あらすじ
一度にひとりずつ、百物語の聞き集めを始めた三島屋伊兵衛の姪・おちか。ある事件を境に心を閉ざしていたおちかだったが、訪れる人々の不思議な話を聞くうちに、徐々にその心は溶け始めていた。ある日おちかは、深考塾の若先生・青野利一郎から「紫陽花屋敷」の話を聞く。それは、暗獣“くろすけ”にまつわる切ない物語であった。人を恋いながら人のそばでは生きられない“くろすけ”とは―。三島屋シリーズ第二弾!
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Posted by ブクログ
三島屋変調百物語其のニ
三島屋の黒白の間にて怪談
逃げ水 平太が旱神に憑かれた話
薮から千本 お隣の針問屋のお梅が、双子に生まれたばかりにうけた境遇から抜けお嫁入りする話。疱瘡神に魅入られたお勝さんが鍵
あんじゆう
新太の手習小屋の友達が癇癪を起こし解決する。青野利一郎が師匠の紫陽花屋敷で経験したくろすけというお化けについて語る
吠える仏
利一郎のつてで偽坊主行念坊が黒白の間で語る、昔語り。閉ざされた山村で虐げられた富一が掘った仏により村は廃村に追い込められる。
これで九つ目
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序 変わり百物語
第一話 逃げ水
第二話 藪から千本
第三話 暗獣
第四話 吼える仏
変調百物語事続
1冊目より好みだった。全体的に「悪」要素が減って心温まる要素が増えたように思う。
「逃げ水」のお旱さまも、「暗獣」のくろすけも可愛くて可愛くて仕方なかった。
くろすけについては切なさが同居していて泣いてしまったが、なんというか、捨てられた老猫が今際の際に優しい飼い主と巡り会って往生したというような、そんな印象を受けた。
1巻では、おちかと清太郎が縁付くのかな、と思ったりしたけど、ここに来て若先生、青野利一郎が「暗獣」で登場し、なんだかおちかと良い雰囲気になっている。はたして続編でくっつくのか、と思うものの、まぁ本作の本旨は百物語なので、期待は薄かろう。
「吼える仏」は偽坊主の行然坊が良かった。自身は坊主をただの生きる糧としてしか捉えておらず、自分に手を差し伸べる坊主を下に見て生きてきたのに、どこかで縋る気持ちがあったのだろう。
「御仏の慈悲を信じてくれ!おまえが見つけた御仏は、今もおまえのなかにおる」という魂をかけた説得、それに対する仏などいないと言い切る異形と化した富一。
行然坊の「これまでわしが会えなかっただけで富一が、館形の衆が会えなかっただけで、やっぱり御仏は、どこかにおわすのではなかろうか」という言葉が、仏道の本性に思えて仕方がない。
特に心に響いた部分を引用して感想を終える。
御仏よ、何処におわしますか。
「探して探して、どこまでも行こう。そしていつか、御仏のお声を聞けたなら」
ここにおるぞ、行然坊。
「館形を訪ねよう。そして富一に教えてやろう」
御仏はおわすぞ。諦めるな、と。
Posted by ブクログ
三島屋伊兵衛夫婦に世話になっている姪のおちか。おじが与えた百物語の聞き手、その役目を得て過去の自分と向き合う1歩を踏み出せた。そしてまた次の話に向き合う。
「逃げ水」:金井屋の丁稚平太と彼に付いた神様お旱さんの話。人間とは身勝手だ。必要となれば頼り、無用となれば存在そのものを忘れる。人に必要とされなくなったお旱さんの怒りと悲しみ、彼女に付かれ厄介者扱いされながらお旱さんの気持ちを理解し共感し寄り添う平太。孤独を分かち合う2個1の1人と1柱、金井屋に来て新太と行動を共にするようになってからの無邪気なやり取りが微笑ましい。
「藪から千本」:三島屋の隣、針物問屋住吉屋一家の話。双子は凶事。これまで平穏な生活を送っていた二組の夫婦とその姑、子どもが生まれればめでたいはずなのにかわいそうな考え方だ。そして変貌した姑も姑、姑の言葉に固執した夫婦たち、その被害者は生まれた双子の1人お梅だ。お梅はただただ気の毒だ。だが、お梅を守護するためだけにいるように扱われるお勝、人をなんだと思っているのか。住吉屋の面々、好きになれる要素なし。
「暗獣」:三島屋の丁稚新太、その友人の直太朗が起こした事件から始まる話。これまでと違い、語り手の深考塾の若先生青野利一郎の語りでない箇所があり少し複雑さを感じた。
人でないもののくろすけ、そのくろすけに愛情を注いだ加登新左衛門と妻の初音。互いに互いを思いやり、気づかい、愛を与え合う、優しく心温まる関係性だ。だが、住む世界が違う相反する存在同士なのが辛すぎる。好きだからこそ離れなければいけない、互いが互いの手を離す瞬間が切ない。
「吼える仏」:若先生青野の知り合いで似せ坊主の行然の話。小さいコミュニティの中にいるとその中の正義に飲み込まれてしまう。白いものも皆が黒だと言えば、黒、白と言えば厄介者。人の団結とは時に硬く、時に脆い、仏さまには何が見えているのだろう。
今回も人の良い面、悪い面、両方を感じた。人を助けるのも人で人を傷つけるのも人だ。そして、そのどちらも合わせ持つのが人だ。人というのは難しい。
あんじゅう、あえてひらがななのだろうか。加登新左衛門夫婦にとっての暗獣、くろすけにとって2人と過ごした安住の地、そしておちかにとっての安住の地となっている三島屋。上手い。
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563ページ
1800円
5月9日〜5月10日
三島屋のおちかのもとに6つめの物語をもってきたのは平太という子どもだった。平太には白子様 (しろこさま)がついており、いく先々で水が枯れるという。7つめの物語は、お隣の住吉屋のお路さん。双子の姪
の片割れを引き取ったが、双方のお家に起きた人形に針が立つという不思議で悲しい話。8つめの物語は、紫陽花屋敷にいる暗獣、くろすけと夫婦の楽しくも悲しいお話。9つめの物語は、偽坊主の行年坊が語る館形 (たてなり)での木仏にまつわる話。おちかのもとには清太郎や青野の若先生と気になる存在も現れる。
平太と白子様の話は、最後に船頭になるというところから、あの話につながるのか!となんだか嬉しくなった。暗獣のくろすけは、人恋しいけど人に触れると病んでしまうというなんとも悲しい話だった。妖怪なんだろうけど、なんだかかわいらしい獣の話で別れのシーンでは涙してしまった。同じ孤独でも、今までとは違う。離れたところにいても、お前の事を思ってるという別れの言葉がなんとも切なかった。
Posted by ブクログ
切なくて寂しい闇獣、可愛らしい、くろすけ。
読んでいるこちらも別れるのが惜しい。
あなたの心にもくろすけが住みつきます。
登場人物達もみなさん素敵。
チビっ子3人+丁稚さん新どんはカワイイし、お勝さん、おしまさんの女中コンビとおちかもいい関係。
懐広い三島屋の旦那様とお民さん。
人間関係の複雑さが現代のそれより分かりやすく(理解しやすい)、人々も素直に正直に生きていて素敵ですね、お江戸。
そんな素敵な三島屋さん。
御奉公させて頂きたくなりました。
長めの1冊ですが、読み終わりたくない読みやすさ。
ただいまお江戸に浸っております。
星5つ
Posted by ブクログ
「暗獣」が可愛い(笑)でも、それと火事は関係ない気がした。(直太朗は折り合いを付けられたみたいだから良し)
前作とは異なり、一話独立型の今作の方が読みやすかった。
Posted by ブクログ
2018/1/7 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。
2023/7/15〜7/22
三島屋変調百物語シリーズ第2弾。逃げ水、藪から千本、暗獣、吼える仏の四遍。後半二つが素晴らしかった。サブキャラとして、お勝、青野利一郎、利一郎の教え子の3人組、行然坊らも登場。このあとのシリーズ発展が楽しみである。
Posted by ブクログ
三島屋変調百物語第2弾、第一話「逃げ水」では、淋しがり屋の神様「お旱さん」との出会いを通じて、神を敬い怖れる江戸時代の生き方が伝わってきた
素直で純粋な少年と三島屋の人々の絆が温かく、読後感が良くほっこりした気持ちになる
第四話「吼える仏」は、偽坊主・行然坊の回想から、仏様と共に暮らす人々の信仰と人の良心の脆さを描き、宗教の持つ複雑な力と時代を感じさせ、行然坊の最後の言葉に作者の思いが込められている
心に残ったのは第三話「暗獣」、真っ黒なもののけ「くろすけ」と老夫婦の交流は、付喪神とは思えない愛らしさと切なさに溢れている
くろすけの健気な姿や、夫婦との絆が深まるほどに訪れる別れの悲哀に、思わず涙
江戸の暮らしや人々の心を生き生きと描き、怖さと優しさが絶妙に混ざり合う宮部ワールド全開の一冊