日下三蔵のレビュー一覧
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ネタバレ24編の幻想小説集。
特にのめり込んだのは『妖瞳』だった。東京で男色研究をしている主人公が、因果な運命を背負った青年を目の前に、心の内で言葉が止まらないシーン。「内心舌なめずりする」のが文章だけで手に取るように分かって身震いした。主人公との対話によって硬く閉ざされた扉が開かれ、覆い隠された青年の心が再びその柔らかさを取り戻すのが切なく美しかった。
纏足の少女をテーマにした『紅い鞋』や生きたくも死にたくもない女の話『青い扉』も印象的だった。淡々と身の上を語る主人公に共感した。静かだけれどたしかな意思が彼女たちの中に渦巻いている。 -
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戸板康二の短篇ミステリ作品集『團十郎切腹事件―中村雅楽探偵全集〈1〉』を読みました。
戸板康二の作品は、昨年12月に読んだアンソロジー作品『鉄ミス倶楽部 東海道新幹線50』に収録されていた『列車電話』以来なので1年振りですね。
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ミステリ史に燦然と輝く老歌舞伎役者・中村雅楽の名推理
第1巻は、第42回直木賞受賞作「團十郎切腹事件」など全18編
江戸川乱歩に見いだされた「車引殺人事件」にはじまる、老歌舞伎俳優・中村雅楽の推理譚。
美しい立女形の行方を突きとめる「立女形失踪事件」、8代目市川團十郎自刃の謎を読み解く、第42回直木賞受賞作「團十郎切腹 -
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山川氏は所謂純文学とエンタメの境界領域で活躍した作家さん。教科書に採用されたこともあって、代表作と目される「夏の葬列」も〝オチ〟の後に、主人公の独白が続くという、ショートショートとしては異形なもの。巻末の座談会にもあるようにショートショートに明快な定義なんてないのだけれど。とはいえ、望まない結婚を強いられそうになっている女性の屈折と飼い猫の死を重ね合わせた「猫の死と」や、発表媒体が三田文学だという「昼の花火」が、一般的なショートショートの概念を外れているのは間違いのないところ。他にもショートショートとしては歪さを感じさせる作が多い。むしろ、きちっとまとまっている方の作が、今の眼では古さを感じさ
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眉村卓は小松左京・筒井康隆・半村良・光瀬龍・星新一といった日本SF第一世代に所属している。これまで眉村作品は殆ど読んできたという自負がある中、本書「仕事ください」は読んだことがないと思っていたが、実はハヤカワ文庫JA「奇妙な妻」の収載作品とほぼ同じであることが後に判った。SFに感銘を受け、SFにのめり込んでいった時期に読んだにもかかわらず、その内容を殆ど覚えていないことに愕然とした。人間の記憶とはそんなものなのか、それとも単に私の問題なのかは言わないでおこう。
昨年の6月に刊行された「眉村卓の異世界通信」で著作リストが掲載されていたが、それよりも詳しい解説、作品の出典に関する情報が編者である -
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講談社文庫版のネーミングを踏襲するなら「第三怪奇小説集」となるのか。ストレートな実体験怪談である「恐怖の窓」なども混じってはいるが、ジャンル小説としての、ホラーや怪談に属する作品はほとんどない。文学よりと言えばいいか、あらすじなどを造ってみると分かるが、筋を追っても、お話のコアが少しも見えないようなものばかりである。だからといって、恐くないかと言えば、得体の知れないオチが付く「枯れた枝」などかなり恐い。一方、鬱屈や閉塞感が、まるで中年男性に固有の呪いであるかのような書きぶりには時代を感じる。個人的ベストは吉行淳之介を思わせる「何でもない話」。関係ないが、本作も含めて、最近よく見かける文豪ミステ
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・私は柴田錬三郎を知らない。いつもかういふことを書いてゐるのだが、実際に知らないのでかうとしか書けない。私は好き嫌ひが多い。 読む物も片寄つてゐる。作家も同様である。かつて私の眼中にシバレンはなかつた。ところが最近はいろいろな文庫が出る。海外の読みたいものがないので、今は昔の日本の作家でも読まうと思つた。さうしてたまたま買つたのが柴田錬三郎「第8監房」(ちくま文庫)であつた。本書所収の短編は昭和30年頃の作品である。同じ頃に例の「眠狂四郎」も始まつた。本書はそれとは全く違ふ作品集で、「昭和二十年代以前には、時代小説は数あるレパートリーのうちのひとつで、純文学から大衆小説、随筆、評論、少年少女向
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綺麗に伏線回収された「時の顔」。「御先祖様万歳」も同じ構造の話だけど、こちらはどうにも不穏な結末。マトリョーシカのように世界が続いていると思っていましたが、そうでなくて、時空が歪んでしまった結果の「物体O」。
「神への長い道」「継ぐのは誰か?」は、ともに人類が行き着く先を描いた小説だと思ったけれど、終着と出発の違いなのかなと思う。好きなのは「継ぐのは誰か?」の方です。
サスペンスとアドベンチャー、未知への警鐘。そして、未来への希望。希望というか可能性か。多くのエンタメ要素がぶち込まれていて、圧倒されるけども、読み進める速度が落ちないのは、引き込まれているから。
「お召し」は救いがなくて嫌だっ