【感想・ネタバレ】告白のレビュー

あらすじ

人はなぜ人を殺すのか――。河内音頭のスタンダードナンバーにうたいつがれる、実際に起きた大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフに、永遠のテーマに迫る著者渾身の長編小説。第四十一回谷崎潤一郎賞受賞作。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

かなり分厚い本ですが数日で一気に読み終えた。
面白くてどんどん先に進んでしまう。恐ろしい筆力。
本当に哀しいお話だと思う。最後まで何も見出せなかった熊太郎の人生。めっちゃアホやけど、賢いところもあったからこその破滅人生やったんちゃうかな。
本当の本当の心の底にあるもの、熊太郎が探していたものとは。わたしは、言葉にせずとも熊太郎の心を分かってほしい、という想いやったんかな、、と思った。
結局、誰も熊太郎のことを理解しなかったことが一番、怒りの大元やったんかな、、とか。

それにしても、町田康さんはいつも、自分の脳みその中や人柄、考えてることを作品に素直に書ききっていかれる印象。
しょうもない俺やけど、カッコつけて自分が憧れたいような人物になりたいと思いながら日々悩んでこられたんじゃないかなと。
充分にかっこいいと思います。ご本人が思われてるよりずっと、小説を読んだ者はそう感じています、と伝えたいな。

0
2025年11月27日

Posted by ブクログ

明治時代に起きた「河内十人斬り」をモデルとした、主犯熊太郎の一生を追った800p超の巨作。
圧倒的破滅主義であり、一方決して芯から悪人では無い主人公が幼少から暴力的とも言える克明さで描かれ、彼のあまりの生きづらさ・社会不適合さに胸が詰まる場面がしばしば。
中上健次を彷彿とさせる本作の熱量は、煮え滾る様な饒舌体・近畿方言も相まり読み手を相応に選ぶ筈だが、このような作品が社会的に評価を得、広く読者支持を獲得している事に強い喜びを覚えた。

0
2025年11月12日

Posted by ブクログ

最高に面白かった。関西弁、特に河内弁がわかることでこれほど文学作品を楽しめることがあるとは思いもしなかった。小さな頃から親しんだ吉本新喜劇のヤクザの言葉や、富田林出身の父が友人とふざけて話していた言葉が、なんとも言えず心地よいリズム感で繰り出されて読むのがやめられなかった。

口下手で、経済力も文化的資本も持たない声の小さな存在が、持てる人間にいいように言いくるめれ、掠め取られ、尊厳を踏み躙られる様子は、現代の日本をみていても本質的には大きく変わっていない。だからこそ、これを読んで熊太郎の心情につい肩入れしてしまうんだろう。

作風は違うものの、芯にある硬質な視点は以前読んだ小川洋子の「ことり」と同質なものがあるように思った。

熊太郎が殺害した葛木ドールと弟モヘアはなぜ2人だけカタカナの名前、英語名だったのだろうとずっと考えながら読んだ。

江戸から明治に時代が変わった時期に、熊太郎は新しい社会や時流に軽快に乗り換えることをしなかった、できなかった、働いてお金を儲けて蓄え、資金力の多寡に価値を置いて生きる、そういう価値観をどうしても受け入れられなかった、そんな暗示をしているのだろうか、など色々考える。

とにかく、面白くて、笑えて、哀しくて、胸が痛んで、本当に良い読書だった。



0
2025年10月22日

Posted by ブクログ

明治時代に実際にある村で起きた殺傷事件「河内十人斬り」を描いた作品。

後に凄惨な殺人事件を起こしてしまう主人公城戸熊太郎の生涯が書かれている。約700ページの大作で読むのにかなりの時間がかかったが、地の文にツッコミが入れられていたり、おほほんやあひゃーんといったふざけたリアクションも斬新で重いテーマではあるが所々笑える場面も散りばめられていて読みやすかった。

0
2025年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初の一歩で躓いた人間なんだと自暴自棄になり、しかしその躓きは自分の思い込みで、自分は思い込みに怯えて人生を棒に振ってしまったのではないか

こここそが引き返し不能地点だ、と思っていたところは実は楽勝で引き返せる地点だった

行き止まりだと思ってぶち当たった壁は紙でできていて、その先には変わらぬ世界があった

もしや自分は取り返しがつかないことをしてしまった、もう元の自分には戻れないぞと気づいた瞬間の沈んでいくような恐怖と、それでも世界は終わってくれないということに対する驚愕に近い絶望感
最後の山で過ごした熊太郎の心境を想像すると切なくなった

思弁的な熊太郎、何を考えているのか読者は知っているし、こいつおかしいぞと思うところもあれば普通で常識的なところもある、むしろそっちの方が多いということもわかる。共感もできるし村民の中では一番こちら側に近い人間だとも感じさせる
ただ、その熊太郎の思弁を知らない村民からしたら、熊太郎はどんな人物に見えていただろう
大量殺傷事件を犯した人の中にもしかしたら熊太郎のような人間がいるのかもしれないと思うと怖い
境界線というのがやっぱりわからない…

0
2025年09月04日

Posted by ブクログ

こんなに分厚い文庫本ははじめて読んだ。はじめから面白いが熊太郎も弥五郎も魅力的で読め進めるほど更に面白くなってくるのは人物に魅了されるからだろう。不器用で思弁的な熊太郎はどこか他人と思えず程度の差はあれど自分の中の思弁的な面と向き合わされる。実際の城戸熊太郎がどういう人だったかはわからないが、なんとも切ない話だ。

0
2025年07月30日

Posted by ブクログ

自分の心の声を言葉にできない気持ちがとても共感できた。他人事とは思えない、時間がかかったけど、読んでよかった。

0
2025年07月24日

Posted by ブクログ

文句なし、超超面白い。
あかんではないか、熊太郎。

(恐らく)統合失調症を患っている熊太郎視点の描写が秀逸。
何度も声を上げて笑ってしまった

0
2025年05月15日

Posted by ブクログ

町田康の最高傑作と名高い今作をやっと入手して読んだ。
正直半分くらいまでは読み進めるのに苦戦して最後まで読み切る自信がなかった。が、どういう訳か半分を過ぎると面白くてたまらなくなった。軽妙珍奇な発言や脳内に渦巻く思考がクセになる。
阿呆なことばかりの熊太郎に呆れつつ、松永一家の悪どい行いに読み手である自分も不愉快になり、終いには全面的に熊太郎の味方となってしまった。

読んでいるうちに熊太郎の道理に納得してしまうから不思議だ。
も、もしかして自分も熊太郎と同質の人間なのか!!!

0
2025年04月27日

Posted by ブクログ

人生で3本の指に入る良い本に出会えました。800頁を超える長作ですが、ページを捲る手が止まりませんでした。読み終えた今は「読み終わっちゃったなぁ」という、あの、本当に面白い本を読み終えてしまった時のあの感じです。本当に良い本に出会えた時って、こういうありきたりな感想になってしまうんですね。兎に角、しのごの言わずに読んで頂きたい!

0
2025年02月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

圧巻だった。熊太郎という人間の描きっぷりが見事で、町田康の筆の走りがこっちにまでひしひしと伝わってくる。
事件それ自体は実際にあった史実を元にしているけれども、それをここまで膨らませることができるとは。
幼少期からの熊太郎の頭のなかで繰り出される言葉、言葉、言葉はすべて傍から見たらなんてことはない、本当に栓のないことなのだけれど、どこか共感してしまうのはなぜなのだろう。
最後の最後で自分の思っていることを口に出したとき、自分が考えていることと口に出した言葉が一致したのにもかかわらず、その口に出した言葉のか弱さ、細さよ。
熊太郎が最後の最後に、自分にだけは嘘をつきたくないと、自分に語ろうとして、何も言葉が出なかったのには何とも言えない気持ちになった。たしかに、人を助けるだの、大儀だの口では言うものの、結局、それは自分の目の前にある状況に対して、自分の生きてきた正義をかざして、なにかした気になっているけど、結局その行動すべて、自分の目の前にある不快な状況を取り除こうとしているだけであって、別に深い理由の為に生きているわけじゃない。
それが良いことなのか、悪いことなのか、単純に善悪で判断する必要はないと思うのだけれど、自分がそれを知っていながら、嘘をつき続けるのはこれいかに、と思うのであった。

告白というタイトルの意味が最後の最後に理解できた。
間違いなくこの作品は熊太郎の心の叫びであり、告白だ。


今月から読書バリバリしていくつもりですが、とりあえず、完璧なレビュー書くことを目標にすると、億劫になるんで、思ったこと熊太郎ばりにつづっていく感じにしていきます・・・

0
2025年01月30日

Posted by ブクログ

完全に撃ち抜かれた。
圧倒的な分厚さに尻込みしたのは束の間、ページを捲る手が止まらなかった。熊太郎の気持ちが分かるなあと思いながらもいや、分かったらあかんではないか、でも分かるなあ。
他人の死に対する考え方は「あー確かにそうかも」とかなり腑に落ちた。

0
2025年01月11日

Posted by ブクログ

 840ページの分厚さ、明治時代の史実、大量殺人事件と、読む前から怯みましたが、最初から貪るようにページをめくっていました。それだけ特異な魅力を放つ傑作小説で、本書の存在意義をもっと広めたいと思いました。
 軽妙な河内弁と現代語が混在する独特の文体、落語のような笑い、要所に挟む「あかんやないか」の著者自身のツッコミなど、シリアスさを軽減しながらも、逆に主人公・城戸熊太郎の魅力に自ずと引き込まれてしまいます。

 怠惰で博奕好き、アホだけど根っからの悪人ではない熊太郎が、なぜ大量殺人という凶行に走り、破滅の道を辿ったのか…。
 熊太郎は、少年期から自分の頭の中だけで、ぐるぐるといつまでも、しかも深く考え過ぎて、上手く言葉にできません。結果的に、他となかなか意思疎通が図れず、次第に孤立していきます。
 蛮行の直接原因を、女絡みと金銭トラブルと断ずるのは簡単ですが、その根っこにあるのは、周囲の無理解、蔑み、孤独、絶望だったに違いありません。そう、熊太郎は不器用で、生きることが下手だったんですね。生きづらさ、怒り、恨みが沸点に達した爆発は、悲しみの極地です。

 町田さんは、熊太郎という一人の人間の心理と言動を徹底的に突き詰めて人物造形し、その孤独と絶望を涙と笑いに変え、世の中に抗うパンクロックとして歌い上げたのでしょう。その圧倒的な熱量に打ち震えます。
 凶行決意から終末まで、土着の河内音頭が賑やかに哀切に脳内に流れる中、涙ぐみながらひたすら熊太郎の魂の救済を願い祈っていました。
 『告白』は、湊かなえさんだけではない! 全日本国民に読んでほしい、必読書・課題図書ともいうべき傑作でした。

0
2024年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これは傑作。

河内弁のとっつきにくさが序盤にはあったが、読み進めていくうちにそのリズムに適応して行き心地よくなってくる。熊太郎の人となりとそのまさに思弁的な独白と空想が癖になる。

良い悪い取り揃えた魅力的な登場人物が多いが、個人的ナンバーワンは縫ちゃんだな。熊太郎の告白シーンが、いつものくよくよ言い訳がましい熊太郎の真摯に真っ直ぐな気持ちを伝えることろ。それに小悪魔的に応じる清廉な美少女縫ちゃんのやり取りが心鷲掴みにされたわ。
神の使い姫たる縫ちゃん、結局何がしたかったんだろうと訝しんでしまう。でもそんな気持たせなところが魅力的です。

どんどん道を踏み外していく熊太郎。それでも善良な人間と認められたい純粋な心を捨て切ることはできず、ちぐはぐに破綻するという軌跡。世間でいう極悪人ではあるのは間違いない。けれども真っ当に生きられない運命を負っているその衝動はこの結末に行き着くしか許さなかったのではないだろうか。

0
2024年11月08日

Posted by ブクログ

思考と言葉が一致しないとか、思考が行きすぎてただの女を神の使いと思ってしまうとか、共感する部分が多かった。ずっと面白かったが、最後はもう面白すぎて「最高」と思いながら読んでた。

0
2024年06月21日

Posted by ブクログ

読み終わってからしばらく頭ぼーっとして白イルカで何も手につかず寝た。翌日爽やかなクールミントみたいな朝にぬらぬらしてきて、また頭が白イルカ。ほて、とりあえず河内音頭をYouTubeで聴きましたけんども、幼き頃お祭りで踊ってたやつですやん・・ほんま踊りだしたくなる曲ですわ。ってなって、とりあえずこの自分の心?頭?の中で延々と喋ってる独り言・思考を言語化するかあと思って書き始めたんだけれども、インターネットの大海原を漂流するのでは?こんな圧巻の本をプレゼントしてくれた方にこんな文章読まれていいんか? という自意識が芽生えて言葉にできない。あかんではないか。あかんことないか。ということをとりあえず文字として打ってみてる最中である。アホである。(熊太郎がツイッターしてたらどんなツイートしてたかな…。とか思いながら)
初めて読んだ町田康の文章が面白すぎて、ご飯食べてても早く本読みたい。お風呂入ってても早く本読みたい。歩いてても早く本読みたい。銭銭銭ならぬ本本本状態。

とにかくずーっと800ページ以上読み進めてって、最後に熊太郎が告白した文章を読んだ時にはもうなんか虚無でした。それまではその思考回路分かるわ〜とか思いながら読んでたけど最後はもう何もかも遣る瀬無い。

0
2023年02月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

結局、熊太郎の怠惰が招いた結果では…?となってしまい、あまり感情移入はできんかった。松永一家の行いが酷いのはもちろんなんだけど(やったれ!と思ってしまった。子や奥さんまでは納得いかないけど)、結婚後も碌に家におらず家族らしい行いもせずなら…他の人に心が移るのも仕方ない。勝手に神様だと理想を押し付けて、理想から外れたら殺すのは身勝手すぎる。

後半の怒涛の描写は好きだった。覚悟を決めて穏やかになってる2人の描写や、「平たい土地に松の木が生えている〜」の文章特に好き。分かります。1番好きかもしれんこの文章。

独特な理屈の中に、ちょっと分かるなあみたいな部分もあって、同情はできないんだけど、遠くもない話だなと思った。

0
2025年11月01日

Posted by ブクログ

文庫で800ページある長編、第41回谷崎潤一郎賞受賞作。
町田康の作品を「くっすん大黒」「きれぎれ」「告白」と読んで来た。くっすん大黒は「くっすん大黒」と「河原のアパラ」の2作品が収められ、「きれぎれ」は「きれぎれ」と「人生の聖」の2作品、「告白」は長編大作。

河内十人斬り、という河内で十人を殺害した実際に遭った事件の実行犯の、城戸熊太郎という男の人生が、そのまま物語になっている。400ページ位までちょっと退屈なストーリー展開だったけれども、後半物語が動き出して面白くなってきた。

安政4年生まれの、河内の国、水分(すいぶん)村に生まれた熊太郎は、要するに百姓仕事が性に合わず、ほかに仕事もないから博奕に手を出し、それとて負けることが多かったので一人前の侠客とは見られなかった。
 
長じて熊太郎には谷弥五郎なる弟分ができる。また、熊太郎は「俺の思想と言語が合一するとき俺は死ねる」と考え、これは金が独特の思弁癖が「渋滞」しているからである、とよくわかりづらい表現でよく使われる。

いかなる状態になろうとも、ことがらの進行を助けてゆくのは、土俗性に富んだ河内弁である。会話だけでなく、地の文にもこらして読者を放さない。

考えすぎて、手も足も体も働くなって百姓になりそこなう類の人間。

隠忍自重の末、刀を抜く相手、松永熊次郎、傳次郎親子の卑劣さ狡猾さは、果し合いを申し込んで決着をつけてよい類の人間である。

世の中には、世間の常識とはどうしても反りが合わず、それなりの良識と純真をもって自分を律していこうとするが、いつしかそれが破綻して人生の敗残者となってしまう人々がいる。たとえば、どんなに悪意を抱くまいとつとめていても、顔を合わせるのもぞっとするという生理的天敵がいる。

読者は熊太郎がなぜ人を殺すようになるのかということがよくわからず、主人公ということもあって善良な性格に思えてならない筈だ。そこがこの小説の深い部分に思う。

0
2025年09月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とても長い小説で、途中中弛みして諦めそうだったけど、700ページからの怒涛の展開がスイスイ読めた。
「あかんかった」

0
2025年08月09日

Posted by ブクログ

すごい分厚いのだけど、会話部分がテンポよく進むので、思ってたよりサラサラ読めた。
関西弁に馴染みがなければ、読みづらいと思う。
IQと、EQの乖離での苦しみとかもあるんかな。
「あかんではないか」とか、「あほである」とかのコメントにニヤニヤした。

0
2025年06月22日

Posted by ブクログ

900ページ近くある分厚さになかなか読む気力が起きず何年も積読として眠らせていたこの小説。こんなに分厚い文庫本は初めて読んだ。

思弁的すぎる上にその思いをなかなか言語化できない。思考と言動は一致することはなく、そんな熊太郎を周りの人間は「また熊太郎がおかしなこと言うとるわ」と馬鹿にする。明治時代の河内の百姓ごときに熊太郎の渦巻く思想を理解できるものなどいるわけもなく。己の性質と、理解者など一人もいない農村という環境が熊太郎を苦しめ続け、堕落し、ドツボにはまり、破滅の道を歩む。
なんでそうなるの?と思わず突っ込んでしまいたくなるほど不器用で、きっと熊太郎は生きることが下手すぎた。
自問自答し続け、苦しみ続けた挙句、あるのは曠野。答えなど何もなかったという絶望感。熊太郎の「あかんかった」の一言に集約されていた。なんと切ないクライマックスなのか。

後味の悪い小説を好んで読みがちなのだが、これは病みそう、ほんまに。

夏になるといろんな櫓を巡り盆踊ることを趣味としている私。
これからの季節嫌というほど何度も何度も聴くことになる河内音頭だが、今年の夏聴くそれはいままでとは全く違う、熊太郎の悲哀を感じながら踊る河内音頭になりそうだ。

0
2025年06月13日

Posted by ブクログ

こんなに読後にも引きずる後味の悪さはなかなか体験できません。読み終わった後も口内に鉄の味が残るような生々しさ。

その時、自分が、その人が、「その時」をどう解釈するかしかない。
その解釈から解釈への連なりが現在の水の流れを作る。そしてその場所へ行き着く。
だから、全てはそうとしかあり得なかった事で。結局は導かれるべきところに導かれるしか無いということ。
その上で出来ることといえば、「その時」と交換する自分において質の高い解釈を所有しておくことなのかも知れないと感じました。上品な解釈。
その手段はまだ鮮明さを持っていませんが。

ただ、流石に長いとも感じました。
展開において必要な柱を数本立て、次の柱へ進行する為に出来事・行動・登場人物同士のやり取りで繋がれていく事が執筆における正攻法な気がしますが、次の柱へ直接は関与しない端々のやり取りまで丁寧に描かれています。
つまり、そこで起こっている事象自体には大きな波が起こっていないものが殆どで、著者の手腕によりそこも面白く読めるのですが、それにしてもこの末端の事柄にここまで終始するか、という点において退屈を感じた瞬間もありました。

0
2025年05月19日

Posted by ブクログ

小川哲氏絶賛の小説だったので読んでみた。生い立ちから事件発生に至るまでの大河ドラマのように長い物語だった。明治時代の話に現代語が突然現れるふざけた感じの記述もあるが、哲学的思考を含む難解かつ任侠的語り口で、人間のどうしようもない愚かしさと哀しさを描き出した物語だった。ページが残り少なくなってきて、どう帰結するのかと思いつつ読み進めていくと、衝撃の結末が不意に訪れた。余韻が半端ない。

0
2025年03月02日

Posted by ブクログ

800ページを超える長編、慣れない河内弁、読み切れるか不安でした。
不器用でならず者の極道崩れの熊太郎の一生が詰まってます。
このならず者を物語を最後まで読んだ時に、どう捉えているか?
私は途中から熊太郎が愛おしかった、彼の人生が好転して欲しいと思ってました。
幼少期からの彼の人生を追っていく過程で愛着が湧いてくるんですね。
ろくでもない行いなのは分かってるのに、彼に感情移入させてしまう作品の力は凄いです。

腹の中と口から出る言葉が一致しない人
たぶん熊太郎の苦悩が分かるんじゃないかなぁ
きっと、ほとんどの人がそうだと思う

0
2025年02月19日

Posted by ブクログ

思弁とその表出。言語以外での思考。葛城ドールの行方と記憶の重ね合わせ。
この小説ほど人間を描き出している小説は滅多にお目にかかれない。
熊太郎の支離滅裂な思考と行動に一貫するものは自己保身とプライド。熊太郎を反面教師にするのも一つの読み方だが、私はこれを大いに許容し、肯定したい。人間らしさについて考えさせられる本だった。

0
2024年11月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文体のオリジナリティがすごい。この著者だから熊太郎の人生を、脚色などあったとしても最大限読者に伝えられたのだと思う。

誰しもが思いがけず大きな過ちを侵す可能性がある。また、それでも味方しつづけてくれるような愛を望んでいると思う。

主人公を通して、1人の人間の『仲間』『仕事』『恋愛』『倫理』に触れることができた気がする。

今の日本で殺人が起こるのに理由がないはずがない。

0
2024年10月01日

Posted by ブクログ

この本を読み進めていて怖くなったのは、熊太郎が自分と重なって見えたから。中身は何も無いのに人の前で見栄を張る、大人は自分の庇護者だと思っている子供心がある、本音を誰にも言えず、心と言葉が乖離した感覚を持っている、等々。最初の方は読み進めていくのが辛くなる場面もあったのだけど、後半に入ってからはページを捲る手が止まらず怒涛の勢いで読破。
自分にとっての永遠の課題が、人前で仮面をかぶって生きてしまうことなのだが、それを良しする人もいれば、彼のように苦痛で堪らない人もいる。人目を気にして、皆と同じようにうまく生きようともがいて結果最後の「あかんかった」という呟き。鳥肌立ちました。

0
2023年07月23日

Posted by ブクログ

主人公の思考をずっと追っていくのには、かなり疲れましたが、他人の思考を自分が盗み見ている感覚でした。
実はベースの話だったとは!!
河内音頭にもなっていたとは知らなかった。

0
2025年04月19日

Posted by ブクログ

講談を聞いているかのようなテンポ感や文体であった。800ページを超える長編で、熊太郎の心の中をこれでもかと書き殴っている非常に人間臭くて生々しい小説。私自身は入り込めない部分も多かったが、生きづらさを感じているような人であれば、熊太郎に共感できる点も多いのかなと。
河内弁含めてかなりクセの強い作品なので万人にオススメ出来る作品ではない。
世の中に対する反抗心や人間としての醜さ、弱さ、脆さなど、とにかくドロドロとした生身の人間小説を読みたい人にはオススメ。

0
2025年02月08日

Posted by ブクログ

最初は推理小説かと思ったが違った。
主人公の生き様を描いた小説だった。
厚さに尻込みしていたが、読むと一気に読めた。
昔の話なのに例えがカタカナ文字だったり、作者の特徴も面白い。
だが、読む人によって内容は分かれるかもしれない。


人はなぜ人を殺すのか――。河内音頭のスタンダードナンバーにうたいつがれる、実際に起きた大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフに、永遠のテーマに迫る著者渾身の長編小説。第四十一回谷崎潤一郎賞受賞作。

0
2024年12月28日

「小説」ランキング