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日々の生活の中でたまった鬱を、日々の生活の中でいかに散ずるか。「物」を買い、使い、また買い、使う。消費社会で生きる私たちの姿をあますところなく描く。超言語激烈文芸作品。
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Posted by ブクログ
物を買い、使う。買い、使う。今を生きるには、飽くなき消費を続けるしかないのだろうか。町田康氏が描く「カネ」をテーマにした作品は、やはり「町田流」に満ち溢れておりますが、ある種の普遍性があります。 久しぶりに町田康氏の本を読みました。町田氏の文体でビジネス文書を作成したらさぞかし面白いことにな...続きを読むるだろうなと、そんなことを考えながらページをめくっておりました。 タイトルにもある「バイ貝」というのは筆者特有の「言葉遊び」で英語の「買う」を意味する“buy”にかけていると思われます。 例えば 「スーパーマーケットにいって魚を買った」 という言葉を「翻訳」すると 「SMに参りて魚をバイ貝」 という風になります。 本題に戻って古今東西、カネをテーマにした文学は洋の東西を問わずに膨大に存在しておりますが、それは自分も含めて人間が以下に「カネ」というものに翻弄されてきたかということに他ならないと思います。 この本で面白いところは自分の「鬱」の状態を示すバロメーターとして何円分かということを記しており、 「世の中ほとんどのことはカネによって数値化できる」 ということを私小説・純文学のジャンルでこのように表現したのは本書が初めてではないのでしょうか? 筆者は労働によってたまった「鬱」を解消するためにホームセンターに行って鎌、中華鍋を買ったり、射幸心を発揮して宝くじを買ったりさらには家電量販店に行ってデジタルカメラなどのものを「バイ貝」して自らの裡に溜まった「鬱」を解消しようと悪戦苦闘する様は筆者の持ち味であるところの「必死であればあるほど、逆に滑稽になっていく」という展開で、しかし、筆者の姿をただ「笑う」ことはそのまま「カネ」に翻弄され続ける自分自身を笑うことに他ならないのではなかろうか? などということを読後にふっと考え込んでしまいました。 安い鎌と高い鎌とを自分の中で天秤にかけては懊悩し、中華鍋に油をなじませるために野菜を延々といため続け、さらには購入したデジタルカメラで自分の飼っている犬を浜辺で撮影する…。 果たして、筆者の抱える「鬱」はモノを買って消費することで解決できたのかはご自身で確認いただくとして、筆者のインタビューによると、ここに記されているものは実際に購入して使ったものだそうであります。 ここに書かれている内容のうち、どこからが事実でどこまでがフィクションかは知る由がありませんが、「カネ」という「魔物」にこれからも向き合っていかなければならない以上、一読はされても損はなかろうかとは思われます。 ※追記 本書は2016年8月4日、双葉社より『バイ貝 (双葉文庫)』として文庫化されました。
自分の鬱レベルを金額で表現する可笑しさ。鬱レベルを下げるために好きなことをしたい、もしくは悩みの種を解決したい→それにはお金がかかる→お金を稼ぐためには働かなければならない→働くと鬱が溜まる、というあまねく人類がぶち当たる人生の命題が描かれていて面白い。
あとがきにあるように、最後の数行にやられました。なんだ、この読後の爽快感は…! 資本主義経済に疲弊して、なんだか金銭価値だけで物事が動くことに違和感と少々の吐き気を覚えていた頃、この本に出会いました。 読みすすめてみると、町田康臭炸裂の面白日記な感じで、パンチの効いたリズミカルな日本語にただた...続きを読むだ興ずることができました。しかし、意外なクライマックスに心が打ち震えました…。 この世のあらゆるものは、実は「一般的等価形態」だけで量れるものではないのだ、と筆者が気づくのとほぼ同時に、その概念がわたしにもストンと腑に落ちる感覚がありました。 あとがきが素晴らしく、その部分だけでも二度拝読いたしました。
この本を読んで素敵な買い物ができました。 今までなら、2700円で使い回しが効きそうな靴下を買っていましたが、 4000円の派手な柄の靴下を買ってみました。 するとファッションの幅が広がってとても楽しくなったのです。
珍妙な峠を先に読んじゃったのでこっちも読みました。でもそんなに繋がってるわけではなかった。こっちはエッセイ調で文体もいつもの町田康だから町田康的なおっさんがちらつくときがあり、何で小説の主人公=作者、みたいなテクがあるんだろうか。犬飼ってるし。というより、文体が特徴的だからこういう小説家が主人公の小...続きを読む説はぜんぶこのおっさん、てなる。そうなるように書いてるんだろうけど。最後の章とかいったいどんな顔で文章作ってたんだろうかと考えてしまう。 話の中身はねめちゃくちゃ面白かったです。ほんと買い物ってうまくできんのよねーーーーーーー。
カネを稼ぐのは辛く苦しく、カネを遣うのは楽しくて気色がよい。カネを稼ぐために蓄積した鬱を霧消するために、主人公はホームセンターで鎌を買い、中華鍋を買い、はたまた宝くじを買い、結果なぜか鬱が溜まった。 他に鬱を消す方法がないかと趣味を持とうとする。カメラにのめり込んでからは、鬱の計算もしなくなるの...続きを読むだが、最後に行き着くのは「カメラを使うたびに鬱が溜まっていく」という事実であった。最後の降り積もる鬱は最高に美しい!! 資本主義の世界では、何でもかんでも価値の尺度は金額で換算される。お金をかけさえすれば楽しいことが待っているのか。お金さえあれば幸せなのか。そういうものから解放されたくて東京を去った私にとって、これはなかなかに考えさせられる小説でした。何はともあれ、この本を読むことは非常に愉快な経験で、私の鬱は随分霧消しました!
日々降り積もる鬱を昇華する為に奮闘する主人公。 今度こそ「こます」と決意した行動が更なる鬱を生む。 この負の連鎖に目を覆いたくなる。 紆余曲折の果てに辿り着いた境地は 「静かに静かに鬱が降り積もっていた。私はそれをもはや美しいと思うようになっていた。」 その一文に救われた。 小さな愉悦を感じ減鬱しよ...続きを読むうとする行為。主人公は大変にアクティブだ。 負の連鎖からの脱却のきっかけは、最初から身近に有った事。 人生ってそんなもんだよね。笑
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