桜庭一樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレほんタメで紹介されていた本。ある事件をきっかけに主人公の波間が学生時代の友人である中川くんと再会し、連絡先を交換するが、2人は実はパラレルワールドのあちら側とこちら側にいて、、というお話。
2人(メインは波間)こ数年間が描かれるのだけど、中川くんの世界ではコロナが流行して緊急事態宣言が出たり、オリンピックが延期されたり、有名人が亡くなったり、読者の現実とリンクしていて面白い。最後には波間の世界では2024になり追い越されているのも。
波間の考えていることが、思ったままの口調で書かれるのでこちらに直接語りかけてきているように感じた。大きなドラマがなくても、淡々と続く日常でも、私たちはここに存在し -
Posted by ブクログ
話は3部作構成。鳥取の名家赤朽葉家の女三代の物語。里で拾われた山窩の子供、千里眼の万葉。未来に起きることを幻視する。大奥様のタツのひと声で赤朽葉に嫁入り。その娘でレディースから漫画家になった毛鞠。恋愛、抗争、友情、そして青春の終わり。更にその娘、まだ何者でもない瞳子。万葉、毛鞠が主役の2部目までは、これはいわゆる大河小説か?という展開。日本の経済発展、オイルショック、バブルへと。
当時の風潮を思い出しながら波乱万丈の2人の人生を愉しむ。それが面白い。自分の親の世代の万葉も、自分の世代の毛鞠も私の知ってる時代とは少し違う気もするが地域の違いか、個人の違いか。そこは小説だから御愛嬌。
そして瞳 -
Posted by ブクログ
文の一つ一つは読みやすいのに、物語は湿っていて、重い。それでいて手が止まることのない面白さ。読み進めていくごとに、各々が抱えた「じごく」を、解消できない孤独感を見せられる。やるせなさに包まれる。でもまた読みたくなる。なんで?ほんとにすごい。「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」もそうだったが、ただの鬱小説ではなく、書かれている人々の感情、嫉妬、自己愛、狂気、孤独、偏愛、焦燥感、ぜんぶが刺さって抜けない。読み返したくなる。ただ嫌な展開を書くだけなら誰でもできるけど、それすら良いところに変えてしまうほどの圧倒的なストーリー構成力。
ジャンルを問わない短編集だが、それぞれのジャンルの世界観の面白さが際立 -
Posted by ブクログ
奇譚集、と銘打っているだけあって何とも奇妙な感覚をもたらす短編集。ただ設定が異質なのは骨になった男が妻と不倫相手のやり取りを傍観する表題作と、夜のホテルでホテルマンが見た幻の話「五月雨」だけで、他は日常で有り得る話。しかし大学で一目惚れした相手をただ見つめるだけの話「モコ&猫」が、アパートの隣人との交流から己を振り返る「冬の牡丹」が、田舎での地元の子との冒険「赤い犬花」が予想外の歪さを見せてくる。映写機でのフィルムを見せられているような距離感から急に距離を詰めて揺さぶって来る語りがが桜庭さんらしい。「冬の牡丹」「赤い犬花」に漂うどうしようもない切なさが響いた。
-
Posted by ブクログ
100本近い映画が取り上げられていて、どれも見てみたい気にさせてくれます。
100はこれから見るには大変だなぁ、1日1本見ても100日。
映画館では見れないからNetflixで見れるか…
各話の冒頭の小話は、同時代の同地域にいた身には懐かしいというか、あーそうねというか。やはり子供の頃なので狭い範囲で生きてたからか自分の記憶と違うところとかあったり。
映画館は田舎の割にあったほうなのではと思っていた、松竹系と東宝系、もう一つあった気もするけど違うかも。多分今はない。駅前にシネコンが1館あるだけのはず。
去年、実家近くの本屋に行った際に過去から現在の写真が掲載された本が置いてあった。あういうのに -
Posted by ブクログ
ネタバレ大きな出来事が複数起こっているにも関わらず、淡々と大きな波がなく進んで行く物語。
近年の桜庭一樹作品という感じの、緻密な物語の構成で淡々としているけれど、読者を飽きさせない。
主人公の波間がさまざまな人に出会い、日々を漂っていく。
この物語は複数のサバイバー達のその後の物語だと感じた。
病気や事件の渦中にいる時には周囲から同情され注目される。
ただ、病気が治った後や経過観察中、事件が世間で忘れ去られても当人の人生は続く。
むしろ、渦中にいるときよりも、ずっと長いかもしれない。
物語後半、「正しい被害者ってなんでしょうね…?」というセリフがある。
激昂していた優里亜(かもしれない人)から発せ -
Posted by ブクログ
一気に読み終えてしまった。
そして、自分の魂がこの離島の夏の海と山の間にある通学路あたりにまだ浮遊してる気分。(終わりは冬ですが)
中学2年の少女。
大西葵は学校ではおちゃらけたりして、友だちに囲まれてる。幼馴染の田中颯太とは、ゲーム仲間。
でも家に帰ると、ママが飼ってるペット・・心臓と足が悪くてアル中の義父がいて、
ママにも義父にもちゃんと話すことさえできない。
そんな時クラスで地味な図書委員の宮ノ下静香を学校外で見かけた。彼女は学校と違って、まさしくゴスロリ(葵がゴスロリという言葉を知ってだかどうかは分からないが)だった。
「いいもの見せてあげる」
「いいものって?」
「死体」
接点