法月綸太郎のレビュー一覧
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4+
名探偵の苦悩極まれり。
著者が言うには、『頼子のために』『一の悲劇』『ふたたび赤い悪夢』の順(刊行順)で三部作を構成するとのことだが、物語の流れとしては本作は『雪密室』と『頼子のために』の続編にあたる。『一の悲劇』は本作よりも後の話、『雪密室』と『頼子のために』は直接の関わりはない。本作のみ読んでも、過去の事件との関わりが多少わかり難いだけで、そこそこ楽しめるとは思うが、遡って読む場合には、重要な点がネタバレになってしまうのでやはり刊行順に読むのが望ましい。
ちなみに本書巻末の笠井潔の解説には前もってネタバレの注意喚起が記載されているが、クイーンの作品については予告なくネタバレし -
Posted by ブクログ
お膳立てばっちしの本格推理小説。
最初は、語り口がちょっと芝居がかりすぎているように感じていたが、クラスメイトの一人が主人公に自殺未遂をした経緯を語る場面で「これは凄い!」と膝をただした。
この心理描写、その切迫感、そして絶望感。ともすれば絵に描いた餅のような滑稽さに陥りかねない(中二的な意味で)その感情を、ここまで研ぎ澄まされた言葉で語る著者の筆力に感心した。
それ以後は、物語世界にぐっと興味が湧いてとても面白く読めた。
教室にあった48の机と椅子が消えた中で級友が死んでいたという奇妙な密室、という設定をじわじわと生徒たちの反応を交えて描いていく様子や、主人公と警部との軽妙な腹の探り合い -
Posted by ブクログ
西村頼子の事件以来、出口の見えないスランプに陥っていた
作家の法月綸太郎のもとに、深夜かかってきた電話は、
アイドル歌手畠中有里奈からの救いを求める電話だった。
ラジオ局の一室で刺されたはずの有里奈は無事で、
彼女を刺したはずの男が死体で発見されるという奇妙な状況。
しかし、有里奈は、ただ不思議な体験をしたというだけで
混乱し、恐怖に追い詰められたわけではなかった。
彼女の精神を極限まで追い込んでいるものは、
有里奈の双子の兄と、有里奈の父を惨殺し
自殺を遂げたという実の母親の影だった。
自分の中にも、やはり人殺しの血が流れていたのだ――。
そう思いつめ、心を閉ざしてしま