日下三蔵のレビュー一覧

  • 吸血鬼飼育法 完全版

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    ネタバレ

    今読むと昭和レトロな短編連作。一匹狼・片岡直次郎のトラブルシューター活劇。江戸時代に実在した小悪党と同姓同名らしい。大悪党でないところがポイント。基本的に利益優先で、己の不利にならない程度に仕事をこなし、据え膳は食う。犯罪の片棒を担ぐような依頼も受けるし、バレない程度に現金や宝石をくすねるあたり、まさしく小悪党。欲どおしい人たちばかりで、誰が何をしでかすか読めない展開がおもしろかった。

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    2022年03月15日
  • 夜のアポロン

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    一つ一つ短い話だが、内容は重たく濃厚な余韻を残す。
    まさにこれが皆川博子の世界観。
    生々しくも残酷で、それでいて美しい旋律のよう。人によっては後味の悪さを感じるかもしれないが、これが人生というのも一つの真理なのかもしれない。

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    2022年01月19日
  • 第8監房

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    前半と『異常物語』の落ち穂拾いをやった後半(「日露戦争を起した女」以降)とでは雰囲気が違うのだが、前半の方が面白かったかな。その前半は昭和の邦画を思わせるストーリーテリングが楽しい。表題作の「第8監房」などはまるで日活のムードアクションだが、実際に日活で映画化されてたらしい。後半の『異常物語』は陰惨な話が続くのだが、前半は筋立てはともかく、雰囲気そのものは暗くなく、明朗な感じさえある。なんとなく意外。

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    2022年01月17日
  • 夜のリフレーン

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    幻想短編小説集。うっとり浸りました。
    皆川博子さん短編の方が難しい、って仰ってるけど短編も素敵です。ふと隣りにある闇にじわじわと、ある時はストンと引きずり込まれていきます。美しい闇。
    人と人が交わる時、愛憎は避けて通れないのかも。自分の闇を、見詰め過ぎて囚われないように。。

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    2021年09月25日
  • 夜のリフレーン

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    表題作「夜のリフレーン」が短いながらも、印象的。皆川博子の世界観の原液って感じ。
    どの短編も日常から幻想への境界が曖昧になるのが自然過ぎて幻想とは思えず、読後はより不思議な気持ちになる。

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    2021年09月25日
  • フェイス・ゼロ

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    「トワイライト・ジャズ・バンド」と「逃げようとして」が面白かったかな。「冒険狂時代」は落ちがあってSF第一世代の作品みたいな感じ。

    収録作品一覧
    溺れた金魚/夢はやぶれて(あるリストラの記録より)/トワイライト・ジャズ・バンド/逃げようとして/エスケープフロムアクラスルーム/TEN SECONDS/わが病、癒えることなく/一匹の奇妙な獣/冒険狂時代/メタロジカル・バーガー/フェイス・ゼロ/火星のコッペリア/魔神ガロンー神に見捨てられた夜

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    2021年09月25日
  • くらげ色の蜜月

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    酔え、惑え。とはよく言ったもので、エロティックな描写で、人の心の暗い面を描いた上で行き着く結末に、どの短篇も心を惑わせてくる。短篇集だが続けて読むには精神的にきついものがあるが、読後には他の短篇も読みたいと思わせるくらいの傑作ばかり。装丁も内容もインパクトがあるが、短篇の中では『蟻の塔』『悪魔のような女』『蟻の声』が印象に残った。

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    2021年08月15日
  • フェイス・ゼロ

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    表題作の「フェイス・ゼロ」がすごく面白かった。
    本当に何の感情もない無表情って言われてみれば確かにない。
    そのほかの短編も面白かった、多ジャンルなお話を書くひとだなと思った。

    表紙がかっこよくて買ってみて良かった。

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    2021年07月20日
  • くらげ色の蜜月

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    妖艶にして凄絶な異色ミステリ短編集。どれもが倒錯したエロティックさを感じさせ、ぞくりとさせられます。どちらかといえばグロテスクでもあるのだけれど。美しさも感じさせられます。ただし、一気に読むと酔いそう。
    お気に入りは「ウルフなんか怖くない」。たぶん、現代だとこれはアンモラルだなんだって言われそうな気がします。ヒロインの浩子も不幸だというように受け取られそう。なのだけれど、実は収録された中でこの作品が最も愛情に満ちて幸せな物語なんじゃないかという気がしました。
    一番ぞくりとさせられたのは「悪魔のような女」。本当にこれは怖い。男性が読めばさらに恐ろしく感じられるかなあ……。
    短い作品だけれど「蝋人

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    2021年07月18日
  • フェイス・ゼロ

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    ネタバレ

    山田正紀氏の未刊行作品から、SF・ホラー系統の作品を集めた短編集。最近の作がほとんどだが、「冒険狂時代」だけテイストが昭和だなあと思ったら、執筆年度が飛び抜けて古い作品でした。
    全体の色合いとしてニューロティックな傾向が強く、ホラー傾向の作ではアイデンティティの不安が恐怖の源泉になっていたり、オチのところで、語り手のそれが揺らぐパターンが多い。表題作の「フェイス・ゼロ」なんかは、メインのフェイス・ゼロとは? のところでうまくまとめられなくて、そっちに逃げたんじゃないのかと言う気もしますが。

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    2021年06月26日
  • 大聖神

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    中村春吉秘境探検記「幻綺行」に続くシリーズ初の長編。素晴らしいのは、装丁の見事さ。パラフィンフィルムの破れ具合やしわのより方、新刊なのに古書に見える装丁の凝り具合に感動。SF用語を排しているのに、内容はSFであり、主人公の中村春吉のバンカラぶりが面白くて一気に読めた。併録の「自転車世界無賃旅行者 中村春吉」の内容は猛獣と素手で戦うとか色々と眉唾ものだが、歴史上の人物として謎が多くて魅力的なのは間違いない。

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    2021年05月05日
  • 静かな終末

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    収録作品数が多くバラエティにとんでいるのでお得感はあるが、落ち着かない読後感。
    その中で、表題作が素晴らしく光っている。次に収録されている「錆びた温室」とセットで読んで欲しい。

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    2021年04月11日
  • キスギショウジ氏の生活と意見

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    読み終わってから表紙を眺めるとジワジワ面白い。SF作家とひねくれた読者(SF読みにとってひねくれているという言葉は賛辞だと思います)との掛け合いめいた後書きが好きです。

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    2021年03月21日
  • くらげ色の蜜月

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    著者の小説は「大いなる幻影」と「猟人日記」しか読んだことがなかったが、代表作とは言えないこの短編集読んで改めてミステリ作家としての戸川昌子を見直した。
    面白い!昭和感漂う男女の関係をテーマとした官能ミステリとも呼ぶべき佳作揃い。
    もっと他の作品も読んでみたいのだが、ほとんどが現在古書でも入手が困難な状況。

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    2020年12月27日
  • 火葬国風景

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    ネタバレ

    決して文章が美しいわけでも構成が練られてるわけでもないのに、何故だか「すごい」と思ってしまった。
    作品ごとのムラは多いし筋書きは荒唐無稽なものがまぁまぁあるんだけど、そのばらつきがある種の「あやしさ」として魅力的に映る。

    『恐ろしき通夜』、最初は「毒でも盛ってんのかな?」って予想しながら読んでたけど、まさかの毒よりヤバいものだった。えっぐい。でもそういう話好き。

    『火葬国風景』の終わり方は打ち切り漫画レベルの唐突さなんだけど、そこが逆に想像をかき立てるというか。

    『十八時の音楽浴』いやこれ名作ですよ。お手本のようなディストピアSFの世界で繰り広げられる、今ならポリコレに配慮してこんなこと

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    2020年11月02日
  • 緋の堕胎 ──ミステリ短篇傑作選

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    濃すぎて読むのがとても疲れる。どの話も、ミステリを逸脱した思考実験的な試みを感じるけれど、著者が狙ってそうしてる感はなくて、なんていうかちょっと怖い。

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    2020年10月25日
  • くらげ色の蜜月

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    戸川昌子の短編集。60年代末から70年代初頭にかけて発表された作品が収められている。戸川昌子を読むのは初めてで、作家というよりたまにテレビで見かけたカミナリ様みたいなパーマをかけたおばさんというイメージが強い。収録作はどれも純粋なミステリとは言い難い内容。かといって奇想とか変格という感じでもない奇妙な作品。いずれも性をモチーフにしているが、抑圧されてたり、倒錯していたり、あるいは支配や暴力であったりと様々。古い作品だけど、時代感はあまり感じさせない。

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    2020年10月22日
  • 筒井康隆、自作を語る

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    2014年から2017年くらいにかけて行われた筒井康隆が自作について語るトークショーや対談集をまとめた一冊。筒井康隆の素晴らしい記憶力と、インタビュアーである編集者の博覧強記ぶりによって、どのように名作の数々が生まれたのかを知ることができるし、当然その誕生の背景も様々な面白おかしいエピソードに彩られている。

    個人的に一番面白かったのは2008年に発表された「ダンシング・ヴァニティ」の誕生秘話であった。本作は”差異と反復”という言葉そのものであるように、ストーリーが微妙に差異を孕みつつ繰り返す反復されて生きながら進んでいく。
    その背景には、新潮社に対して試しに原稿料を半額で良いと言ったら、先方

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    2020年08月15日
  • 堕地獄仏法/公共伏魔殿

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    書かれたのが、六十年代という半世紀前の作品群とは。現代にも通じるテーマ。政治と宗教の関係からVR,国営放送等、最近も社会を騒がせたモノが多く、いかに筒井康隆が社会を鋭く見ていたか分かる。

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    2020年07月29日
  • 堕地獄仏法/公共伏魔殿

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    おもしろかった。
    AIという言葉こそ使われないものの、発達しきった人工知能が人間の欺瞞をあばく話がいくつかあって(いじめないで、やぶれかぶれのオロ氏など)すなおに笑える。「時越半四郎」は、AIではないけど、やはり日本人の不可解な思考回路を笑いとばす話で最後にちょっとしんみり。しかし、これ、1966年初出だから50年以上前だけど、今も変わってないどころかいっそうひどくなってるんじゃない?

    「しゃっくり」はタイムループの話。このアイディアだけで長編も書けるのにね(北村薫の『ターン』とか)。最後に憑き物が落ちたようになる人々がおかしい。

    「慶安大変記」は、初出が高3コースだったという大胆さが笑え

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    2020年06月28日