日下三蔵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
角川ミステリーに収録されている「芋虫」が伏せ字が酷くて本書を購入。「芋虫」は良かったのは言うまでもないが、「人間椅子」「虫」など人間が無意識下に封印しているが確かに持っているであろう残虐性・異常性が描かれた作品がすばらしく、乱歩の虜になってしまった。なお、本書は全短編集であるがゆえに「悪霊」や「空気男」のような途中で取りやめになった作品も納められていて、ジャズのコンプリート版のようにある程度我慢して鑑賞しなければならい部分もある。
本書に納められている作品の中での一番のお気に入りは「人間椅子」。家具職人が椅子を改造して中に入り込み、座る部分に太もも、肘掛けに手、背もたれに胸といった具合でその -
Posted by ブクログ
ネタバレモナドの領域同様、こっちも御書印巡りのときに買ったやつだったはず。モナドよりだいぶ昔のはずだが。
こっちはSF短編集だった。小説の背景設定を見ると、だいぶ昔に書かれたものっぽくはあった。1964年から78年の作品。
・いじめないで
出力が穴開きテープというだいぶ古いタイプの人工知能と、世界崩壊後に唯一生き残った男性がやり広げるドタバタ喜劇というか。酒をかけられたり、部品を破壊されそうになり怯える機械と、どんどん酔っ払っていく男性。そして最後には全部埋もれて終わり。登場人物が二人というミニマルな話。
・しゃっくり
タイトルを見ただけでは内容が思い出せなかったが、交差点にいた主人公だけじゃなく -
Posted by ブクログ
昭和だなあ、という感慨も抱けそうな、濃厚な短編集。戸川氏というと、『緋の堕胎』を絶賛した筒井康隆氏が、女流作家というはどうしてこんな怖い話が書けるんだろうと記したように、女性性を強調されることが多い気がする。今の目で見ると、そういうのは感心しない、というべきだろうが、それより、戸川氏の側があえて男性が期待する「女流作家」を演じてたんではないかなという気もする。けれども『隕石の焔』みたいな話もある。これは好色譚の定番である「男日照りの村」の底を抜くような話だが、その抜き方が女にしか思いつかない、というより男はまず思いつかないような抜き方なのだな。面白い。