日下三蔵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
横溝正史を読み、繋がりのある海野十三へ。名前は有名ですが読むのは初めて。
横溝正史と海野十三について。
当時雑誌「新青年」の編集者だった横溝正史が、海野十三の原稿を他の人に「校正しておいて」と渡したらその人は原稿をまるっきり書き直してしまったらしい。そのため海野十三っぽさはまるで無くなってしまったんだが、時間もないし、申し訳なく思いながらもその書き換えたものを発表した。しかも当時公務員だった海野十三がペンネームを使っていたのに、うっかりと本名を雑誌に載せてしまったんだそうな。個人情報、著作権ってもんが全くない 笑
横溝正史は海野十三に対して「大変ご迷惑を…」と大いに反省しているが、海野十三は横溝正史に感謝の弁を述べているので、当時の書き換え・代作当たり前の大らかさも感じる。
横溝正史と海野十三は個人的にも繋がりが深い。困ったときにはお互いに援助仕合い、戦中戦後の助け合い関係が感じられた。
そして海野十三はかなりの軍国主義者だったようだが、読んだ感じではそんな感じなかった。
さて、こちらの短編集は素人探偵帆村荘六(ほむら そうろく・シャーロック・ホームズを捩った)による事件簿。
副題が『名探偵帆村荘六事件簿』であり、海野十三の科学知識を駆逐したミステリーというので本格推理小説かと思ったが…読んでみたらこれはトンデモ科学のトンデモミステリーだった笑・笑・笑
なにしろ「科学」というのが、「肉食動物の胃液を集めた容器に死体を入れて溶かす」とか、「死体を凍結させて細かく砕く」とか、「内蔵と同じ形の容器を作り、ある振動を加え、人体へと共鳴させて、内蔵破壊する」、「赤外線でないと見えない怪人」が出てきたと思ったら「薬により目が赤外線が見えるようになった」人も出てきたり 笑
しかし警察の捜査も「銃痕の入射角度により犯人の位置を捜査する」という概念もなく、それを指摘された担当刑事が一生懸命数式を作るとか、血痕についても「血液型などというハイカラな考えはなかった」という時代。そんなときに「入射角度」「赤外線」というのはハイカラな推理小説だったんだろう。そして理数系の方にこの短編集で書かれている科学犯罪、例えば「自動ピストル発射装置」が理屈の上では可能なのかを分析していただきたい。
さらに、どの犯人も動機はどうでもいい扱い 笑。連続殺人を「変態殺人」「殺人淫楽者」、盗みを行った男が死んだのだが何を盗もうとしたかは書かれていない、などなど。
日本の探偵小説の初期は、動機だとか、なぜ探偵が犯人だと気がついたのかとかは重要視されなかったんですね。
こうなったら読者としては物語そのものと、当時の庶民生活を楽しみましょう。
『麻雀殺人事件』
帆村荘六の目の前で麻雀の客の一人が毒殺された。帆村荘六は意地をかけて解明する。
…犯人目星をつけたのが「怪しくないから」っていいのかこれ 笑
『省線電車の射撃手』
省線電車内で女性が射殺される。銃痕の入射角度を指摘された担当刑事は、計算式を作って犯人の位置を捜査していく。
…捜査担当刑事が、指摘されるまで入射角度なんて考えてもいなかったとか、それを確認するのも担当刑事だというのが時代ですね。警察組織にはいつから科学捜査専門ができたんだろう。
『ネオン横丁殺人事件』
お座敷で殺された主人。隣の座敷にいた妾の証言には矛盾があるが、殺人不可能なようだ。
帆村荘六は「自動ピストル発射装置」を解明して…。
『振動魔』
不倫相手が妊娠して困った男が、科学の力によりこっそり堕胎させようとする話を男の知人が語る。不倫する二人も問題だが、この語り手がかなり嫌らしい。
『爬虫類館事件』
動物園で園長が行方不明になった。園長は肉食動物の餌になってしまったのだろうか?
『赤外線男』
女性殺人犯は、赤外線を通さないと見えない「赤外線男」なのか!?
…ダリアという女が出てくるんだが、この時代に洋風の名前での純日本人で大柄で開けっ広げで男性と洩ザック・バランな関係になる、って、なかなか面白い人物だ。このダリアの結末もなかなかに面白い。
『点眼器殺人事件』
帆村荘六は怪しい依頼人に誘拐されて、誰にも知られずに殺人事件を解明するように言われる。そこは近頃社会を騒がす秘密結社の総本山だった。
…社会を揺るがす秘密結社というのが、戦前の日本の不穏さを感じさせる。
『俘囚(ふしゅう)』
こ、これは…かなりキモチワルい。
研究室に閉じこもり悪魔の実験を行う博士。そんな変態陰険陰湿身勝手夫に嫌気が差している妻は、夫を井戸に落として殺したと思ったのだが…。
この実験が相当気持ち悪い。語りは夫である博士を殺した(と思っている)妻で、蓮っ葉な感じなのだが、嫌な夫(本当に気持ち悪い嫌なヤツです)を片付けてスッキリすると思いきや、鏡に映る自分の顔に「自分は殺人者になったんだ」と悶える描写などとてもうまい。
終盤相当キモチワルいが、この妻の蓮っ葉さが潔くもあった。
『人間灰(にんげんかい)』
西風の日に従業員が行方不明になる湖沿いの工場があった。湖を漕いでいた男は、気球に気がつく。そしてなぜか血塗れになっていた…
『獏鸚(ばくおう)』
たまたま入手した暗号は、社会を揺るがす秘密結社によるものなのか。
暗号解読物なのだが、映写機とか日本語や英語の発音を利用しているなど、当時にしては最先端科学だったんじゃなかろうか。
…暗号の「獏鸚」と聞いて、獏と鸚鵡を背中でくっつけた怪物?を想像するってどういう発想だ。この本の表紙がその「獏鸚」です。 -
Posted by ブクログ
江戸川乱歩や横溝正史など著名なメンバーがリレー式で書き継いだ合作探偵小説「五階の窓」、「江川蘭子」、「殺人迷路」、「黒い虹」の4編収録。
前に江戸川乱歩の本で「江川蘭子」の乱歩担当回だけ読んだことがあって続きが気になっていたのだが、今回まとめて読めたのは大変嬉しい。
「五階の窓」は最後に執筆陣の所感がついており、それによると人物や筋は事前にいっさい決めずにそれぞれ書いたという。それにしては破綻せずまとまっているのはさすがだが、「殺人迷路」と「黒い虹」で最終回を担当した甲賀三郎は伏線回収にかなり苦労したと思われ、「黒い虹」の最終回冒頭がぼやきで始まっているのは笑った。
あと伝奇の一筋の人だと思っていた国枝史郎が参加しているのは驚き。
小説としての完成度はともかくとして、それぞれがどのように書き継いでいくかが面白かった。第2巻はもうすぐ発売だそうで楽しみである。 -
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うわあぁ、草上仁を、何十年ぶりかに読んだ!
うんうん、コレコレ!
「国境の南」「飛び入りの思い出」「アイウエオ」がベストスリー。
逆に、読みはじめの数行でネタバレしたのもあり、ありゃりゃ。
巻末に作品リストが載っているのがありがたい。初期の短編集はたぶん全部読んでるハズ…
その頃の作品から透かし見た未来が、今の現実にとても近いことに、何やらにやりとしたり、ぐっときたり。
たとえば、新型ウィルス対策でマスクを手離せず、透明なパーテーションを挟んで黙って飲み食いするなんて、まるっきり「くらげの日」だと思って眺めていた。
通信障害スマホが使えないと何もできなくなるなんてのも、とっくの昔に見ていた世界。
それは、草上仁さんを読むよりもさらに一回り前、私の読書歴のかなり初期のころに読みふけった星新一さんの作品にも感じていた感覚。
SF読んでる人は、みんなそうなのかな?
未読作品がまだ当分楽しめる。嬉しいねぇ。 -
Posted by ブクログ
曽野綾子の思想的原点はどこにあるのだろう
いくつかの初期作品に触れた感触だけで想像するに
太宰治の影響が強いのではないか
勝手にそう思っている
「ビショップ氏殺人事件」
昭和30年代のはじめだから、朝鮮戦争の少しあと
優しいアメリカ人の見せる父性に対して
若き日本人の抱える甘えと屈託が
殺人事件を引き起こす
「華やかな手」
女子生徒に人気のある大学教授
彼は赤ん坊のとき、事故で片方の手首を失っている
不具の意識から結婚を避けている様子だが
しかし人生に絶望してはいない
明確ではないけれどもキリスト教への傾倒が垣間見える
「消えない航跡」
生きてるときは嫌なやつと思っていても
死んだあとでは良いやつだったように印象が変わることもある
それがセンチメンタリズムだ
大人の世界にはあまりないことだが
しかし、真実の裏付けがあるとなれば話は別だ
たとえそれが下世話な興味で暴かれた真実であろうとも
「競売」
物質主義によって迷信を退け
勝利の美酒に酔いしれる
しかしその直後
戦後失われつつある人の心への感傷をくすぐられ
あっさり騙されてしまう
「人生の定年」
会社の上役が交通事故で死んだ
しかし本当は保険金狙いの自殺だったんじゃないか
そんな噂の真相を探るうちに
殺人事件の可能性まで浮かび上がってくる
最後のほうに「日本浪曼派の詩人」が出てくるあたり
ミステリというよりは
戦後日本人の孤独を書いた文芸作品と言うべきだろう
「佳人薄命」
曽野綾子のミステリ作品は
真相を探る探偵にこそ
心の闇を見出そうとするところがあって
それが独特の味になっている
センチメンタリズムを否定したくない気持ちは
あったかもしれない
この作品では「読者への挑戦」に相当する台詞が用意されており
一見、正統派の本格ミステリと思わせるのだが
その後にさらなる展開がある
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Posted by ブクログ
ネタバレ短編集。
SF+ミステリ系なお話から、ちょっとクスッとくるお話まで色々。
以下、ネタバレ含みます。
スタート・ピストル ロボットものですが、ミステリ要素も少々。
スカイダイブ 世にも奇妙な…みたいな話。
大酋長 やりとりが面白い
ハパンサペナ 言葉が厳格に定められた世界の話
顔 これはちょい怖い
大人になる時 難しい
犬のプレゼント イヤミス系
自分殺し 個人的に好き。クローンでも受け継がれない後発的に獲得したもの…
妻の味 悲しい話
皮まで愛して これはギャグ枠
バディ なかなか特殊な世界観
ワクチン 今のコロナの時代にあった話かも。結局教授は…どうなんだろ