宮部みゆきのレビュー一覧
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ネタバレ亘の旅が無事に終わってよかった。目先の幸運だけを追いかけず、これから起こるいろんな経験を一つずつ乗り越えようとする逞しさに成長を感じた。
上巻から下巻にわたり、コントローラーを握りしめながらワタルとキ・キーマとミーナと、自分の4人で冒険をしているような感覚で楽しかった。
下巻の始まり、システィーナ聖堂の石像(ダイモン司教)との闘いは手に汗握ったし、トニ・ファンロンに龍の鱗から笛を作ってジョゾの背中に乗りアンドア台地の頂上まで飛行したことも心が躍った。終盤の幻界滅亡の危機には、もうダメなんじゃないかと諦めそうになり、歯を食いしばり、消えゆく仲間の命に涙が流れた。カッツが最期まで信念を貫き通して闘い抜いたのにも、ロンメル隊長がまさかヒト柱に選ばれたのにも泣いた。でも懐の深い、人情のある隊長がこれから千年もの間、亘の幻界を見守ってくれるのだと思うと、複雑な気持ちだけど安心でもある…。どうか一千年後の世界でカッツと再会してほしい。
確かに亘の旅は無事に終わった。でも美鶴はどうなの、美鶴の終わり方があまりにも報われない。最期は憎しみに飲まれ己をも滅ぼしてしまい、更には半身に選ばれ…。憎しみは憎しみしか生まず、美鶴は多くの過ちを犯したと思う。でも美鶴の妹への一心の思いは誰が救ってくれるのだろう。最期に妹の魂に迎えられてようやく一緒になれたと思ったのに、それも束の間、千年の時に閉ざされるなんて。悲しい。美鶴があまりにも可哀想。救われてほしい。
物語の最後には幽霊ビルも建て壊され、本当に幻界との繋がりが断たれて寂しい気持ちになった。
中学生時代に読んだときは、こんなにグッと心に来たっけ。忘れてしまっていた箇所も多く、大人になり改めて読み直しても本当によかった。教王にはならないよう、戒めもあり。 -
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ネタバレ三島屋変調百物語も8冊目、35~27話目を収録。
「賽子と虻」に「土鍋女房」はどちらもこの国に八百万の神さまがおられるからこその怪異譚。人間は神さまの気まぐれに翻弄されつつしたたかに生きる。一神教にはない土着信仰の味わいが十分に生かされていて、怖くて悲しいけど昔話的に良い物語だった。
そして表題作「よって件のごとし」はまさかのゾンビ譚かつマルチバースもの。アクションが冴えわたる活劇だったことにもびっくり。そういえば宮部みゆきはキングの信奉者でもあったねぇ。
まだ1/3過ぎたとこやのに、三島屋の流れにもなんとなく不穏な空気が立ち込めだした本作。百話まで読みたいねんけどなぁ…(次回作はとりあえず出版されている) -
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主人の姪“おちか”から次男“富次郎”に聞き手が引き継がれたシリーズ6冊目。
表題作を含め4篇収録。
「泣きぼくろ」「姑の墓」はしっかり怪談。「同行二人」で少しだけほっこりして「黒武御神火御殿」で畳み掛ける怪談集。→
「姑の墓」が怖かった。このシリーズはどうしようもない怖いことが普通に描かれるんだけど(時代的にそういうものなんだろうな)この話、マジでどうしようもない悪が描かれていてめちゃくちゃ怖い。防ぎようがないんよ。
「黒武御神火御殿」は、短編というよりしっかりとした中編。→
おちかちゃんが一巻で巻き込まれた事件とはまた違うんだけど、これも不思議。この展開を読ませる宮部みゆき氏の筆力はすごい。ボリュームが半端ない。聞き手が変わったぞ、と読者が再確認できるようなお話。
ほんと、宮部さんの文章は読みやすくて好きだなぁ。 -
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ネタバレ宮部みゆきさんのファンタジー、王道にしてとても精密に設定、世界観作りが施されていて終始楽しんで読んだ。彼女がゲーマーでRPGにも精通していることがよく分かり、丁寧で優しい宮部作品の中に遊び心があった。
元々幼い頃映画で見て好きな話だったのだが、小説と全然違った。嘆きの沼やリリスは出てこないし、ジョゾは最初から2mくらいあって喋るし、カッツが亡くなるし、ロンメル隊長もハルネラも出てこない。物語を省かれ過ぎていて、改めて映画を観ると小説の世界観を省いて描いていることに少し憤りを感じた。でも、原作を読んだことで大好きなブレイブストーリーへの理解が深まり、より作品を好きになることかできた。
二つ目の宝玉を手に入れて母邦子の元に帰った時、ワタルは自分の影の部分も受け入れて、運命を変える旅をしてくると言った。ワタルは小学5年生にして、自分の〝負の側面〟を受け入れて、逞しく成長した。
このワタルの姿から、自分は完全無欠の善であると考えることの危うさと、弱さを受け入れることの難しさを痛感した。あんなに優秀なミツルですら、自分の負の側面を無視して突き進んだ結果、憎しみが膨れ上がり影の自分との対決に負け、命を落としたのだ。ワタルのように自分の弱さや負の側面もまるごと自分であることを受け入れることは、誰にもできることじゃない。ワタルが幻界で旅を完遂し、運命の塔で女神様に会うことができたのも、ワタルの素直な心、何事も受け入れる懐の深さがあったからこそできたことだと思った。 -
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「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」が決め事、三島屋の姪、おちかが従兄弟の富次郎と共に聞き役を務める変わり百物語、シリーズ5作目。
五篇収録。第一期完結。
「だんまり姫」が一番好き。冒頭少し入りにくいけど、ラストは泣く→
じわりじわりとお話の中で時が進む。
三島屋の次男坊である富次郎が参加することにより、おちかをはじめみんなの時が動き出したように感じた。
富次郎が百物語で聞いた話をイラストにするというのが、とても良い。でもこれ、後々なんか大きな禍が起きそうでドキドキする。
「開けずの間」はダイレクトに怖い。「面の家」と「あやかし草紙」はなんとなく邪の種類が似ているような……?「金目の猫」は切ないけど素敵な話……か?
長男伊一郎が想像からだいぶん離れていて意外だった(笑)
次巻からガラリと雰囲気変わるだろうな。それもまた、楽しみ。 -
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ネタバレ三島屋変調百物語シリーズも7巻目、百物語としても三十四話と全体の1/3、前半を超えるところまでやってきた。
今回はいつもより1話少な目で本自体も薄めの3話収録…とはいえ、3作とも内容は薄くない…いや怖さは薄いか…中身はしっかり面白い。
荒神を彷彿とさせる1話目、人情妖怪話の3話目、しっかり読ませる中編の間にはさまる2話目の短編が一番好み。
舞台を昭和にして、怪奇大作戦の1話として撮ってほしいような良き話。母の愛を受け子供たちが素直に育ったというその結果だけでも、おじさんは涙する。
3作目の最後はマーベル映画の最後のような気の持たせよう…それもまた良し、早いこと八之続を読みたいもんだ。 -
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文庫化を心待ちにしている三島屋シリーズ。
本書『八之続』の収録作品は三編とも中編というべき長さで読み応えがあった。
『賽子と虻』は姉を想う少年の勇気、てちんと転がるキリ次郎の可愛らしさが心に残る秀作。報われたとは言い難い結末が悲しいが、含みを残した終わり方なので、餅太郎の再登場を期待したい。
続く『土鍋女房』は怪談らしい怪談。好きな人には刺さりそうだが、理不尽さがどうにも消化しきれず、第一話・三話ほどの好印象はなし。
表題作『よって件のごとし』は異色とも言えるゾンビ物だが、冒険あり、家族愛あり、恋愛ありと読みどころ満載で一番楽しめた。悲しみが通奏低音として流れているにも関わらず、読後感が良く、シリーズを通してのお気に入り作品となった。