桜庭一樹のレビュー一覧
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【更新されていく自分と自分の境界】
人からの影響、社会の出来事、環境の変化、
見たり聞いたり知ったことを自分なりに理解、想像して、自分なりの世界観ができている。自分の持つ認識の多くは無意識にも更新されていく。そして自分を動かしている。
普段は何気なく変わっていってて
忘れていってて
記憶から選択していってて
結局自分の境界はどこにあるのか
自分でもコントロールできないままに変わっていく、適応していく自分。自分と周りの関係性の不思議。
私も私たちも実は常にニューノーマルにいる、のかもしれない。
時にうまく言語化できない、自分との関係性とか周りとの関係性についての思いが綴られる。
あともうひとつ、
母親はどうしても心配する生き物なのか。
母と子、親と子の関係性も変わっていくものなのか。 -
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ネタバレほんタメで紹介されていた本。ある事件をきっかけに主人公の波間が学生時代の友人である中川くんと再会し、連絡先を交換するが、2人は実はパラレルワールドのあちら側とこちら側にいて、、というお話。
2人(メインは波間)こ数年間が描かれるのだけど、中川くんの世界ではコロナが流行して緊急事態宣言が出たり、オリンピックが延期されたり、有名人が亡くなったり、読者の現実とリンクしていて面白い。最後には波間の世界では2024になり追い越されているのも。
波間の考えていることが、思ったままの口調で書かれるのでこちらに直接語りかけてきているように感じた。大きなドラマがなくても、淡々と続く日常でも、私たちはここに存在している、という波間の言葉がよかったな。この物語自体も、波間は病気のサバイバーであるけれど、ドラマチックな起伏はなく、まさに"波間"のような時間のまま最後まで決定的な結末で終わるのでなくてよかった。読後も色々考える余韻が残る作品でした。 -
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話は3部作構成。鳥取の名家赤朽葉家の女三代の物語。里で拾われた山窩の子供、千里眼の万葉。未来に起きることを幻視する。大奥様のタツのひと声で赤朽葉に嫁入り。その娘でレディースから漫画家になった毛鞠。恋愛、抗争、友情、そして青春の終わり。更にその娘、まだ何者でもない瞳子。万葉、毛鞠が主役の2部目までは、これはいわゆる大河小説か?という展開。日本の経済発展、オイルショック、バブルへと。
当時の風潮を思い出しながら波乱万丈の2人の人生を愉しむ。それが面白い。自分の親の世代の万葉も、自分の世代の毛鞠も私の知ってる時代とは少し違う気もするが地域の違いか、個人の違いか。そこは小説だから御愛嬌。
そして瞳子の出てくる3部目になって思い出したかのように殺人の話が出てくる。登場人物が、その昔の殺人を告白するのだ。誰が殺されたのか?なぜ?どうやって?という謎解きに瞳子が挑む。その謎を解く伏線は前の2部、大河小説部分に隠されている。だからこんな突飛な2人の女性の人生を描いたのかと、そこで気づく。
そもそもこれは推理小説なのか?と思いながら読んで、違うけど面白いなと思い始めた頃に謎が提示されるから、そのときにはもう推理小説としての興味を失っている。謎解きはどうでも良いのだが、上手に作っている。それが良いのか悪いのかわからんが何より小説にいちばん大事なこと、お話として面白いので十分だ。
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文の一つ一つは読みやすいのに、物語は湿っていて、重い。それでいて手が止まることのない面白さ。読み進めていくごとに、各々が抱えた「じごく」を、解消できない孤独感を見せられる。やるせなさに包まれる。でもまた読みたくなる。なんで?ほんとにすごい。「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」もそうだったが、ただの鬱小説ではなく、書かれている人々の感情、嫉妬、自己愛、狂気、孤独、偏愛、焦燥感、ぜんぶが刺さって抜けない。読み返したくなる。ただ嫌な展開を書くだけなら誰でもできるけど、それすら良いところに変えてしまうほどの圧倒的なストーリー構成力。
ジャンルを問わない短編集だが、それぞれのジャンルの世界観の面白さが際立つというより、桜庭一樹さんの書く人間の醜さだったり、弱さだったり、愚かさだったりをベースとして世界観がスパイスになっているという感じであった。
「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を読みこちらにも手を出したが、この方の描く世界が、「じごく」がすごく好きだ〜。 -
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奇譚集、と銘打っているだけあって何とも奇妙な感覚をもたらす短編集。ただ設定が異質なのは骨になった男が妻と不倫相手のやり取りを傍観する表題作と、夜のホテルでホテルマンが見た幻の話「五月雨」だけで、他は日常で有り得る話。しかし大学で一目惚れした相手をただ見つめるだけの話「モコ&猫」が、アパートの隣人との交流から己を振り返る「冬の牡丹」が、田舎での地元の子との冒険「赤い犬花」が予想外の歪さを見せてくる。映写機でのフィルムを見せられているような距離感から急に距離を詰めて揺さぶって来る語りがが桜庭さんらしい。「冬の牡丹」「赤い犬花」に漂うどうしようもない切なさが響いた。
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100本近い映画が取り上げられていて、どれも見てみたい気にさせてくれます。
100はこれから見るには大変だなぁ、1日1本見ても100日。
映画館では見れないからNetflixで見れるか…
各話の冒頭の小話は、同時代の同地域にいた身には懐かしいというか、あーそうねというか。やはり子供の頃なので狭い範囲で生きてたからか自分の記憶と違うところとかあったり。
映画館は田舎の割にあったほうなのではと思っていた、松竹系と東宝系、もう一つあった気もするけど違うかも。多分今はない。駅前にシネコンが1館あるだけのはず。
去年、実家近くの本屋に行った際に過去から現在の写真が掲載された本が置いてあった。あういうのに映画館の歴史も載ってるかな。
最後の方はコロナが始まっていて時代を感じさせる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大きな出来事が複数起こっているにも関わらず、淡々と大きな波がなく進んで行く物語。
近年の桜庭一樹作品という感じの、緻密な物語の構成で淡々としているけれど、読者を飽きさせない。
主人公の波間がさまざまな人に出会い、日々を漂っていく。
この物語は複数のサバイバー達のその後の物語だと感じた。
病気や事件の渦中にいる時には周囲から同情され注目される。
ただ、病気が治った後や経過観察中、事件が世間で忘れ去られても当人の人生は続く。
むしろ、渦中にいるときよりも、ずっと長いかもしれない。
物語後半、「正しい被害者ってなんでしょうね…?」というセリフがある。
激昂していた優里亜(かもしれない人)から発せられる言葉だ。
この言葉でふと性犯罪に遭い果敢に裁判に挑んでいる女性に対し、批判的な見方をする人が多くいることを思い出した。
「正しい被害者」でないと、かわいそうではないのか?
そもそも「かわいそう」と当事者達は思われたいのか?
被害者は強くあってはいけないのか、加害者に挑んではいけないのか?
「正しい被害者であれ」とすること自体、セカンドレイプなのだと思う。
パラレルワールドの中川くんがこの物語のキーマンだと思っていたけれど、そうでもないのかもしれない。
中川くんも漂う波間と出会った人の1人に過ぎないのかも。
この物語においてのパラレルワールドの中川くんについては、どのような人物だったのかもう少し考えたい。