日下三蔵のレビュー一覧
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妖艶にして凄絶な異色ミステリ短編集。どれもが倒錯したエロティックさを感じさせ、ぞくりとさせられます。どちらかといえばグロテスクでもあるのだけれど。美しさも感じさせられます。ただし、一気に読むと酔いそう。
お気に入りは「ウルフなんか怖くない」。たぶん、現代だとこれはアンモラルだなんだって言われそうな気がします。ヒロインの浩子も不幸だというように受け取られそう。なのだけれど、実は収録された中でこの作品が最も愛情に満ちて幸せな物語なんじゃないかという気がしました。
一番ぞくりとさせられたのは「悪魔のような女」。本当にこれは怖い。男性が読めばさらに恐ろしく感じられるかなあ……。
短い作品だけれど「蝋人形レストラン」も怖かったなあ。シンプルに恐怖を感じさせられます。 -
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ネタバレ決して文章が美しいわけでも構成が練られてるわけでもないのに、何故だか「すごい」と思ってしまった。
作品ごとのムラは多いし筋書きは荒唐無稽なものがまぁまぁあるんだけど、そのばらつきがある種の「あやしさ」として魅力的に映る。
『恐ろしき通夜』、最初は「毒でも盛ってんのかな?」って予想しながら読んでたけど、まさかの毒よりヤバいものだった。えっぐい。でもそういう話好き。
『火葬国風景』の終わり方は打ち切り漫画レベルの唐突さなんだけど、そこが逆に想像をかき立てるというか。
『十八時の音楽浴』いやこれ名作ですよ。お手本のようなディストピアSFの世界で繰り広げられる、今ならポリコレに配慮してこんなこと書けないんだろうなっていう倒錯的な愛憎! -
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2014年から2017年くらいにかけて行われた筒井康隆が自作について語るトークショーや対談集をまとめた一冊。筒井康隆の素晴らしい記憶力と、インタビュアーである編集者の博覧強記ぶりによって、どのように名作の数々が生まれたのかを知ることができるし、当然その誕生の背景も様々な面白おかしいエピソードに彩られている。
個人的に一番面白かったのは2008年に発表された「ダンシング・ヴァニティ」の誕生秘話であった。本作は”差異と反復”という言葉そのものであるように、ストーリーが微妙に差異を孕みつつ繰り返す反復されて生きながら進んでいく。
その背景には、新潮社に対して試しに原稿料を半額で良いと言ったら、先方が思いのほか喜んで半額が通ってしまったために、「半額なら手抜きでいいか」となったエピソードがあるという。手抜きをするためにコピー&ペーストで作れる小説を書きつつ、それが意外にも良い出来になるという点に、御大の作家としての力量を感じざるを得ない良いエピソードであった。 -
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おもしろかった。
AIという言葉こそ使われないものの、発達しきった人工知能が人間の欺瞞をあばく話がいくつかあって(いじめないで、やぶれかぶれのオロ氏など)すなおに笑える。「時越半四郎」は、AIではないけど、やはり日本人の不可解な思考回路を笑いとばす話で最後にちょっとしんみり。しかし、これ、1966年初出だから50年以上前だけど、今も変わってないどころかいっそうひどくなってるんじゃない?
「しゃっくり」はタイムループの話。このアイディアだけで長編も書けるのにね(北村薫の『ターン』とか)。最後に憑き物が落ちたようになる人々がおかしい。
「慶安大変記」は、初出が高3コースだったという大胆さが笑える。よく学年誌にこんなアナーキーな作品を(^_^;; このガンガンエスカレートしていく感じ、なぜか痛快。
表題作の「公共伏魔殿」なんかは、「ありそう!」「わかる!」と笑いつつも、クライマックスがひたすら気持ち悪くて(笑)ここらへんはもう好みだなと思うわけですが、全体としてすごくおもしろく読めました。じつは筒井康隆、ずっと食わず嫌いしていたので(このエグさが、かつては無理だった)これからもう少し読んでいこうと思います。 -
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横溝正史の作品には、「長編はめちゃくちゃ面白いが短編はそこまででも…」というイメージを持っていたのだけれど、この本を読んでそれは大間違いだったと気付かされた。あの短いページ数でこれだけのドラマを見せてくれるなんて。それはものすごい技巧であるのに、それを必要以上に感じさせず、さらりと読ませてしまう。すごい。どの短編も楽しかった。めくるめくワンダーランドのような一冊だった。中でも特に面白いと思ったのは「妖説血屋敷」「青い外套を着た女」だった。恐ろしい昔話に彩られたものから、軽快な読み口のもの、不思議な後味のもの……本当に楽しい読書の時間だった。