Posted by ブクログ
2016年04月02日
諏訪中央病院名誉院長である著者のエッセイ集である。著者は同病院医師、院長として、閉鎖寸前の赤字病院を地域に密着した先進的な医療拠点として甦らせた。それを支えたのは、患者は十分な情報を得た上で治療について自ら選択する権利をもつという固い信念だ。「十分な情報」という以上は、そこには当然患者本人に対する余...続きを読む命宣告も含まれる。それは場合によっては残酷で厳しい対応かも知れないが、患者が残された人生を自らデザインし自分らしい時間を過ごすためには不可欠なのだ。その結果、治療としては抑制的になる場面もあれば、逆に積極的に高度医療や手厚い訪問看護を必要とする場面もある。諏訪中央病院では、いずれの場面にも対応できる設備や体制が整っている。著者は言う。「ぼくら医療スタッフががんばりますから、あなたはありのままでいてください」と。「がんばらない」とは何もしないことではなく、これまで既にがんばって治療を受け生きてきた患者さんに、本来の「ありのまま」の姿で過ごしてほしいという著者の切実な願いなのである。