福澤徹三のレビュー一覧
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福澤徹三『侠飯 11 激辛ガチ推し篇』文春文庫。
シリーズ第11弾。まさかこんなに長く続くとは思わなかった。人気のあるシリーズなのだろう。
今回、柳刃竜一と火野丈治が潜入したのは、昭和レトロな喫茶店。柳刃が作る相変わらず美味そうな料理がレシピと共に紹介される。
この殺伐とした時代に、任侠と人情、人としての生き方までを教えてくれる、強面だが、心優しき2人の潜入捜査官。
やっとの思いで就職した都内のパープル会社を退職し、フードデリバリーの配達員で生計を立てる湯浅和希は世間の冷たい目に晒されながら、メンタルを削られる毎日を過ごしていた。
ある日、和希はピックアップ先のゴーストレストランをワンオペで切盛りするバイトの栓多悠人と知り合う。2人は誘い合わせて飲みに行くが、途中で悠人のバイト先近くの『純喫茶 王宮』という昭和レトロな喫茶店の店員の火野丈治に呼び止められ、店内でマスターの柳刃竜一が作る絶品料理が振る舞われる。
和希と悠人、それにガールズバーをクビになったという苺谷小夜乃の3人は、度々、『純喫茶 王宮』を訪れ、柳刃の振る舞う絶品料理を楽しむようになる。
そんな中、和希はフードデリバリーの仕事をクビになり、悠人が働くゴーストレストランのオーナーの口利きで時給2千円のバイトをするが、それは老人たちを騙す訪問詐欺だった。和希はそのバイト先から逃げ出すが、ハイパーサラリーマンを名乗る地切豪己と地切会専務の壺打勇飛に悠人、小夜乃と共に拉致される。
タワマンの最上階に拉致され、絶体絶命の危機の中……
最初に紹介される料理、フィッシュ・アンド・チップスは、自分が住んでいる福島県の天栄村にあるブリティッシュ・ヒルズというちょっと変わった施設で本場の味を食べたことがある。一皿20ポンドで、日本円だと2千円だった。ここはテレビドラマの『相棒』などの撮影に使われているくらい英国の雰囲気のある建物が並び、働いている人たちも英国人という徹底した英語研修&宿泊観光施設なのだ。さらに、ここでは本格的なアフタヌーンティーも楽しめるのだ。
本体価格800円
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生まれた時から才能・富・優れたルックスなど他人と比べて優位な点を持ち合わせた、いわゆる勝ち組の方々に向けた内容ではない。
我々のような凡人かそれ以下の「落ちこぼれ」に対して持たざる者がどのように社会と戦うべきかを作者自身の経験を元に書き連ねてある。
印象的に残った箇所
・考えかたひとつで、企業は金が貰える学校になるのです。
・露出の大きいメディアの求人が全部だめというわけではありません。時には「掘出しもの」もあります。「掘出しもの」とはなにかといえば、条件がいいのに人気がない企業です。あえて業種はあげませんが、業務内容が地味とか、身体が汚れるとか、体力を使うとかの理由で、若者が集まらない企業は沢山あります。そういう企業は往々にして市場の占有率が高く、ライバルが少ないせいで、経営が安定しているものです。
・ただの手抜きと思われないように、一社ずつ手書きの手紙を添付しました。内容は、先に書いた通り「このたびはよろしくお願い申し上げます」といった趣旨です。
・仕事は何度でもやりなおせますが、時間だけはとりかえしがつきません。「あのときやればよかった、の『あのとき』は、いまなのだ」 -
Posted by ブクログ
就活中の大学生、ブラック企業の従業員、見習いヤクザ、議員秘書、ペンションのアルバイト、ニート、刑事と続いてきた狂言回しを今作で務めるのはYouTuber。
今回も、人生に悩める誠実な青年が、柳刃達をヤクザじゃないかと疑いながらも胃袋を掴まれ、人生訓を学び、最終的に性格の良い女子と良い感じになり、ついでに悪者は退治されるという安定のフォーマットに則っている。これは現代の水戸黄門である。
柳刃兄貴の説く任侠道はどれも胸に沁みる。
弱気を助け強気を挫く。他人の為に損ができる。他人の幸せを己の得と考えることが出来る。
親ガチャだとか、自分の境遇は他人と比べて恵まれてないとか言うのは自分のことばかり考えている。他人の役に立つのが幸せだと思えたら、人生に手遅れはない。
将来を気に病んで、今を粗末にしてはいけない。今を充実させられなければ、将来もずっと悩んでいる。
本当に全てその通りだ。胸に刺さった。今を大切に、そして他人の役に立って幸せになろう。料理のレシピだけじゃなく、人生のレシピも学べる作品だった。
今回の狂言回しの浩司はインタビューが上手な印象だったから最後てっきりジャーナリストとかそっちに行くのかと思ったら、意外な結末だった。彼らがその後どうなったのか、今から次作のエピローグを読むのが楽しみだ。
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ネタバレ寝る前に読むんじゃなかったと後悔しながらこの感想を書いています。
物件怪談アンソロジーということで、色んな怖さを楽しめる贅沢な1冊でした。
勿論怪異の存在はあるのですが、所謂ヒトコワでしたり伝染系に近いお話もあって驚きました。
個人的に終の棲家、ろろるいの家はちょっと怖すぎて数回本を閉じそうになりましたね。続きを読みたいけど、これ以上読んではいけないような、好奇心と恐怖心の狭間ってここかぁと思いながらも結局全部楽しく読んでしまいました。
郷内心瞳先生のトガハラミはあまりにも文体が艶やかで感動しました。果物を食べる様子をあんなにもセクシーに書くことができるなんて…。郷内心瞳先生は今回はじめましてだったので、また別の作品も読んでみたいと思いました。 -
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どう見てもヤのつく筋の人間に見える二人組が作る絶品料理のシリーズ第三弾。今度の舞台は下町ヤクザの事務所での賄番。相変わらずの美味しそうな描写、ごちそうさまでした。
主人公は、半グレ集団の下で闇金の店長をしている三十前の男。同年代の他の若い人たちのように遊びたいのも我慢して、せっせと金を貯めて、目標額が貯まったら独立してどこかでやっていこう、という計画的なようであまり計画という計画も立てていないような将来設計を持っていたところ、新しい商業施設を建てるための地上げの話が持ち上がる。立ち退き予定地に建っているのは、とあるヤクザの事務所。古くからあるその場所は、主人公の祖父の家だった。母が祖父と絶縁していたため、主人公は祖父とは面識がない。けれど、実の親族なのだからと地上げの説得に行けと上司たちから追い立てられ、なんとか説得しようとした主人公はあえなく失敗。その上、何故かそのヤクザの事務所で行儀見習いをすることに。
今作の主人公は、根は悪い人間ではないにしろ、裏社会の側の人間です。売り言葉に買い言葉で行儀見習いをすることになった祖父は古くから続くヤクザの一門の親方。そんなところに現れた例の二人組。
これは一体どういう着地をするのだろう、と思っていましたが、今回は登場人物がとてもよかったです。
主人公の祖父の親方と、その一門の古参の二人がとてもいい。古き良き任侠一家とはこういうものだったよな、と思わせる思想や姿勢が素晴らしい。
今時、畳の上での作法を知っている人は少ないでしょう。フローリングに椅子とテーブルの生活に慣れた人には、分からない感覚もあるかもしれません。ですが、行儀見習いとして入った主人公が事あるごとに『効率が悪い』『もっと要領よくできる』と言ってなかなか素直に向き合おうとできないことや作法の中に、大切にしなければならないことや教えがたくさんあるのではないかと思わざるをえません。
『ヤクザ』の語源は、今回本文中に出てくる話で初めて知りました。なるほど、花札かと膝を打つ心地です。言葉一つ、謂われ一つでまだまだ知らないことが多くあります。正直、厳しい道のりではあると思いますが、行儀見習いなどさせてもらえること自体が少々羨ましいです。
本編の中に出てくる『侠飯』は、今回も大変に美味しそうでした。一食一人当たり300円。その縛りの中で工夫をし、やりくりをして食事を作るというのは本当にすごいことです。
さりげなくレシピを本文に練り込んで下さっているので、また読み返して日々の料理に使ってみたいと思うものもちらほら。手始めにのりの佃煮を入れた卵焼きを作ってみましたが、大変に美味でした。
安くて簡単なレシピ本は、探せば世にはいくらでもあります。少し検索をかければ、インターネットには数多くの簡単ずぼら飯のレシピがヒットします。けれど、何かを作ろうと思う気力を呼び起こすには、『レシピ』があるだけでは不十分です。
うまそう。美味しい。なんだこれ、今まで食べたことない。〇〇の香ばしい匂いが食欲をそそる。
そんな、登場人物の反応や料理中の驚き、食卓に並んだ時の期待に浮き立つ表現。それらを一緒に味わうことができるから、ああ私もこれを食べてみたい、と思うのです。
私はあまり普段から食に執着のない人間なのですが、料理系の話を読みたくなるのは、それを読むことによって自分の食欲を呼び起こすことができるからかもしれません。
シリーズ次作で、どんな料理が飛び出してくるのか楽しみです。 -
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ネタバレキッチンにまつわるアンソロジー。
お気に入りは福田さんの「対面式」、新津さん「わたしの家には包丁がない」。
「対面式」
建売住宅の対面式キッチンからは、向かいの家の対面式キッチンが丸見えだった。
そして、そのお向かいの玄関ポーチに何故か日替わりで陶器の人形が置かれていて…
ちょっとした好奇心から、陶器の人形の謎を解こうとする美晴。謎は案外あっさり解けたけれど、お向かいさんの旦那さんが実は…って言うのはどんでん返しでした。
「わたしの家には〜」
展子が何故包丁を持たないのか。亡くなった母親が父親の田舎へ帰省した時に女性ばかり動かされているのを目の当たりにして育った所為で、将来包丁を持たない生活をしよう!と思い切る所が凄い。
しかも、父と付き合っている女性が結婚するのは反対と、相手の女性の娘に直談判にいったら、何故かその女性に振られた相手もその場にいて、ひょんな事から結婚までしてしまうテンポの良さがお気りです。
どれもちょっとミステリーっぽくてもっと読みたい話ばかりでした。 -
Posted by ブクログ
いやいやいやいや、面白かった。ものすごい一気読みしてしまった。
相変わらずの時代劇構成(あらすじとオチは決まっていて、シチュエーションが毎回違う)なんやけど、今回の旬一郎くんは「甘ったれな若い子」じゃなくて、めちゃくちゃ正義感も意欲もある若い子やったので、そこが今までと違ってよかった。
でもまあ、小梅ちゃんの出自には
「えぇ…」
ってなったけど(笑。そういうわかりやすさもこのシリーズの面白さとはいえ)、通常国会が終わったところで読むってのもおつやった。
(おつではない)
2017年の本なんやな…。何とも言えん。
このシリーズはわりと庶民的な具材で料理をすることが多いこと思うけど、今回は最高に庶民的やったというか、家庭でもできる「ちょっとおいしく食べて飲めるコツ」が満載でよかった。
こんなふうな丁寧な暮らしがしたいわ…。
あと、行きつけの立ち呑み屋がめちゃくちゃ羨ましいわ…(笑)。 -
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前作を読んだのが約一年前なので、続きから読んでいけるか…
って思ったけど、
いけた。
今回もめちゃくちゃ面白かった。
なんちゅうか、ここまでの三冊ってどれも
根性なしのキャラクタが登場する
↓
柳刃さんと出会う
↓
最初は柳刃さんに不信感を抱く
↓
料理を通して目覚める
↓
明日から心を入れ替えてがんばる
って流れやのに、なんでどれも面白く読んでしまうんやろう(笑)。
それはわたしが根性なしやからか。他の根性なしたちが性根を入れ替えて前に進むサクセスストーリーを本能で求めるのか(笑)。
それもあるやろうけど、時代劇的安心感面白さもあるんかもしれへんね。
じつは柳刃さんの立場すら忘れてるまま読んだけど、べつに忘れてるまま読めるんで全然良かった。
卓磨くん、なんだかんだで若いのにちゃんと料理してると思う。
いや、わたしと比べんなっちゅう話やけど。
とりあえず、間を置かず次をリクエストしました。
なんだかんだで良い人ばっかり登場するし、素直なのはフィクションでも見ててとても心地良いです。
あと、文春文庫ってこんなに文字がでかかったっけ(ありがてえ…)。