鎌田實のレビュー一覧
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諏訪中央病院名誉院長である著者のエッセイ集である。著者は同病院医師、院長として、閉鎖寸前の赤字病院を地域に密着した先進的な医療拠点として甦らせた。それを支えたのは、患者は十分な情報を得た上で治療について自ら選択する権利をもつという固い信念だ。「十分な情報」という以上は、そこには当然患者本人に対する余命宣告も含まれる。それは場合によっては残酷で厳しい対応かも知れないが、患者が残された人生を自らデザインし自分らしい時間を過ごすためには不可欠なのだ。その結果、治療としては抑制的になる場面もあれば、逆に積極的に高度医療や手厚い訪問看護を必要とする場面もある。諏訪中央病院では、いずれの場面にも対応できる
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インフォームド・コンセントや自己決定という考えが医療の常識となってどれくらい経つのだろうか(常識といってもそれが実践されているかとなるとそれはまた別の話だろうけれど)。実はこういった考え方を前にすると正直戸惑うことが多い。もちろんパターナリズムとも言われる医者の権威主義は反省されるべきだと思うけれども、たとえば「生も死も自分でデザインを」なんて言われると、二の足を踏んでしまう。生も思うままにデザインできない自分が、果たして死をデザインすることが可能なのかと。
「死」から遠く離れた生活の中で、「生」と切り離せない「死」とどう向き合っていくか。その大切なテーマが失われつつあるのが現代ではないのか。 -
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ネタバレ終末医療について大変勉強になった。こういう人が医療界、介護現場を変えていってくれているのだなと思った。
今の時代に足りないもの、忘れてしまっている大切なものをしっかりと見据え患者さんと正面から向き合う。
著者は医療する側の人間なのにネイティブ・アメリカンの死生観も持っている。人間として生き、人間らしく死なせてくれる。こういう感性を根底に持つ人が増えるといいなと思う。
引用メモ
・人はつながりの中で生きている。人と人のつながりの中で生活を営み、人と自然のつながりの中で命は生かされ、体と心のつながりのなかで、生命をはぐくんでいる。
・否認、怒り、取引(善行により治癒するなど)、抑鬱、受容
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ネタバレ現在、諏訪中央病院名誉院長である著者は、25才の時にこの病院へ内科医としてきた。その頃、病院の経営状態は累積赤字が4億円でつぶれかけていたそうだ。それに、全国で二番目に脳卒中が多く、特に茅野市は長野17市の中で一番多い。その病院を建て直すと共に、市民の健康状態も良くした人である。まず、地域に呼びかけ、薬で治すというだけではない医療もあることや、意識改革をしながら自分たちの生活をもう一回見直していくことで、健康を回復していく医療もあることを理解してもらった。その後、減少していた患者の数が多くなり、日本有数の長寿地域でありながら、医療費が低い病院といわれるようになったのだ。今あるデイサービスの先駆
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なぜこの本を手にとったのか、忘れてしまったけれど。。
東北の震災、そしてそれに端を発した原発事故から1年と少し。いまこの時期に読む本として、本当にいいものだったと思う。
人生半ばで目が見えなくなった女性、アフガンの戦火に傷ついた子供たち、の他に、チェルノブイリ原発事故やヒロシマ原爆の被爆者、阪神大震災の被災者のリアルな話がつづられる。
希望を捨てないで、毎日毎日を大切に生きていく人達の姿はもちろんのこと、今なお放射能汚染の危険が自らの身に降りかかるリスクもあるのに、事故現場に足を運ぶ鎌田先生のような人達。
自分の生き方を反省させられる一冊でした。
(といっても、すぐに何かができるわけではない弱 -
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ネタバレチェック項目14箇所。素敵なお客様を大切にするのは当たり前・・・超ホスピタリティは気難しい・・・みんなが嫌っているのにもかかわらずそのお客様の心を掴む。「ノー」といわない・・・自分に関係ないではなく、必ずどんな小さな糸口でも見つけて返事する。微笑みそのものがホスピタリティ。共感すること・・・一緒に泣くこともホスピタリティとして大切な技。世話をするだけでなく、逆にお客様に世話してもらう。ホスピタリティが必要な仕事に携わる人は、自分ではない。ありがとうの連鎖。自分の心を乾かさない。自分の心があたたかくなくては本物のあたたかな言葉はかけられません。ヒヤリ・ハット・・・なぜ間違いが起きたかが問題。批判
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この本は筆者初のフォトエッセイだそうです。東北・東に本題震災が残して言った悲惨な爪あとと、それでもまた希望を持って生きていこうとする人たち、特に子供たちの姿が写真や作文、習字を通して伝わってきます。
東北・関東大震災。その爪あとがいまだに生々しく残る現地を医師であり作家の鎌田實氏が佐藤真紀氏とともに写真とエッセイでつづるフォトエッセイです。
最初にこの本をめくると、焼け爛れてしまった車の残骸や、地震のあった時刻を指したままと待っている打ち捨てられた時計。瓦礫が延々と続くかつて住宅街だった場所が写し出されていたりと、改めて今回の震災の恐ろしさが伝わる写真とともに、それでも、希望を持って生きて -
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第Ⅰ部「東日本からの命のメッセージ」では、被災した石巻市の小学校、永厳寺境内での「不動の湯」の開湯を契機に、もっと多くの人にお風呂に入ってもらうために湊小学校に設置した「希望の湯」、被災者雇用創出事業(CFW=キャッシュ・フォー・ワーク)、外国人ボランティアとの交流、福島原発事故の深い傷、子どもたちの作文や絵が紹介され、エッセイが添えられています。
第Ⅱ部「「支援、命、希望について」では、被災して家族を失った人たちの悲しみ、子どもを支えることの大切さ、命の尊さ、温かい食べ物とお風呂の支援、弱い立場の人を支えることができる民主主義のあり方について鎌田さんが書いています。
第Ⅲ部「イラクから