日下三蔵のレビュー一覧

  • 怪奇小説集 恐怖の窓

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    講談社文庫版のネーミングを踏襲するなら「第三怪奇小説集」となるのか。ストレートな実体験怪談である「恐怖の窓」なども混じってはいるが、ジャンル小説としての、ホラーや怪談に属する作品はほとんどない。文学よりと言えばいいか、あらすじなどを造ってみると分かるが、筋を追っても、お話のコアが少しも見えないようなものばかりである。だからといって、恐くないかと言えば、得体の知れないオチが付く「枯れた枝」などかなり恐い。一方、鬱屈や閉塞感が、まるで中年男性に固有の呪いであるかのような書きぶりには時代を感じる。個人的ベストは吉行淳之介を思わせる「何でもない話」。関係ないが、本作も含めて、最近よく見かける文豪ミステ

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    2022年04月23日
  • 第8監房

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    ・私は柴田錬三郎を知らない。いつもかういふことを書いてゐるのだが、実際に知らないのでかうとしか書けない。私は好き嫌ひが多い。 読む物も片寄つてゐる。作家も同様である。かつて私の眼中にシバレンはなかつた。ところが最近はいろいろな文庫が出る。海外の読みたいものがないので、今は昔の日本の作家でも読まうと思つた。さうしてたまたま買つたのが柴田錬三郎「第8監房」(ちくま文庫)であつた。本書所収の短編は昭和30年頃の作品である。同じ頃に例の「眠狂四郎」も始まつた。本書はそれとは全く違ふ作品集で、「昭和二十年代以前には、時代小説は数あるレパートリーのうちのひとつで、純文学から大衆小説、随筆、評論、少年少女向

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    2022年04月03日
  • 静かな終末

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    どのお話もかなり短いので、電車の中や休憩中にサクッと読むことができます。コンパクトながら、ぎゅっと物語がつまっていて、こんなにも短いストーリーでゾッとさせたり、クスッとさせたりする著者のセンスに脱帽です。
    待ち時間や、試験勉強の合間の息抜きに最適です。

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    2022年03月19日
  • ビショップ氏殺人事件 曽野綾子ミステリ傑作選

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    純文学の作家と考えられることの多い曽野綾子氏のミステリ系の作品を集めた短編集。乱歩が賞賛したという「ビショップ氏殺人事件」は証言のわずかな矛盾から犯人を特定する、本格的なパズラー。ただこの系統はこれ一作で、他はやはり文学よりというか、推理よりも犯罪が暴き出す人間の心理や人生の断面に重点が置かれている印象が強い。そんな中ではライトなクライム・コメディといったような「競売」や、探偵趣味の持つ一種の疎ましさを描いたような「人生の定年」が印象的。

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    2022年01月09日
  • 日本SF傑作選2 小松左京 神への長い道/継ぐのは誰か?

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    綺麗に伏線回収された「時の顔」。「御先祖様万歳」も同じ構造の話だけど、こちらはどうにも不穏な結末。マトリョーシカのように世界が続いていると思っていましたが、そうでなくて、時空が歪んでしまった結果の「物体O」。
    「神への長い道」「継ぐのは誰か?」は、ともに人類が行き着く先を描いた小説だと思ったけれど、終着と出発の違いなのかなと思う。好きなのは「継ぐのは誰か?」の方です。
    サスペンスとアドベンチャー、未知への警鐘。そして、未来への希望。希望というか可能性か。多くのエンタメ要素がぶち込まれていて、圧倒されるけども、読み進める速度が落ちないのは、引き込まれているから。

    「お召し」は救いがなくて嫌だっ

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    2021年12月16日
  • 赤い猫 ──ミステリ短篇傑作選

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    少し読みにくさを感じたのは、ポップな装丁を裏切り、結構前の私が生まれた時代の文章だったからかな?
    作者の仁木さんはおそらく私の祖父母と同世代。
    旧仮名遣いとかの古さはないけれど、セリフの感じとか出てくる物に昭和を感じました(笑)
    第2部の「小さい矢」が一番好きだったかな?
    少し読みにくさもあったけど、なかなか面白かったです。

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    2021年12月13日
  • 夜のアポロン

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    濃密な狂気と性と死の臭いが漂う短編集。さすがの完成度だけど、一つ一つがすごい生々しい臭い(それを毎回品位を落とさず書ききるのはほんとうにすごい)を放っているのでお腹いっぱいになってしまった感じがする。
    「はっぴい・えんど」の高揚と墜落の間を行ったり来たりする、迸るエネルギーが読んでいて楽しかった。
    幻想的な「夜のリフレーン」のほうが好み。

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    2021年08月28日
  • フェイス・ゼロ

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    山田正紀の小説は初めて読んだが、想像していた以上に奇想繚乱だった。日本SF傑作シリーズというより異色短編傑作シリーズじゃないのかと思ってしまうくらい。印象的な短編は『メタロジカル・バーガー』と『魔神ガロン』。『メタロジカル・バーガー』は画一化は必ずしも悪くはないが、その行きつく先に薄ら恐ろしくなる。原作の『魔神ガロン』は不内容だが、読後にはこれから一体どうなってしまうんだという期待と共に終わるので、原作を読んでみたくなった。そして、竹書房のこのシリーズのデザインは相変わらずいつも攻めててカッコいい。

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    2021年08月23日
  • 大聖神

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    幻綺行に続く、中村春吉の長編冒険小説。一人称で書かれた文章は軽快。敢えてSF用語を排する事で冒険小説の雰囲気が溢れてくる。

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    2021年07月14日
  • フェイス・ゼロ

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    著者名買いしちゃう作家の一人なんだけど、
    これが好きって作品は特に無いのよね。
    でも買っちゃうし、読むの途中で止めちゃった事は無い不思議

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    2021年06月24日
  • 静かな終末

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     SFには手を出さずに来たのだが、竹書房文庫の日下三蔵編シリーズということで、関心を持った次第。
     日本SF第一世代の作家として名前は知っていたが、本作で初めて眉村作品を読んだ。

     核戦争の危険が現実化していた当時を感じさせるSF物よりも、ショートショートの方が好み。

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    2021年03月16日
  • 筒井康隆、自作を語る

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    ネタバレ

    日下三蔵氏との対談・インタビューで構成される。日下氏の知識がすごい。本人でさえ思い出せない短編のタイトルがぱっと出てくる。

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    2021年01月11日
  • 吸血鬼飼育法 完全版

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    推理ものではなくスパイもの。都筑道夫は洒脱なイメージがあったが、流石にレトロな感じは否めません。主人公の設定はやや中途半端と思いました。シリーズが短命に終わったのもうなずけます。シリーズ本編の原型になった短編2作が収録されておりマニア向けの資料的な一冊。

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    2020年11月24日
  • 吸血鬼飼育法 完全版

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    一匹狼のトラブルシューター片岡直次郎が活躍する活劇シリーズを集めたもの。片岡直次郎は歌舞伎の題材にもなった江戸時代の実在の悪党と同姓同名で作中でも毎回のように引き合いに出されるが、作品が発表された60年代末とは違い現在ではほとんど忘れ去られた存在であることに時代を感じる。
    内容は軽い感じの犯罪活劇といった感じで、割と出だしから思わぬ方向に話が進みがち。ちょっと主人公の片岡直次郎のキャラクターが薄く感じてしまうのは今読むからだろうか?

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    2020年09月27日
  • 吸血鬼飼育法 完全版

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    六〇年代東宝活劇映画のノリ。よく考えてみれば、都筑氏自身が脚本などで関わっているんだから当然なんだが。異常なまでにドライかつシニカルなスラップスティック・アクション・コメディ。流石に人を選ぶ気はするが、アイデアの乱れ打ちはお見事というしかない。

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    2020年09月15日
  • 紙の罠

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    紙幣づくりに使われる紙が大量に強奪された。
    これが意味するものをいち早く察知し動き出した近藤だが、ライバルの土方も同じく動き出していた。
    二人はある家の前で鉢合わせ。家の主人は坂本という老人で、彫金の名人である。

    というはじまり。
    軽やかに男や女が金を目当てに入り乱れて、誰が追って誰が追われているのやら、その間にもふざけた会話が飛び交って、まぁまぁの死人も出るというのにコミカルな仕上がり。ただし、書かれた1978年という時代を反映して風俗を表す言葉が古くてよくわからないのが難。映像で見るとちょっとしゃれた軽いノリがかっこよく表現されるのだろうなと思っていたら、どうやら映像化されている模様。

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    2020年02月24日
  • 法水麟太郎全短篇

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    危うく挫けそうになった一冊。知識不足もあり、名詞がわからなかったり時代背景も曖昧で、さらに少し独特な漢字の使い方がされていて難読でした。なんだか読むことに必死で内容が印象にのこらなかった。

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    2019年09月04日
  • 法水麟太郎全短篇

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    『黒死館殺人事件』を何回読みだしても必ず途中で挫折してしまうので、短編集なら読めるのじゃないかとトライした。読み終えた~。読み終えたけど内容はサッパリ分からなかった(笑)。
    探偵役の法水が天才すぎて謎を解明されても理解出来ない。そしておびただしい数のルビ。誰か、この著者の作品を現代語訳してくれないだろうか?(^-^)
    まあ、それもこれも私の理解力不足なだけで、じっくり吟味して読めれば多分傑作なのだろう。「聖アレキセイ寺院の惨劇」の動機には驚かされたし、取り敢えずこの奇書が読めて良かった。

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    2019年07月09日
  • 月下の蘭/殺人はちょっと面倒

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    『月下の蘭』、『殺人はちょっと面倒』の二冊の合本。歌舞伎などの古典芸能をテーマにしている短篇集な訳ですが、そのテーマ元を知ってても先の展開が読めてしまうという事はなく、どの作品も良い感じにツイストが効いてて面白かった。
    『殺人はちょっと面倒』の方がタイトルがステキねとは思っていたけれど、まさか作品のアレがそういう方向でか~なるほどー! と思う所があったので(あまりハッキリ書くと面白みがなくなるのでぼかしておきますが)、こういうのもアリだなぁと。堪能しました。

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    2019年07月04日
  • 夜のアポロン

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    「沼」、「致死量の夢」、「雪の下の殺意」が心ひかれました。女、だけじゃないけど、人が隠してたのに、持て余して、どうにもならなくなった感情が染み出てくる瞬間とか、壊れてく瞬間ってこんなんかなと、一般論として怖くもあり、納得してしまう自分に怖くもあり。装幀と表題がロマンチックです。

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    2019年09月01日