日下三蔵のレビュー一覧
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『黒死館殺人事件』で有名な名探偵・法水麟太郎。法水麟太郎物の短編を発表順にすべて集めた短編集。
衒学趣味ってどういう事なのかいまいちつかみ切れていなかったのですが、この本を読んで何となく理解できた気がします。
他の方々も書いている通り内容は難解ですし、トリックや動機もそんな事ある? と驚くものばかり。「そうはならんやろ」「なっとるやろがい」という懐かしのネットミームが頭をよぎりました。
とはいえ、お寺や礼拝堂、劇団などを舞台にした様々な事件の数々は神秘的でとても心惹かれます。詩的な幻想怪奇の世界に溺れるような雰囲気を楽しむくらいでも良いのかも。
メインとなるトリックや動機の中に、病気や障害、精神疾患や信仰などのセンシティブな要素を大胆に組み込んでいる所は現代の小説などではほぼ無くなっている事だと思うので、そういった部分は時代を感じて興味深いです。
1つ困ったのが、事件の見取り図について。細かな図面に手書き(手書き風?)の雰囲気ある説明が書いてあるのですが、細かすぎる上画数の多い漢字+雰囲気ありすぎる独特な文字のせいで字が潰れてしまい読み取れない箇所があります。
せっかくの素敵な図なので、もう少し大きく載せて欲しかったです。
ちなみに、一番最初の事件が一番難解で、徐々に読みやすくなっていくので、いっそもう逆順に読むのもアリではないかなと個人的には思いました。 -
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横田順彌が無類の古書マニアというのは知らなかった。昭和のハチャメチャ・パロディSF作家というイメージしかなかったので。
横田順彌が平成になってから文芸誌に掲載していた古書ミステリ系の連作短編を、横田順彌の没後、日下三蔵が纏めて書籍化したのが本書。
作家志望のフリーライターの青年と、脱サラして街の古本屋の店主、その娘による、古書にまつわる不思議な出来事は、SF、ホラー、ミステリ、パロディ等色んな要素を盛り込んだ内容でいわゆる横順ワールド満載な作品。
時代設定もタイトルにも平成となってはいるが、キャラクターの思考も会話も、昭和の建てつけ。今読むと昭和レトロを彷彿させる。しかし古書業界や古書店の営業スタイルはネット通販やリユースショップ等の販路の拡大はあるものの、根本的には令和の今でも変わっていないと感じてしまうのがある意味面白い。 -
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昭和中期に書かれた眉村卓さんのSF・ホラー短編作品集。日下三蔵編。
2部構成で、Ⅰ部はショートショート22編を、Ⅱ部は短編3作を収録している。
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個人的には Ⅰ 部の方がおもしろかったように思います。特に気に入ったのは、「奇妙な妻」「人類が大変」「できすぎた子」ですが、表題作「仕事ください」も悪くないし、その他も概ねまずまずだったと思います。
けれど Ⅱ 部の作品は首を傾げざるを得ないように感じました。 Ⅰ 部の各作品よりもページ数を割いているのにも関わらず、端折りすぎの感があったからです。まるでダイジェストみたいに説明中心で話を進めているため、こちらもストーリーを追うだけになってしまいました。
眉村さんといえば当時は SF の名手だったように思いますが、やはり ( 科学的な部分の描写は除いても ) 古さを感じるのは仕方ないことなのでしょうか。少し淋しく感じました。 -
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ネタバレ24編の幻想小説集。
特にのめり込んだのは『妖瞳』だった。東京で男色研究をしている主人公が、因果な運命を背負った青年を目の前に、心の内で言葉が止まらないシーン。「内心舌なめずりする」のが文章だけで手に取るように分かって身震いした。主人公との対話によって硬く閉ざされた扉が開かれ、覆い隠された青年の心が再びその柔らかさを取り戻すのが切なく美しかった。
纏足の少女をテーマにした『紅い鞋』や生きたくも死にたくもない女の話『青い扉』も印象的だった。淡々と身の上を語る主人公に共感した。静かだけれどたしかな意思が彼女たちの中に渦巻いている。 -
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戸板康二の短篇ミステリ作品集『團十郎切腹事件―中村雅楽探偵全集〈1〉』を読みました。
戸板康二の作品は、昨年12月に読んだアンソロジー作品『鉄ミス倶楽部 東海道新幹線50』に収録されていた『列車電話』以来なので1年振りですね。
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ミステリ史に燦然と輝く老歌舞伎役者・中村雅楽の名推理
第1巻は、第42回直木賞受賞作「團十郎切腹事件」など全18編
江戸川乱歩に見いだされた「車引殺人事件」にはじまる、老歌舞伎俳優・中村雅楽の推理譚。
美しい立女形の行方を突きとめる「立女形失踪事件」、8代目市川團十郎自刃の謎を読み解く、第42回直木賞受賞作「團十郎切腹事件」など全18編。
旧〈宝石〉誌掲載時の各編解説をはじめ豊富な資料も併録。
ミステリ史に燦然と輝く名推理の数々を完全収録した、《中村雅楽探偵全集》堂々開幕!
資料再録等=江戸川乱歩・戸板康二・小泉喜美子/解説=新保博久/編者解説=日下三蔵
*第9位『本の雑誌増刊・おすすめ文庫王国2007年度版』ジャンル別ベスト10・国内ミステリー(吉野仁氏選)
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架空の歌舞伎役者・高松屋こと中村雅楽が探偵役で、彼の楽屋を訪ねてくる演劇記者の竹野とともに身近に起こった事件や謎を推理し、解決するシリーズ・中村雅楽探偵譚のうち、1958年(昭和33年)から1960年(昭和35年)に発表された作品18篇に加え、雑誌掲載時の各編解説をはじめ豊富な資料が収録されています。
■車引殺人事件
■尊像粉失事件
■立女形失踪事件
■等々力座殺人事件
■松王丸変死事件
■盲女殺人事件
■ノラ失踪事件
■團十郎切腹事件
■六スタ殺人事件
■不当な解雇
■奈落殺人事件
■八重歯の女
■死んでもCM
■ほくろの男
■ある絵解き
■滝に誘う女
■加納座実説
■文士劇と蝿の話
■河出書房新社版『車引殺人事件』 序=江戸川乱歩
■旧「宝石」所収各編解説=江戸川乱歩
■立風書房版『團十郎切腹事件』 作品ノート=戸板康二
■立風書房版『奈落殺人事件』 作品ノート=戸板康二
■講談社文庫版『團十郎切腹事件』 後記=戸板康二
■創元推理文庫版編者解題=日下三蔵
650ページを超えるボリューム… ノスタルジックな昭和の懐かしい雰囲気を感じながら、大好きな古典的なミステリの雰囲気に浸りながら愉しみました。
イチバン印象に残ったのは、表題作で第42回直木賞受賞作でもある『團十郎切腹事件』ですねー 江戸時代に起きた8代目市川團十郎が旅先の大阪で自刃した謎を、人間ドックのベッド上で見事に解くという、絵に描いたようなベッド・ディクティブ物でした… 西へ向かう嵐瑠璃五郎と市川團十郎が、合流予定の三島で会えないところがポイントでしたね。
あとは、美しい立女形失踪の謎を解く『立女形失踪事件』、地方に昔からある劇場の持主の家で起きた殺人事件を解決する『等々力座殺人事件』が印象に残ったかな… コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ・シリーズや岡本綺堂の半七捕物帳シリーズに近い感じの佳作が並んでいましたね。 -
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山川氏は所謂純文学とエンタメの境界領域で活躍した作家さん。教科書に採用されたこともあって、代表作と目される「夏の葬列」も〝オチ〟の後に、主人公の独白が続くという、ショートショートとしては異形なもの。巻末の座談会にもあるようにショートショートに明快な定義なんてないのだけれど。とはいえ、望まない結婚を強いられそうになっている女性の屈折と飼い猫の死を重ね合わせた「猫の死と」や、発表媒体が三田文学だという「昼の花火」が、一般的なショートショートの概念を外れているのは間違いのないところ。他にもショートショートとしては歪さを感じさせる作が多い。むしろ、きちっとまとまっている方の作が、今の眼では古さを感じさせもするので、その辺りが読みどころかも知れない。
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眉村卓は小松左京・筒井康隆・半村良・光瀬龍・星新一といった日本SF第一世代に所属している。これまで眉村作品は殆ど読んできたという自負がある中、本書「仕事ください」は読んだことがないと思っていたが、実はハヤカワ文庫JA「奇妙な妻」の収載作品とほぼ同じであることが後に判った。SFに感銘を受け、SFにのめり込んでいった時期に読んだにもかかわらず、その内容を殆ど覚えていないことに愕然とした。人間の記憶とはそんなものなのか、それとも単に私の問題なのかは言わないでおこう。
昨年の6月に刊行された「眉村卓の異世界通信」で著作リストが掲載されていたが、それよりも詳しい解説、作品の出典に関する情報が編者である日下三蔵によって纏められている。昨年の10月には、ハヤカワ文庫JA1500番到達記念復刊フェアで「司政官」が刊行され、久々に眉村卓の新刊らしきもの(5刷)を手にして、初版を手にした当時(1975年)の頃を懐かしく思い返した。
そして、各作品を読んでみたが、初めて読んだ頃の感動は得られなかった。それは時代が違うのだからしょうがない。世の中が変化している、私も変化しているのだ。しかし、日本SF第一世代の作品は現在のSF作家に直接・間接問わず影響を与えているのは間違いなく、第一世代の精神は形を変えつつ引き継がれている。