桜庭一樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
とらえどころのない話だなあと思って読み進めた。
男なのか女なのか、宇宙人なのか、異常者なのか、主要登場人物たちのキャラクターをつかめないまま話が進んでいく。
挙げ句、結末すら曖昧というか読者に解釈を任せるような感じだ。
と思ったが、なるほど、このとらえどころのなさは、登場人物たちの思春期の不安定さ、危うさ、自我のゆらぎ、そういったモヤモヤそのものなのだと捉えると、少しスッキリした。
あっと驚くどんでん返しを期待したり、伏線回収を期待したり、大団円を期待したり、そういう小説の読み方は「大人」なのであって、そういうカッチリした流れのストーリーを期待してしまう読者はこの小説に登場する大人そのものなのだ。
思春期の雑多な妄想を思い出させるようなお話でした。 -
Posted by ブクログ
ありがちなストーリーも、謎の世界観やら、不思議な語り口やら、妙なキャラクター設定やら、で新しい感じになるんだから不思議だ。
いやまぁ言うほど目新しいわけでもないんだけど、身近な人の死を乗り越えるのに時間がかかってやっと死に向き合って周りの人たちも死を忘れようとしていたけどそれじゃダメなんだと気がついて新しい旅立ちである。
と、略し過ぎだけど、一番辛いのはなみちゃんで、頑張って無理して話しかけたけど酷い扱いを受けて、でもって主人公はまぁ友達を傷つけたけどしょうがないかー、的な。いやこれはなみちゃんの将来が危ぶまれるが、しょせんはメガネの地味な子なのでこの扱いもやむなし。なにしろ美男美女ばかりでてくるこのお話、下手に思春期に読むとやばそうよ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレなぜ自分がこの作家が好きだったのかよく分かった作品。少女を埋めるでは、考え方や思想が驚くくらい同じでびっくりした。
家父長制に違和感を感じ、従順できずにもがいた女性の話。「女性だからこうあるべき」っていうのに従う方が楽なこともたくさんあると思うけど、そうやって生きることが苦しい生物学的に女である人もいる。
ジェンダーギャップ指数の順位が低い日本の、女性の幸福度は高いときく。男の人に稼いでもらって、奢られたり守られたり、仕事で重い責任を負うより専業主婦が希望って女性も多いだろうから、それを希望する女性にとっては、その生き方はかしこく正しいと思う。でもその生き方を希望しない女性は、煙たがられて排除されるべきなのかな?
持ってしまった違和感を捻じ曲げることができない私も、その社会では異分子だったと思う。その点新しい所謂東京的な価値観は、息がしやすい。
正論は自分を守る命綱、まさにそうだった。
キメラ以降では、問題をただ切り捨てるのではなく、後の世代のために思考して進んでいくべきというメッセージを強く感じたが、私もそう思う。 -
Posted by ブクログ
ここは森の中だろうか?
穴の中にうずくまる動物がいる。裏表紙を開くと小さな赤ちゃんもいてびっくりした。『少女を埋める』は淡いピンク色の本で、厚さや手触りはまるで"日記"のようだ。
『私の男』で著者を知り、上手い作家さんだと思っていたら、第138回直木賞を受賞された。
本書には、著者初の自伝的小説「少女を埋める」と、論争の経緯を綴った「キメラ」、書き下ろし「夏の終わり」の3篇が収録されている。
父の危篤を母より知らされ、7年ぶりにコロナ禍の鳥取に帰省した「わたし」
同じく地方に実家があり、父を看取る経験をした私には、読むのが辛くなる話だった。
「田舎特有の閉塞感、親からの抑圧感で押しつぶされそうだった少女時代。自分を守るため弱い子供、弱い女性の仮面を付けなければならなかった・・
埋められないように」
「大昔とちっとも変わらない封建的な社会が自分の周囲にも頑強に存在し続けていたのだった」など
一つ一つの言葉が突き刺さってくるようで、胸が痛くなった。 20代後半、母親が連れてきた神社の宮司との結婚話や、父親の葬儀で頼んだ若いタクシー運転手から入るメールの話は、決して誇張されたものではないと思う。
田舎では時間がゆっくり流れる。
私も、帰省時は早口にならないよう気をつけて、人との距離にもより慎重になった。
「少女を埋める」を読み、私だけではなかったのだ。同じなんだと、どこかほっとしている自分に気づかされた。
騒動については初めて知って驚いたが、急に現実に引き戻されたようで気持ちが追いついていかなかった。
小説を読みながら疑問に思ったことがある。なぜ母親は娘を家に泊めなかったのか? 二階の子供部屋に貼り付けられた無数の付箋は何だったのか?
「夏の終わり」にその解答を見つけ、余白のピースがやっと埋まった気がした。
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Posted by ブクログ
良かった。わたしはやっぱりこのひとが好きだなあ……このひとの文章が好きだ、けど、特に今回は文章、というより「言葉」と、そう言葉にしようとするご本人が、と思った。
それはそうと、桜庭さんの描く地方都市、ものすごく大袈裟に昔のように書いているんだと思って、令和の、しかも歳上のひとたちの会話での言葉選びに心底驚いた。土地、文化、すごい。いや、自分の周りが現代的とは全然限らないんだけど。
わたしは、親の育て方か、環境か、自分の厚かましい性格か、とにかく何かを堪えたり受け止めてもらえないという経験が本当にまったくないなあ、と思った。ありがたいことであると同時に、それに自覚的になるのはとても難しい。だからこそ他者への理解や配慮も足りないことがある気がする。もう年齢的にも「生意気な若手」ではなく、「高圧的で馴れ馴れしいおばさん」になってしまう……
考えなければいけない。生きていかなければいけない。もっと考えたことがたくさんあると思うのに、うまく言葉にならない。でも読んで考えてしゃべって書いていきたいと思う。 -
Posted by ブクログ
物語として構築し直されているが、舞台はまごうかたなき我が故郷。ふるさとloveを公言してはばからぬ私には、とても考えさせられた本だった。
モヤモヤのある母と共に、大好きな父を看取る話。それが著者の意図とは違う読解で書評され、評論家やメディアとSNSを通じて闘う話…。
あの町の出身者として、また出版に携わるものとして、また親を看取った経験者として、すべてが身に迫るようでいて、また微妙な立場の違いゆえ居心地悪くもある。
山海に恵まれ、商いも豊か、人の心は大らかで住みやすさバツグン…と喧伝してきたふるさとは、視点を変えればこんなにも狭量な悪意に満ちた旧弊な場所だったか…。友人が「その街というより日本の地方の象徴として描かれているのかと」と言ってはくれたが、いいとこばかりに思えていたのは、やはり離れて住んでいるから、また「都会の成功者」ととらえられ優位性をもっているからだったのかもしれない。
モヤモヤも大きいのだが、そもそも文学って、そんな異視点を与えてくれるものではある。その意味でいつも書いてる感想のように「良かったあ」とはいえないが、意味のある読書でした!