日下三蔵のレビュー一覧

  • 夜のアポロン

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    単行本未収録の16編の短編集で、『夜のリフレイン』と対をなす。
    なので初出は1976年〜1996年の「小説宝石」をはじめとする諸誌。

    年代順に並べられているが、嫉妬からサーカスのオートバイ乗りと一緒に事故死で心中しようとする表題作が一番鮮烈。前半は嫉妬がテーマになっている作品が多い。
    少女ための私立更生施設の寮監からみた収容生の話「魔笛」は、不条理と憎しみをもっと深めて長編になりそうな物語。
    終わりに近づくにつれミステリーの傾向が強まっていくが、皆川博子はミステリーより不条理、不可思議の物語が好き。

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    2019年06月03日
  • 法水麟太郎全短篇

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    法水麟太郎モノの短編を発表順に収録(残りの長編2編、黒死館と二十世紀鉄仮面は既刊アリ)。
    年代順に並べて読んでいくとやはり後半の作品になるに従って描写が読みやすくはなっていってるなぁという印象。(当時流行の秘境冒険モノテイストも入ってきて大衆小説色も強くなってくるからかもしれませんが)
    しかしそれにしても、ページを繰る度に迸る法水の衒学趣味には翻弄されるし、肝心の事件のトリック部分は頭の中に「???」が飛び交ってしまうのですが(笑)、だがそこが良い。その翻弄される感覚含めての虫太郎テイストなので、存分に堪能いたしました。

    後光殺人事件、聖アレキセイ寺院の惨劇、夢殿殺人事件、失楽園殺人事件、オ

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    2019年05月16日
  • グリーン車の子供

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    自分が読み慣れてきたせいか、作者が上手になったせいかはわかりませんが、第 1 集と比べるとずいぶんと読みやすくなっている気がします。
    キャラクターになじんできたのも理由かもしれません。
    話のネタは途中まで読めばわかってしまうけれど、表題作とか、「美少年の死」とかは、いかにも歌舞伎が舞台らしくて良かったですね。

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    2018年11月12日
  • 團十郎切腹事件

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    だんだん書き慣れていくのがわかるというか、後半の方がずっと読みやすくなってきますね。
    歌舞伎や芸能を背景とした推理短編集です。
    付録もずいぶんと多く入っており、資料的価値も高いのではないかと。
    「ある絵解き」と「文士劇とは絵の話」が面白かったかな。

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    2018年11月12日
  • 赤い猫 ──ミステリ短篇傑作選

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    推協賞受賞の短編集「赤い猫」に3篇を追加した傑作短編集。さすが仁木悦子の作品。サラッと読ませて粒ぞろいの作品達。どれも優劣付けがたい面白さでした。(仁木作品の代表シリーズキャラクターが色々入ってるのも楽しいですね)殺人事件や傷害事件など基本的には犯罪のお話なんだけど、常に出てくる子供達には優しい視線が注がれてるのも良いです。

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    2018年11月05日
  • グリーン車の子供

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    ミステリ好きかつ歌舞伎好きだと3倍ぐらい面白い、雅楽全集。探偵役の雅楽はじめ、架空の歌舞伎役者を創作されてますが、このモデルはあの役者かなーと妄想する面白さ、毎回出てくる歌舞伎の演目の解説や小ネタ、役者心得のような蘊蓄、そして推理小説の短編のお手本のように鮮やかに展開される謎解き。これで3倍。戸板さんのこの作品は、ドロドロしたところがないのでどれもサラリと読ませますが、かといって物足りない訳でもなく、本当に「鮮やか」としか言いようのない完成度。収録された18篇どれも面白いです。
    (それと、毎度の事ですが巽さんの解説は素晴らしいですね……。日常の謎と絡めてきてますが、今の時代だと、お仕事ミステリ

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    2018年07月09日
  • 城昌幸集 みすてりい ―怪奇探偵小説傑作選4

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    うーん、ちょっと古い感じは否めない。文体とか、むしろこの古さが功を奏している場合もあるんだけど、全体としては「??」で終わる小説がいくつか。もちろん、いいのもいくつかあったんだけど、のめりこむことはできなかったなあ。

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    2018年06月23日
  • 赤い猫 ──ミステリ短篇傑作選

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    日本推理作家協会賞を受賞した表題作を含む短編傑作選。
    日下三蔵氏がセレクトしただけあって、収録作全て面白かった。表題作がやはり頭一つ抜き出ていたが、伏線が丁寧に張られ、殺人を扱っていても殺伐したムードにならない短編ばかりだった。現在、ホンワカしたミステリを書く女流作家が何人かいるけど、そのルーツが仁木さんなのかも知れないな。

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    2018年06月14日
  • 夜の終る時/熱い死角 ──警察小説傑作選

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    実直な刑事の徳持が捜査に出たきり行方不明になった。捜査係は総力をあげて事件の解決に乗りだすが、彼とやくざについての噂が同僚のあいだに疑念を呼び起こす。そんな中、徳持はホテルで扼殺死体となって見つかる(『夜の終る時』)。二部構成の鮮やかさと乾いた筆致で描かれる警察組織の歪みのリアルさは今なお色あせない。日本推理作家協会賞を受賞した警察小説の金字塔に4作の傑作短篇を増補。

    「裏切りの明日」は読んだような気がするが、こちらは初めてだと思う。長編ももちろんいいが、短編がいずれも切れ味があり、読ませる。

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    2018年04月30日
  • 團十郎切腹事件

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    歌舞伎評論で有名な戸板康二氏が推理小説を書いていたとは全然知らなかった。しかも直木賞受賞(1959年)作。

    歌舞伎役者の中村雅楽が探偵役となって事件を推理・解決していくのだが、事件の舞台が劇場であったり、芝居や番組の構成を利用して事件が起こされたりし、芝居好きには楽しめる内容になっている。
    佐藤賢一や東野圭吾の作品を読んだ時にも感じたことだが、得意分野・専門分野のある人が書いた話は土台や端々の設定がしっかりしていて面白いな~と思う。

    今読むと、随所に時代を感じる描写が出てくるのも面白い。例えば、犯行現場に残されたボタンから「犯人はシャツのボタンを付け替えたかも」という推理になるのだが、「自

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    2017年09月01日
  • 深夜の市長

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    昼と夜でガラリと雰囲気を変えるT市が舞台。僕こと浅間が「深夜の市長」と呼ばれる怪人物に出会い、謎の事件に巻き込まれていく。この物語、随所の発想が素晴らしいですね。科学者が住んでる高塔とかね。
    文庫後半は、いままで未収録作などの短編10作。ニヤリとさせるショート・ショートの宝庫で、こちらも読んでて楽しい。タバコの話とか好きだなぁ。

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    2016年12月01日
  • 蠅男

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    『蠅男』作品の構図は怪人vs名探偵なので、いわゆる明智と二十面相のアレと似てる感じなんだけど、SF畑も範疇の海野十三ならではの展開で面白いですね。
    『暗号数字』『千早館の迷路』、短めのショートショート風味の『街の探偵』『断層顔』とどれも楽しめました。今読むとレトロなSFチックなところ、それが良い。

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    2016年10月10日
  • 火葬国風景

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    『十八時の音楽浴』がお気に入り。ラストの展開に圧倒。美しい。タイトルになった『火葬国風景』はアノ超展開に思わず声が出た。もっと続きが……(笑)
    本書は『貘鸚』よりSF色が強いのでそちら方面のジャンルが好きな方にも読んで貰いたい作品集ですね。

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    2016年01月27日
  • 江戸川乱歩全短篇(1)――本格推理(1)

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    初めて江戸川乱歩を読んだ。江戸川乱歩というとほとんど怪人20面相のイメージしかなかったので違う面を知りたいと思い読んだ。
    短編集で読みやすく、構成も最後のどんでん返しが練られていて面白かった。
    特に心理試験が最近読んだ罪と罰をベースにしており、それを思い出しながら読めたのが良かった。

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    2015年12月21日
  • 獏鸚

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    探偵、帆村荘六モノのミステリー短編集。ああやはり戦前のミステリの持つこの独特の空気感がイイですねぇ。
    アンソロなどで単発でしか海野作品を読んでこなかったので、こうしてまとまったのが手に入るのがありがたい。当時の最先端の『科学』と(麻雀やらトーキーやら)モダンな『風俗』が絡んでどの作品も甲乙つけがたく魅力的でした。
    帆村の飄々としたところが『探偵』らしくてとても好みw
    来月出る2冊目も楽しみですね。

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    2015年08月05日
  • 江戸川乱歩全短篇(2)――本格推理(2)

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    ネタバレ

    『湖畔亭事件』
    療養のために湖畔亭にやってきた「私」。昔からレンズにとりつかれ他人の行動を覗き見る事を趣味としてきた。脱衣場に仕掛けを施し様々な人々を観察していたが、ある夜女が何者かに殺害される場面を目撃する。同じく湖畔亭に宿泊する河野と現場で血痕を発見する。事件当夜から失踪した芸者・長吉。風呂炊きの三造。早朝慌ただしく消えたトランクをもった二人組の客。長吉と河野の関係。

    『鬼』
    N市からS村へ歩いて帰ってきた大宅と出会った殿村。二人が発見した野犬に食われた顔の潰された遺体。着物から大宅の婚約者・鶴子であると判明する。鶴子との婚約が不満でN市に雪子という恋人のいる大宅。事件当夜のアリバイは雪

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    2015年03月06日
  • 明治かげろう俥 時代短篇選集3

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    忍法帖シリーズ以前の初期時代小説が中心。

    「首」 井伊直弼の討ち取られた首をめぐる話。ラストの皮肉がきいている。

    「明治忠臣蔵」 思わぬところで思わぬ作家が登場。

    「天衣無縫」 題名からは想像できない、ちょっとバカバカしいような話。

    「絞首刑第一番」 哀しいすれ違い。

    「明治かげろう俥」 中篇。金は天下の回り物?

    「三剣鬼」 幕末三大"人斬り"が登場。

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    2013年09月12日
  • 目黒の狂女

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    歌舞伎や舞台、テレビなどの仕事を背景とする日常の謎系の短編集。
    いよいよ、三巻目にして、事件というより謎という方が似合ってくる話がほとんどとなりました。
    ぶっちゃけ、日常の謎って読んでいてほっとしますよね。(^^
    色恋の話が割と多かったのも読んでいて楽しかった理由かも。
    珍しく、歴史推理も入っています。ま、成功しているかどうかは判断に悩むところですが。(^^;

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    2013年02月02日
  • マインド・イーター[完全版]

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    久々に、ずっしりと重厚感のあるSFを堪能。

    R-TYPEのバイドを彷彿とさせるような(時間順序的には逆)
    宇宙からの異物「マインド・イーター」との邂逅を通して描かれる、
    人とは何か、我々はどこから来てどこへゆくのか。
    人は涙を流すことをやめた時に人でなくなるのか?
    とかそんな感じ。

    ある意味で、SFとして不滅のテーマ。
    物語というよりは作者の叫びや足掻きに近く、その意味で個人的には
    フィリップ・K・ディックを想起する。。。あちらのねっとり感に比べると、
    多分にソリッド感が強いですが。

    なお、小松左京「ゴルディアスの結び目」必読の模様。

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    2012年10月09日
  • マインド・イーター[完全版]

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    30年前の作品。画期的。つぎはぎだし、破綻プロットも多いけれど、シューベルトの未完成ってな感動があるね。連作によるマインド・イーターという架空の存在に対する人類の位置づけを描いている。

     「野生の夢」は読みやすいが、あまりインパクトがない。「サック・フル・オブ・ドリームス」は音楽が生命の証であるという印象が新鮮。「夢の浅瀬」ではあまりに強烈なエンディングが続く作品の影を薄くしてしまう。

     「おまえのしるし」で一気にマインド・イーターとはってなところに進むが、「緑の記憶」では植物を題材にして新しい局面にトライするものの消化不良に終わり、「憎悪の谷」では新しい試みがあるが不発。「リトル・ジニー

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    2012年06月21日