【感想・ネタバレ】彼女が言わなかったすべてのことのレビュー

あらすじ

小林波間、32歳、先日偶然再会した大学の同級生中川くんと、どうやら別の東京を生きている。向こうの世界では世界規模の感染症が広がり――NEW桜庭ワールドに魅了される傑作長編!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

コロナがある世界とコロナが無い世界のパラレルワールドを、あるキッカケでLINEだけ繋がる事が出来た2人の話し。
主人公の波間の世界はコロナが無く、オリンピックもそのまま開催される。乳癌を患っていて治療を続けている。
友人の中川君の世界はコロナがあり、現実に実際起きた事なんだけど、コロナが終息した今読むとそんな世界本当にあるの〜と思う波間の気持ちにも時々なってしまった。

乳癌の治療や心情がリアルで、表立って本当の気持ちを話す人はあまり居ないから癌サバイバーの方は良くも悪くも色々思う所があると思う。

波間の言う、言いたい事があまり言えなくなる気持ちに共感した。
自分が良いと思ってる事でも、その人にとっては傷付く事かもしれないし、自分にとってどうでもいい事がその人にとってはとても大事な事だったり…

辛い事や悲しい出来事があってもドラマや映画の様に終わりは無く、波間がありながら人生は続いてく。

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2025年06月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

久しぶりの桜庭一樹!
パラレルワールドとして存在してるこっちの世界の話が、コロナらへんで「あ、そうだった。ほんとに。この世界はこのままどうなってしまうんだろうと思いながら、それでも懸命に日常を続けていたな」と思い出して怖くなった。忘れていっちゃうのかな、こういうのも全部。
波間の病気のことも。当事者じゃないから私はなにも言えないけど、理解はしたいというか。でもその「理解」が上から目線に思われたり興味本位に思われたらどうしよう、とかは思うから、あんまり、あんまりなぁ。ただ本当に生きて、健康で、楽しく暮らしてほしいということは全人類に思っている。

主人公のお兄ちゃんに対して申し訳なくなるところがたくさんあったな。
私は姉がいるんだけど姉は私のことが大好きで、私もまあシスコンなんだけど私は甘えることの方が多くて。なのに姉は無償の愛を与え続けてくれるんだよね。そんな姉の姿が波間のお兄ちゃんと重なって、頼むから幸せであってくれと願った。お兄ちゃんの言う通り、愛しかないじゃん。愛しかないし、って。

はーーー、なんか明るくてよかったな。
人生はまだまだ続くもんな。

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2025年02月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ほんタメで紹介されていた本。ある事件をきっかけに主人公の波間が学生時代の友人である中川くんと再会し、連絡先を交換するが、2人は実はパラレルワールドのあちら側とこちら側にいて、、というお話。
2人(メインは波間)こ数年間が描かれるのだけど、中川くんの世界ではコロナが流行して緊急事態宣言が出たり、オリンピックが延期されたり、有名人が亡くなったり、読者の現実とリンクしていて面白い。最後には波間の世界では2024になり追い越されているのも。
波間の考えていることが、思ったままの口調で書かれるのでこちらに直接語りかけてきているように感じた。大きなドラマがなくても、淡々と続く日常でも、私たちはここに存在している、という波間の言葉がよかったな。この物語自体も、波間は病気のサバイバーであるけれど、ドラマチックな起伏はなく、まさに"波間"のような時間のまま最後まで決定的な結末で終わるのでなくてよかった。読後も色々考える余韻が残る作品でした。

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2023年12月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

パラレルワールド側とのやりとりがワクワクして面白かった反面、いろいろ気になって仕方がない。もうちょっと、あちら側との共通点や相違点を掘り下げて教えて欲しかったな〜!
こっちの中川くんとも仲良くなったらどうなるんだろ?でも、ならないところが、良いんだろうな〜

片胸がなくなってから、無になり楽になったという気持ち。。そうか、そういう人もいるのか。
30代から40代にかけての闘病生活、本当に辛いだろうと思う。

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2023年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大きな出来事が複数起こっているにも関わらず、淡々と大きな波がなく進んで行く物語。
近年の桜庭一樹作品という感じの、緻密な物語の構成で淡々としているけれど、読者を飽きさせない。
主人公の波間がさまざまな人に出会い、日々を漂っていく。

この物語は複数のサバイバー達のその後の物語だと感じた。
病気や事件の渦中にいる時には周囲から同情され注目される。
ただ、病気が治った後や経過観察中、事件が世間で忘れ去られても当人の人生は続く。
むしろ、渦中にいるときよりも、ずっと長いかもしれない。

物語後半、「正しい被害者ってなんでしょうね…?」というセリフがある。
激昂していた優里亜(かもしれない人)から発せられる言葉だ。
この言葉でふと性犯罪に遭い果敢に裁判に挑んでいる女性に対し、批判的な見方をする人が多くいることを思い出した。
「正しい被害者」でないと、かわいそうではないのか?
そもそも「かわいそう」と当事者達は思われたいのか?
被害者は強くあってはいけないのか、加害者に挑んではいけないのか?
「正しい被害者であれ」とすること自体、セカンドレイプなのだと思う。

パラレルワールドの中川くんがこの物語のキーマンだと思っていたけれど、そうでもないのかもしれない。
中川くんも漂う波間と出会った人の1人に過ぎないのかも。
この物語においてのパラレルワールドの中川くんについては、どのような人物だったのかもう少し考えたい。

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2023年07月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

桜庭一樹さんが作り出す残酷で美しい世界観が大好きだが、この作品は淡々と話が進んで行き、引っかかる部分が少なかった。
ただ、文章が綺麗でどんどん読み進めることができる点や、独特の台詞回しは健在で良かった。

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2025年02月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

治療を続けながら自分の生活をゆっくり立て直していく数年間の間に、主人公の気持ちが目まぐるしく複雑に変化していく。

元気で明るくて前向きな病人という面だけを見せ続ける社会的な義務

少数派が社会に受け入れていただくため、説明し、努力を重ね、理解してもらわなければならないような義務

そんな謎の義務感にかられたり。
そういうのもういいかなと思ったり。
でも、心が疲れて抗わなくなったり。
自分の言葉が、暴力的に誰かの心を打撃してしまう可能性を考え出して沈黙するしかなくなったり。

複雑なままに終わった。

特に理由はないが、しばらく桜庭一樹から離れていただけに、このNEW桜庭ワールドは、本当にNEWだった。

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2024年04月18日

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