくいかないことどうしようもないことに対して、何かに縛られたせいだとかそんな何か理由を取ってつけてズルズル生きるのでなく、人生はそういうものだ等しく孤独で泥沼なものなのだ、といった開き直り?気づき?の考え方はいまの自分にとって真意だなと思えた。
いつまでも言い訳垂れてそのことに縛られて生きるつまんない人間じゃなくて、自分のケツは自分で拭えるよう -
Posted by ブクログ
森絵都さんの短編ってセンスがあるなあ、といつも思います。普通の人なら見逃しそうな日常の中のさりげないシーンや、そんなことを思っていたことを忘れてしまうような感情も、切り取り方一つで小説のシーンにしてしまい、一つの短編に仕上げてしまう。そんな印象を抱くのです。
この短編集で取り上げられるプリンをめぐる三つの短編。それは担任の先生との言い争いであったり、親子ゲンカであったり、喫茶店で売り切れていたりと、いずれも一見したところでは、特に小説になるような話ではなさそう。
でも森絵都さんの手にかかれば、それは短いながらも一つの物語に変身します。やっぱり森絵都さんの視点はすごい……。
いずれも心理描写 -
Posted by ブクログ
森絵都さんの他の短編が面白かったのでこちらも購入。
この作品集では、大きな事件や非現実的なことは起きないし、拗れきった人間関係があるわけでもない。話の流れだけで言ってしまえば、読んだ後興奮して誰かに話したくなるような、そんな感じではない。
でも、そんな凡庸な日々に潜む物語も「悪くないな」と思えて、読み終わったらなんとなく元気をもらえる。
紹介文ではこれが「静かな苦笑いのひととき」と表現されていたし、私は「ささやかな人生賛歌」だなぁと思った。
本腰を入れて架空の世界に没頭するよりも、日常の延長で気楽に読むほうが向いてると思う。
それから、この方の作品の題名が好きだ。表題作の「架空の球を追う