宮部みゆきのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
10月も中旬になり、日中はまだ暑さが残っていても朝晩はずいぶん過ごしやすくなってきた。気が付けば日が暮れるのも早くなり、夏の終わりと秋の始まりを感じる季節だし、今年は秋の長雨が多いのでなおさらだ。
昔から「読書の秋」と言われているが、本当にのんびりと秋の夜長に読書を楽しむのはもう少し先の話。しかし、暑い夏が終わって一息つけるこの時期も読書が楽しめる時期でもあるので、東京地方のシルバーウィーク前半は天候に恵まれないこともあり、好きな本をゆっくり開いて物語の世界に浸るのも良いかもしれない。
新潮文庫から発売されたアンソロジー「プレゼント」は、伊坂幸太郎さん、江國香織さん、恩田陸さん、梨木香歩さん、町田そのこさん、宮部みゆきさん、米澤穂信さんという豪華な作家陣による短編集。現代を代表する作家7人が「夏」をテーマに書き下ろした作品が収められている。収録作品はミステリーあり、青春小説あり、不思議な物語ありと実にさまざまで、同じ夏というテーマでありながら、作家ごとにまったく異なる内容の短編集だ。読んでいるうちに、自分自身の学生時代の夏や忘れていた思い出がふと頭をよぎることもあった。
アンソロジーの魅力は、一冊で複数の作家の世界観を楽しめることだろう。この一冊もそれぞれの作品は短編ながら読み応えがあり、読み終えた後にしばらく余韻が残る。季節はすでに秋へと向かっているが、この本の中には楽しかった夏、切ない夏、不思議な夏、少し怖い夏などさまざまな夏が詰まっている。そんな夏の記憶を振り返りながら読むのにぴったりの一冊なので、秋の夜長一歩手前に読む本として手に取ってみてはいかがだろうか。 -
Posted by ブクログ
【短評】
――語って語り捨て、聞いて聴き捨て。
神田に店を構える三島屋「黒白の間」においては、来客が自ら体験した奇譚変事を語る「変わり百物語」が営まれている。聞き手を勤めるのは、心に傷を抱えた主人の姪・おちか。
本作で語られる話は、四つ。
周囲の水が"逃げて"しまう小僧が邂逅したものーー「逃げ水」
双子に纏わる親子の歪な情愛の物語ーー「藪から千本」
暗がりに潜み、人間を恋い慕う何かーー「暗獣」
隠れ里に受け継がれる習俗と業ーー「吼える仏」
江戸を舞台とした怪異譚『三島屋変調百物語シリーズ』の第二作。
前作「おそろし」を読んだのは少なくとも十五年以上前のことで、設定云々は綺麗さっぱり頭から抜け落ちていたが、問題無く物語に入り込むことが出来た。ただし、其処此処で前作由来の描写があるため、記憶に新しい方が愉しいとは思う。
構成の巧さに唸らされる。
どのお話も、唆られる導入に始まりつつ、凡百な読者の想像を振り切って、意外で多彩な膨らみを見せてくれる。「うむむ、これがどう冒頭に結びつくのだ」等と考えながら、突飛な方向に進む怪談にのめり込み、気が付いたら綺麗に着地している。嗚呼、お見事。「お話に聴き入る」という体験をすることが出来た。
①逃げ水 ★★★★★
ファンタジィが巧い。「お旱さま」周りの活き活きとした描写に舌を巻く。特に山走りの下りなどはお気に入りだ。ありありと絵が浮かぶ。山を"滑る"時、顔に受ける風を感じる程に。からりとした読後感も良い。「お旱さま」が未だ健在という終着も好むところだ。
②藪から千本 ★★★☆☆
ある種のヒトコワなのだろうか。こういう趣向も良い。人形に針が突き立つというのが実に不気味だった。快活な語り口のなかに、心の闇が垣間見えるような筋書きも巧いなぁと思う。ファンタジィ色は薄いが、安定して面白い。
③暗獣 ★★★★★
抜群。やはりファンタジィが巧い。気配とか予感ではなく「くろすけ」を実体のある存在として描いたのが素晴らしい。実際に触れ合うことが出来るからこそ胸を打つものがある。どかんと盛り上がって、嗚呼、滂沱の涙みたいな話ではなく、実際に何があったのかは想像することしかできないところに趣があると感じた。
④吼える仏 ★★★★☆
結構怖い。壊れてしまった男の有様が印象に残る。やはり実体があるんだよな。最後に出てくる「化物」にはゾクリとさせられた。救いの無さも含めて、結構好みなお話ではある。
ほっこりするお話から、そくりとするお話を経て、じーんとするお話まで網羅する。
百物語ならではの懐の深さを堪能させて頂いた。ストーリーテラーとしての宮部みゆきの偉大さを再認識した次第。続編はいっぱいある。新たな鉱脈を引き当てた喜びを抱きながら、続編もじっくり掘り進めていくとしよう。