あらすじ
洒落た一品をそろえる袋物屋〈三島屋〉の次男坊・富次郎は、いっぷう変わった百物語の聞き手を務めている。「黒白の間」で語られた怪談は、決して外には漏らされない――。初代聞き手のおちかのお産が迫り、てんやわんやの三島屋を、土の匂いをまとった女が訪れた。「うりんぼ様」と呼ばれる不動明王像を連れ込んで語られたのは、行くあてのない女たちの話だった。短編「面影鬼」を特別収録した、宮部みゆき流の人情怪談!
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シリーズものですが角川文庫夏フェアで知って初めて読みました。不思議な物語の数々は人の優しさ、残酷さ、嫉妬、温かさ…様々な側面を丁寧に描いていて、悲しさや怒りにいっときは焼かれようとも聴き終わる頃には清々しい気持ちになっていました。
小旦那さん以外が最初は話を聴いてたの?
これまでにも沢山の不思議な話があったの?
と疑問がいっぱいで最初から読んでみたくなりました。続きが気になるならぬ最初が気になっていてもたってもいられません。
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再読。百物語の第38話から41話まで。話としては最初の「青瓜不動」がよかった。女性が家から逃げられず、道具として縛り付けられていた時代だが、その苦悩と閉塞感は現代にも少なからず残っていて、胸が痛む。後半は一度は筆を折ろうと考えた富次郎が、やはり絵を描きたいと願う思いを取り戻すあたりが、今後の聞き手に変化があるのではと思わせる。毎回のことですが、どうか百物語が無事完結しますようにと祈っております。
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4話とおまけ小話の短編集。シリーズ第9巻。
帯びに「怖い! あたたかい、泣ける……。ぜんぶが詰まった江戸怪談!」。
これ以上的確なコピーはないというほど、怖くて、あたたかくて、泣けた作品だった。
今年も夏の季節に文庫化された本作。まさに夏にふさわしい変調怪談なのだった。
そして前巻にもまして、どの話も胸に迫り「ああ、いいものを読んだなあ」としみじみできる。すばらしい。
最後の話まで読み終えて「ああ、終わっちゃった……」と切なくなったところのおまけ。にくいったらありゃしないのである。すばらしい。
どの話も素晴らしいのだが、最終話はおそらく「ものを作り出す」ことに少しでも関わっておられる方なら身に迫ること請け合い。
私も涙ぐんじゃいました。
あやかしたっぷり、人の怖さもたっぷり、そして勇気と元気もらえる素晴らしい作品です。シリーズの9巻目だが、それにこだわらず、これから読んでもたっぷり楽しめる。
夏におすすめの作品です。
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第一話 青瓜不動
第二話 だんだん人形
第三話 自在の筆
第四話 針雨の里
特別収録 面影鬼
洒落た一品をそろえる袋物屋<三島屋>の次男坊・富次郎は、いっぷう変わった百物語の聞き手を務めている。「黒白の間」で語られた怪談は、けっして外には漏らされないー。初代聞き手のおちかのお産が迫り、てんやわんやの三島屋を、土の匂いをまとった女が訪れた。「うりんぼ様」と呼ばれる不動明王像を連れ込んで語られたのは、行くあてのない女たちの話だった。短編「面影鬼」を特別収録した宮部みゆき流の怪談怪談!
第一話 瓜畑で採れたのっぺらぼうの仏像「うりんぼ様」にまつわる話
第二話 悲劇に見舞われた少女の執念が生んだ、家族を守る人形の話
第三話 描きたいものを自在に描ける不思議な筆について
第四話 山の恵みに頼って生きる、慎ましい村に隠された秘密とは
おちかの赤ん坊が無事に生まれて本当によかった
富次郎は怪談の聞き手としては、感受性豊か過ぎて、なんだか辛そうな気もする
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三島屋百物語のvol.9、4作の中編から成る。黒白の間で聞き捨てられる風変わりな百物語を聞くのは、おちかに代わって小旦那の富次郎。江戸の商家の次男坊の性格が程良く描写されてて、それが聞く側の想いに反映されてるのが、さすが宮部氏と感嘆させられる。今回も時代背景や地域性、男女の置かれ方も併せて、人の胸の奥に棲みつく様々な想いを炙り出している。表題の青瓜不動も最高だったが、お勝さんのエピソードも良かった。
最早、三島屋の面々は私に取って、遠くに住む家族の様な存在。三島屋の店先を覗いてみたい。
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大好きなシリーズです。
どの話も不思議な話ばかりですが、読みすすめるにしたがって、自然と心が癒されていきます。
最後のお勝さんのお話。
きっと、誰しも鬼が側にいるのかもしれない、いや、私も…と思いながら読みました。
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4つのお話しが入っています。
青瓜不動
だんだん人形
自在の筆
針雨の里
一番心に残ったのは 針雨の里 でした。
捨て子たちを 集めて 山の中に住む
雨が何故か降らない
湧き水もあるし 子供たちは 食事もちゃんと与えられる。
ある時 雨が怖い話しを聞く
針のように 身体を刺していく
うーん?
この人たちが住んでるのは 活火山だった森
ある日 一人前になった門二郎は 村長が村から出て 山の見回りにいくのについていく。
そして 村の外に出て 売り買いしている増造が
もう年なので 門二郎に そのあとをついでくれないか!
と言われる。
門二郎は ずっとこの村にいたいと思っていた。
その話しを聞いて 嬉しくてしかたない。
そこに噴火が起こる
噴石と雨!
雨が村人の身体を貫いていく。
人ではないものに 人の魂が住んでいた。
だから村人は 食べずに 子供たちに食べさせていた。
怖くて優しくてはかない!
優しい魂だけが 宿ったんですね!
人は身体を持つと こんなに優しくはなれないのか?
三島屋の富二郎の心にも 読んだ私の心にも
しみる話しでした。
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今回も?けっこう重かった。救いのないような話はちょっと苦手なんだけど、このシリーズは楽しみにして読んでいる。
そうかー、やっぱりだったり・・・予想を超えていたりでどんどん読み進んでいける。不思議な話ではあるけれど、満足かな
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文庫本になって再読。最終話は文庫本の特典のようなのでラッキー✌️
青瓜不動
だんだん人形
自在の筆
針雨の里
面影鬼 三島屋変調百物語 続之幕間
中でも、だんだん人形の話が断然辛い。
理不尽さにハラワタも煮えくりかえる。
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宮部みゆきの青瓜不動を読みました。
三島屋変調百物語九之続でした。
今回も三島屋の小旦那富次郎が語り手からあやかしのお話を聞きます。
1話目の青瓜不動はおちかの臨月にからんでのお話でした。
無事赤子が生まれるように富次郎は不動明王のうりんぼ様におちかの安産をお祈りするのでした。
他のお話も面白く読みました。
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百物語が四つ
楽しみに待ってました♪
第三十八話「青瓜不動」
瓜畑から現れたのっぺらぼうの仏像「うりんぼ様」
うりんぼ様の御導きにより、おちかの安産の為に
富次郎が走る走る走る!
ちょっと笑えてほっこりする話
第三十九話「だんだん人形」
ある商家に伝わるだんだん様と呼ばれる人形
遠い昔悲しい運命の少女が作った人形だんだん様
が何代にもわたって商家の危機を救う!
第四十話「自在の筆」
その筆を手にした者は描きたいものを自在に描く
事ができる不思議な筆…骨董屋に封印された筆だ
ったのだが…人の欲望とは恐ろしい
第四十一話「針雨の里」
山の奥深いところにある楽園のような村。孤児ら
を集め育て、仕事を教え、厳しくも優しい村
その村に隠された温かく優しい秘密とは…
この話が一番好きでした。゚(゚´Д`゚)゚。
黒白の間ではないところで語られた話もあり?
筆の話以外は優しくてちょっと哀しくて先がとにかく気になる話ばかりでした〜
オマケのお勝の話も良かったです♪
次巻を楽しみに待ちたいと思います‹‹\(´ω` )/››
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江戸の袋物屋三島屋は、今の神田駅から北東に歩いて直ぐ神田東松下町に位置する、当時三島町という商人の町に御座いました。北に行けば神田川が流れ、西に歩けばお殿様のお城があります。今も昔も人々がひしめき合って暮らしておりました。三島屋主人が思い立って始めた変わり百物語は、語って語り捨て、聞いて聞き捨て、語り手は語って思い出の荷を下ろし、聞き手は、受け取った荷を黒白の間の限りに収めて二度と口にしないというもので御座います。身共(みども)は、ひょんなことから、その一部始終を見聴きする者の一人で御座いますが、その感想を更にこの小さな文に納めて仕舞うのも一興かと思う次第で御座います。
今回は第三十八話から第四十一話迄が語られました。怖い話ばかりではなく、なんともホッコリするようなお話、情愛深く哀しい話、不思議な話もあり、怪談噺を期待されていた諸氏には不人気な所もございましょうが、そもそも怪談噺とは、こういう雑多な人々の営み話の中から生まれたのでないかと思うのでございます。
そうは言っても、第四十話「自在の筆」は恐ろしゅう御座いました。その筆を持てば、傑作を描けるのですが、代わりに家族が次々に亡くなり不幸に陥いります。それでも絵師は筆を手放すことができない。妄執とでも言いますか、それが恐ろしゅう御座いました。この件、身共はトールキン「指輪物語」を思い出しました。ええ、あの小人族フロドが世界を統べるという指輪を火口に捨てるために遠くサムと旅するお話です。指輪を一旦手に取った者は、それを捨てることができなくなる。力が強い者ほど、それは極めて困難です。あの弱く善良なフロドやサムでさえ、かなりの逡巡を示すのです。そして一旦所有した人は必ず死ぬ運命にあるのも同じです。フロドの勇気も、筆をへし折り飲み込んでしまった栄松絵師の覚悟も、身共には染みて仕舞ったので御座います。
この第四十話、実は黒白の間で語られた話ではございません。それでも編集者は百話の中に入れこんで仕舞ったようです。百物語は手前の九十九話で止めなくてはならないのに、二十六話後の(同じ顔をした六人の男と結婚した老女の話)は1話に入らず、此方は入る、というチグハグな扱いを受けております。あと10数年後に来たるべき「そのとき」に如何なる事に相成りますやら、身共は今からどきどきしております。
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聞き手を富次郎にバトンタッチしてから
いちばん楽しく読めた巻。
おちかはいよいよ出産のとき。
富次郎もがんばる。
だんだん人形のお話では、
支配する側の論理が見たかった。
ただ殺したのではなんの見返りも見込めなくなる。
戦国時代でも日本では庶民がそれほど殺戮の対象に
なってはいないわけで、
ただ無意味に力の支配をしてきました、では物語が成立しない。
異例の短さの「自在の筆」のエピソードで
ようやく聞き手が富次郎になったことの
読みどころが生まれた気がする。
お勝の過去に思いを馳せて、涙。
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どれも面白かったが、最後のお話があたたかくも切なくも悲しいようなものだった。人の願いや想いが妖として姿を与え、藩を富ませる力となるとは。最後は溶けてしまうけど、最後の最後まで人のために助けるあたたかさがあって、泣けた。お勝の話も本当に妖が見えるとは思ってたなかったので驚いた。
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相変わらず惚れ惚れする文章。
そしてどこかしら毒のある話。
富次郎、やっぱり絵を諦められなかったね。
諦めようとして、本心から絵が好きだと気が付かされてた。
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江戸を舞台にしたお話が好きなので読んでみました。三島屋シリーズは初めてでしたが、読みやすかったです。登場人物にも親しみが持ちやすかった。
4番目の 『針雨の里』が1番印象に残りました。
小さな違和感の連続が、最後そうつながるかと…
とても切ない物語。でも、もう一度読み返したい。
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今回も心があったまる怪談でした。
百物語なのでジャンルとしてはホラーになるのでしょうが、人でなしやそれに翻弄される人々、そんな人に手を差し伸べる献身的な人物など、さまざまな人間(とそれ以外?)が織りなす人情物でもあるように感じました。
あと巻末のウリ坊たちがかわいかったです。
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三島屋の百物語は、カウンセリングかもしれない。
語って語り捨て、聞いて聞き捨てというのは、心療内科の受診にも通じる気がする。
先代聞き役のおちかは、自分が怪に近しい経験をしていたからか、肝が据わっていて、ためらい言いよどむ語り手を温かく励ます様子がベテランのカウンセラーのようだと思った。
対する二代目聞き役の富次郎の方は繊細で感受性豊かで、語り手の悲しみや苦しみを感じ取っては胸を痛める様子を隠そうとしない。時には語り手より彼の方が先に泣き出してしまう。
最初はなんてだらしないと思ったけれど、今ではその優しさに、語る人が救われているような気がするのである。
今回の話は全部で四話。お勝の過去を描く特別収録の短編も入っている。
印象に残ったのは「自在の筆」。絵描きになりたいという夢を大事に抱えている富次郎が、とうとうそれをきっぱり捨てようと決心する。芸術に携わるものにとっては、決して他人ごとではない話。その筆を持つと書き物に関するありとあらゆる素晴らしい才能がもたらされる。また、ケガや病気で失くした技術も取り戻せるのだ。ただし、代償は大きい。
手の中に掴んだ夢と、代償の間で迷うのが人なんだろう。
おちかが人の罪と真心の間で揺れ続けたのなら、富次郎は人の夢と業の間で揺れるのかなと思う。
今後も彼の業を見守っていきたい。
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おちかのお産が迫り、てんやわんやの中、百物語を一時中断している。聞き手を務める富次郎は、百物語の聞き手を続けられるか迷っている。
そんな中、富次郎自身も不思議な体験をする。そこから聞き捨てにした百物語によって、新たに百物語を聞く覚悟を固めたようだ。百物語はどの様に変わるのだろうか?楽しみだ。
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今回は富次郎さんの悩みと怪談といった感じでしたね。時代劇さながらの悪代官に腹が立ち、人の生を奪う筆怖かったです。おちかのお産に慌てる伊兵衛さんがほっこりさせてくれました。
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化け物や、雑然とした人心による怪談など5話が記されていた。それらは単独で読んでも楽しめるし、通しで読んだら絵描を夢見る富次郎の心情の揺らぎも併せて楽しめる。私は初めて宮部みゆきさんの本を読んだ。内容柄、江戸時代後期?頃の物の名前や、いいわましも江戸時代とまでは言わないものの、古風な感じでそれが難しいと感じる人もいるだろう。評価は3.8としたい。
私は、青瓜不動と、針雨の里が気に入った。前者は、お奈津の働きぶりに感銘を受けた。子供のいない女性などは理不尽な扱いを受ける中、彼女は懸命に生きた。その逞しさが響いた。針雨の里は、ホラーといえばホラーなのだが、昔テレビでやっていたほん怖で言うところの心温まるようなそんな内容に感じた。この本は設定を細かく書かれているので、それが複雑ではあるが、それ故に表現できる人情の機微が見どころのように思える。
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夏といえば三島屋変調百物語。第38話から41話。九はおどろおどろしさはないものの、それでも、どこかヒヤリとする話。おちかさんのお産があり、あまりにもな話は避けられている事情はあるにせよ。あんまり人間関係どろどろの話も辛いから、このぐらいの匙加減はありがたい。年をとればとるほど、怖いのは台風でも地震でもなく、人災だと思うようになってきた。それでも人によって助けられることもあるからお互い様なんだけど。うりんぼ様とだんだん人形は愛らしさを感じられるが、筆と針雨はツイになる話で胸の奥がきゅっとなった。
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袋物屋「三島屋の黒白の間」で語られる
不思議な物語のシリーズも9作目。
聞き手が「おちか」から「富次郎」に代わってから数年が過ぎた。
おちかは嫁ぎ先で臨月を迎え、富次郎は兄の伊一郎が修行先から戻り本格的に跡取りとして歩み始め、次男坊として、自分の人生と向き合い捨ててきたもの、捨てたくないものと葛藤する場面が増えた。
語られる物語は手に汗を握るものが今回は多く
読み終える度にふうーっと息を継いだ。
表題作、「青瓜不動」は、おちかの出産の場面に富次郎さんが奮闘する話で、長くこのシリーズを読んできた者としては、無事に出産を終えるためにも富次郎さん、ここは頑張ってくだされ!と力んでしまった。
宮部みゆきさんのこのシリーズ、ちょいちょい
文芸雑誌で読めるので、先の展開を知っていて
ネタバレを知っているからこその面白みもあり
悲しみもありと、感情が忙しい。
巻末に現在まで語られた話が箇条書きされているが
思い出せないものも思い出して身の毛のよだつものもあり、夏らしい1冊となった。