町田康のレビュー一覧
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あの読みにくい軍記『太平記』の、町田康による融通無碍自由闊達口訳(台詞は基本的に現代大阪弁訳)! めちゃくちゃ分かりやすくとっつきやすい。まず冒頭、大覚寺統・持明院統の二統迭立が生まれ、やがて後醍醐帝践祚に至るまでの流れ、寿永元暦の争乱から鎌倉幕府成立、そして北条氏の権力掌握、得宗家の確立、北条高時政権に至るまでの歴史の流れの描き方が秀逸。どんな歴史学の書よりも分かりやすい。 そこから『太平記』原典に基づき口訳がはじまるのだが、その文体・語り口の面白いこと面白いこと! 自分ある程度古典・古文の素養があり、その上で生粋の大阪生まれ大阪育ち大阪弁ネイティブでほんと良かった。例えば、文観上人が訊問(拷問)役の武士を見て思う。「厭な奴ら。まるで泉佐野のヤンキーですやん」 こんなん大阪以外の人に分かるかw しかもこんな語り方なので何も知らないで読むと、翻案だと思うだろうが、さにあらず。実は町田康は原典に忠実に(語学的に忠実というわけではなく、内容的に忠実に)訳している。原典に書いてあることは基本すべて、さらに洞察力と想像力により、書いていないことまでも言語化している。お見事。ゆえに、この作品も『ギケイキ』と同様、原典を少し読み、それに対応する町田口訳を読み、あの短い叙述をこれだけ分かりやすく行間を埋めて語るか~と舌を巻き、しかもこんな語り方するか~げらげらと爆笑するのが正解。と気付いたのが、巻の半ば。残念! しかし、本書、実は『太平記』全四十巻のうちの巻三までの内容。果たして『ギケイキ』と同じく、続きが出るのか。出てほしい
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Posted by ブクログ
私自身も、ずっと「猫にかまけて」いる人生なので、(現在も3"頭"と暮らしている)読んでいて猫たちの気持ち、表情、行動、また著者と猫との会話も「わかる!!わかる!!」と親近感を持ちながら読みました。
ヘッケちゃんの所は大泣きしました。
見たくなかった「白血病」という文字。発症したら数ヶ月で亡くなってしまう事は理解してましたから...。しかし、それでもヘッケちゃんの生きたいという強い生命力と、ご夫婦の懸命な看病で、わかってはいながらも、期待して読んでました。でも辛かった。
ココアちゃんの最期も、最近まで同じく22歳まで生きていた愛猫がいたので気持ちがとても分かりました。
猫との別れはとても辛いけれど、この先も敢えて自ら「猫にかまけて」いくんだろうな、、としみじみ思いながら読み終えました。
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Posted by ブクログ
ネタバレ最高に面白かった。関西弁、特に河内弁がわかることでこれほど文学作品を楽しめることがあるとは思いもしなかった。小さな頃から親しんだ吉本新喜劇のヤクザの言葉や、富田林出身の父が友人とふざけて話していた言葉が、なんとも言えず心地よいリズム感で繰り出されて読むのがやめられなかった。
口下手で、経済力も文化的資本も持たない声の小さな存在が、持てる人間にいいように言いくるめれ、掠め取られ、尊厳を踏み躙られる様子は、現代の日本をみていても本質的には大きく変わっていない。だからこそ、これを読んで熊太郎の心情につい肩入れしてしまうんだろう。
作風は違うものの、芯にある硬質な視点は以前読んだ小川洋子の「ことり」と同質なものがあるように思った。
熊太郎が殺害した葛木ドールと弟モヘアはなぜ2人だけカタカナの名前、英語名だったのだろうとずっと考えながら読んだ。
江戸から明治に時代が変わった時期に、熊太郎は新しい社会や時流に軽快に乗り換えることをしなかった、できなかった、働いてお金を儲けて蓄え、資金力の多寡に価値を置いて生きる、そういう価値観をどうしても受け入れられなかった、そんな暗示をしているのだろうか、など色々考える。
とにかく、面白くて、笑えて、哀しくて、胸が痛んで、本当に良い読書だった。
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Posted by ブクログ
ネタバレ最初の一歩で躓いた人間なんだと自暴自棄になり、しかしその躓きは自分の思い込みで、自分は思い込みに怯えて人生を棒に振ってしまったのではないか
こここそが引き返し不能地点だ、と思っていたところは実は楽勝で引き返せる地点だった
行き止まりだと思ってぶち当たった壁は紙でできていて、その先には変わらぬ世界があった
もしや自分は取り返しがつかないことをしてしまった、もう元の自分には戻れないと気づいた瞬間の沈んでいくような恐さと、それでも世界は終わってくれないことに対する驚愕に近い絶望感
最後の山で過ごした熊太郎の心境を想像すると切なくなった
思弁的な熊太郎が何を考えているのか読者は知っているし、「こいつおかしいぞ」と思うところもあれば普通で常識的なところもある、むしろそっちの方が多いということもわかる。共感もできるし村民の中では一番こちら側に近い人間だとも感じさせる
ただ、その熊太郎の思弁を知らない村民からしたら、熊太郎はどんな人物に見えていただろう
大量殺傷事件を犯した人の中にもしかしたら熊太郎のような人間がいるのかもしれないと思うと怖い
境界線というのがやっぱりわからない…