ものすごく切ない気分になる短編集でした。
読みやすく美しい文体に、ファンタジックでありながらも、人間の内面をえぐるような心情描写とそのリアリティさ。堪能させていただきました。
本書はフォロアーさんの素晴らしいレビューを読んで手に取った本でした。著者の桜庭一樹さん自体も初読みの作家さんです。
「一樹(かずき)」という名前から男性の作家さんだと思っていたのですが、女性の作家さんなのですね。恥ずかしながら知りませんでした。2008年には直木賞も受賞されているし・・・。いやはや、まだまだ知らないことばかりです。
本書は、人間そっくりの姿をした竹の妖怪である吸血種族『バンブー』と人間との禁じられた交流を描いた物語3本が収録されている中短編集です。
吸血種族といえば『吸血鬼バンパイア』を思い出しますが『バンブー』はバンパイアとは若干違います。血を飲んだり、日光に当たると死ぬところなどは同じですが『バンブー』は不老不死のバンパイアと違って、歳は取りませんが不死ではありません。『バンブー』の寿命は120歳くらいで人間よりも少し長生きというところです。
本書に収録されているのは
〇 ちいさな焦げた顔
〇 ほんとうの花を見せにきた
〇 あなたが未来の国に行く
の3篇で、どの短編も『珠玉の逸品』と言っていいでしょう。
3篇とも描かれた時代が違い、登場人物もほとんど変わってしまいますが、各篇が少しずつリンクしているので
「ああ、あの時のあれはそういうことだったんだ!!」
という驚きがあって楽しめます。
特に僕は第1篇の『ちいさな焦げた顔』が良かったですね。
『ちいさな焦げた顔』は、マフィアによって一家皆殺しにあった家族で唯一生き残った10歳の少年をバンブーの青年が助けるところから物語は始まります。
バンブーの青年は相棒の男性バンブーと二人暮らしをしており、そこへ人間の少年が入り込み、バンブー2人と人間の少年1人という奇妙な3人の同居生活が始まります。
そして人間の少年はマフィアの追っ手を逃れるために女装し、『少女』として新しい生活を送るのです。
バンブーの2人が人間の少年を実の弟のように、息子のように、そして恋人のように愛するところは微笑ましいのですが、そんな幸せな生活は長くは続きませんでした。
バンブーの2人はバンブーの重大な掟を破っていたのです。バンブーの厳しい掟では、バンブーは人間とかかわってはいけなかったのです。
彼ら3人に訪れる過酷な運命は・・・。
第2篇の『ほんとうの花を見せにきた』は、バンブーの掟を破った『はぐれバンブー』の少女と人間の少女との交流。
第3篇の『あなたが未来の国に行く』では、人間とバンブーが分かれて暮らすこととなった歴史的な事件が描かれます。
どの物語も非常に切なく、限りある命の大切さを思い起こさせてくれます。
どの物語の登場人物にも感情移入でき、自分だったらどうするだろうか?と自問自答する場面もたくさんありました。
この3篇の物語に共通するのは、
人間以上に『人間らしい心』を持ったバンブー達の美しい生き様
です。
この物語には、たくさんのバンブーが登場し、同じくたくさんの人間達も登場するのですが、第1篇のマフィア達のようにここに登場する「人間たち」のその心の汚く、愚かなことといったらありません。
この「汚い心を持った人間」と「人間以上に『人間らしい心』を持ったバンブー」の対比には、読者は考えさせられるところが多いと思います。
第1篇、第2篇に登場する「はぐれバンブー」の少女ですら、信じた人間との約束だけは絶対に破らないのですから。
この物語に描かれるようなバンブー達は理想の存在かもしれませんが、そのような心を持とうという意識を持つことは、僕たちでもできると思います。
日々の生き方をもう一度思い起こさせてくれるような素晴らしいストーリーでした。
ぜひ、バンブー達を主人公にした物語を今後も書いて欲しいと思います。
と言う訳で、物語は素晴らしかったのですが、一点だけ注文をつけるとすれば、文庫本版の表紙イラストですね。
特に、僕が感銘を受けたフォロアーさんが単行本版の方でレビューされていたので、本書の文庫本版を手に取った時の違和感ったら半端じゃありませんでした。
あれ?これ違う本じゃね?
と素直に思いましたよ。
そして、本書一読後に再度このイラストをまじまじと見てみたのですけど、
ちょっと誰だか分からない!
ネットで検索してやっとこの表紙の少女は第1篇の主人公の少年が女装した姿らしいというのが判明したのですけど・・・僕の脳内イメージとは違いすぎます・・・。女装した男の子の絵とか誰得・・・。
やはり、単行本版のようなダークなイラストの方が、本書には似合うのではないでしょうか・・・。
・・・・・・というか、もしこういうのが得意なイラストレーターの方に依頼するなら、表題作であり、第2篇の主人公『はぐれバンブーの少女・茉莉花』を描くか、いっそのこと、もっとこうBL本っぽいかんじで、第1篇の美男子バンブーの二人「ムスタァ」と「洋治」をフィーチャーしなきゃだめでしょ!!!(※念のため、本書にはBL要素はありませんのでご注意ください)
って、最後に訳分からないレビューになりましたけど、物語は最高ですので、ぜひ読んでみてもらいたい1冊です☆