日下三蔵のレビュー一覧
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法水麟太郎モノの短編を発表順に収録(残りの長編2編、黒死館と二十世紀鉄仮面は既刊アリ)。
年代順に並べて読んでいくとやはり後半の作品になるに従って描写が読みやすくはなっていってるなぁという印象。(当時流行の秘境冒険モノテイストも入ってきて大衆小説色も強くなってくるからかもしれませんが)
しかしそれにしても、ページを繰る度に迸る法水の衒学趣味には翻弄されるし、肝心の事件のトリック部分は頭の中に「???」が飛び交ってしまうのですが(笑)、だがそこが良い。その翻弄される感覚含めての虫太郎テイストなので、存分に堪能いたしました。
後光殺人事件、聖アレキセイ寺院の惨劇、夢殿殺人事件、失楽園殺人事件、オ -
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ミステリ好きかつ歌舞伎好きだと3倍ぐらい面白い、雅楽全集。探偵役の雅楽はじめ、架空の歌舞伎役者を創作されてますが、このモデルはあの役者かなーと妄想する面白さ、毎回出てくる歌舞伎の演目の解説や小ネタ、役者心得のような蘊蓄、そして推理小説の短編のお手本のように鮮やかに展開される謎解き。これで3倍。戸板さんのこの作品は、ドロドロしたところがないのでどれもサラリと読ませますが、かといって物足りない訳でもなく、本当に「鮮やか」としか言いようのない完成度。収録された18篇どれも面白いです。
(それと、毎度の事ですが巽さんの解説は素晴らしいですね……。日常の謎と絡めてきてますが、今の時代だと、お仕事ミステリ -
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歌舞伎評論で有名な戸板康二氏が推理小説を書いていたとは全然知らなかった。しかも直木賞受賞(1959年)作。
歌舞伎役者の中村雅楽が探偵役となって事件を推理・解決していくのだが、事件の舞台が劇場であったり、芝居や番組の構成を利用して事件が起こされたりし、芝居好きには楽しめる内容になっている。
佐藤賢一や東野圭吾の作品を読んだ時にも感じたことだが、得意分野・専門分野のある人が書いた話は土台や端々の設定がしっかりしていて面白いな~と思う。
今読むと、随所に時代を感じる描写が出てくるのも面白い。例えば、犯行現場に残されたボタンから「犯人はシャツのボタンを付け替えたかも」という推理になるのだが、「自 -
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ネタバレ『湖畔亭事件』
療養のために湖畔亭にやってきた「私」。昔からレンズにとりつかれ他人の行動を覗き見る事を趣味としてきた。脱衣場に仕掛けを施し様々な人々を観察していたが、ある夜女が何者かに殺害される場面を目撃する。同じく湖畔亭に宿泊する河野と現場で血痕を発見する。事件当夜から失踪した芸者・長吉。風呂炊きの三造。早朝慌ただしく消えたトランクをもった二人組の客。長吉と河野の関係。
『鬼』
N市からS村へ歩いて帰ってきた大宅と出会った殿村。二人が発見した野犬に食われた顔の潰された遺体。着物から大宅の婚約者・鶴子であると判明する。鶴子との婚約が不満でN市に雪子という恋人のいる大宅。事件当夜のアリバイは雪 -
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30年前の作品。画期的。つぎはぎだし、破綻プロットも多いけれど、シューベルトの未完成ってな感動があるね。連作によるマインド・イーターという架空の存在に対する人類の位置づけを描いている。
「野生の夢」は読みやすいが、あまりインパクトがない。「サック・フル・オブ・ドリームス」は音楽が生命の証であるという印象が新鮮。「夢の浅瀬」ではあまりに強烈なエンディングが続く作品の影を薄くしてしまう。
「おまえのしるし」で一気にマインド・イーターとはってなところに進むが、「緑の記憶」では植物を題材にして新しい局面にトライするものの消化不良に終わり、「憎悪の谷」では新しい試みがあるが不発。「リトル・ジニー