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不思議に、ぎゅっと、掴まれる * * * * * * * * 時間に追われる久子に老人が渡したのは、時間を操れる時計。時を止めておおいに自由を満喫する久子だったが……。 影絵の街に囚われた大学生を描く表題作ほか、文庫初収録となる『季節のお話』『ちいさなおはなし』全話に加え、「センチメンタル・ジャーニイ」、<チグリスとユーフラテス>外伝「馬場さゆり」「あした」、野球SF「阪神が、勝ってしまった。」などの未収録短篇もふくめた、楽しくて、たまにドキッとさせられる作品集。
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Posted by ブクログ
作者の名前はかなり前から知ってはいたが、その作品を読むのは今回が初めて。日下氏の編集ものに興味があって、本書もそれで読んでみることにした。 本書には、80年代から2000年代の作品のうち、一度も文庫化されていない作品、再編集本ではない個人短編集に収録されたことのない作品、一度も本になっていない作...続きを読む品を、可能な限り集めてみたそうだ(編者解説より)。こうした編集方針を聞くだけでも、随分お得感を感じてしまう。 第一部は『季節のお話』という連作ショートショート。「雪 一月」では、雪というものがどうしてできることになったのか、「氷 二月」では氷ができるようになったのには奥さん思いの熊さんの思いがあったからといったような、ほのぼのとしたりちょっと可笑しかったりする、かわいいお話が12編収録されている。元の単行本ではカラーイラストが付されていたそうで、絵もぜひ見たくなる。 第二部は『ちいさなおはなし』という、15編のショートショート。ちょっとダーク調の強い作品もあるが、バラエティに富んでいて面白い。 ちょっと端折るが、最後に収録されているのが、『チグリスとユーフラテス』外伝の二編。今回が初めて読む新井素子の本なので、『チグリスとユーフラテス』という作品自体知らないのだが、日本SF大賞を受賞した作品とのこと。「馬場さゆり」は、心身ともに傷ついた夫婦が ”ナイン” という惑星へ移民することにした事情や葛藤を描いたもの、「あした」は、コールド・スリープという何十年にも及ぶ惑星間移民を可能にするための技術を完成させるために、被験者になることを志願した女性の心情を描く。この二編は外伝とはいっても正にSFで、おそらく本編には直接つながらないのだろうが、本編も読んでみたくなった。 クスっとしたり、懐かしさを感じたり、人間が生きるとはどういうことなのか少し考えさせられたりと、いろいろな思いを味わうことができる一冊だった。
未収録作と初文庫化作を中心とした短篇集。 「チグリスとユーフラテス」外伝が読みたくて購入。 そろそろ、素子さんの長編SFが読みたい。 そして、あとがき、解説が面白かった。
不思議に、ぎゅっと、摑まれる。 「センチメンタル・ジャーニイ」、〈チグリスとユーフラテス〉外伝などの未収録作と初文庫化作を中心とした短篇集。 (竹書房公式サイトより) 短編集をさらに集めたような一冊、このページ数で様々な新井素子ワールドが詰まっていて読み応えがあった。 恒例のあとがき収録もあり、...続きを読む巻末の編者による作品解説、補足が豊富な収録内容をさらに充実させている。お得感たっぷり。 目当てだったチグリスとユーフラテス外伝について 「馬場さゆり チグリスとユーフラテス外伝」 レイディ・アカリとキャプテン・リュウイチの親しい友人、明…の嫁視点の物語。 医者になるまでその仕事の「生々しさ」に気づかないのはいくらなんでも現状認識がおかしいのではないかとも思うけどまあ素子ワールドなので。 産めよ増やせよが諸手を上げて賛美される世界に追い込まれないと妊娠へのリミッターが外れないというのもなかなか難儀な。 わりとシンプルに『チグリスとユーフラテス』の核心に触れている気もしますがあの熱量物量を過ごしてたどり着くとまた味わいも違うのでネタバレ感はそんなには無い。 「あした チグリスとユーフラテス外伝」 レイディ・アカリの妹がコールドスリープ研究・実験に挑む話。 という体の、眼の前の問題を先送りにして数年単位で放り投げてしまえという、『チグリスとユーフラテス』第一章マリア・Dを思わせる話。 物語をそのまま読んでいけば直接この後につながるのがマリアの話というのがなかなか趣深い気がする。 「あー姉ちゃんが、移民船の中で、"普通"に生きているのなら、あー姉ちゃんは、コールド・スリープなんて、絶対、しない。」 コールドスリープに関するここと、この前後の文章、物語的に笑える部分は全く無いのですが笑ってしまった。 普通の人には、普通の生活をしていたら絶対に必要のない技術、と何度も繰り返し念押しされればされるほど、この後の穂高灯さんのとんでもない人生が想起されて。 逃げたり、時間を飛び越したり、大事なことを他人に押し付けてはいけない、というのは表題作「影絵の街で」にも通づるものがあります。「大きなくすの木の下で」もある意味そうかな。 この話単品だと正直なんのこっちゃですが、チグリスとユーフラテスの外伝ということを加味するととてもおもしろかったです。標は無事に目覚めるだろうし、目覚めた後にあー姉ちゃんの後を追って行ったりはしなかったんだな。しかし長女は二度と会えない星の旅路に出て、その10年くらい後には次女も命の保証のされていない実験に参加するとか、穂高夫婦は生きた心地がしなかっただろうな…。無事に孫を抱けたのでしょうか。 短編の中では 桃 虹 かあてん くものいと が好きです。桃ってほんと足が速いけどあれは気が早かったんだな…。かあてん の走馬灯(?)の中でも実母とその男だけはなんのフォローもないとこも好きです。
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影絵の街にて
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