佐藤優のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
とても面白くて、今まで読んでいなかったのは不覚でした。
外務省職員がどんな仕事の進め方をしているのか、とりわけロシアでの事情を書いた前半部分で十分に面白かった。
そのうえで後半の著者自身が勾留された後の東京地検特捜部検事とのやり取りを書いた部分もまた面白い。
いわゆる鈴木宗男事件も若い人にはピンとこないと思うけど、国策捜査と言われるものはそういう性質があって「あのときはあんなに盛り上がっていたけど、なんだったんだろう」と思わせるものがある。
著者(と担当検事)はリアルタイムでそれを理解していたようだけど、時代を超えた目で見ないとなかなかそれはできない。著者にとっては哲学がその武器というか梃子になっている。立花隆も初期の頃にそんなことを書いていたなあ、と思った。
そうそう、著者はこんなことも書いている。
「外交に触れたばかりの政治家は極端な自国中心主義、排外主義的なナショナリズムに陥りやすいが、だいたいこれは一時的現象で、国際政治の現実に対する認識を深めると、極端な自国中心的ナショナリズムが日本の国益を毀損するとの認識も強くもつようになる。」
2005年当時には一般論だったのだろうが、現在からするとどうなんだろうと思った。
まあ、それなりのポジションに就いても認識を深めることのない人もいるということかもしれないが。 -
Posted by ブクログ
佐藤勝さんと桝添要一さんの二人による対話集です。
テーマは「21世紀の独裁」です。
世界は、「独裁」的な国家が大きな力を持つ状態が進行している。これを主軸にして、佐藤氏はロシアを桝添氏はフランスを自らの知力の源泉として、現状の西側諸国の有り様を批判的に語っています。先に読んだエマニュエル・トッド氏らの講演を収めた「2030 来るべき世界」でもキーワードとされていた「ニヒリズム」という言葉が出てきました。日本、フランスの識者が伴にキーワードとしている「ニヒリズム」が世界を覆ってくるという現状は、これまでに無い世界への変質の始まりなのかもしれないと感じさせられました。この世界現状を創り出しているのは、トランプ、プーチン、習近平の3人であることは、明白なのですが、この状況を悪化させていく方向に、意図せず加担しているのが、ヨーロッパの弱体化だとの考察もあります。
そこには、「宗教ゼロ」世界が進行しているとの認識ですが、これは日本も同じかもしれない。お二人の経歴から自ずと国家官僚やエセ専門家へは厳しい批判をされています。私も年齢的には佐藤氏と同年代ですので、共感してしまいます。
国家を運営できるエリートの養成が行える仕組みを一層強化して欲しいという提案、日本の21世紀における危機的課題だと思いました。エリートというと何となく我々のような平民の事など見向きもせず自分の出世の事ばかり考えている人間だとイメージしてしまいます。今よりはましな国にしてくれる人達が存在している状態を創り出して欲しいなあ。これから何のために、何をどうしていくかを考えられる人が減っていく事が、未来に対しての危機なんだと感じます。
ただ、お二人とも高い専門性を持たれているため、引用される過去の思想家、哲学者、政治家についての記述部分は、凡人には消化不良気味になりました。
2026年、26冊目です。 -
Posted by ブクログ
村木厚子さんの本を読んだ直後にこの本を読んで、この世界が立体的になった。
まずこの二人の関係は、
鈴木宗男事件に連座して逮捕された外務省職員・佐藤優氏と、
その取り調べを担当した特捜検事・西村尚芳氏。
佐藤優という論客が、検察をどのように語るのかと思えば、、、
20年前の事件を退団の形で振り返ることができるということは、
お互いを尊重している、ということ。取り調べの最中から。
つまり、村木さんの事件で、いや、それ以外にも、プレサンスの事件や、
大河原化工機の事件で地に堕ちた感のある検察だが、佐藤優氏からすれば、
「自分への取り調べは適切だった」ということなのだ。
検察を認めている。
村木さん、プレサンス、大河原の担当が若いか、上司が悪いか、なのだと。
あれが例外で、ほとんどの検察担当はまとも。特捜検察は日本に必要なのだと。
これは意外だった。
まあ確かに考えてみれば、あんな事件のような担当ばかりならとうにつぶれている。
しかし、、ここにきて多発している気はする。
この本の西村氏(1960年生まれ 佐藤優氏も)のような人材は、
相対的に減っている、組織として劣化している気はする。
・・・それこそ私の持論の偏差値エリートが増殖しているのではないか?
この本を読んでいて、私が、公安と、検察と、特捜と、あまり区別がついていない
ことに気づいた。
大河原の件など、元は公安があほで、それを検察がチェックできなかったのが問題。
公安警察もあほなのだ。
まあみな公務員。検察と特捜は司法試験合格者、、、
頭はいいはずなのだ。でも劣化している。
いやしかし、深い。fact(事実)とtruth(真実)。国益と公益。認識しよ。
序章 再会
20年ぶりの対面/逮捕と取り調べ
第1章 検察改革とは何だったのか
「検察なめんなよ」/プレサンス事件と郵便不正事件/筋読みとノイズ/金持ちは怖い/大阪地検特捜部の特殊性/「割り屋」の悲劇/大阪地検検事正の準強制性交容疑/人を人として尊重する文化を
第2章 検察批判をどう見るか
(1)黙秘権
黙秘のプラスとマイナス/特捜事件は黙秘で無罪を取れない/弁護士の職業的良心/検察官が怒っていいのは/情状面で不利になることも/過数派が黙秘する理由
(2)人質司法
角川会長はなぜ記者会見後に逮捕されたか/身柄を拘束するもう一つの理由/ゴーン事件のトラウマ/保釈保証金は弁護士費用
(3)取り調べ可視化
明らかになった検事の暴言/動機は「恨み」/検事が怒鳴る時
第3章 ある検察官の歩み
なぜ検察官になったか/7回目で合格した司法試験/消えた6億円事件/あえて「相手の土俵に乗った」オウム事件/自治労の脱税事件/財政系の検察官の仕事/黒とグレーがわからなくなるとき/脱税する人の内在的論理/7000兆円詐欺と地面師とアパグループ/美容師バラバラ殺人事件の衝撃/首の行方/日産自動車不正競争防止法違反事件/検事は「建前」で動く
第4章 『国家の罠』再び──国益と公益がぶつかる時
突然、蓋が開いた/外務省の組織防衛/外務省を揺るがした「有権解釈権の否定」/偽計業務妨害捜査の内幕/三井物産にディーゼル発電機工事を発注した事情/「非日常が日常」の世界の危うさ/官邸からの機密費であれば/北方領土返還外交のリアル/取り調べはフェアだった/鈴木宗男事件との弁護方針の違い/外務省キャリアの嫉妬/拘置所生活は「面白かった」/事件にもプラスがあった/国策捜査とは何だったか/国策捜査の後遺症
第5章 特捜検察必要論
なぜ大川原化工機事件は起きたのか/萩嵜ボガチョンコフ事件/公安警察との付き合い方/特捜はどこから情報を取ってくるのか/政治と検察との距離/特捜検察必要論/特捜検察を立て直すための方策/これからの特捜部への提言
あとがき