【感想・ネタバレ】トランプの世界戦略のレビュー

あらすじ

NATO脱退をちらつかせるなど急速に方針を変化させている米国。カナダや中国などとの報復関税合戦、グリーンランド買収、ガザ地区再建など、数多の案件が噴出しています。本書ではトランプの宗教観を中心に、自国ファースト主義という国家観、外交交渉の傾向や人間性について言及しながら、トランプがどのような世界地図を描いているかを解説します。

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Posted by ブクログ

世界の覇権構造が大きく揺らぐ中で、アメリカの動向は国際政治に決定的な影響を与え続けています。佐藤優氏の『トランプの世界戦略』は、その中心に立つドナルド・トランプという人物を通して、米国の外交・軍事・経済戦略の本質を鋭く読み解く一冊です。

本書の中で特に印象的なのは、トランプが意図的に社会の分断を煽ってきたという指摘です。知識層 vs 反知識層、富裕層 vs 労働者階級、政府 vs 国民といった対立軸を際立たせることで、特定の支持層を結集し、政治的影響力を強めていった手法は、従来の民主主義的価値観とは一線を画すものです。

また、著者はトランプの外交手法を「マッドマン・セオリー(狂人理論)」と位置づけ、計算された“狂気”によって相手に恐怖を与え、有利に交渉を進めるというスタイルを分析しています。プーチンとの共通点として、「ストロングマン(強権的指導者)」というキーワードが登場するのも、現在の国際政治を理解する上で極めて示唆的です。

トランプは、アメリカを建国の理念に戻すというメッセージを「トランプ版聖書」を通して発信し、いわば宗教的とも言える政治的正当性を構築しようとします。しかしながら、新型コロナウイルスへの対応を誤ったことで、結果的には大統領の座を追われました。

一方で本書は、トランプ個人の問題だけではなく、彼が登場した背景にあるアメリカ社会の構造的な問題にも目を向けます。過剰な利益追求により生じた社会のひずみに対して、国家が「資本主義の延命装置」として介入せざるを得なくなっている現実。リバタリアンやリベラリストといった自由主義の立場の違いにも触れつつ、現代政治の複雑性を解き明かします。

地政学的な観点でも、グリーンランドの領有問題や台湾・南シナ海問題に至るまで、トランプ政権が進めてきた政策の裏には、米中対立の中でのアメリカの再工業化戦略があると指摘。兵器、自動車、電気製品を「アメリカで作る」ことを掲げるトランプの産業政策は、実は日本にとっても無関係ではなく、日本もまた自国製造の体制強化が必要であると著者は論じます。

さらに、日本が南シナ海から太平洋にかけて、より積極的なプレゼンスを確立すべきだという提言は、アメリカ一極集中の時代が終焉を迎えつつある今、日本の進路を考えるうえでも重要な視点を提供しています。

そして最後に問われるのは、**「トランプの帰還は本当に世界にとって不幸なのか?」**という問いです。リベラルな立場からは否定的に見られがちなトランプですが、果たして現代世界において“良識”とは何なのか、その価値判断自体が揺らいでいることに、本書は読者に静かに気づかせてくれます。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

内容はその他著作で既読のものが殆どだが、トランプの生育環境から思考回路を論じ、一般ピープルにはほぼ理解不能な言動を、如何なる戦略によって米国政治・国際政治を動かそうとしているのかが明瞭に理解できる良質本。

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2025年08月04日

Posted by ブクログ

現在の世界情勢については、トランプ大統領次第といっても過言ではない。
そのトランプ大統領とは、帝国主義再来の独裁者か、救世主なのか
トランプ大統領、プーチンを読み解くには、その宗教的背景がものすごく大切なキーであると思っていたが
キリスト教かルヴァン派の教義から、わかりやすく解説している。現在の世界情勢を知るには必読書。

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2025年07月21日

Posted by ブクログ

トランプの常識外れの言動に世界は右往左往しているが、彼の内在的論理は何かを理解することで一貫した行動原理が見えて来ると筆者は言う。

トランプは自国の強化、雇用、モノづくりの復権を目指しており、関税はその目的に過ぎない。また民主主義的価値観に重きを置いておらず、力こそがすべてを体現している人物である。アメリカを復権するために民主主義とグローバリズムを捨て、ロシアや中国とのパワーバランスを測る事が今後起こる事。
既に世界中の国に大きく影響を与えており、この流れはトランプが大統領から退いても変わらないと読む。

日本がすべき事はアメリカ追従ではなく、アメリカだけでなく中国、ロシアといった大国とのチャンネルを維持して紛争に巻き込まれないように立ち回る事。また、万一に備えて軍事、経済、食料安全保障を根本的に見直すことである。

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2025年07月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

トランプ2.0を読み解くカギは"下品力"と"認知戦"にあり!
とのこと。佐藤さんは宗教も詳しいのでこういった分析がわかりやすい。
バイデンはアメリカ史上二人目のカトリック教徒の大統領だとか。。。全然知らなかったw

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2025年11月04日

Posted by ブクログ

佐藤さんの分析や考察が凄く参考になる。表に見える言動や短期的な試みに翻弄されずに理性的、客観的に物事を評価することで判断の指標としたい。

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2025年07月22日

Posted by ブクログ

著者の独自の視点から、トランプ大統領の行動や考え方の考察された本です。

トランプ大統領は何を目的にしているのか?なぜ最初に無茶を吹っ掛けるような交渉を行うのか?関心のある個所とない個所はどこなのか?彼の優れているところはどこにあるのか?といった、興味深い内容について持論が展開されていきます。

の説明は非常に論理建てられており、すっと腹に入ってくる感覚を得られました。

キリスト教的視点やロシアとの関係からの記述も多いですが、こちらは著者が長けている分野でもあり、逆にあまり知識がない私からしたら非常に興味深いものでした。

このあたりを知っておくと、日々流れてくる世界のニュースがさらに面白くなるのではないかと思います。旬な本でもあり、世界情勢の動向に関心のある方は早めに読んでおくと良いでしょう。

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2025年07月13日

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