日下三蔵のレビュー一覧
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SFの設定をベースにしているけれど、人間が極限状態で発狂していく様子など、どこか滑稽だがリアルでもあり、読んでいて癖になる面白さだった。
16編の短編が収められているが、どれも60年代に書かれたものとは思えない。
「ひとの愚かさが変わらないかぎり、筒井康隆の小説は面白い。つまり、筒井康隆の小説は永遠に面白いのである。」という裏表紙の一文にうなずいてしまう。
ロボットがやたら干渉してきてうるさいとか、10分間を何度も繰り返すタイムリープもので、ただ人々がおかしくなっていく話、大学生VS予備校生の話、長生きできる錠剤の争奪戦‥
どの作品も、スケールが大きいのか小さいのかわからない感じがツボだっ -
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作者の名前はかなり前から知ってはいたが、その作品を読むのは今回が初めて。日下氏の編集ものに興味があって、本書もそれで読んでみることにした。
本書には、80年代から2000年代の作品のうち、一度も文庫化されていない作品、再編集本ではない個人短編集に収録されたことのない作品、一度も本になっていない作品を、可能な限り集めてみたそうだ(編者解説より)。こうした編集方針を聞くだけでも、随分お得感を感じてしまう。
第一部は『季節のお話』という連作ショートショート。「雪 一月」では、雪というものがどうしてできることになったのか、「氷 二月」では氷ができるようになったのには奥さん思いの熊さんの思いがあ -
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本作では、『幻綺行』に登場した雨宮志保と石峰省吾の二人も中村春吉の道連れとなり活躍する。時は日露戦争の終わった明治40(1907)年、日露戦争中アフリカ、北欧を旅していた一行は4月ベルリンに到着した。大使館勤務の陸軍中佐から、「露西亜の近衛軍団兵士が考古学者を伴い東蒙古に学術探検に派遣されるのだが、どうも怪しい、露西亜が何を画策しているのか調査してほしい」との依頼を受ける。引き受けた彼らは、シベリアを超え大興安嶺へと向かうこととなったが、果たしてロシアの目的は何なのか。また、向かう先には現地人が立ち入ってはならないと言う聖なる山があり、そこには黄金神像と白い巨大な守護神がいるとの言い伝えがあ
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はるか昔の学生のころ、筒井康隆はかなりの人気作家で、回りにも筒井ファンは大勢いたのだが、何となく手を出さず、読んだのは七瀬三部作くらいだった。たまたま書店で本書を見つけ、初期傑作短篇収録というオビの文言に惹かれて読んでみた。
どれも面白く読んだのだが、特に毒気のある作品が気に入った。「堕地獄仏法」とか、学会の折伏の強引さが問題化されていた頃にここまで書くかという内容だし、「公共伏魔殿」では荒唐無稽な展開の中にNHKのあり方を批判している。また、「やぶれかぶれのオロ氏」では政治家の記者会見の曖昧語法を痛烈に皮肉っているし、「懲戒の部屋」は、痴漢冤罪の恐怖を先取りしたような内容で恐怖感さえ抱 -
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西郷隆盛は生きていた!しかしシベリアの奥深くに囚われの身となっている。その報告を受けた明治天皇は西郷救出の勅命を下す。この極秘の任務を全うし得る人物として白羽の矢が立ったのが中村春吉だった。果たして彼は、無事西郷を救出できるのか。
木の間に脚を挟まれ動けなくなっていた虎を助けたところ、その恩返しか春吉から離れなくなってしまった「猛号」や、ひょんなことから出会った日本人などと行動を共にして、春吉は西郷が囚われているとされる監獄に向かう。”幽霊監獄”とか”骸骨監獄”といった、いかにもの名称も正に冒険小説。
どうやって警戒厳しい監獄に侵入し、警備をくぐり抜け西郷を救出するのか、いろいろな機 -
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71年頃の作品集。匂い立つようなエロスに満ちた話が多い。全7編。
「姦臣今川状」
菊池寛の短編に「三浦右衛門の最後」という酸鼻を極める話があって、私はずっとこれを架空の人物と思っていたのだが、この話を読んで実在の人物であったと知り驚愕。
「売色奴刑」
実に風太郎らしい作品。男どもが女の美しさにまなこくらんで、勝手にそれぞれ自滅した事件にもかかわらず、奉行のお裁きによって、懸想されただけの女たちがなぜか奴女郎に堕とされて、禽獣の見世物もかくや、倫理も人権もあればこそ、という肉の奴隷に処せられる話。まったくもって理不尽に過ぎる話でどうなってしまうのかと思ったら、そこはさすがに風太郎だけあって、なる -
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ミステリを先ず読み始め、SF系にまで手を出すのは止めようと考えてきたので、著者の名も知らなければ、その作品もこれまで全く読んだことがなかった。そうした次第だったが、竹書房文庫から日下三蔵編のちょっと面白そうなアンソロジーが出始めたことを知り、本書を初めて手に取った。
各編、アイディアがなかなか面白く、文章も読みやすいので、サクサク読めた。
ある男が飼っている”別れ”の呪いを譲り受けた男に次々と迫る恐怖を描いた「お別れ」、花を出し忘れてしまい、去っててしまった”新聞蝶”を何とか探し出そうとする少年の冒険を描いたファンタジックな「お父さんの新聞」、なぜかいつ見ても一つのトイレの扉がしまって