矢樹純のレビュー一覧
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どんでん返し系短編五篇。夫が元妻とよりを戻して自分を殺そうとしていると思う『妻は忘れない』、急に接近してきたママ友と夫の仲を疑う『無垢なる手)、死体処理をする引きこもり男が母親の死体を見つける『裂けた繭』、長年帰っていなかった田舎で姉の本性を知る『百舌鳥の家』、息子がストーカー殺人を犯してしまった『戻り梅雨』。
『戻り梅雨』は、結果、息子は殺人を犯していないのだけれど、母親が夫のDVで離婚をしていて、それが影響して息子に暴力的な面があるのではと思わせるところなど、うまいなーと思った。保育園の給食室での仕事の様子とか、地味だけどリアリティがあって読ませるし、そこにもちゃんと伏線を仕込んでいる。 -
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「新しい法律ができた。」という一文から始まる短編小説が25編載っています。
25人の書き手が、もしこんな新しい法律ができたら、という視点でお話を綴ります。
「新しい法律」ができた理由がそれぞれ興味深いです。
例えば、
・金子玲介さん「ルパちゃん」では、「少子化対策」のために「子どもがわりに人口知能を搭載したぬいぐるみを所持することを禁止する法律」ができます。
・日野瑛太郎さん「推し活制限法」では、「推し活にハマり過ぎて身を持ち崩す人が出た」ために「推し活への課金上限を制定する法律」ができます。
(わたしが、ぜひ読んでみたいと思っていた、くどうれいんさんの場合は、)
・くどうれいんさん「ショ -
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新しい法律ができた、から始まる物語を色んな書き手が描く1冊。
新しい法律ができているわけだから、世界設定がSFっぽかったりディストピア感を感じるものがあったりして、楽しく読めた。
その他にも、ぞっとする物語、切なくなる物語、短い中でミステリーのような作りになっている物語…
叙述トリックが含まれているものや、ばかばかしいと思ってしまうような内容の法律が大真面目に取り扱われる物語など、本当に色んな味がする1冊。
なかでも殺人を罰する法律が"新しい"法律として制定される「もう、ディストピア」が特に良かった。
有り得ないはずの世界に説得力があって冷たい汗をかく。
「ルパちゃ -
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[こんな人におすすめ]
*じわじわ怖くなるタイプの話が好きな人
水が浸透するようにスロースピードで怖さがやってきます。夜道を歩けなくなったり眠れなくなったりする怖さというより、読み始めはなんとなく気味が悪く、いつのまにか恐怖が加速していて、気づいてしまった瞬間に急激に体温が下がるタイプの本です。
※ホラー小説があまり得意でない人間の感想です。
[こんな人は次の機会に]
*人に話すことで怖かった経験を消化するタイプの人
あらすじを説明しても相手にはいまいち伝わらないタイプの本です。小説ゆえの面白さというか、一対一で向かい合って読むことで言語化できない怖さが遠くからやってくるので、ホラーミス -
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ネタバレ石に相手の血を捧げると縁切りが叶うという神社。姉は弟の行動にある疑惑を抱くーという表題作他、家族や家庭に潜む不穏さと闇(時に疎ましさ)を描き出したホラー・ミステリ全6編。
・一周忌を終えた夫が「枕元に立って何か訴えて唇に触れてくる」と語る義妹。だがこの義妹は色々難ありの人物の上、軽い認知障害に罹っていた(魂疫【たまえやみ】)。ラスト、本当に《鬼》から逃れられていたのか―。
・弟家族とキャンプに来た幸菜。弟はその朝早くに近くの縁切り神社へ行ったようだった。仕事で来れないという義妹に連絡が付かないことから、彼女の中に恐ろしい疑念が膨らむ(血腐れ)。弟夫婦の未来は何れにしても……。
・老いた父親