日下三蔵のレビュー一覧
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ネタバレ江戸川乱歩全短編盗団の隠した5万円の行方。「私」が手に入れた2銭銅貨に興味を持った松村武。2銭銅貨に隠された暗号。発見された盗賊団の5万円。松村のいたずら。
『心理試験』
明智小五郎シリーズ
大家の老婆の隠し持つ金を狙った藍屋。大家を殺害し大家の財布の金を半分盗み財布を拾ったと届け出た。翌日、大家殺害犯として逮捕された親友・斎藤。事件に疑問を持った判事・笠森の心理試験。心理試験の結果から犯人を推理する明智小五郎。
『恐ろしき錯誤』
対立する北川氏と野本氏。北川氏の妻・妙子の焼死事件。彼女が助かったにもかかわらず再び火の中に駆け込んでしまった秘密。彼女の耳元に囁いた謎の男の言葉の罠。妙子の持つペンダントにかくされた秘密。誰の写真?
『D坂の殺人事件』
明智小五郎シリーズ
D坂にある古本屋の主人の妻が殺害される。喫茶店からの目撃者、裏の目撃者からの証言で現場に出入りしたものがいない。妻の持つ全身の傷の秘密。ソバ屋の妻の身体の傷の秘密。
『火縄銃』
密室で射殺された被害者・林一郎。凶器は新式の銃があったにも関わらず火縄銃で殺害された被害者。容疑をかけられる弟・二郎。死体を発見した橘と私。橘の実験。撃ち抜かれた人形の謎。
『黒手組』
明智小五郎シリーズ
「黒手組」と名乗る犯行グループに誘拐された冨美子。身代金を支払ったにも関わらず解放されない登美子。受け渡しを担当した牧田の秘密。父親に禁じられた恋の謎。牧田の持つ手紙にかくされた暗号。
『夢遊病者の死』
夢遊病の為に勤め先を首になった彦太郎。なかなか就職が出来ずに伯爵家の小間使いとして働く親と二人暮らしを続ける。夢遊病を知らない父親との争い。ある朝、彦太郎が発見した父親の死体。夢遊病の果ての殺人と思い込み逃げ出す彦太郎。
『幽霊』
明智小五郎シリーズ
自分に恨みを持つ辻堂の死の知らせを聞いた平田。平田のもとに届けられた辻堂からの手紙。幽霊になり復讐を果たすと予告される。届けられた幽霊の写真。辻堂の戸籍で死亡を確認する平田。保養地に逃れた平田が出会った青年の推理。
『指環』
電車に乗り合わせた二人の男の会話。一人がうたがわれた指環の盗難。身体検査を受けるが出てこない指環。その前に食べていたミカンの皮を投げ捨てていた事に目をつけたもう一人の男。
『日記帳』
死んだ弟の日記帳にある雪枝と言う女性への手紙を読んだ兄。ただの見舞い葉書と思える内容に込められた暗号。失望した弟。
『接吻』
新婚の山名宗三。妻が写真にキスをしてるのを目撃し、相手は課長の村山だと疑いを持つ。妻の持つ写真を調べる山名。ある日村山と衝突し辞表を出した山名。妻の持つ写真の正体。
『モノグラム』
失業中の栗原が出会った田中という青年。お互いにどこかで会った記憶があるのだが。田中の姉・すみ子の持っていた懐中鏡の中の栗原の写真。
『算盤が恋を語る話
同僚S子の机の上に置かれる算盤に暗号を発見したT。算盤を使った恋の連絡。
『妻に失恋した男』
妻であるみや子に失恋した南田収一。自分の口のなかを撃ち抜いて自殺した収一の遺体。事件を調べる刑事が自殺直前に歯医者に行っていた事に気がつく。歯医者・栗田とみや子の関係。栗田が焼却処分した診察椅子。
『盗難』
新興宗教団体の主任のもとに送りつけられた金庫ないの金を盗むとの予告状。顔見知りの刑事に警護を依頼するが、刑事による強盗。事件後に刑事を発見した男。刑事が語る金庫の中の金の正体。
『断崖』 -
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鷹揚な「千駄ヶ谷の小父さん」が、意外な〝童心〟をのぞかせる「中村雅楽探偵全集」第4巻。77年から91年にかけて発表された28篇が収録されており、これで「中村雅楽」が登場する短編はすべて出尽くしたことになる。
事件は、劇場やその近辺に生じるいわゆる「日常の謎」がすべて。血なまぐさい殺人などいっさい起こらない。戸板康二の関心は、劇的な事件そのもよりも、歌舞伎役者ら劇を演ずる人間の心の内側のドラマに迫ることにあったのかもしれない。
この第4巻であたらしいのは、若き編集者「関寺真知子」がひんぱんに登場し、中村雅楽にさまざまな影響をあたえるところ。わずか3ページ強で、二人の役者が重ねてきた長い歳月を読者に感じさせる「銀ブラ」、失意の雅楽のために竹野がひと肌ぬぐ「おとむじり」など、これまで以上に地味ではあるが味わい深い小品が並ぶ。 -
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山風明治短編選集、最終巻は、明治ものを手がける以前の、たまたま(?)明治を扱った短編を集めたもの。
しかしここで扱われている作品は、図らずも「時代の大きな事件の影で、その人生を破滅へと向かわせることになった人々の物語」が集められているように感じた。そのため、読んでて実にキツいものが多かった。
それにしても、表題作の登場人物、向畑治三郎の本当どうしようもない人生の変遷を描き、最後に「この無類に好人物の、哀れな、罪のない男の幸福な晩年を祈りたい。」と表する、作者の度量の深さに驚嘆する。それとともに、その思いを裏切るかのようなラストの"史実"にもまたどうしようもない人間のありかたを思い知らされた。 -
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人間のよさ。戸板康二が描く「中村雅楽」という人物の魅力をひとことで言えば、そういうことになるのではないか。
鋭い観察力と洞察力とで身の回りに起こる「面白い」事件(「日常の謎」と言ってもいいが)を鮮やかに解決しながらも、そこにはいつも人間のあたたかい血の流れが感じられるのだ。それは、主人公「中村雅楽」が歌舞伎役者(しかも名門の出ではない)として人生の大部分を劇場で過ごしてきたことと無関係ではないだろう。役者はひとりでは生きられない。相方や脇役、裏方としてはたらくたくさんの人々、そして劇場に足を運ぶ観客がいてはじめて、舞台の上でスポットライトを浴びることができる。雅楽の、事件の当事者に対する慈愛にみちたまなざしはまた、そのように人は人を支え、人に支えられているという事実を彼がわきまえていることの証左であるだろう。
中村雅楽探偵全集の第3弾となるこの『目黒の狂女』では、これまで以上にそうした雅楽の「善さ」を感じさせる作品が多いような印象を受けた。このシリーズが発表年代順に収録したものであることからかんがえれば、そのような傾向にはこの時期(おもに昭和50年代)の作者の心境が映し出されているといえるかもしれない。この巻のおしまいに収められた『木戸御免』など、まさにそんな戸板流ヒューマニズムにあふれた佳作ではないだろうか。
そのむかし新劇が盛んだったころ、シェイクスピアの戯曲なども歌舞伎にならって見せ場だけを上演するようなことが行われていたらしい。雅楽の口を介してそんな大正期の演劇界の姿を知ることができるのもまた、このシリーズを読む愉しみのひとつである。 -
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歌舞伎役者「中村雅楽」が、不可解な事件の《なぞ》を解く人気シリーズ。老優・雅楽のたたずまいがとにもかくにも魅力的で、つい手に取ってしまう。
この第一巻に収められているのは、江戸川乱歩の後押しで世に出ることになった「車引殺人事件」をはじめ、初期に書かれた18の短編。なかには、第42回直木賞を受賞した表題作「團十郎切腹事件」も含まれる。これは、ナゾの自殺を遂げた八代目市川團十郎の有名な事件を、およそ百年後に「中村雅楽」がなぞ解きするというもの。若い時分に耳にした知人の昔話をきっかけに、次第に切れ味を増してゆく「雅楽」の推理に圧倒されるが、じつはこれ、ジョセフィン・テイの古典『時の娘』への秀逸なトリビュートとなっている。過去の歴史的事件のなぞ解きという構成はもちろんのこと、「雅楽」がその推理を披露するシチュエーションも、人間ドッグで入院中のベッドの上という凝りよう。
どうやら、戸板康二という作家は「無」からなにかをひねり出すよりも、実在するさまざまなものを巧みに組み合わせて新たな魅力的な存在を生み出す天才のようで、それはまた「中村雅楽」というキャラクターの造形にも活かされている。巻末に収められた自身による作品ノートによると、「雅楽」の名は中村歌右衛門と酒井雅楽頭を組み合わせたもの、老優の語り口などは親しくしていた歌舞伎界の古老・川尻清潭から、そのほかにも岡本綺堂『半七捕物帳』やエラリー・クイーンのミステリに登場する「ドルリー・レーン」などもヒントにしているとのこと。こんな具合にさまざまな影響を直接的間接的に受けながらも、「中村雅楽」がまったく独自の魅力的キャラクターとして生き生きしていることに感心せずにいられない。品格と威厳を兼ね備えた老人でありながら、無心で推理に没頭するその様子はなんとも無邪気で微笑ましい。 -
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内容(「BOOK」データベースより)
宇宙へ出た人類に襲いかかったもの、それがM・E。ひとつ前の宇宙の残滓であり、人間に悪意をもつ、小天体の姿をした存在。精神を食いちぎり人を異質なものに変える。これを破壊せんと連合はハンターを育成し宇宙へ送るが、戦いは絶望的だ。しかもハンターがM・Eの顎に倒れると、精神的に強く結ばれた恋人や肉親までもが変貌するのだ。日本SFの里程標的傑作を完全版で贈る。
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SFマガジン連載時からワクワクしながら読んでいて、1984年にハヤカワ文庫から出たときは夢中で「これは未完の大傑作だ!」と吹聴して回っていた。このたび書籍未収録だった2編を加え、創元SF文庫から[完全版]として復刊された。完全版とはいえ、本書はマインド・イーターと人類との戦いのごく一部の事象を描いただけで、書かれなかった物語の奥行の広さを感じずにはいられない。惜しいことに作者は1989年以降執筆をしていないようなので、[完全版]と標榜しつつも、やはりどうしても未完の大作という感覚がぬぐえない。
マインド・イーター。それは、ビッグバン以前の宇宙の残滓であり、人類に対する憎悪が結晶したものである。彗星と呼ばれる形態で人類に襲いかかり、接触したものを異質な存在に変化させ、被害者と強いつながりがある者の精神を食いちぎる。
マインド・イーターは岩石であり、結晶であり、音楽であり、原初の言語である。
30年近く前に読んだ本を再読したわけだが、自分で驚くほど細部を覚えていた。描かれるシーンや会話が魅力的だったせいだろう。一方、未来社会の描写(通信手段やコンピュータ、新聞、車等)が古めかしく見えてしまうのは、致し方ないところか。
飛浩隆が「日本SFが成し遂げた最高の達成」という惹句を書いているが、「日本SFが到達した“極北”のひとつ」という意味では賛意を表する。これほど絶望的な精神戦も、そうそうあるものではない。