あらすじ
小林波間、32歳、先日偶然再会した大学の同級生中川くんと、どうやら別の東京を生きている。向こうの世界では世界規模の感染症が広がり――NEW桜庭ワールドに魅了される傑作長編!
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Posted by ブクログ
コロナがある世界とコロナが無い世界のパラレルワールドを、あるキッカケでLINEだけ繋がる事が出来た2人の話し。
主人公の波間の世界はコロナが無く、オリンピックもそのまま開催される。乳癌を患っていて治療を続けている。
友人の中川君の世界はコロナがあり、現実に実際起きた事なんだけど、コロナが終息した今読むとそんな世界本当にあるの〜と思う波間の気持ちにも時々なってしまった。
乳癌の治療や心情がリアルで、表立って本当の気持ちを話す人はあまり居ないから癌サバイバーの方は良くも悪くも色々思う所があると思う。
波間の言う、言いたい事があまり言えなくなる気持ちに共感した。
自分が良いと思ってる事でも、その人にとっては傷付く事かもしれないし、自分にとってどうでもいい事がその人にとってはとても大事な事だったり…
辛い事や悲しい出来事があってもドラマや映画の様に終わりは無く、波間がありながら人生は続いてく。
Posted by ブクログ
すっごい良かった。パラレルワールドの彼とLINEでだけ会話できる……というベタな設定。でも向こうの世界だけコロナ禍だったら……?というのに鳥肌。パラレルワールドのラジオに私もメール送りたいなあ。ハライチのターンにそんなコーナーあったね。
Posted by ブクログ
このジャンルの本を久しぶりに読んでみた。
パラレルワールドなんだけど、世界線がちょっと変わっていてとても面白いと感じた。あと絶妙に散りばめられた時事ネタも。
Posted by ブクログ
何かを持っているかいないか(それが一般的に良いことか悪いことかは関係なく)で、一線のあちらのこちらに分断されてしまいがちな世の中で、その一線を超えようと対話すること。
それは簡単ではないかもしれないけど、対話しなければ何も始まらない。
コロナ禍を経験した私たちだからこそ、その経験をあらためて振り返らないといけないんじゃないかと思った。
Posted by ブクログ
どんな本も感じることはある。
パラレルワールド
選択しなかった(?)ほかの世界
そちらの人とつながるのは
村上春樹とか得意だから 私はそっちのほうが好き
がんサバイバーの話
友人にもいるからだいたいはわかる
(とはいえその人の感じかたにはとうていなれない)
普通の更年期も辛いものだよ
死と隣り合わせではないけれど
ずっと続く鬱にはなるかも で
会話の言葉遣いが好きでないので
速読に近い読み方をしてしまって
入り込めず
そして
最後もなんだか あれ? だった
桜庭一樹先生のファンなので購入しました。
抗がん剤治療を行う波間はある日別の世界に住む同級生の甍と連絡先を交換する。甍の世界では大変な感染症が流行し始めているようで……。
あらすじを読むとSFの色が強いのかなと思いましたが、普遍的な生活の物語でした。パラレルワールドのひとと連絡が取れることはフィクションですが、病気や人間関係の苦しみ、異性からの視線など、共感できるもやもやした感情が描かれていて苦しくなりました。
Posted by ブクログ
桜庭一樹さんの作品との出会いは中学生の夏休みに「荒野」を読んで読書感想文を書こうとしたのがきっかけでした。
それからなんやかんや今も読見続けているわけです。彼女の作品は私に合うみたいです。★★★★★★
今作もとても興味深くて楽しむことができました。
Posted by ブクログ
かなり良かった。
上手。
コロナ禍があったからこそ書けた話だと思う。
あっちの中川くんもこっちの中川くんも元気でいてくれたらな。
世界線が違うと、もう会えないんだなーと思うと寂しい
Posted by ブクログ
パラレルワールドの小説。
この世界とあの世界、どっちも一緒であり一緒じゃない。ちょっと間違えれば世界線の波間にいて、無になる。なんかわかるようなわからないような。
この世の中の状況を織り交ぜながらの話し、
私もガンサバイバーだけど、もう普通に生きている。人からの見た目や価値観はさまざまだなと思うし、言わなくてもいい事が増えてくるのは同感。
Posted by ブクログ
コロナがある世界とない世界、二つのパラレルワールドが主人公と別世界の男の子とのLINEを通してだけ繋がるお話。
同じ世界でも違う世界でも、みんな違う人生を生きているし、人生同士の境界線は曖昧。他人事として考えるか自分ごととして考えるか、いつでも選択できるし、手放すのも寄り添うのも自分次第である。
Posted by ブクログ
読み終わって、当事者意識、について考えている。
自分ではない立場の人の状況や気持ちになるのが難しいって事はよく分かるし、いつか自分もその当事者になるかもしれないっていう想像も難しい。
頑張って想像してみたところで、憶測に過ぎなくて、
かえって失礼かも、とか、逆の立場なら、やめてよっ!てリアクションをしてしまうかもしれない。
自分ではない誰かの気持ちを丁寧に書ける作家さんって、ホントすごい。とも改めて思う。
二つの義務、についても考える。
少数派が、多数派の和を乱すだけ、困惑させるだけだから黙っている沈黙。
少数派だから、社会に受け入れて頂くため説明し、努力を重ね、理解して頂かなくてはならないかの様な、謎の説明責任。
確かに、どっちも嫌でたまらない。
大学生の頃のサークル活動の事も思い出した。
私、イタい子認定されて、軽くハブられてたらしい。
本人、ぜんっぜん気がついてなくて、別に居心地の悪さなんかも感じてなかったのに、後輩が突然キレた。
「あんだけ無視されて何も感じないとか信じられない!」
彼女がキレたのが、義憤だったのか、もしかしたら向こう側の人で反応しない私が面白くなかったのか、その辺は分からないけど、なんかとりあえず彼女の言葉にショックを受けた。
ハブられた事より、可哀想な子認定を突きつけられた事がショックだったのかな、と四半世紀以上経って思い至っている。
別に真相なんてどうでもいいし、もう連絡もとうの昔に途絶えているし、今更彼女に私が傷つけられる事なんてないし、ただ、それは気が付かなきゃならなかった事なのか?という静かな疑問が浮かんだだけ。
私も知らず誰かを傷つけたかもしれない。
私を作る細胞達が一つひとつ違って、何なら腸内細菌やら皮膚常在菌やらも併せて私を作っている様に、一人ひとり違う私達が大きな宇宙を作っているのかもしれない。そして彼女は私だったかもしれないし、私が彼女だったのかもしれない。
なんてことを考えた。なんか怖っ。
Posted by ブクログ
中盤まで面白く読み進んでいたのだけれど、最後のほうはちょっと混沌としていて少しすっきりしない感じが残った。LINEでやり取りしていた同級生が、どうやらパラレルワールドにいるらしい。向こうの世界では、自分や周りの人が違う選択肢や、違う運命をたどり、どうやら新型コロナウィルスという病気が世界的に巻き起こって大混乱をきたしているらしい。
そんな話が、もしコロナがなかったら…ということを想像させてくれたし、主人公が30代で乳がんの治療を経験した女性であることからの様々な思いもよくわかって(化学療法中の頭がぼんやりする感じや、白血球を増やす注射をした時の体の感覚など)、健康と病気、男性と女性、加害者と被害者など、いったい境界ってなんだろうと考えさせられた。
こういうふうにコロナが小説の中に昇華されてきているんだなあと思った。うんこビルとイカビルの違いが良く見る建物だけにおもしろかった。
Posted by ブクログ
久しぶりの桜庭一樹!
パラレルワールドとして存在してるこっちの世界の話が、コロナらへんで「あ、そうだった。ほんとに。この世界はこのままどうなってしまうんだろうと思いながら、それでも懸命に日常を続けていたな」と思い出して怖くなった。忘れていっちゃうのかな、こういうのも全部。
波間の病気のことも。当事者じゃないから私はなにも言えないけど、理解はしたいというか。でもその「理解」が上から目線に思われたり興味本位に思われたらどうしよう、とかは思うから、あんまり、あんまりなぁ。ただ本当に生きて、健康で、楽しく暮らしてほしいということは全人類に思っている。
主人公のお兄ちゃんに対して申し訳なくなるところがたくさんあったな。
私は姉がいるんだけど姉は私のことが大好きで、私もまあシスコンなんだけど私は甘えることの方が多くて。なのに姉は無償の愛を与え続けてくれるんだよね。そんな姉の姿が波間のお兄ちゃんと重なって、頼むから幸せであってくれと願った。お兄ちゃんの言う通り、愛しかないじゃん。愛しかないし、って。
はーーー、なんか明るくてよかったな。
人生はまだまだ続くもんな。
Posted by ブクログ
色々な考え方、色々な悩み、情報がいっぱいのこの世。白黒はっきりしない事もたくさんある。波間に漂う自分も弱い自分も認めてあげたい、そして大切な人に寄り添ってあげたいと思えた。SFかと思いきや、なんかいい本であった。
Posted by ブクログ
【更新されていく自分と自分の境界】
人からの影響、社会の出来事、環境の変化、
見たり聞いたり知ったことを自分なりに理解、想像して、自分なりの世界観ができている。自分の持つ認識の多くは無意識にも更新されていく。そして自分を動かしている。
普段は何気なく変わっていってて
忘れていってて
記憶から選択していってて
結局自分の境界はどこにあるのか
自分でもコントロールできないままに変わっていく、適応していく自分。自分と周りの関係性の不思議。
私も私たちも実は常にニューノーマルにいる、のかもしれない。
時にうまく言語化できない、自分との関係性とか周りとの関係性についての思いが綴られる。
あともうひとつ、
母親はどうしても心配する生き物なのか。
母と子、親と子の関係性も変わっていくものなのか。
Posted by ブクログ
ほんタメで紹介されていた本。ある事件をきっかけに主人公の波間が学生時代の友人である中川くんと再会し、連絡先を交換するが、2人は実はパラレルワールドのあちら側とこちら側にいて、、というお話。
2人(メインは波間)こ数年間が描かれるのだけど、中川くんの世界ではコロナが流行して緊急事態宣言が出たり、オリンピックが延期されたり、有名人が亡くなったり、読者の現実とリンクしていて面白い。最後には波間の世界では2024になり追い越されているのも。
波間の考えていることが、思ったままの口調で書かれるのでこちらに直接語りかけてきているように感じた。大きなドラマがなくても、淡々と続く日常でも、私たちはここに存在している、という波間の言葉がよかったな。この物語自体も、波間は病気のサバイバーであるけれど、ドラマチックな起伏はなく、まさに"波間"のような時間のまま最後まで決定的な結末で終わるのでなくてよかった。読後も色々考える余韻が残る作品でした。
Posted by ブクログ
パラレルワールド側とのやりとりがワクワクして面白かった反面、いろいろ気になって仕方がない。もうちょっと、あちら側との共通点や相違点を掘り下げて教えて欲しかったな〜!
こっちの中川くんとも仲良くなったらどうなるんだろ?でも、ならないところが、良いんだろうな〜
片胸がなくなってから、無になり楽になったという気持ち。。そうか、そういう人もいるのか。
30代から40代にかけての闘病生活、本当に辛いだろうと思う。
Posted by ブクログ
癌サバイバーが再発の恐怖を抱えながらも社会復帰し、自分を取り戻していく様子が、特別な事は何も起こらず淡々とつづられる。言いたいことを言わず、達観していく感じ。
Posted by ブクログ
大きな出来事が複数起こっているにも関わらず、淡々と大きな波がなく進んで行く物語。
近年の桜庭一樹作品という感じの、緻密な物語の構成で淡々としているけれど、読者を飽きさせない。
主人公の波間がさまざまな人に出会い、日々を漂っていく。
この物語は複数のサバイバー達のその後の物語だと感じた。
病気や事件の渦中にいる時には周囲から同情され注目される。
ただ、病気が治った後や経過観察中、事件が世間で忘れ去られても当人の人生は続く。
むしろ、渦中にいるときよりも、ずっと長いかもしれない。
物語後半、「正しい被害者ってなんでしょうね…?」というセリフがある。
激昂していた優里亜(かもしれない人)から発せられる言葉だ。
この言葉でふと性犯罪に遭い果敢に裁判に挑んでいる女性に対し、批判的な見方をする人が多くいることを思い出した。
「正しい被害者」でないと、かわいそうではないのか?
そもそも「かわいそう」と当事者達は思われたいのか?
被害者は強くあってはいけないのか、加害者に挑んではいけないのか?
「正しい被害者であれ」とすること自体、セカンドレイプなのだと思う。
パラレルワールドの中川くんがこの物語のキーマンだと思っていたけれど、そうでもないのかもしれない。
中川くんも漂う波間と出会った人の1人に過ぎないのかも。
この物語においてのパラレルワールドの中川くんについては、どのような人物だったのかもう少し考えたい。
Posted by ブクログ
波間の独白が、なぜか深く心に重しとなって入り込んできた。同じ病気になったわけでもなし、彼女のような思想?に近いわけでもないのに、何かが蠢いていて、苦しかったが、その意味は未だにわからない。
けれど、パラレルワールドを人生と考えると、少し楽に生きれるようになるのかもと一筋の灯りも。
折しも「シュタインズゲート」が出てくる、懐かしい。
もういちど、視点を変えて観てみたい。
Posted by ブクログ
アフターコロナの小説か…
なんだろう…、桜庭一樹さん自身のこと?
ショートカットになってたし…
最初短編集かと思ってたら、一冊一人の主人公の話だった。
とりとめもなく終わった。
でも、コロナの時のこと忘れかけてると気づいた。もう遠い話のような…
Posted by ブクログ
3.8/5.0
病気を経験し、他の人に比べて「死」を近いものに感じている女性のお話。生きていることと、死んでいくことの価値とは何か。劇的でドラマチックな何かが起こるわけではない、地道にコツコツ踏ん張りながら生きている全ての人に捧ぐレクイエム。
Posted by ブクログ
桜庭一樹さんが作り出す残酷で美しい世界観が大好きだが、この作品は淡々と話が進んで行き、引っかかる部分が少なかった。
ただ、文章が綺麗でどんどん読み進めることができる点や、独特の台詞回しは健在で良かった。
Posted by ブクログ
先日、大学の同級生だった中川君と偶然再会した。彼と私は、どうやら別の東京を生きている。向こうの世界では世界規模の感染症が広がり…。切なくもすがすがしい、パラレルフィクション。
パラレルワールドといえば村上春樹が思い浮かぶけれど、桜庭一樹の描くそれはずいぶん趣が違った。コロナのある世界とない世界など、現実の事柄が多く散りばめられて、3年前のエッセイ「東京ディストピア日記」を小説化した感じ。物語は途中の盛り上がりもなく淡々と進み、ラストもやや拍子抜けだった。
(C)
感じ方は様々
パラレルワールドがあり、向こうの世界ではコロナのパンデミックが起こっている。しかしこちらは通常通りという設定。こちら側にいる主人公の波間の視点で話が進む。だから、あの時のことを客観的に思い出す。学校が全て休みになったが、あの対応でよかったのか?コロナ禍があったから、今はやりやすいこともある。などなど。10年後に読み直すと、どんな感想を持つのか?興味がある。
Posted by ブクログ
SFの要素がメインかと思いましたが、病とともに暮らす日常が淡々と描かれていました。誰もが感動するようなドラマはないですが、病と向き合う中で揺れ動く心情が繊細に表現されているところがすきでした。
Posted by ブクログ
パラレルワールド世界で、癌を患った女性の日常を淡々とモノローグや日記のように描いている。LINEとか現代のコミュニケーションの取り方があるなか、様々な人や出来事が、風景のように現れては流れ行く。パラレルワールドとの関係性が発展していくかと思いきや、日常のなかの風景に取り込まれていき、覚えておく日常の記憶の一つとしてあるように描かれていた。コロナをあっちの世界にしたのは、コロナ禍の閉ざされた中でLINEとかzoomでしか繋がれなかった状況と似てて、実際コロナ禍は、パラレルワールドみたいだったなと思った。
Posted by ブクログ
治療を続けながら自分の生活をゆっくり立て直していく数年間の間に、主人公の気持ちが目まぐるしく複雑に変化していく。
元気で明るくて前向きな病人という面だけを見せ続ける社会的な義務
少数派が社会に受け入れていただくため、説明し、努力を重ね、理解してもらわなければならないような義務
そんな謎の義務感にかられたり。
そういうのもういいかなと思ったり。
でも、心が疲れて抗わなくなったり。
自分の言葉が、暴力的に誰かの心を打撃してしまう可能性を考え出して沈黙するしかなくなったり。
複雑なままに終わった。
特に理由はないが、しばらく桜庭一樹から離れていただけに、このNEW桜庭ワールドは、本当にNEWだった。
Posted by ブクログ
齢を重ねるに連れ、他人を理解できたと思うことがどんどん減ってきた。
人と同じ物を見ても感じることは
こんなにも違うのか
同じ言葉を受け取っても全く別の意味にとらえることもあるのかと
経験を積めば積むほどその違いの大きさに呆然としてしまうのだ。
だから自ずと、口に出して言わないことも増えている気がする。
言わなかったことの方に、本当に大切だと思うことがあったとしても。
私の周りにもパラレルワールドがあるといいな。
そこの世界ではもう会えなくなってしまった人も
元気で生きていて
一緒に旅行に行ったりお散歩したりしてるのかな。
そう思ったら嬉しくて泣けてきたわ。。。
Posted by ブクログ
パラレルワールドのお話。
私たちが経験したコロナ禍の中川くんの世界と、主人公波間の通常の世界が交錯する。
どのように終わるのかと続きが気になって、このパラレルワールドに答えがあるのかとぐんぐん読んだけど、答えはなく、私的にはすごい中途半端に終わってしまった気がする。
コロナ禍こーだったなと、ちょっと懐かしく思いつつも後半ちょっとキツかった。
主人公が癌に侵されており、その独白も考えさせられてちょっときつかった。
Posted by ブクログ
主人公の小林波間32歳は、胸に悪性腫瘍ができたため、摘出手術を前にして腫瘍を小さくする辛い点滴治療を受けていた。
通院の日に波間の目の前で、通り魔が幸せそうな若い女性を刺す事件に直面する。
その混乱した現場で、大学時代の同級生だった中川と偶然に出逢い、LINEのIDを交換して後日逢おうと約して別れるが、何故かその後逢うことができない。
あの出逢いは何だったのか不思議なのだが、ただLINEでのやり取りは可能だった。
そのうちに波間が住む東京と、中川が住んでいる東京とは、どうやら異なる世界らしいことを知る。
異なる東京の同じ場所からビデオ通話を繋げ、映像を観ながら会話を続けていた。
中川との偶然な出逢いから始まったお付き合いは、波間にとって心と身体が癒やされる時だった。
波間の困難な病気などは些細な出来事で、世の中は淡々と日常が進み、個人と社会との繋がりは曖昧で見え難い。
そんな時、世界中に恐怖を巻き起こす感染症が、中川が住む東京でも一挙に流行し、医療崩壊が起こっている事実を知らされる。
そのために2020年開催のオリンピックも、延期が検討されているとのことだ。
その後には大国が小国へ理不尽にも侵攻し、激しい戦いが引き起こされた。
それとは対照的に、波間の住む東京は、何の変化もなく淡々とした日常が続いている。
そして徐々に中川とのLINEも通信が滞るようになり、いっ時は密接にお付き合いをしていた彼の存在も希薄になって行く。
この物語は、パラレルワールドという設定の基、人の心の危うさ、儚さ、意思とは異なる心の動き、そして複雑さがテーマとなっている。