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倫理もなく、理屈もない。奇妙な出来事が、ただそこにある――。
初々しい新婚夫婦。しかしふたりは、たがいに秘密を抱えていた。そして男はなぜ新婚旅行先に忌まわしい思い出が残る旅館を選んだのか。旧い結婚観が招いた悲哀劇(表題作)。
新発見の感染症の手がかりを追う保健所の職員は歪んだ虹色の世界を覗き見る(「蟻の塔」)。
アメリカで妊娠した修道女は、日本で病床にある教主とのあいだにできた御子だと主張するが……。果たして、彼女が語るのは奇蹟か幻想か(「聖女」)。
女の生涯には、常に蟻が這い回っていた(「蟻の声」)。
光に眩み、闇に溺れる。罪を犯して贖いて、果てに待つのはおぞましくも美しき混沌の世界。地獄極楽板一枚。ただひたすらに、酔え、惑え。
文庫初収録三篇を含む、江戸川乱歩賞作家円熟期の短篇集。
Posted by ブクログ 2020年10月03日
昭和だなあ、という感慨も抱けそうな、濃厚な短編集。戸川氏というと、『緋の堕胎』を絶賛した筒井康隆氏が、女流作家というはどうしてこんな怖い話が書けるんだろうと記したように、女性性を強調されることが多い気がする。今の目で見ると、そういうのは感心しない、というべきだろうが、それより、戸川氏の側があえて男性...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年02月20日
第8回江戸川乱歩賞を受賞した戸川昌子が68年から70年にかけて発表した短編14本を日下三蔵編集によりまとめた短編集です。ミステリーというジャンルに収まりきらない、エロやグロをふんだんに盛り込んだ作品ばかりが収録されています。読んでいても行き先が分からず濃霧の中をさまよっている感覚になります。どの作品...続きを読む
Posted by ブクログ 2021年08月15日
酔え、惑え。とはよく言ったもので、エロティックな描写で、人の心の暗い面を描いた上で行き着く結末に、どの短篇も心を惑わせてくる。短篇集だが続けて読むには精神的にきついものがあるが、読後には他の短篇も読みたいと思わせるくらいの傑作ばかり。装丁も内容もインパクトがあるが、短篇の中では『蟻の塔』『悪魔のよう...続きを読む
Posted by ブクログ 2021年07月18日
妖艶にして凄絶な異色ミステリ短編集。どれもが倒錯したエロティックさを感じさせ、ぞくりとさせられます。どちらかといえばグロテスクでもあるのだけれど。美しさも感じさせられます。ただし、一気に読むと酔いそう。
お気に入りは「ウルフなんか怖くない」。たぶん、現代だとこれはアンモラルだなんだって言われそうな気...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年12月27日
著者の小説は「大いなる幻影」と「猟人日記」しか読んだことがなかったが、代表作とは言えないこの短編集読んで改めてミステリ作家としての戸川昌子を見直した。
面白い!昭和感漂う男女の関係をテーマとした官能ミステリとも呼ぶべき佳作揃い。
もっと他の作品も読んでみたいのだが、ほとんどが現在古書でも入手が困難な...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年10月22日
戸川昌子の短編集。60年代末から70年代初頭にかけて発表された作品が収められている。戸川昌子を読むのは初めてで、作家というよりたまにテレビで見かけたカミナリ様みたいなパーマをかけたおばさんというイメージが強い。収録作はどれも純粋なミステリとは言い難い内容。かといって奇想とか変格という感じでもない奇妙...続きを読む
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