あらすじ
冒険のゴールである「運命の塔」に迫りつつあるワタルは、あと一歩のところで異世界滅亡の危機に巻き込まれてしまう。仲間たちの幸福と自分の願い、究極の選択を迫られた少年が導き出した答えとは?
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Posted by ブクログ
やはり長編小説は読み切るだけの価値がある。
運命ではなく、ワタル自身が変わっていくストーリーに心を打たれた。
この本を読んだことで、自分にとっての現世を、
もう少し前向きに生きてみようと思えた。
★印象に残ったフレーズ
・変えるべきなのは僕の運命じゃなくて、
ー僕自身なんだ。
・思い出してみれば、喜びも悲しみも、みんな仲間たちと過ごした時のなかにある。
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亘の旅が無事に終わってよかった。目先の幸運だけを追いかけず、これから起こるいろんな経験を一つずつ乗り越えようとする逞しさに成長を感じた。
上巻から下巻にわたり、コントローラーを握りしめながらワタルとキ・キーマとミーナと、自分の4人で冒険をしているような感覚で楽しかった。
下巻の始まり、システィーナ聖堂の石像(ダイモン司教)との闘いは手に汗握ったし、トニ・ファンロンに龍の鱗から笛を作ってジョゾの背中に乗りアンドア台地の頂上まで飛行したことも心が躍った。終盤の幻界滅亡の危機には、もうダメなんじゃないかと諦めそうになり、歯を食いしばり、消えゆく仲間の命に涙が流れた。カッツが最期まで信念を貫き通して闘い抜いたのにも、ロンメル隊長がまさかヒト柱に選ばれたのにも泣いた。でも懐の深い、人情のある隊長がこれから千年もの間、亘の幻界を見守ってくれるのだと思うと、複雑な気持ちだけど安心でもある…。どうか一千年後の世界でカッツと再会してほしい。
確かに亘の旅は無事に終わった。でも美鶴はどうなの、美鶴の終わり方があまりにも報われない。最期は憎しみに飲まれ己をも滅ぼしてしまい、更には半身に選ばれ…。憎しみは憎しみしか生まず、美鶴は多くの過ちを犯したと思う。でも美鶴の妹への一心の思いは誰が救ってくれるのだろう。最期に妹の魂に迎えられてようやく一緒になれたと思ったのに、それも束の間、千年の時に閉ざされるなんて。悲しい。美鶴があまりにも可哀想。救われてほしい。
物語の最後には幽霊ビルも建て壊され、本当に幻界との繋がりが断たれて寂しい気持ちになった。
中学生時代に読んだときは、こんなにグッと心に来たっけ。忘れてしまっていた箇所も多く、大人になり改めて読み直しても本当によかった。教王にはならないよう、戒めもあり。
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宮部みゆきさんのファンタジー、王道にしてとても精密に設定、世界観作りが施されていて終始楽しんで読んだ。彼女がゲーマーでRPGにも精通していることがよく分かり、丁寧で優しい宮部作品の中に遊び心があった。
元々幼い頃映画で見て好きな話だったのだが、小説と全然違った。嘆きの沼やリリスは出てこないし、ジョゾは最初から2mくらいあって喋るし、カッツが亡くなるし、ロンメル隊長もハルネラも出てこない。物語を省かれ過ぎていて、改めて映画を観ると小説の世界観を省いて描いていることに少し憤りを感じた。でも、原作を読んだことで大好きなブレイブストーリーへの理解が深まり、より作品を好きになることかできた。
二つ目の宝玉を手に入れて母邦子の元に帰った時、ワタルは自分の影の部分も受け入れて、運命を変える旅をしてくると言った。ワタルは小学5年生にして、自分の〝負の側面〟を受け入れて、逞しく成長した。
このワタルの姿から、自分は完全無欠の善であると考えることの危うさと、弱さを受け入れることの難しさを痛感した。あんなに優秀なミツルですら、自分の負の側面を無視して突き進んだ結果、憎しみが膨れ上がり影の自分との対決に負け、命を落としたのだ。ワタルのように自分の弱さや負の側面もまるごと自分であることを受け入れることは、誰にもできることじゃない。ワタルが幻界で旅を完遂し、運命の塔で女神様に会うことができたのも、ワタルの素直な心、何事も受け入れる懐の深さがあったからこそできたことだと思った。
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宮部みゆき、昔から大好きだけど何故かブレイブストーリーは読んだことなくて、大人になった今の時点で初めて読んだ。今読んでよかったなぁと思った。
両親の身勝手な行動のせいで不幸せという状況に陥って、肉親を憎まざるをえなかったり、悲しみを覚えなきゃいけなかった亘。その人を憎いと思う自分自身を受け入れられないという気持ち、その状況を受け入れられないという気持ち、やり直せるならやり直したいという気持ち、すごくよくわかる。
でも、亘が最後に気がついたように、自分の運命を変えることも過去を変えることも人間はできず、ただあるがままを受け入れて、憎しみも悲しみも認めてあげるしかないんだな。いくら過去を変えたとしても、やはり悲しみはこれから先もあるし、でも同じくらいの幸せもあるかもしれず、それは生きてみないとわからない。
中学生、高校生の同じような苦しみをもつ子供たちはこの話に勇気づけられたんだろうな。大人も自分を顧みることができると思う。
読めてよかった。
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今さら恥ずかしいですが、アニメ化されているのを知らずに読みました。
アニメの予告をyou tubeで見たが、全く違和感なかったことに驚きでした。
ワクワクドキドキで読めました。
時代もの、現代物も書ける改宮部みゆきさんは改めて天才だと思います。
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上巻では、小学生の亘にはあまりにも辛すぎる試練に読んでいても辛くなり、ファンタジーの部分が始まっても現世が気になって仕方ありませんでした。
しかし中巻になるとファンタジーの世界にのめり込み、スケールの大きな大冒険を、映像を想像しながら楽しく読み進めました。
そして下巻になると、仲間の生死に関わる事件が次々と起こり、最初に現世で起こった事なんてちっぽけに感じる程になりました。
自分では世界がひっくり返るような辛い出来事だと思っていても、世の中にはもっともっと辛い事がたくさんあり、それに比べると自分に起こった出来事なんてちっぽけに感じることがあります。
生きていれば、辛いことを全て避けて通るのは難しい。
乗り越えるには、自分が強くなるしかない。
それを改めて実感しました。
読んでいる途中は辛く感じる事もありましたが、読み終わってみるとどこかスッキリとした気分になれました。
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やっとたどり着いた感じ。宮部みゆきの描くファンタジー小説というのは、現実世界との関わりを軸に描かれているのだと思った。10年以上前に書かれたものだけれども、このコロナ禍に生きている私たちに刺さる物語だと思う。きっと、いつの世にも通じる勇気を与えてくれる物語なのだ。
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深い作品に出会えた。
ただの冒険ファンタジーではなく、しっかりとしたテーマが私に次々に突き刺さってきた。
(自己啓発.哲学?)
自分の命、他人の命、自分一人の人生、多勢(他人)の人生、運命という旅をしながら成長していく主人公、自分が変わる事で周りが変わる、自分が強くなる事で周りが幸せになる。亘少年はそれを実感しながら旅を続ける!
しっかりとした世界観に登場人物の個性や感情 壮大なストーリーに大きな勇気と優しさが伝わってくる、3冊に渡る長編であるがあっというまに読み終え余韻にひたる「本を読むっていいな〜!」とつい口にする自分がいた。
Posted by ブクログ
世界は+−あるものと理解し、全てを自分事として引き受ける覚悟が育つ物語だ。
アラサーになってようやく私にもこの態度が身につきつつあると思うんだけど、さて、どうやって会得していっただろう?
やっぱり、日々の失敗や苦しみ、病気、葛藤etc…があってこそだった。
私だってここまでの人生で、ちゃんと自分のブレイブストーリーをやってきてたんだってぽわんとした温かい気持ちをもらった作品。
Posted by ブクログ
上・中・下巻読み終わった。
一筋縄では解決できない深いテーマを扱っていながら、ファンタジーの世界観で飽きずに読むことができた。映画を見てるように頭の中に場面が次々と浮かんできて、楽しい読書体験だった。
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まさに主人公・亘のブレイブ(勇気)ストーリーという名に相応しい内容だった。
壮大な世界観のお話で、壮大過ぎて最後の方私が忘れているようなことも、作者がきちんと伏線回収してくれて、なんて親切。
それにしても、亘の台詞や考え方はどう考えても小学5年生に思えないほど大人びていたというか、やや無理やり小学生っぽい描写にしている感じもした。
Posted by ブクログ
出だしがかなりキツいのだけれども、
幻界にきてしまったらあとは一気読み。
旅の仲間との出会いと別れ。
自分の運命を変えるためにやってきた
ワタルとミツル、ふたりの旅人の運命を追う、
壮大な物語。
現実だけではなく、幻界でも割と残酷な運命に立ち向かうことになるんだけれども、そのへんが容赦ないのはやっぱり宮部みゆきさん。
児童書版もあるけど、設定が重すぎるので、
おすすめするなら中学生以上かな。
Posted by ブクログ
冒険が終わりました。
色んなことがあったけど、キ・キーマやミーナ、カッツに支えられながら闘ってきたワタルはやっぱり魅力的な人物だったんだろうなと思います。
ワタルは女神に叶えてもらう願いを幻界を救うことにしたけど、それは同時に自分を救うことにもなっていて、それをワタル自身がわかって、なおかつ強くなっている姿に感動しました
またどこかでワタルが仲間と出会えてたらいいなぁ。
Posted by ブクログ
ファンタジー小説であるが子供向けではなく、大人向けの物語だと感じた。主人公の亘は小学生であるが、直面する現実は大人が読んでも重く、胸が痛くなる。もし自分がこんな現実に直面したら、乗り越えられるだろうか。そう思う程に。それは亘がいい子だから余計に感じた。読んでいて嫌味など全く感じさせない主人公。小学生らしい純粋な視線で情景や心情が描かれている。終始応援したくなった。
亘は幻界の旅を通して出会いや別れを経験し、精神的に強く成長していく。幻界で出会うキ・キーマやミーナなどのキャラクターも魅力的で、彼らとの友情や絆を強く感じられた。
最終的に亘は、不運な自分の運命を変えるのではなく、幻界の世界を救うことを選ぶ。自分の運命を都合良く変えても、自分が変わらなければまた悲しいことや辛いことが起きても乗り越えられないから。
この物語は現実と向き合い、そっと背中を押してくれる勇気の話。ブレイブストーリーというタイトルの通りに。
長いストーリーだったが、この本に出会えて
良かった。読んで良かった。そう思える。
Posted by ブクログ
現世に影響されるという幻界。ワタルが旅し、成長させた幻界が、崩壊しようとしている。ワタルは、自分の運命を変えることと幻界を救うことのどちらを選択するのか?小学5年生には重すぎるとも思える。憎しみを越えた先に未来がある。
一気読み必至ですが、SNSなどで拡大した、現在の分離対立をも表しているようで、考えさせられる。
Posted by ブクログ
細かなストーリーの展開にとやかく言いたくない気もするが、最後の場面では、ミツルとワタルの直接対決(対話)がぜひみたかった気もする。
ミツルは、そんなに悪いことをしたのだろうか。確かに、ワタルのように、目の前にいる人たちのことを気にかけ、悩んで結論を出す方が、読者にとっては感情移入しやすいのかもしれない。でも、ミツルの苛酷な経験のことを考えると、彼の意志の強さは相当なものがあったとも思うし、また、むしろワタルのような「旅」の仕方が悠長にも思えてしまう気もした。
もちろん、ワタルも父の幻影?を惨殺した場面など、精神的にハードな「旅」をこなしてきて、最後には父を憎んでいる自分自身とも戦い自覚を得た。
それも必要な過程だったと思うが、ミツルの姿勢もやっぱりもう一つの対等な正解なのではないかと自分には思えてしまった。だからこそ、ミツルは自滅するというより、ワタルと最後は互角に戦ったり対話してほしかった気もする。ただ、そういう場面があったとして、ミツルを論破してほしい、という意味ではないのだけれど。
また、オンバ様もかなり初期からの伏線の割には、対決にやや物足りなさも感じる。オンバ様の正体の抽象度が高かったからだろうか…。
(あと、なぜ大松香織は魂を抜かれてしまっていたのか?)
ワタルの最後の答えは、実のところ中巻で既にワタルが口にしている。決して安易な答えにはなっていないと思うが、千年に一度の機会でなかったら、ワタルがこんなに悩むことはなかった。ハルネラでなかったらどんな答えだったのか。
親の離婚から始まって、2つの世界の危機、人柱になる可能性など、選択の構造そのものはわかりやすい図式なのかもしれないけれど、大人でも答えを出すのは難しい。でも、これから死ぬまでずっと人生の中で繰り返し難問に出会うのだと思う。悩んで、苦労して答えを出していく過程自体が貴重なのだ、というメッセージ。むしろ、シビアで大人な「答え」のようにも思うけれど、読んで良かったと思う。