あらすじ
一度にひとりずつ、百物語の聞き集めを始めた三島屋伊兵衛の姪・おちか。ある事件を境に心を閉ざしていたおちかだったが、訪れる人々の不思議な話を聞くうちに、徐々にその心は溶け始めていた。ある日おちかは、深考塾の若先生・青野利一郎から「紫陽花屋敷」の話を聞く。それは、暗獣“くろすけ”にまつわる切ない物語であった。人を恋いながら人のそばでは生きられない“くろすけ”とは―。三島屋シリーズ第二弾!
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うわっ面白い。特に表題作が良すぎる。
怪異なのに愛らしい暗獣〈くろすけ〉との日々は微笑ましい。
だけどその性質は悲しく切ないもので、堪え切れずに泣きました。
収録されている四話とも本当に面白くて、怪異譚といっても“怖い”以外の感情が沢山湧き上がってくるので読むのが楽しい。
時代小説には苦手意識があったけど、このシリーズはぐいぐい読めるので自分でも驚いてる。
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三島屋変調百物語其のニ
三島屋の黒白の間にて怪談
逃げ水 平太が旱神に憑かれた話
薮から千本 お隣の針問屋のお梅が、双子に生まれたばかりにうけた境遇から抜けお嫁入りする話。疱瘡神に魅入られたお勝さんが鍵
あんじゆう
新太の手習小屋の友達が癇癪を起こし解決する。青野利一郎が師匠の紫陽花屋敷で経験したくろすけというお化けについて語る
吠える仏
利一郎のつてで偽坊主行念坊が黒白の間で語る、昔語り。閉ざされた山村で虐げられた富一が掘った仏により村は廃村に追い込められる。
これで九つ目
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あんじゅう。
帯と絵でなんとなくやられた感はありましたけど、時代ものでこんなに涙が出るとは…
宮部みゆきはすげぇっすわ。
動物好きならば、いや、動物が好きでなくても、あんじゅうのことを見守りたくなると思います。
あたたかくて、切ない。
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大好きな1冊になりました。
“あんじゅう”って何かなって疑問でしたが、読み終わってこれが題名になった事に納得です。“おそろし”も読んでいないので次回読みたいって思います。
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もうこのシリーズを読むと決めたらこれが一番の展開だと思う。
今風に言ったらファンタジー?もっとおどろおどろしく言ったら怪談?
おちかの素直で可愛い人となりと叔父さん叔母さんの人間性などキャラクターに癒される
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序 変わり百物語
第一話 逃げ水
第二話 藪から千本
第三話 暗獣
第四話 吼える仏
変調百物語事続
1冊目より好みだった。全体的に「悪」要素が減って心温まる要素が増えたように思う。
「逃げ水」のお旱さまも、「暗獣」のくろすけも可愛くて可愛くて仕方なかった。
くろすけについては切なさが同居していて泣いてしまったが、なんというか、捨てられた老猫が今際の際に優しい飼い主と巡り会って往生したというような、そんな印象を受けた。
1巻では、おちかと清太郎が縁付くのかな、と思ったりしたけど、ここに来て若先生、青野利一郎が「暗獣」で登場し、なんだかおちかと良い雰囲気になっている。はたして続編でくっつくのか、と思うものの、まぁ本作の本旨は百物語なので、期待は薄かろう。
「吼える仏」は偽坊主の行然坊が良かった。自身は坊主をただの生きる糧としてしか捉えておらず、自分に手を差し伸べる坊主を下に見て生きてきたのに、どこかで縋る気持ちがあったのだろう。
「御仏の慈悲を信じてくれ!おまえが見つけた御仏は、今もおまえのなかにおる」という魂をかけた説得、それに対する仏などいないと言い切る異形と化した富一。
行然坊の「これまでわしが会えなかっただけで富一が、館形の衆が会えなかっただけで、やっぱり御仏は、どこかにおわすのではなかろうか」という言葉が、仏道の本性に思えて仕方がない。
特に心に響いた部分を引用して感想を終える。
御仏よ、何処におわしますか。
「探して探して、どこまでも行こう。そしていつか、御仏のお声を聞けたなら」
ここにおるぞ、行然坊。
「館形を訪ねよう。そして富一に教えてやろう」
御仏はおわすぞ。諦めるな、と。
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三島屋百物語第二段
逃げ水のお旱さん、藪から千本のお花とお梅、暗獣のくろすけ、吠える仏の4部作。
お勝と利一郎らが三島屋の新レギュラーに加わりより賑やかさを感じた。
そしてくろすけに泣いた。星5
人を恋うが共に暮らせない悲しい生まれのくろすけに出逢い、人嫌いな自分の傲慢さに気づき人と関わり生きると心変化した師匠。とても感動するし、序盤の師匠の気持ち、わかるな〜と思っていたが後の改心は見習いたいし自分に言われてるような気分になった。良本。
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三島屋伊兵衛夫婦に世話になっている姪のおちか。おじが与えた百物語の聞き手、その役目を得て過去の自分と向き合う1歩を踏み出せた。そしてまた次の話に向き合う。
「逃げ水」:金井屋の丁稚平太と彼に付いた神様お旱さんの話。人間とは身勝手だ。必要となれば頼り、無用となれば存在そのものを忘れる。人に必要とされなくなったお旱さんの怒りと悲しみ、彼女に付かれ厄介者扱いされながらお旱さんの気持ちを理解し共感し寄り添う平太。孤独を分かち合う2個1の1人と1柱、金井屋に来て新太と行動を共にするようになってからの無邪気なやり取りが微笑ましい。
「藪から千本」:三島屋の隣、針物問屋住吉屋一家の話。双子は凶事。これまで平穏な生活を送っていた二組の夫婦とその姑、子どもが生まれればめでたいはずなのにかわいそうな考え方だ。そして変貌した姑も姑、姑の言葉に固執した夫婦たち、その被害者は生まれた双子の1人お梅だ。お梅はただただ気の毒だ。だが、お梅を守護するためだけにいるように扱われるお勝、人をなんだと思っているのか。住吉屋の面々、好きになれる要素なし。
「暗獣」:三島屋の丁稚新太、その友人の直太朗が起こした事件から始まる話。これまでと違い、語り手の深考塾の若先生青野利一郎の語りでない箇所があり少し複雑さを感じた。
人でないもののくろすけ、そのくろすけに愛情を注いだ加登新左衛門と妻の初音。互いに互いを思いやり、気づかい、愛を与え合う、優しく心温まる関係性だ。だが、住む世界が違う相反する存在同士なのが辛すぎる。好きだからこそ離れなければいけない、互いが互いの手を離す瞬間が切ない。
「吼える仏」:若先生青野の知り合いで似せ坊主の行然の話。小さいコミュニティの中にいるとその中の正義に飲み込まれてしまう。白いものも皆が黒だと言えば、黒、白と言えば厄介者。人の団結とは時に硬く、時に脆い、仏さまには何が見えているのだろう。
今回も人の良い面、悪い面、両方を感じた。人を助けるのも人で人を傷つけるのも人だ。そして、そのどちらも合わせ持つのが人だ。人というのは難しい。
あんじゅう、あえてひらがななのだろうか。加登新左衛門夫婦にとっての暗獣、くろすけにとって2人と過ごした安住の地、そしておちかにとっての安住の地となっている三島屋。上手い。
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時代物は避けてきたけど、殆ど全ページに味のある挿絵があるおかげで読む気になった。
そして読んでみたら、さすが宮部みゆき!やっぱり面白い!!
三島屋のおちかが、怪談を聞く。白子様と、あんじゅうと、行念坊のお話。どれも良かった。2011/4/15
これを読んだのはもう13年も前になるけど、いまだにふとした時にあんじゅうのイメージがふとした時に頭に浮かんでくる。
Posted by ブクログ
563ページ
1800円
5月9日〜5月10日
三島屋のおちかのもとに6つめの物語をもってきたのは平太という子どもだった。平太には白子様 (しろこさま)がついており、いく先々で水が枯れるという。7つめの物語は、お隣の住吉屋のお路さん。双子の姪
の片割れを引き取ったが、双方のお家に起きた人形に針が立つという不思議で悲しい話。8つめの物語は、紫陽花屋敷にいる暗獣、くろすけと夫婦の楽しくも悲しいお話。9つめの物語は、偽坊主の行年坊が語る館形 (たてなり)での木仏にまつわる話。おちかのもとには清太郎や青野の若先生と気になる存在も現れる。
平太と白子様の話は、最後に船頭になるというところから、あの話につながるのか!となんだか嬉しくなった。暗獣のくろすけは、人恋しいけど人に触れると病んでしまうというなんとも悲しい話だった。妖怪なんだろうけど、なんだかかわいらしい獣の話で別れのシーンでは涙してしまった。同じ孤独でも、今までとは違う。離れたところにいても、お前の事を思ってるという別れの言葉がなんとも切なかった。
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トラウマのあるお嬢さんが様々な人たちの不思議体験談を聞くという設定のファンタジー時代小説その2。相変わらず面白い。そして泣ける。今回は化け物達に共感するお話が多くて、アニメ『夏目友人帳』を見るたび泣いている自分など涙腺大崩壊だった。
「あんじゅう」とは何だろう?饅頭の仲間か?と思っていたら「暗獣」とのこと。読み終えた後にブックデザインのあちこちに隠れていた暗獣「くろすけ」に気づいて、またしても泣かされた。家屋敷に意識が宿るというアイデアは奇異なようで感覚として分かる。主客が渾然一体化した日本人(日本語)ならではの世界の捉え方だと思う。ちなみに単行本で読んだのだが、南伸坊氏による愛嬌たっぷりのイラストがこれまた素晴らしかった。
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シリーズ一作目の『おそろし』も雰囲気・内容ともに好きでしたが、『あんじゅう』に収録されている話が圧倒的に好みです。
特に「藪から千本」のドロっとした生温い沼みたいな怖さ、次の「暗獣」の不思議さと切なさという緩急に、しばらく読後の余韻が引きませんでした。
一作目以上に人の内面にクローズアップした話になっていたように思います。
「どんな幽霊よりも結局生きた人が一番怖い」みたいな感想は怪談好きとして安直に言いたくはないのですが、今作は生きた人の浅ましく恐ろしい部分と、神仏や怪異の超自然的な恐ろしさのバランスが、私としてはとても丁度いい塩梅でした。
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切なくて寂しい闇獣、可愛らしい、くろすけ。
読んでいるこちらも別れるのが惜しい。
あなたの心にもくろすけが住みつきます。
登場人物達もみなさん素敵。
チビっ子3人+丁稚さん新どんはカワイイし、お勝さん、おしまさんの女中コンビとおちかもいい関係。
懐広い三島屋の旦那様とお民さん。
人間関係の複雑さが現代のそれより分かりやすく(理解しやすい)、人々も素直に正直に生きていて素敵ですね、お江戸。
そんな素敵な三島屋さん。
御奉公させて頂きたくなりました。
長めの1冊ですが、読み終わりたくない読みやすさ。
ただいまお江戸に浸っております。
星5つ
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シリーズ二作目。
人間の欲や身勝手さが先なのか、怪奇が起こるから人間が心惑わされるのか…。
ホラーであるけれど、ファンタジーでもあるし、ミステリーでもある。さらにそこに人々の人情話もあわさった時代物に仕上げてしまうなんて!
江戸の人々の生き生きとした暮らしを想像しながら読んでいます。
心強い仲間も増えて、次回作も楽しみです。
Posted by ブクログ
江戸の袋物屋である三島屋に身を寄せているおちかは、「黒白の間」で江戸に住む人々の不思議な話を聞く。
ある丁稚の周りでは水が逃げ(逃げ水)三島屋の隣家での嫁入りは不思議なしきたりがあり(藪から千本)幽霊屋敷に住む→
“くろすけ”は三島屋の丁稚である新太の知り合いの師匠と出逢い(暗獣)偽坊主の過去には恐ろしい村があった(吠える仏)
「暗獣」のお話がとにかく良い……やさしい、やさしい怪談……泣いちゃうぅぅぅ!!
「逃げ水」もかわいいお話。まぁ、大人の身勝手なところもあるけれども、平太とお旱様が→
かわいい。
「藪から千本」はなんとなく針千本飲んだような話で「吠える仏」に至っては普通に怖い怪談だったけど。
2作目ではおちかちゃんの周りの人間が増えて、“おちかちゃんの物語”に厚みが出た感じ。時代小説感があっていいよねぇ。
青野先生が今後どう絡むかも楽しみ!
以下、リアルタイムツイート
1話目から子供の話で、好き!ってなってる(宮部さんが描く子供が好き)
おちかちゃん、だいぶん大人になったなぁ。しっかりしてる。まぁ、前作のラストみたいなことがあれば色々肝も座るわな(笑)
2話はなかなかにヘヴィなおはなし。
そう落ち着くのかぁ……からのラスト!お民さんに笑っちゃった(笑)
お勝さんがとても良い。おしまさんとの対比が楽しいなぁ。
そして3話はまた新太のお話だぁ( *´艸`)この巻、子どものお話が多くて好き!
くろすけぇぇぇぇ。・゚(´□`)゚・。
(あんじゅう、第3話読書中)
何という……何ということなんだ……。あんなにニコニコしながら読んでいたら、うっかり泣きかけた……てか、一人なら号泣レベル。
まだだ、まだ終わりじゃない……きっとこの先にしあわせが……てか、本件がまだ片付いてないじゃないか。
「おまえは再び孤独になる。だが、もう独りぼっちではない。(中略)お前がここにいることを知っているのだから」(481ページ)
こんなん、泣くしかないやん!うわぁぁぁぁん。・゚(´□`)゚・。
世間に交じり、良きにつけ悪しきにつけ人の情に触れていなくては、何の学問ぞ、何の知識ぞ。(502ページ)
うわぁ……キッツいなぁ(笑)
そうだね、そうだよ。だからこその
人は変わる。いくつになっても変わることができる(502ページ)
なんだね。
ぐぁぁぁ。この話すごいな!
ちょっと放心してる……。めちゃくちゃええおはなしを読んだ……。
このお話読んでから書影見たら……ぐぁぁ!!
あんじゅう、を昨夜読み終わる。
とても良い短編集だった……。
三島屋ファミリー、最高……フィクションだからこその最高さがある……。
Posted by ブクログ
「暗獣」が可愛い(笑)でも、それと火事は関係ない気がした。(直太朗は折り合いを付けられたみたいだから良し)
前作とは異なり、一話独立型の今作の方が読みやすかった。
緩急にやられます
怖い一辺倒ではなく、空恐ろしいような話や、切ない話だったりバラエティに富んだ内容になっていて飽きることがない。
ぞっとする話だけでなく、人情も感じたいならすごく楽しめると思います。
百物語を通して聞き手のおちかさんの世界が広がっていくのが冒険を進めているようです。
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2018/1/7 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。
2023/7/15〜7/22
三島屋変調百物語シリーズ第2弾。逃げ水、藪から千本、暗獣、吼える仏の四遍。後半二つが素晴らしかった。サブキャラとして、お勝、青野利一郎、利一郎の教え子の3人組、行然坊らも登場。このあとのシリーズ発展が楽しみである。
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読むのを楽しみにしていたシリーズ第二弾。
おもしろかったぁ。
1巻よりもさらに登場人物が増えたし話の内容も面白かった。
この巻を読んだ人はほとんどみんな好きになったであろう、第三話「暗獣」くろすけ。
なんて…なんて可愛いの…。
可愛すぎて読みながら微笑んでいた。
この話では出てくる人物も皆好きだし2,3回流し読みで読み返してしまった。
あわわぁ、おああ。
解説にもあるように、この巻では奇数話がほっこりするような、偶数話が少し怖ろしいような話になっている。
ほっこり話はもちろん、怖ろしい話も楽しかった。
久しぶりに楽しい!と思える読書だった。
続きシリーズも楽しみ!
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三島屋変調百物語第2弾、第一話「逃げ水」では、淋しがり屋の神様「お旱さん」との出会いを通じて、神を敬い怖れる江戸時代の生き方が伝わってきた
素直で純粋な少年と三島屋の人々の絆が温かく、読後感が良くほっこりした気持ちになる
第四話「吼える仏」は、偽坊主・行然坊の回想から、仏様と共に暮らす人々の信仰と人の良心の脆さを描き、宗教の持つ複雑な力と時代を感じさせ、行然坊の最後の言葉に作者の思いが込められている
心に残ったのは第三話「暗獣」、真っ黒なもののけ「くろすけ」と老夫婦の交流は、付喪神とは思えない愛らしさと切なさに溢れている
くろすけの健気な姿や、夫婦との絆が深まるほどに訪れる別れの悲哀に、思わず涙
江戸の暮らしや人々の心を生き生きと描き、怖さと優しさが絶妙に混ざり合う宮部ワールド全開の一冊
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オーディブルにて。
三島屋さんシリーズ2作目。前回の「おそろし」は主役のおちかが過去に囚われていたので、まあ暗く悲しいお話ばかりだったのに比べて、本作は心温まるお話や新しい仲間も増え、バラエティに富んだ百物語が楽しめた。青野先生やお勝さんの今後の活躍も楽しみ。
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[1]妙に不敵で飄々とした雰囲気になったおちかはん。これが本来の姿に近いのかもしれへんなあ。
[2]チームおちかの新メンバー、お勝、青野利一郎、行念坊、いたずら三人組と新太。メンバーの増加はおちかの世界の広がりでもあり、成長でもある。青野はおちかのお相手役になるかも。清太郎には気が進まんみたいやし。
[3]今回もふくよかな一冊でした。
【逃げ水】金井屋の番頭、房五郎と丁稚の染松(平太)。平太が近寄るとあらゆる水が逃げてしまう。「お旱さん」という神様が憑いていると言う。三島屋の人たちの優しさが身にしむ。
【藪から千本】隣家の住吉屋の娘、お梅が嫁に行ったがなんだかいろいろ腑に落ちない段取りだった。おかみのお路が後に黒白の間で語ったその理由はあまりにも複雑すぎ、どこか歪んでいるところがあり、おちかは不審に思う。呪いとはなんだ!?
【暗獣】出火した「紫陽花屋敷」には後に「くろすけ」と呼ばれた妖怪が住んでいた。この話を読んだ人はくろすけを愛さずにいられようか?
【吼える仏】すでに名前が出ていた偽坊主、行然坊が語る。若い頃、怪我をした彼を救ってくれた、さびれているが豊かでもある館形(たてなり)の里で体験した奇怪なできごと。
人は、心という器に様々な話を隠し持っている。(p.151)
それでもわたくしは、奇っ怪と面妖に、少しは耳の心得がございます。(p.384)…「耳の心得」とはええ言葉やなあ。
百物語を集めることは、怪異譚を集めることではなく、人の想いを集めることのようだ(p.496)
【青野利一郎/あおの・りいちろう】直太郎が前に通っていた手習い所、深考塾(じんこうじゅく)の若先生。若い武士で元々は那須請林藩(なすじょうりんはん)に仕えていたが主家の門馬家がお取り潰しになった。直太郎のことが気になりちょいちょい様子を見に来る。剣の腕は立つらしい。
【紫陽花屋敷】鯰髭様(仮称)の屋敷の隣の空き屋敷。そこから出火して直太郎の父の与平ほか二人が亡くなったらしい。空き家になって十五、六年は経っている。すでに廃屋と呼べる状態。紫陽花が異様な数咲く。
【彩】石倉屋の美しい娘。
【安藤坂の屋敷】謎の屋敷。
【伊一郎/いいちろう】伊兵衛とお民の長男。今は他所の店で修行中。おちかにとっては従兄。
【石倉屋】市太郎とお彩がいる
【市太郎】石倉屋の美しい息子。
【伊兵衛★】三島屋の主人。おちかの叔父。変わり百物語を集めたいと言い出した。当初はたぶん、おちかのリハビリが当初の目的だった。
【梅】三島屋の隣家、針問屋・住吉屋の娘。極端な箱入り娘だった。
【越後屋】堀江町の草履問屋。三島屋とタイアップしてデザイン鼻緒を売り出しヒットした。おたかや清太郎がいる。
【お旱さん】または白子様(しろこさま)。平太の出身地、小野木の土地神。旱神で水を吸収する。『狼と香辛料』のホロ様のような状況で、いつの場合でも恩知らずの人間に困惑させられるのが善意の神。まあ、人間の寿命は短いから代替わりを繰り返すことになりそのうちに忘れられていくのは仕方ないとも言える。
【覚念坊/かくねんぼう】館形(たてなり)というさびれた山村の合心寺という寺の和尚さん。人格者であり村のすべてを取り仕切っていた。
【加登新左衛門/かど・しんざえもん】深考塾(じんこうじゅく)の主人。妻は初音。元小普請組の武士だったが長男の長一郎に家督を譲り隠居した。自分では人間嫌いだと思っているが妻に言わせると《あなたは人間嫌いなのではなくて、ただ人と交わるのに書物の仲立ちが要るだけなのではございませんか》第二巻p.392。『眉毛録/びもうろく』という身辺雑記を書いている。
【勝★/かつ】住吉屋のお梅に付き添うようにしていた、疱瘡の痕がある女。疱瘡神の霊験があるそうだ。後に三島屋の女中となる。物腰などから武家の出かもしれないとおちかは類推している。
【勝三郎】亀戸の梅屋敷の案内をしてくれた。その日は「梅勝」と呼んでくれとのこと。船頭上がりの物慣れた老人。
【かね】鉄五郎の妻。
【変わり百物語★】伊兵衛の発案で集めることになり、おちかが話を聞くことになった。おちかのリハビリ目的なのかもしれない。
【喜一】おちかの兄。
【キャラクタ】なんであれすぐストーリーにいかないのが宮部みゆきさん流。とんな人であるかが描かれ、なぜそういう人であるかの事情が描かれ、ストーリーに直接かかわらない人物でもそれも因果の一環であるというように厚みを持たせていく。だから、初登場で結局ちょい役であっても読者はけっこうその人となりを知ったりしている。他の作家なら、イヤなヤツとか包容力のある人物だくらいの描写しかしない場合でも。
【行念坊/ぎょうねんぼう】偽坊主。青野の知人らしい。サイズが大きい。
【くろすけ】暗獣というべきもの。加登新左衛門と妻の初音は「くろすけ」と名づけた。「まっくろくろすけ」ですな。ただ、大きい。十歳の子供くらいのサイズでわらじみたいな形の闇。《人を恋いながら人のそばでは生きることのできぬあの奇矯な命》あんじゅうp.502
【黒白の間★/こくびゃくのま】伊兵衛が碁を打つための部屋。おちかが怪談を聞くための部屋となった。
【小普請組】無役の御家人、旗本の集団。幕政に参加できずなんもすることはないが「小普請金」という家禄をもらい、その中から役金を上納する形となっており基本飼い殺し。部分的なベーシック・インカムみたいな感じか? それだけでは生活が苦しいので役を得ようとするか、アルバイトをするかとなる。
【三人組】深考塾に通う悪ガキ。性格はよい。金太、捨松、良介。良介の名に一瞬動揺したおちかだった。意外に役に立つので少年探偵団となるか?
【静香/しずか】新太の通う手習い処「しずかどころ」の先生。老女。元武家。滅法厳しい。
【しま★】女中頭。おちかが女中働きをしているときは「おちかさん」と呼び、来客用の着物に着替えると「お嬢さん」と呼ぶ。
【深考塾/じんこうじゅく】直太郎が前に通っていた手習い所。主は加登新左衛門という武家。中風で右手が利かなくなったので青野利一郎を雇った。三人組のいたずら者、金太、捨松、良介がいる。
【新太/しんた】三島屋の丁稚。第二巻時点で十一歳。おしまはちょっと新太に過保護ぎみ。
【住吉屋】三島屋の隣の針問屋。主人は仙右衛門、おかみはお路(おみち)。娘はお梅。本家は他所にあり長男の多右衛門が継いでいる。仙右衛門は次男。本家のおかみは、お累。
【清太郎】草履問屋、越後屋の跡取り。おちかとの縁談話が出ているようだがおちかのほうはなんとなく乗り気でない感じ。
【清六】錠前職人。
【宗助】石倉屋の奉公人。
【たか】越後屋の縁者。安藤坂の屋敷について語った。
【館形/たてなり】若い頃、怪我をした行念坊が救ってもらった山間のさびれた村。ただ、生活は意外に豊か。元は「館無/たてなし」という地名でお館様もいなかった。合心寺の和尚、覚念坊がすべてを取り仕切っていた。
【民★】伊兵衛の妻。
【ちか★】主人公。丸千の娘だが事情があって三島屋にやってきた。他者と接したくないが身体を動かさないではいられないタチなのか女中と同じ仕事をしたがる。伊兵衛の変わり百物語収集で話を持ち込んできた人物から話を聞く役目をおおせつかった。
【ちかのお相手候補は?】まず、越後屋の清太郎(人柄も良さそうだし商売も順調そうなので特に問題はない)。次は浪人の青野利一郎(苦労しそう)。その次は第二巻では未登場の三島屋の長男と次男である伊一郎と富次郎(内紛につながるかも)。
【灯庵★/とうあん】三島屋出入りの口入屋。神田明神下に店を持つ坊主頭の脂ぎった蝦蟇のような老人。
【富次郎/とみじろう】伊兵衛とお民の次男。今は他所の店で修行中。おちかにとっては従兄。
【直太郎/なおたろう】新太の通う静香先生の手習い処の新入生。父親は武家屋敷の用人だったが最近の火事で亡くなった。
【那須請林藩/なすじょうりんはん】青野利一郎が仕えていた藩。主家門馬家の最後の当主は領民たちから悪鬼とか死神とか呼ばれ暴虐の限りを尽くしそのせいで滅びたそうだ。いずれ話がきっちり出てきそう?
【謎の男】最後にメフィストのようなキャラ(おちかのライバル?)。
【初音/はつね】加登新左衛門の妻。おおらかというか豪胆と言うか、青野に言わせると《いくつになっても小娘のような人》第二巻p.404
【春吉】おたかの弟。
【半吉/はんきち】「紅半纏の半吉」と呼ばれる四十がらみの岡っ引き。鼻の脇の大きな黒子がチャームポイント。
【房五郎】質屋、金井屋の番頭。
【平太】金井屋の丁稚。旱神が憑いているらしく行く先々で水が消失する。
【まだら蝦蟇】小石川界隈でブイブイいわせてる岡っ引きの脂じみたじいさん。嫌われてるようだ。
【松太郎★】丸千に引き取られおちかと兄妹のように育ったという微妙な位置づけ。良助を殺したのち自殺。
【松田屋藤兵衛】伊兵衛の碁のライバル。曼珠沙華が怖い。変わり百物語を集める契機となった人物。
【丸千/まるせん】おちかの実家。川崎宿の旅籠。
【三島屋★】袋物屋でそこそこ大きくなってきた。ふたつの名店、越川(えちかわ)、丸角(まるかく)に次ぐくらいの位置づけ。主人は伊兵衛。
【路/みち】住吉屋のおかみ。
【諸星主税/もろぼし・ちから】加登新左衛門の知人。二本差しの軍学者だが新左衛門は怪しいと思っている。軍記語りの能力は見事で、主な生業としている。とりわけ『太平記』を得意としている。新左衛門の隠居後の住居として紫陽花屋敷を紹介した。
【八百濃/やおのう】近所の八百屋。価格も品質も高く、大きな料理屋などを得意先にしている。三島屋出入りではない。主人は、直太郎の父の従弟で父親を亡くした直太郎を養子にした。主人とおかみは、商売人としてはともかく、人格的にはあまりデキてないようだ。
【八十助】三島屋の忠義一筋の番頭。あまり風格はない。
【用人】武家屋敷の用人は《禄として賜る米を金に換え、その家の経理(やりくり)万端を仕切る》p.358。その性能差によって暮らし向きがずいぶん違ってくるのだとか。直太郎の父、与平は能力が高かったらしい。
【良介★/よしすけ】おちかの婚約者だったが死亡。
Posted by ブクログ
『おそろし』に続く、三島屋変調百物語の2冊目です。今回も三島屋の姪おちかさんが不思議な物語を聞き集めます。
『逃げ水』
ある男の子の周りでは甕や花器の中の水が消えてしまい、、、この子のその後が気になるな。
『藪から千本』
とあるおうちの長男夫婦に双子の姉妹が生まれたけれど、姑は縁起が悪いと嫌がり、、、。
『暗獣』
暗闇を好む妖怪?幽霊?の話。
この先も登場しそうなキャラクター達が出てきます。
『吼える仏』
実際にあったんじゃないかと思えるような民間伝承のようなお話し。
今回も神様だったり、仏様だったり、幽霊だったり、妖怪だったり、人の怨念や執念や思い込みだったりと面白かったです。
おちかさんの縁談も気になります。
Posted by ブクログ
緊迫感も悲壮感も漂う一作目から一転して、前向きな明るさを取り戻したおちかさんと愉快な仲間たち。
新たな仲間を迎えて、美しく四季が移ろいゆく。
人情ものとしても、怪談としても、江戸風俗史としても楽しめる。一噛みで何度も美味しい。
あんじゅう、くろすけの話が切なくも面白かった。
Posted by ブクログ
「あんじゅう 三島屋変調百物語事続」(宮部みゆき)を読んだ。
三島屋変調百物語 シリーズ二作目です。
『くろすけ』の経緯(ゆくたて)に涙する。
〈結局、人の心の闇がいちばん怖いんだよな。とは言え、人の心の優しさがなにより一番暖かくて救いをもたらしてくれるのも確かだから。〉
などと今更わかりきったことをあらためて思う65歳の老人なのである。
Posted by ブクログ
三島屋百物語の2巻目。
三島屋の姪っ子、おちかの周りにレギュラーメンバーのお勝が増えます。疱瘡で顔が痘痕になってるもののおちかを支える優しく強い女性。
また、恋の気配が漂うところも良いですね。
今後が楽しみです。
Posted by ブクログ
書名にもなってるお話は切なかったなぁ。
怪異にしろなんにしろ、可愛いものは可愛い。逆に怪異じゃなくても人は恐ろしい。どちらの視点からの作品もある。
ところでおちかさんは、こちらの人を選ぶのかな。
私はこれまでの優しい彼もいいと思うんだよ。