日下三蔵のレビュー一覧
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ネタバレ『湖畔亭事件』
療養のために湖畔亭にやってきた「私」。昔からレンズにとりつかれ他人の行動を覗き見る事を趣味としてきた。脱衣場に仕掛けを施し様々な人々を観察していたが、ある夜女が何者かに殺害される場面を目撃する。同じく湖畔亭に宿泊する河野と現場で血痕を発見する。事件当夜から失踪した芸者・長吉。風呂炊きの三造。早朝慌ただしく消えたトランクをもった二人組の客。長吉と河野の関係。
『鬼』
N市からS村へ歩いて帰ってきた大宅と出会った殿村。二人が発見した野犬に食われた顔の潰された遺体。着物から大宅の婚約者・鶴子であると判明する。鶴子との婚約が不満でN市に雪子という恋人のいる大宅。事件当夜のアリバイは雪子と過ごしたと言うものだが、否定する雪子。殿村が雪子を訪ねた直後に部屋から消えた雪子。雪子の部屋の下を通る線路。事件の前に現場付近に捨てられていたナイフの刺さった藁人形と事件の関連。
『屋根裏の散歩者』
犯罪に興味を持つ郷田三郎。新しく出来た東栄館に引っ越し寝床を押し入れにする郷田。押し入れから屋根裏に行けることに気がつき屋根裏を散歩する事を楽しむようになる。嫌いな隣人の医学生・遠藤が口を開けて寝ているのを盗み見て遠藤の殺害を計画する。屋根裏から垂らされる毒。自殺として処理されるが明智小五郎が被害者の目覚まし時計がセットされていることから自殺に疑問を持つ。タバコを吸わなくなった郷田の秘密。
『何者』
友人・結城の屋敷にやってきた松村と甲田。ある夜、小説を書きに一人はなれに向かった結城がが何者かに銃撃される。盗まれた金製品。事件直後に何かを隠した常爺。窓から古井戸に向かってつけられた足跡。結城家の客・赤井の捜査。入院中の結城の推理。警察が逮捕した金を集める琴野。犯人が内部の人間とする結城の推理。逮捕される甲田。退院した結城に推理を披露する赤井。
『月と手袋』
金貸しをしている股野の妻あけみと関係をもっているシナリオライターの北野克彦。股野からあけみと会うことを禁じられ危害を加えれそうになり反撃した弾みに股野を殺害してしまう。あけみに股野の変装をさせアリバイを作る克彦。事件を担当する花田警部が明智小五郎に相談しながら捜査する。次第に親しくなる克彦と花田警部。花田警部が披露した手品に動揺するあけみ。ジワジワせめる花田警部の攻撃に神経をすり減らした二人の落ちた罠。
『堀越捜査一課長殿』
警視庁捜査一課長堀越の元に届けられた手紙。渋谷警察署長時代に起きた東和銀行盗難事件の真相が語られる内容。銀行から輸送車に運ばれる途中に奪われた現金。犯人の大江が逃げ込んだ自宅アパート。消えた大江。大江の隣人で手紙の差出人・北園荘助。警察による捜査は北園の部屋のテレビの箱を調べるまで慎重に行われたが迷宮入り。大江の恋人でバーの女給・弓子と結婚した北園。死を目前にした北園の告白。
『陰獣』
会社重役の小山田氏の妻・静子と知り合い文通するようになった推理作家・寒川。静子がかつて婚約していた平田一郎が大江春泥と言う推理作家になり、彼女を脅迫していると静子から相談を受ける寒川。大江春泥を知る本田に話を聞く寒川。小山田の屋敷に侵入したと思われる大江春泥。天井裏に落ちていた手袋のボタン。大江が公園で道化者の格好をしてビラ配りをしているのを目撃した本田。殺害された小山田。接近する寒川と静子。小山田家の運転手の手袋のとれていたボタン。手袋は小山田氏からもらった物だった。小山田氏が春泥をかたり静子を脅したと推理する寒川。運転手が手袋を貰った日付。 -
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30年前の作品。画期的。つぎはぎだし、破綻プロットも多いけれど、シューベルトの未完成ってな感動があるね。連作によるマインド・イーターという架空の存在に対する人類の位置づけを描いている。
「野生の夢」は読みやすいが、あまりインパクトがない。「サック・フル・オブ・ドリームス」は音楽が生命の証であるという印象が新鮮。「夢の浅瀬」ではあまりに強烈なエンディングが続く作品の影を薄くしてしまう。
「おまえのしるし」で一気にマインド・イーターとはってなところに進むが、「緑の記憶」では植物を題材にして新しい局面にトライするものの消化不良に終わり、「憎悪の谷」では新しい試みがあるが不発。「リトル・ジニー」に飽きた頃、エンディングの「迷宮」でひとつの結論に至る。
マインド・イーターとはなにかは関係ない。人類が先か宇宙が先か。知性か生命かってなところが掘り下げられるのだが、とにかく未完である。惜しい。 -
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ネタバレ年末年始の暇な時期に何か小説でも読もうとおもって池袋のジュンク堂にて購入。新書もちょっとした恋愛小説のようなものも読み進まないなぁと思っていたときにふとSFを読もうと思いついてSFコーナーで目線の高さに表紙を向けて陳列されていたこの本をチョイス。
マインドイーター(M.E)というタイトルの通り、人の精神を喰らうイキモノの話かと思いきや「人の精神に作用して、崩壊させたり遺伝子を書き換えて(本文にそんな記述はなかったかもしれない)壊すもの」のようで、意思をもった彗星や石、砂のような鉱物の形をしていると。そんなM.Eのいくつかの話が1冊収録されているのがこの本で、1つ1つの話のフィールドも地球上から宇宙空間まであり、ただ人間はそれを破壊するといった話ではない。M.Eに対する解釈も人間が作っただの、M.Eによって人間の言語が作られただのいろいろ出てきますが、基本的に憎しみというものが核になっているとか。遺伝子構造を変えられてかなにかで、人間の体がいろんな動物をくっつけたようなものに変化して最後には核酸になってり液体になったりするというのが何とも恐ろしかった。
過去と未来を知っていて純粋理性のような「神様」みたいな存在を通して人間が何で人間として、猿のような姿形をして理性をもって言葉をつかって、家族や仲間や社会をもったり、神様を信じたりして生きているのかを考えるということを訴えかけてくる。M.Eは特定の社会や家族や姿(一応鉱石の形をしているが)を持たない思念のような存在なので人間の営みを理解することができない。人間が生きるというのは、進化の中で大きい猿のような姿形のようなものが二足歩行を始め、脳を発達させて理性をもち神様を信じるようになったり(人によってはならなかったり)っていう過程からまずは考えられるものであって、過去も未来も死も生からも自由な状態では理解できないとか思ったり。
それにしても「緑の夢」とか過去と未来の遺伝子のすべてを持っていてそのビジョンをみせてくるとか、彗星のように地球にふってきたりしようとするとかとあるゲームのラスボスみたいだなとか、考えちゃうよね(*´ω`*) -
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とうとう雅楽全集も読み納め。短篇最終巻で、ますます「ちょっといい話」化している。
著者を反映しているという聞き手役の竹野が雅楽の話をきいて、いい話だとしきりに感心するのだが、考えてみれば雅楽の話も戸板が考えているわけで、自分で自分の話をべた褒めしてるってことよね。と思うとちょっとしらける。
といっても、歌舞伎の世界のならわしや、役者たちの微妙な心のあやと芸の話はとってもおもしろい。
「なつかしい旧悪」は、こわーい話であるとともに、嫌い合って別れたわけではない男女の互いの思い遣りと雅楽の羞らいがよい。
「弁当の照焼」も、やはり好きだけど別れた相手への互いの長~い思いの話。
「写真の若武者」は、喜代子さんのお母さんの夫を誇りに思う気持ちがよい。
「女形の愛人」、そうなのか、舞台に出ている間は細君とふしどを共にしないのが、ホントとは…。
「おとむじり」は、いわばワトソン役の竹野の大手柄がほほえましい。この話で雅楽が涙を溢れさすのだが、雅楽もので最後に発表された「むかしの弟子」で、竹野が初めて雅楽の涙を見たことになっているのはなぜ?
「演劇史異聞」は、眉唾な推理が多い気がするが、「異聞」なんだからこんなものか。 -
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76年から83年発表の短篇のほか、60年代末に書かれた「かんざしの紋」「淀君の謎」を収録。
「淀君の謎」は謎解きのポイントが空想の産物なので、歴史推理と思って読むと拍子抜け。こういう趣向で芝居を考えてみました、てなもので、しかも、ホントにそうだったらワクワクするのに~、みたいなセンスオブワンダーもない。
だんだん犯罪の話ではなくなっているのだが、日常の謎ものというより、それこそ戸板康二が週刊誌に書いていたちょっといい話、という趣きになっている。雅楽を登場させる必然性もないのかも? という気もするが、古老が語るある世界、ということで、「半七捕物張」の正統な後継だと改めて実感。
養子か実子か、または外にできた子か、といったことは不問、とか、この世界独特の慣習になるほどと思ったり。
収録作の中では、「神かくし」「芸養子」といった、そういう世界での親子ものにしんみりした。
「芸養子」は「木戸御免」とともに、芸道もの(本人というより本人を思う女人による工夫だが)としても何だか好き。
「砂浜と少年」も印象的だが、そんなことで死ぬなよ~、若者。と思ってしまう。