【感想・ネタバレ】くっすん大黒のレビュー

あらすじ

賞賛と悪罵を浴びた戦慄のデビュー作
大黒様を捨てようとして始まる日常の中の異次元世界。日本文学史に衝撃的に登場した芥川賞作家の処女小説。「河原のアパラ」を併載。

三年前、ふと働くのが嫌になって仕事を辞め、毎日酒を飲んでぶらぶらしていたら妻が家を出て行った。誰もいない部屋に転がる不愉快きわまりない金属の大黒、今日こそ捨ててこます日本にパンクを実在させた町田康が文学の新世紀を切り拓き、作家としても熱狂的な支持を得た鮮烈なデビュー作、待望の文庫化。
解説・三浦雅士

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Posted by ブクログ

ネタバレ

何が起こったかよりも、その人が何を考えているかに興味がある私にとって、この本は面白かった。

『くっすん大黒』
大黒様の置物のせいで、バイト先の店主とその客に振り回される2人の若い男性のお話。
リアリズムを持ちながら自由に生きている人ってこんな感じなんだろう、と思った。

『河原のアバラ』
大抵のことはなんとかなるらしい。遺族に渡そうとした遺骨を、全然関係ない人にまかれてしまっても。又貸しされた車を盗まれても。

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2025年12月14日

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上田は某Nとか、某オレンジみたい。去勢をはって飲まれて自分がいなくなってる。ロッカーは服従するバカが嫌いね。というより脳無しか、自分で判断なんかしないやつら。楠木たちはそれをガハハって、偽らないしバカじゃないから。

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2025年09月30日

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独特だが勝手に入ってくるリズムのいい文章と変な夢みたいな展開で解説にあるとおり、梶井基次郎や太宰、坂口安吾のような苦悩が表現されるが、彼らと比べると笑いが仕掛けられている。鬱々としてはいるが、最後は笑いなのである。なんとかなれ、なんとかなったの笑いに心が軽くなる。

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2025年08月24日

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ネタバレ

「くっすん大黒」と「河原のアパラ」の2編の小説を収録。
文体がなんとも面白くて。とにかく長いのだ。文が始まると句点「。」かなかなか出てこない。それでも文章はわかりやすいのだ。あっぱれ。そして巻末の解説の中で、影響を受けて(わざとだろうが)すごく長い文章が現れた。

「くっすん大黒」冒頭にはコテコテの大阪弁が出てきて、「ひゃー!参った」
わたしも大阪生まれ、関東も含めあちこちに動いたものの、基本は大阪というか北摂育ち。でも「あんけらそ」って何?聴いたこと無いんやけど。調べたら著者は堺市生まれ。そうなんや。私の友人に岸和田の男がいたけど、見事な大阪弁やったな。上方落語に近いような。しかし、登場人物の話し方から、舞台はやっぱり東京なんだろうと想像した。

著者は大阪弁や(べらんめえに近いような)東京弁だけではなく、加えて著者のボキャブラリーが豊富で、普段文語としてしか使わないような単語が、けっこう散りばめられている。私が無知なので、多く感じるのだろうが、それでも、並みの読者だっていくつかは知らない単語があるんじゃなかろうか。

ちょっと古臭い単語を使っていても、いろんなテクノロジーが進歩したことを除けば、本書の二作はいたって現在(私の現在の周り)を感じさせて古くささはない。
でも、「河原のアパラ」の乞食のくだりは、今の時代の自分の現実世界との乖離を感じて、どう受け取ればいいのかとまどってしまった。ホームレスのおじさん・おばさんまでなら受け止められるが、「少女」はダメだ。想像できない。

「くっすん大黒」の主人公は現金とともに妻に逃げられたうだうだのダメ男タイプ。貧乏でありながら切迫感も悲壮感もほとんどない。日本の高度成長期あたりに書かれたからかもしれない。

どちらの小説も、貧乏な主人公と相棒、そしてすさまじい天敵の「おばはん」が登場する。主人公はおばはんに対する毒づき方もすさまじいのだが、おばはんのそれ以上のあまりの悪行のすさまじさに読み進むうちに寒気を感じる。すさまじいのだが、こんなおばはん、もしかすると実際にいるんじゃないかと思えるのだ。私も若いころは傍若無人なおばはんを敵視していたけど、最近はそういうおばはんは減った気がする。主婦も社会に出て働くようになり、大人のモラルを身につけた人が増えたのではないだろうか。おばはんが減っておばさんが増えた、と。

主人公は、毒づき方がかなりえぐいし、グータラ具合が私とはかけはなれているので、さすがに100%の感情移入はできない。しかし、この毒には関西人的ユーモアが滲んでいる。そのため毒舌も気分が悪くなるようなものにならない。そして主人公のおばはんへの怒りは至極まともで、第三者としてではあるが、大いに味方としての気分で読む。このあたりの、読者の私と主人公との距離感が読者としてとても快いのでしょうね。私と作者の世代はあまり違わないし、関西人だし。

後半の「河原のアパラ」では、唐突な始まりに仰天する。なんやかやと理屈が述べられるのだが、やはり「そんなあほな」でしかないので、安心して軽く笑えるのだった。ユーモアという点では、私としては「河原のアパラ」のほうが200%面白かった。何度も実際に公衆の中で小さい声を出して笑ってしまった。
「河原のアパラ」では、暴力沙汰、さらに警察沙汰にはなってしまったのは、さすがにやり過ぎだと思ったけど、最後には思わぬ展開により読後感として、なんだか安心することができた(でも現実だとやっぱり安心できないな)。

上述した乞食の話もそうだが、もうひとつ理解に苦しむのは、ただの石を綺麗に洗う子供。主人公は「やれん」と一言を発するのだが。この「やれん」は独特で作者の意図するニュアンスが今一つ分かりにくいが、まあ、「やりきれん」と読み換えた。大阪弁、関西弁ではないと思う。

ボキャブラリーといえば、本作の出だしにある「フォーク並び」って言葉は知らなかった。ググると見つかった。なるほどフォークなんだ、とネーミングに感心した。
しかし、最後まで分からないのがタイトルの「アパラ」。「河原」ということで、最後の河原のシーンを見直すが不明。「オペラ」を訛って言いかえたのかなあ。「ア」を強く早口気味に「アパラ」と言えば、ネイティブのアメリカ人に絶対通じる。

もう一つ本作者の文体の特徴に、短い会話が改行なしに延々と連なる点が挙げられる。これがとてもリアル。そしてまさに漫才の掛け合い、あるいは大阪人のノリ突っ込み会話のようなのだ。このテンポのよさにユーモア、というより関西人の「お笑い」の血を感じる。
ただ、二人の会話のどちらがどちらなのか、途中で分からなくなってしまうことが何度か発生した。実際の漫才だと、声の違いやテレビの画像からも話し手がどちらか直ちにわかる。私の読み方が、さして理解せずに次々に先を読んでしまうことが原因かな。

オノマトペ(?)満載のエンディングは、私は筒井康隆のようなスラプスティックを感じた。舞台のフィナーレよろしくにぎやかにフェードアウトして終わる。シュールで、ありえなさそうで、いいんじゃない?

解説を読んで、私の知らなかった事実が分かった。実は本作はかなりのところ、太宰治や坂口安吾、小田作之助、梶井基次郎といった(私が名前しか知らない...)無頼派作家(と呼ぶらしい)の影響が濃いようなのである。すると、1930年代のボキャブラリーも(おそらくごく自然に)作品に現れるのに違いない。改めて私の無知がわかってしまった。この解説を書く文芸評論家の三浦雅士の文章も面白い。作者の町田康との年齢差が16歳と言っているが、ユーモア精神にあふれた文章のノリが町田にも、私にも近いものを感じた。もしかして関西人?

もう一つ解説に指摘されている「何でも整理したい強迫神経症」。解説では病名になってしまっているが、これは私の周りにもたくさん見かける。私の母も多数の友人たち。私は「血液型A型」と呼んでいて、そう言えば通じる。病気とは言い過ぎかと思うが、度を越した人もいるのだろう。フォーク並びしない行列を不快に感じる程度では病気ではないと思うけど。私もその気持ちはわからないでもない。ただ、そのあとの「おおブレネリ」はおかしいだろ。
...と思ったら、私も、トラウマになりそうな大失敗をやらかしたことを思い出すと、叫びたくなるのを思い出した。なんなら何十年も前の恥ずかしい失敗を突然思い出したりすると、そういう衝動があらわれる。そういえば、最近、NHK女性アナウンサーもそういうことがあると言っていた。なんなら「おおブレネリ」を歌いたい気持ちにさえなる。そう思うと「河原のアパラ」って、するどい心の真実を突いているのではないか? それとも、これひょっとして異常?

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2025年07月04日

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文章が面白くて、展開も早くてテンポがいい。漫才のような歯切れの良さは関西弁によるものなのだろうか、と思って読むけど本質としては町田康の文が洗練されているからだと思う。たまに挟まれるあまり見ない言葉やカタカナ、飽きを感じさせない新鮮な面白さがある。
泥臭さとアホさがいつ読んでも元気出ていい。最高!

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2025年06月30日

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夢の話を500%凄くしたみたいな話(?)

めーーーーちゃくちゃすき!!
普通に本屋で尾崎さんの帯だって思って即買いしたんだけど、読みながらなんでそんな展開になんのー!?って本当に面白くて沢山笑った。
主人公のこだわりだったり、性格が大好き。
本当に貧乏でも、考え方と親友(?)いたら何とかなるって思った。
町田康さんの作品他にも読んでみたい!

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2025年05月06日

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一見どうしようもない主人公は何も変わっていないように思えるが表面ではなく深いところの何かは確実に変化しているのだと気づいたときに感動が押し寄せてくる
オバハンの描写が強烈で鮮やかに浮かび上がってくる

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2025年03月02日

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ネタバレ

2024/03/7再読

くっすん大黒と、河原のアバラ、二篇収録。

◾️くっすん大黒
町田康本人がモデルと思われる男、楠木。
かつては美男子だったと述懐するが、いまは酒ぶくれで目の下もだるだる、仕事もせず妻に養ってもらっていたが、その妻も先日出て行ったきり帰ってこない。金もないから酒も飲めない。乱雑な自室に、大黒様の置き物が転がっている。バランスが悪く自立できないくせに、にやにやと笑っている。なんやこいつ、腹立つ。捨てたろ。
捨てに行くが、周囲の目もありなかなかうまくいかない。不法投棄を企てるシーンは、梶井基次郎の檸檬を彷彿させる。しかし結局いろいろあって捨てられない。そうだ、菊池に買い取らせよう。
菊池は親からの仕送りでぶらぶらしている大学生でふざけた野郎だがその生活ぶりは自分と酷似しており、数少ない友人である。
菊池の家へ。菊池は大黒はいらないというが、まぁ飲もうぜって飲む。
2人とも金がない。金策のため菊池の知り合いのバイトへ。しょぼいブティックのようなところで店員をすることになるが、訳の分からん店長のババアと常連のババアにむちゃくちゃにされ、バックレる。
続いて楠木に仕事の依頼。ある芸術家のドキュメンタリーの聞き手をやってくれと。かつてバンドや映画出演などしたつながりでたまにこういう仕事がくる。渡りに船ってんで、菊池をマネージャーとして従え仕事へ。
芸術家の名は上田京一。オブジェやら写真やらを作る。上田に心酔する桜井という女、その補助役の椚沢などとともに上田の活動している街へ。しかし上田本人は行方不明だという。関係者へのインタビューをしてまわるが、みな、あいつは詐欺師だのなんだの言って、桜井の求める言葉は出てこない。上田がかつて使っていたというアトリエに行くと、桜井のように上田に心酔する弟子の女たちがおり、彼女らはまさに桜井が求める上田称賛の言葉ばかりを吐いてくれた。いやに盛り上がって、楠木たちはアホらしくなりその場を離れる。
楠木と菊池は、浜辺を散歩する。ドブに溜まった亀を都合8匹捕まえ、焚き火に焚べてみる。逃げ出すかと思ったら、亀はパンパンと爆発してしまった。亀って爆発するのか、知らなかったとかなんとか言ってる2人。
そこに上田が現れる。どうやら桜井と弟子たちがケンカをして傷害事件を起こした。上田は桜井を見舞うが、2階から飛び降りて怪我を重ねてしまったとのこと。
上田は、ここで起きたこととか誰にも言わないでくれという。
なんでそんなことせなあかんのといいつつ、楠木は、おれらまだギャラ半分しか貰ってないんだけどと言い、菊池の機転でやや多めに上田からギャラをもらい、仕事終了。
浜辺で木の棒を持って寝転ぶ楠木をみて、菊池は、あんたあの大黒みたいだなと笑う。楠木だからくっすんてあだ名はどうだと進言する。いやだよ馬鹿野郎。そうか。
ふたりは自立しない大黒の物真似をしつつ帰る。
相変わらず乱雑な自宅に帰った楠木は、豆屋になろうと思う。どうやったら豆屋なんかになれるのだろうか。彼は鉢巻を巻き大声で叫んだ。豆屋でござい。わたしは豆屋ですよ。なんて。

おわり。

◾️河原のアバラ
うどん屋で働く3人。主人公、淀川五郎、天田はま子。主人公と五郎は仲良し。天田は極度の吝嗇で頭がおかしい。
ある日、天田が猿を連れて出勤する。(ほんまこの人うどんとか猿とか好きやな)どうも出勤前に一目惚れして購入、そのまま持ってきてしまったらしい。邪魔なとこに置いたまま働き始まる天田。いやいや、そんなん飲食店であかんやろと問い詰めるがこれを無視。なんやかんやしてるうちに猿は逃げ出し厨房を飛び回る。主人公がちょっと棒でこづくとあっさり落ちた。うどんの茹で釜に。そして猿は死ぬ。店は猿臭く、うどんなど作れない。
天田はあろうことか、悲しむ前に猿の代金を請求する。主人公は激昂し、天田を殴り倒す。天田はさらに病院代を請求し、主人公はさらに殴る。
翌日、五郎から速達が。
「前略 元気ですか 天ハマが極悪です やべぇから逃げろ レンラクください ゴロー」
電話で詳細を聞くと、あの後天田は警察を呼び、自分の被害を盛って申告した。主人公は警察に追われることとなる。
しゃあないので、五郎が紹介してくれた変な格安物件に逃げる。
そんでまた、五郎の言うところ、その物件にかつて住んでいた男、津山幸男はちょっとした知り合いなのだが、死んでしまったという。そしてその妻?が、死んだ男の部屋の整理および遺骨を実家へ運んで欲しいという。謝礼も出ると言う。っつーことで2人で車で行くか、と。五郎が先輩に借りたシボレーで。
人気のない、民家もないところで迷い、うーんと唸り、河原で連れションをしているところ、極彩色の刺繍を施したつなぎを着たジジイに遭遇。ちよい話すと、その遺骨男の兄だという。うちへこいと。歩いた方が近いから車は置いてけと。
行ってみるとしかしこの男は気が狂っており、何らかの内臓肉で焼肉をやろうとし、しかし焼けぬまま上に上に肉を足すので下は丸焦げ上は生という地獄の焼肉で、妙な踊りを踊り、さらには遺骨をまき、焼肉にもふりかけ、供養ですから食ってくださいという。いや食えるかい、と思う2人だがどうも逃げられない。すると男は、酒を買ってくるから待ってろとどこかへ。しかし帰ってこん。様子を見に行くと、シボレーがない。あんにゃろ盗んでったか。
どうにもならないので歩く。3キロほど歩くと、あら?本来行こうとしていた住所に辿り着いてしまった。しかも目の前の家の表札が津山である。もしかしてあのジジイ、全部嘘か。
とりあえずその津山宅にすんませーんって入ると男がガラスを切断する作業中。事情を説明すると、ああそうですか、死にましたかと軽い。遺骨ももういいという。それよりおれの仕事ぶりを見てくれと言わんばかりにガラスの加工の続きをやる男。しかし調子に乗っていたら思い切り親指を切ってしまい鮮血が。主人公と五郎は、お暇する。
なんか食うべってまた歩くと、どうやら色街である。ふたり、それぞれ楽しむ。
そんでまた歩く2人。拾った新聞には、天田はま子さんが何者かに殺されたという事件の記述が。因果応報だぜ。
また河原で談笑する2人。五郎が誤って、鮒かなんか腐った魚が積み上げられたところに手を突っ込んでしまう。くせぇ、助けてくれ。対岸ではなにか映画の撮影隊らしきものたち。演技はうまいのに間に下手くそなオペラのようなものを挟み歌う男女。腐った鮒とオペラに挟まれ爆笑する2人。

おわり。


こう書くと、ほんまに無茶苦茶やな。
しかしだいたいこの通りである。それでもこの本がおもろいのは、町田康の文章がすごいからである。あらすじだけ読んでおもしろがれるものではない。とにかく読むしかない。

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2024年03月07日

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二篇所収
・「くっすん大黒」4⭐️⭐️⭐️⭐️
野間文芸新人賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作品。

怠惰で仕事を辞め、妻にも出て行かれたダメ男の主人公楠木正行。部屋にある無用の置物・大黒様、これが不安定で設置困難。楠木はこれを捨てようと行動するが、登場する人物たちも、特に女性が一癖ある人達で、物語の展開が面白く読んでいて楽しい。

・「河原のアパラ」5⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
「くっすん大黒」が面白かったので、これ以上はないだろうと思っていたら、「河原のアパラ」がより最高に楽しかった。

町田康という人がデビューしたのは、日本に一人の才能が現われたのだと思う。

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2025年09月25日

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町田康の著書を三冊立て続けに読んで慣れたせいもあるかも知れないがとても読みやすくて面白い。こういう発想というのはどこから出てくるのだろう。デビュー作でこれだけ面白いものが書けるのだから作家というのは素質の割合が大きいんだろうなと改めて思わされる。

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2025年07月04日

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大黒を捨てにゆくために外に出る。ただそれだけのストーリーだがその中にいわゆる文体によって唯一無二の世界を作り出している。笑と解釈の広さを受け入れる、文学でやってはいけないことなどないと思える作品。

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2025年04月30日

Posted by ブクログ

ユーモアが効いていて落語のような話。
実際に悲惨な状況であるにも関わらず、笑い飛ばしてしまうようなユーモアがある。
赤めだかp16「落語とは人間の業の肯定である」とあるように「くっすん大黒」「河原のアパラ」の登場人物は実社会においてはどうしようもないような状況に追い込まれるわけであるが、それでもなおその状況を肯定したいような気にさせる人間の根本の笑いがあると感じた。

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2025年03月01日

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初めて町田作品に触れましたが、思ったより砕けた口調と次々切り替わる展開に読む手が止まらず面白かったです。
この作品の場面の切り替えの早さと次々思いがけないことが起こるドタバタ感が、最近観た映画「お引越し」の感じを彷彿とさせられました。

個人的にタイトルが結構好き

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2025年01月08日

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 町田康さんて何者? パンクロッカー、俳優、詩人、小説家、大学特任教授…、更に芥川賞を始め、多くの文学賞を受賞してますね。『告白』に衝撃を受け、デビュー作の本書を手にしました。
 作風や文体はもちろん、『告白』の主人公に似た「あかんやないか」的な登場人物まで、共通点と言うか原点を見た気がします。太宰に通ずる?

 表題作は、怠惰で仕事を辞め、妻にも出て行かれた楠木正行が主人公。部屋にある無用の置物・大黒様、これが不安定で自立困難…。楠木はこれを捨てようと行動(梶井基次郎の『檸檬』?)しますが、登場する人物たちもほぼダメな人たちばかりです。
 終盤の友人のセリフ「楠木だけに"くっすん"。寝転がってると(自立しない)あの大黒にそっくり」が印象的。自分を大黒へ投影する鮮やかさは見事!
 もう一編の『河原のアパラ』も同様で、自堕落な中年男が中心に展開しますが、詳細は伏せます。

 自意識に苦しむダメな人間は、よく世間から非難の的になりがちですが、よく見たら周りも変なヤツだらけで…。そんな現代社会を、町田さんの泣き笑い調の語り口で批判しながらも、そんな人たちへ温かい眼差しがうかがえます。共感も容認もできない人もいるでしょうが、自然に生きていいんだよと救われる人もいる気がします。

 96年に文芸誌に発表された表題作は、野間文芸新人賞・Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。

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2024年11月30日

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元バンドマンのキャリアを持つ異色の作者による、クレバーなデビュー作。
物語の展開、掛け合いなどシュールなお笑いが上手で純粋に面白い。
癖のある語り口と作調は正に野坂昭如のよう。
チャラついているように見えて、しっかり文学をやっていて満足できた。

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2024年10月02日

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文体ははじめ苦手かもと思ったけど、引き込まれていった。大黒もいい感じだしストーリー展開も面白い。そして文学的。

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2024年07月25日

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ネタバレ

ただ大黒を捨てるだけの話なのに、併録の『河原のアバラ』含めて、なんだか事態が予測もつかないような面倒ごとに巻き込まれていく。青春小説ではないものの、友人とバカやってふざけたり、騒動に巻き込まれたりっていうのが面白いし、良いなと感じさせられる。

最初の服屋でアルバイトするくだりはほぼコントである。チャアミイとおばさんの癖の強さ。と思えば上田を追うドキュメンタリー映画の女も癖が強い。うどん屋の天田はま子も癖が強いし、うどん屋のちゃっちゃっちゃがやりがいっていうのは何となく頷ける。作中、うどんの曲作ってるアーティストなんてどうかしてる、みたいなくだりがあるが、町田康自身『犬とチャーハンのすきま』でうどん全面推しの楽曲群をリリースしている。

何か壮大な出来事があって解決していくわけでなく、問題や引っ掛かりを抱えて終わる描写が多いものの、なんやかんやあって過ごしていくんだろうという、物語と言うより生きている中での一つの出来事、期間を抜き出して描いているような、非日常的な日常感が良い。

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2024年06月02日

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面白え。二編目の「河原アバラ」は大笑いしながら読んだ。なんだろなーこの世界観。支離滅裂で捨て鉢な危うさとシュールなおかしみのバランスが最高だなあ。めちゃくちゃ文章うまい。

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2024年03月03日

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「しらふで生きる」「人間小唄」を読んですっかり町田先生の文章の虜になってしまったので、その源流とも言えるデビュー作のこちらを読んでみた。
なるほど、デビュー作の時からこの世界観がすでにあったのか。
大したお話ではないが、次から次に起きる訳のわからない展開から目を話せない。そして笑ってしまう。
「くっすん大黒」の中で、古着屋でバイトするくだりはひたすら笑った。
ただただ堕落して生きているような人をこんなにも面白おかしく表現できるのか、という事に驚く。
この人はどんな題材でも、どこまでも話を広げて面白く表現することができるのだろうな、と感嘆しました。
ただ、この小説から何か感銘を受けるとか感動するとかは一切ない笑
それがいい!!

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2023年10月12日

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出てくる人出てくる人みんな狂人で、じつは全員ヤク中っていう設定でした、と言われても驚かない。
支離滅裂と言ってもいいほどのシュールな展開がリズミカルに続き、個人的には結構ちょくちょくぞくりとした。笑いと恐怖は紙一重とはよく言ったもの。
そして読み終わった後に街を歩いたら、すれ違う人がすべからく変人のように思えて困った。もしかしたら世界って、私が思うより狂っているのか。やほほ。

『河原のアパラ』では特に、人間も動物も無造作に死にまくり、流血したりし、たいして悲しまれるでもない。 
主人公達は最後には袋小路に近い状態に追い込まれる。
けれども、ラストシーンで彼らは「全身腐った鮒まみれになって」爆笑している。
グロテスクで残酷で意味不明な世界でも、笑えれば勝ち、ということなのかな、と思ったり。

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2022年06月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『告白』で知った町田氏。
『告白』は読みきってはおりませんが、他の作品は読みおえたことがあり、その独特のユーモアのセンスがなんだか癖に。
こちらの『くっすん大黒』にもにやにやさせられっぱなしでした。
男女差別をするのはあれですが、ユーモアたっぷりの独特の発想は男性ならではのものだなぁと思わせられます
内容はこってりとしているのにあっさりと読み終えられる。
そんな1冊。
個人的に面白おかしい小説を読みたくなったら、森見氏、万城目氏、町田氏を選ばせて頂きます。
町田氏、次は『告白』を読みきるのが目標です。

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2023年10月26日

Posted by ブクログ

「くっすん…って何よ⁈」
実際書店で手に取るも、しばし逡巡…。
タイトルからして不穏な雰囲気、とは僕の思い過ごしだったと、読み終えた今なら、安心してそう言える。雰囲気ではなく、物語の展開自体や、いつか「どこかで見たような」既視感すら抱くなど、不穏そのものだったから。
 
俳優の、吉岡里帆さんのラジオ番組の、ポッドキャストを愛聴しています。
「今日のゲストは町田康さん」
彼女が“レジェンド”と称した“作家 町田康”…吉岡里帆さんは、日本のパンクシーンに興味津々とのこと。彼女の興味は、僕の興味でもあるわけで、つまり彼女の言及は僕の、何よりのブックガイド、著者の本に手が伸びるのは必然、というわけです。
ゆえに、とは余談になるけれど、吉岡里帆さんが出演していた、かの『理想的本箱』というTV番組は、文字通りのブックガイドでした。

さて。
『人間失格』を連想しました。じつは先日読み終えたばかりで。ほぼ同じタイミングにて。そのせいかとばかり思いきや、この文庫本の解説にも太宰治への言及があり、偶然というとは、あるものだ、と些か寒気をすら催した次第。

深刻なのだか、そうでないのか。ついつい僕の身辺に思いを重ねつつ「もし僕が⁉︎」とは、読書の際は想像しがちなことだろうけれども、さて僕なら、深刻も深刻、事が起こりゆくにつれ、それら深刻度合いもキリがないほどに高まってゆく一方だろう。きっと僕なら耐えられない。
ギリギリのところで踏み止まる。そうでありたいと希望は捨てない。それでこそ人生、という物語でした。

僕は、ただただ安心したい。事の行く末を見届けたい。だから僕は読書をやめられない。

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2025年03月30日

Posted by ブクログ

デビュー作ですか
町田康色々読んだけどデビュー作からこんな感じね
このわけのわからん世界に連れてってくれるの大好き

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2024年11月04日

Posted by ブクログ

初め

え?わけわからない

と思うのに
なんだか惹かれる…

これがバンドマンなんですよね

世界観が唯一無二な感じが好きです

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2024年10月17日

Posted by ブクログ

推理小説かと思ったら文芸書でした。それでも惹きつける力は本物で、すぐに読めました。
結局、大黒様はどうなったか知りたい。


三年前、ふと働くのが嫌になって仕事を辞め、毎日酒を飲んでぶらぶらしていたら妻が家を出て行った。誰もいない部屋に転がる不愉快きわまりない金属の大黒、今日こそ捨ててこます―日本にパンクを実在させた町田康が文学の新世紀を切り拓き、作家としても熱狂的な支持を得た鮮烈のデビュー作、待望の文庫化。賞賛と悪罵を浴びた戦慄のデビュー作
大黒様を捨てようとして始まる日常の中の異次元世界。ユーモラスな語り口と奇妙な形で噴出する鬱勃たる感情が話題を呼び、日本文学史に衝撃的に登場した芥川賞作家の処女小説。「河原のアパラ」を併載している。第19回(1997年) 野間文芸新人賞受賞とともに第7回(1997年) Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。

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2023年08月06日

Posted by ブクログ

町田康の文壇デビュー作。ミュージシャン・俳優時代(町田町蔵)と比べて、ブレが一切ないのが頼もしい。殺伐としているのに愛くるしいのだ、この人は。

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2023年07月21日

Posted by ブクログ

なんかよくわからんまま終わってしまった。

けど、よく分からんくても最後まで読めてしまったのは文章表現が面白かったからであるしなんだかんだで最後まで気になってしまった。

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2023年01月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

全く飾りっ気が無くて本能のまま書かれてる感じがして読んでいて気持ちいい。何気ない燻んだ毎日の実在感を出すのがめちゃくちゃ上手いなぁ。
特に「河原アバラ」の方は作中に羅列される細々とした小物の生活感がすごかった
石を「大事なものよ卵」と言って大事に洗う少年に対する気持ちを「やれん。」の3文字で表現する所とかカッコ良すぎて痺れる。

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2023年01月02日

Posted by ブクログ

面白い。文字を追ってるだけで楽しい類の小説だ。ストーリィに関しては正直言えばどうでもいいというのが本音だが、登場人物に愛着を持てて、まあ読んでて楽しい。これからどうなるんだろう? というワクワクは少なく、登場人物がどう救われたのかイマイチよく分からんが、なんとなく気持ちが良かったからよい。そんなもんでいい。ただ改行が少なくて普通に読みづらかったかなという印象がある。勿論その効果も現れているとは思うが、単純に。

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2022年10月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

異世界(クルッテイル)の世界に入り込んだ感覚を覚えます。
出てくる人がとびぬけておかしい(誉め言葉)で
どこまで行ってもカオスだからね。

表題作はダメ男が出てくる作品。
そして添え物は頭がイカレテいる人物。
こうしか表現できないの。
まるでああいう音楽の中にいる感じ。

この手のが合わない人は一発拒絶反応もの。

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2022年09月09日

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