福澤徹三のレビュー一覧
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ネタバレ普段よりも、登場する若者が、まとも。
普通の若者が、気が付けば、犯罪に巻き込まれていく。これまでの、若者に喝を入れる、教えるという展開とは、一味違う。
今の不寛容社会の問題と、そんな社会で生きる上での心構えが語られる。
全てが金と、若者が感じられる社会にしてしまった大人の責任が述べられ、若者への贖罪と、そんな社会でも自ら切り開くとい観点からのエールが垣間見られる作品だった。
世相か。
今回のメッセージは、最後の締めくくりに書かれているとおりだろう。
[引用]
他人の失敗を許せない人びとや他人を見下す人びとは、誹謗中傷やレッテル貼りを続けるだろう。
しかし、社会が変わらなくても、自分は変えられ -
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福澤徹三『侠飯 11 激辛ガチ推し篇』文春文庫。
シリーズ第11弾。まさかこんなに長く続くとは思わなかった。人気のあるシリーズなのだろう。
今回、柳刃竜一と火野丈治が潜入したのは、昭和レトロな喫茶店。柳刃が作る相変わらず美味そうな料理がレシピと共に紹介される。
この殺伐とした時代に、任侠と人情、人としての生き方までを教えてくれる、強面だが、心優しき2人の潜入捜査官。
やっとの思いで就職した都内のパープル会社を退職し、フードデリバリーの配達員で生計を立てる湯浅和希は世間の冷たい目に晒されながら、メンタルを削られる毎日を過ごしていた。
ある日、和希はピックアップ先のゴーストレストランを -
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生まれた時から才能・富・優れたルックスなど他人と比べて優位な点を持ち合わせた、いわゆる勝ち組の方々に向けた内容ではない。
我々のような凡人かそれ以下の「落ちこぼれ」に対して持たざる者がどのように社会と戦うべきかを作者自身の経験を元に書き連ねてある。
印象的に残った箇所
・考えかたひとつで、企業は金が貰える学校になるのです。
・露出の大きいメディアの求人が全部だめというわけではありません。時には「掘出しもの」もあります。「掘出しもの」とはなにかといえば、条件がいいのに人気がない企業です。あえて業種はあげませんが、業務内容が地味とか、身体が汚れるとか、体力を使うとかの理由で、若者が集まらない企 -
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三津田信三さんがそれぞれの作家さんに怪談のテーマを伝えて、「自分が一番怖いと思う怪談を書いてください」とお願いした怪談アンソロジー。
どういう怪談が好きかによって好みの作品が別れそう。
単純に一番怖かったのは
澤村伊知さんの『サヤさん』かな。澤村さんへのテーマは霊能者怪談。
なんと言うか、ゾクリとする怖さがあった。
でも、一番好きだなと思ったのは民族学怪談をテーマに書かれた霜島ケイさんの『魔々』
村の言い伝えとか、風習って恐いと思う内容って結構あったりしませんか。
村人にとっては禁忌だったりする事とか。
そう思う怖さがこの作品にありました。
霜島さんは初めて読む作家さんでしたが、他の作品 -
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就活中の大学生、ブラック企業の従業員、見習いヤクザ、議員秘書、ペンションのアルバイト、ニート、刑事と続いてきた狂言回しを今作で務めるのはYouTuber。
今回も、人生に悩める誠実な青年が、柳刃達をヤクザじゃないかと疑いながらも胃袋を掴まれ、人生訓を学び、最終的に性格の良い女子と良い感じになり、ついでに悪者は退治されるという安定のフォーマットに則っている。これは現代の水戸黄門である。
柳刃兄貴の説く任侠道はどれも胸に沁みる。
弱気を助け強気を挫く。他人の為に損ができる。他人の幸せを己の得と考えることが出来る。
親ガチャだとか、自分の境遇は他人と比べて恵まれてないとか言うのは自分のことばかり考 -
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ネタバレ寝る前に読むんじゃなかったと後悔しながらこの感想を書いています。
物件怪談アンソロジーということで、色んな怖さを楽しめる贅沢な1冊でした。
勿論怪異の存在はあるのですが、所謂ヒトコワでしたり伝染系に近いお話もあって驚きました。
個人的に終の棲家、ろろるいの家はちょっと怖すぎて数回本を閉じそうになりましたね。続きを読みたいけど、これ以上読んではいけないような、好奇心と恐怖心の狭間ってここかぁと思いながらも結局全部楽しく読んでしまいました。
郷内心瞳先生のトガハラミはあまりにも文体が艶やかで感動しました。果物を食べる様子をあんなにもセクシーに書くことができるなんて…。郷内心瞳先生は今回はじめまして -
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どう見てもヤのつく筋の人間に見える二人組が作る絶品料理のシリーズ第三弾。今度の舞台は下町ヤクザの事務所での賄番。相変わらずの美味しそうな描写、ごちそうさまでした。
主人公は、半グレ集団の下で闇金の店長をしている三十前の男。同年代の他の若い人たちのように遊びたいのも我慢して、せっせと金を貯めて、目標額が貯まったら独立してどこかでやっていこう、という計画的なようであまり計画という計画も立てていないような将来設計を持っていたところ、新しい商業施設を建てるための地上げの話が持ち上がる。立ち退き予定地に建っているのは、とあるヤクザの事務所。古くからあるその場所は、主人公の祖父の家だった。母が祖父と -
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ネタバレキッチンにまつわるアンソロジー。
お気に入りは福田さんの「対面式」、新津さん「わたしの家には包丁がない」。
「対面式」
建売住宅の対面式キッチンからは、向かいの家の対面式キッチンが丸見えだった。
そして、そのお向かいの玄関ポーチに何故か日替わりで陶器の人形が置かれていて…
ちょっとした好奇心から、陶器の人形の謎を解こうとする美晴。謎は案外あっさり解けたけれど、お向かいさんの旦那さんが実は…って言うのはどんでん返しでした。
「わたしの家には〜」
展子が何故包丁を持たないのか。亡くなった母親が父親の田舎へ帰省した時に女性ばかり動かされているのを目の当たりにして育った所為で、将来包丁を持たない