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Posted by ブクログ
【短評】
――語って語り捨て、聞いて聴き捨て。
神田に店を構える三島屋「黒白の間」においては、来客が自ら体験した奇譚変事を語る「変わり百物語」が営まれている。聞き手を勤めるのは、心に傷を抱えた主人の姪・おちか。
本作で語られる話は、四つ。
周囲の水が"逃げて"しまう小僧が邂逅したものーー「逃げ水」
双子に纏わる親子の歪な情愛の物語ーー「藪から千本」
暗がりに潜み、人間を恋い慕う何かーー「暗獣」
隠れ里に受け継がれる習俗と業ーー「吼える仏」
江戸を舞台とした怪異譚『三島屋変調百物語シリーズ』の第二作。
前作「おそろし」を読んだのは少なくとも十五年以上前のことで、設定云々は綺麗さっぱり頭から抜け落ちていたが、問題無く物語に入り込むことが出来た。ただし、其処此処で前作由来の描写があるため、記憶に新しい方が愉しいとは思う。
構成の巧さに唸らされる。
どのお話も、唆られる導入に始まりつつ、凡百な読者の想像を振り切って、意外で多彩な膨らみを見せてくれる。「うむむ、これがどう冒頭に結びつくのだ」等と考えながら、突飛な方向に進む怪談にのめり込み、気が付いたら綺麗に着地している。嗚呼、お見事。「お話に聴き入る」という体験をすることが出来た。
①逃げ水 ★★★★★
ファンタジィが巧い。「お旱さま」周りの活き活きとした描写に舌を巻く。特に山走りの下りなどはお気に入りだ。ありありと絵が浮かぶ。山を"滑る"時、顔に受ける風を感じる程に。からりとした読後感も良い。「お旱さま」が未だ健在という終着も好むところだ。
②藪から千本 ★★★☆☆
ある種のヒトコワなのだろうか。こういう趣向も良い。人形に針が突き立つというのが実に不気味だった。快活な語り口のなかに、心の闇が垣間見えるような筋書きも巧いなぁと思う。ファンタジィ色は薄いが、安定して面白い。
③暗獣 ★★★★★
抜群。やはりファンタジィが巧い。気配とか予感ではなく「くろすけ」を実体のある存在として描いたのが素晴らしい。実際に触れ合うことが出来るからこそ胸を打つものがある。どかんと盛り上がって、嗚呼、滂沱の涙みたいな話ではなく、実際に何があったのかは想像することしかできないところに趣があると感じた。
④吼える仏 ★★★★☆
結構怖い。壊れてしまった男の有様が印象に残る。やはり実体があるんだよな。最後に出てくる「化物」にはゾクリとさせられた。救いの無さも含めて、結構好みなお話ではある。
ほっこりするお話から、そくりとするお話を経て、じーんとするお話まで網羅する。
百物語ならではの懐の深さを堪能させて頂いた。ストーリーテラーとしての宮部みゆきの偉大さを再認識した次第。続編はいっぱいある。新たな鉱脈を引き当てた喜びを抱きながら、続編もじっくり掘り進めていくとしよう。
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