桜庭一樹のレビュー一覧
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物語として構築し直されているが、舞台はまごうかたなき我が故郷。ふるさとloveを公言してはばからぬ私には、とても考えさせられた本だった。
モヤモヤのある母と共に、大好きな父を看取る話。それが著者の意図とは違う読解で書評され、評論家やメディアとSNSを通じて闘う話…。
あの町の出身者として、また出版に携わるものとして、また親を看取った経験者として、すべてが身に迫るようでいて、また微妙な立場の違いゆえ居心地悪くもある。
山海に恵まれ、商いも豊か、人の心は大らかで住みやすさバツグン…と喧伝してきたふるさとは、視点を変えればこんなにも狭量な悪意に満ちた旧弊な場所だったか…。友人が「その街というより日本 -
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少女を埋める 自伝的随想
直木賞作家 冬子 7年ぶりの鳥取帰省、40代後半。
入院中の父親とリモート面会するが亡くなる
母の暴力 母の連れてくる疑似家族 母のいちばんの親友はおばあちゃん
血縁者とは拡大された自己:「私の男」のテーマ
母と娘の暴力を伴う愛:「ファミリーポートレイト」のテーマ
キメラ(合成獣) 朝日新聞 C氏の文芸時評
「虐めたね」母の怒りの発作=父への虐待 と解釈
小説の読み方と批評の書き方(読解の自由 解釈は不可分)
「家父長制社会」≒批評 向き合わず自分のコントロール下に
「少女」=異能者、異分子
「埋める」=郷の共同体の掟:出ていけ、もしく -
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完全な人間に物語など必要がない。でも完全な人間などいないから、誰にでも物語というものは必要…本当にそう思います。完全とまではいかなくても、真っ当な人も物語を必要としないよな、とも。このお話だと、真田みたいな。
圧倒されました。母と娘、お互いしかいないというのは悲劇だけれどとても幸福なのかもしれないです。
幸福から立ち直る…初めて接する言葉だけれどこの感覚はわかるので不思議。とても悲しいけれど、生き続けるには欠かせないです。
母と娘ってこうだな、と思いました。これが濃いか薄いかの違いで。ここまで描写出来るって凄いな。
眞子と駒子の頃と、駒子の余生と。息苦しいけれど、物語の力も感じられました。体力 -
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大人に憧れを抱きつつも、まだ子どもでいたいような気持ちは痛いほどよくわかる。制服を着ている間は守られているような無敵な気持ちになれていた。
荒野は一人称を自分の名前で呼んでいる。実は私もかなり上の年齢まで自分のことを自分の名前呼びしていた。今でも恥ずかしながら、家族や気を許した人の前ではぽろっと一人称が名前になってしまうことがある。それが幼稚だと言うことも理解していて、「私」に切り替えないといけないと分かっていても、一人称を変えてしまったら、自分が一気に大人に近づいてしまいそうで、大人になることへの最後の抵抗のように自分を名前で呼んでいたいのだと思う。
思春期の少女の繊細な心の動きが美しく -
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誰もが今経験している、コロナ禍の物語
桜庭先生の日常の世界について語られる、2020年の1月からの1年間
読み進める
まだコロナ禍にも関わらず、あぁこんなことがあった!と懐かしく、随分と前のことのように感じてしまう
それだけ日常のものになってしまったのだろうなと
私自身の日常はコロナ前とそんなに変わらない
だからつい忘れてしまったこと、そして気が付かなかったことについて読んでいてハッとさせられた
そうか、こんなにも目まぐるしく変化していたのかと
そして心のあり方も、いつの間にか変化していくのかと
コロナが落ち着き古い記憶になった時、また読みたいと思う日記である -
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いい意味で奇怪
どんな思考回路を持っていたら
こんな物語が生まれるのだろうか。
驚きと尊敬しかない。
その時代背景と、必死に生き抜く各世代の女たちの
力強くもメッセージ性の強い物語だと思う。
あと、人との繋がりや家族の繋がりを
大事にしたいと思った。