佐藤優のレビュー一覧

  • イスラエルとユダヤ人 考察ノート

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    上智大学神学部でキリスト教を学び、外務省専門職員としてロシア大使館で勤務し、国家への背信罪で逮捕された佐藤優氏が著した、イスラエルとユダヤ人に関する外交論書。現在のガザ地区を巡る国際的な反イスラエルの動きが起こる前の2015年、日本の国益のために偏った反ユダヤ思想やシオニズムへの誤解を捨て、イスラエルと国交を強化することを主張するその論争は、生のイスラエルの人々と肉声で語り合って来た佐藤氏だからこそ提示できるものでであると感じる。今の世界を形作るユダヤのイデオロギーは、作られた仮装敵民族であるユダヤ人というものを意図的に生み出して来た。それは果たして、知的に誠実な姿勢を持って大衆が理解できている現実なのだろうか。

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    2024年07月22日
  • 国難のインテリジェンス(新潮新書)

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    どの対談も実現されれば、日本はどうにか生き残っていけるかもしれない、僅かな望みかもしれないが。
    その中でも1000人の国費留学生を送り出すことや、
    大阪発の北陸新幹線や山陰新幹線、四国新幹線を国が挙げて新幹線網を造ること等を早く行動を起って欲しい。政府は本気で国挙げての本当の仕事をしてもらいたい。

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    2024年07月17日
  • 対決! 日本史 戦国から鎖国篇

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    日本の歴史は外圧から影響を受けて社会が変化して、古い政権から変化に適応したものが政権を取る繰り返し。
    そして適応とは結局のところお金、経済を握る事。

    室町後期から戦国時代にかけて、世界は大航海時代。ポルトガルが種子島に鉄砲を伝えたところから南蛮貿易が活発化。この流れに乗ったのが島津氏、毛利氏、そして信長だった。 

    当時の鉄砲の鉛の70-80%は輸入、火薬の硝石はすべて輸入。外交能力がないと生き残れなかった。

    その中で信長は旧来の領土拡大ではなく、通商権を抑えた。つまり港。

    信長は律令制の中央集権国家を構想。そして重商主義の志向。武士から土地を引き剥がす事で戦国時代を終わらせて国を安定させようとした。従来先祖代々の土地を守る事に最大の価値を持っていた武士たちに次々に国替えをした。つまり土地は天下のもので領主は土地を所有できずあくまで管理するだけと言う形を取った。
    鎌倉、室町の考え方を一掃して、律令国家の公知公民の様な体制を作る大改革だった。革命と言っても過言ではなかった。実はこの流れは明治維新に引き継がれている。

    本能寺の変は、その体制に反対する勢力(天皇、将軍、武士を中心とした既存の枠組みでの政治を志向する、むしろ考え方としては多数派)が明智光秀を担いで行ったクーデターだったのではないかとの筆者の推測は説得力がある。
    しかし信長の考え方に共鳴していた秀吉はそれを引き継いで検知、刀狩などを推進した。

    イエズス会とは難しい関係だった。鉛や硝石を手に入れるためにはキリスト教布教を許していたが、スペイン、ポルトガルの目的が植民地支配にあることに気づいた秀吉は布教を全面禁止した。

    関ヶ原の戦いは権力闘争という側面は一面的な見方で、実は国家体制選択の戦いだった。
    秀吉が作った中央集権の重商主義国家vs家康が志向する地方分権の農本主義国家。

    家康は関東に追いやられた時に8カ国で農本主義と地方分権モデルを作り成功させていた。

    結果、農業を土台とした地方分権政治。貿易に過度に頼らないため、貧富の差も比較的少ない安定した社会を長く保つことができた。

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    2024年07月07日
  • 甦るロシア帝国

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    甦るロシア帝国
    著:佐藤 優
    文春文庫 さ 52 3

    大書、いろいろなものがつまっていて、道を見失いそうになる
    民族、宗教、習慣、さまざまな観点から、ソ連を分析し、考察している
    佐藤氏がモスクワでみたソ連崩壊に関する考察である

    皮肉にも、ソ連は、アメリカなどの西側からの攻撃ではなく、内なる原因において自壊をしたのである

    ソ連崩壊について

    1 経済政策の失敗
    2 民族政策の失敗

    でもそれだけではない

    モスクワ大学のエリート学生たちは、自らの能力を、自己の栄達のためだけではなく、世のため、人のために使いたいという意欲を強くもっていた

    ソ連帝国は自壊したが、ロシアがいずれ甦り、怪物のような帝国になるのではないかという恐れを抱いた
    この恐れは、2000年にプーチン大統領が選出され、現実となった

    気になったことは以下です

    ■モスクワ大学哲学部

    ・ソ連共産党は、表面的には科学的無神論を掲げながらも、宗教研究を重視していた
     学生のほとんどは、ロシア正教の隠れ信者で、教師たちもそれを黙認していた

    ・ペレストロイカ政策が進むにつれて、科学的無神論という概念自体が時代に合致しないことが明らかになった

    ・ソ連共産党とロシア正教会の和解がなされたことを受けて、科学的無神論学科も、宗教と自由思想研究学科、と改称した

    ■閉鎖核秘密都市の女子学生

    ・閉鎖核秘密都市に居住している住民は、外部に自分の住所を知らせてはいけないことになっていた
     連絡はすべて、職場の私書箱を通じて行われることになっていた

    ・ロシア語で「私書箱」のことを、「ポチュトーブイー・ヤーシク」と言うが、これは隠語で、国家秘密に関与する仕事を意味した

    ・赤い卒業証書、とは、主要学科のみならず、体育、音楽を含め、すべてが、5の生徒に対して発行される真っ赤な紙に刷られた卒業証書である。各州に2,3人しかいない

    ・周囲で知識人たちが、経済的に苦しんでいる姿を見ることに、耐えられなかった

    ■ソ連科学アカデミー民族学研究所

    ・民族紛争も深刻化していた。ブレジネフ時代に民族問題は、一応、解決済みということにされていた
     しかし、アゼルバイジャン共和国で、ナゴルノ・カラバフ問題が噴き出して事態は収拾不可能になりつつあった

    ・この問題をソ連政府が首尾よく解決することができなかったため、ソ連各地で民族紛争が発生し、少数民族のソ連からの離脱傾向に歯止めがきかなくなった
     その結果、ソ連帝国は自壊したのである

    ・キリスト教の真理は、楕円構造をもっている
     イエス・キリストにおける「神性と人性」、救済のための「信仰と行為」など、キリスト教の主要命題は2つの焦点をもっていることが多い

    ・ナゴルノ・カラバフは、アゼルバイジャンに帰属するが、アルメニア人による自治を尊重するということで妥協した。
     ちなみに、1920年時点で、ナゴルノ・カラバフ自治州の人口の94%はアルメニア人であった

    ・1987年にナゴルノ・カラバフ自治州の住民が、同州をアゼルバイジャンからアルメニアに帰属替えすることを要求した
     これに応え、アルメニアの首都エレバン市でも大規模集会が行われるようになった

    ・ソルジェニーツィンの収容所列島、じつは、シベリアではなく、場所はモスクワであった

    ■エトノクラチヤ

    ・エトノスとは衣食住、宗教、神話、生活習慣などを共有する人びとの集団がもつ特徴をいう

    ・エトノクラチアとは、「純粋な血筋」であると認められるものが、そのエスニック集団が居住する地域においては、政治、経済、文化など、すべての領域を排他的に支配するというものである

    ・エトノクラチアの悪い点は次の2点
     ①排外主義につながりやすいこと
     ②官僚の水準を引き下げること ソ連では、熾烈な競争で、トップを目指すのに、それがなくなってしまう

    ■バクー事件

    ・1989年12月31日ナヒチェバンとイランの国境が群衆によって破壊され南北のアゼルバイジャン人が交友する事態が生じた

    ・1990年1月20日ソ連軍は、その現場であるバクーに戦車隊で突入し、100名を超える死者がでた。
     これを「バクー事件」という

    ・プラハでもソ連軍は、死者を出した。しかし、ソ連軍の戦車が非武装の市民を、公衆の面前でひき殺すようなことはなかった

    ■主権宣言

    ・自国民を戦車で殺害するような中央政府の支配下にはいたくないとのいう気持ちが、ソ連軍による、アゼルバイジャンへの軍事介入を契機に強まった

    ・1990/03/11 リストニア独立宣言
    ・1990/03/30 エストニア独立宣言
    ・1990/05/04 ラトビア独立宣言 等々

    ■境界線上の人間

    ・セリョージャがもっとも恐れたシナリオは、ロシアで排外主義的ナショナリズムが出現することだった
     ロシア人によるロシアを実現しようという運動が起きることである

    ・1991年に入るとソ連の民族紛争は深刻さを増した
     01/13 にリトアニア共和国の首都ビリニュスで発生した「血の日曜日」事件が情勢を質的に転換した

    ・「血の日曜日」事件に現れたゴルバチョフの強硬路線への傾斜に反発して 1/29 エリツィンは、テレビインタビューでゴルバチョフ大統領の退陣を要求した
     そして、ソ連は、1991年12月に崩壊してしまうことになる

    ■もう一度マルクスへ

    ・セリョージャとの対話を通じ、「ソ連は自壊した」ということを私は確信するようになった

    ・セリョージャは、ソ連崩壊を理解するために、9つの論点を押さえておかなくてはならないというのがセリョージャの考えであった
     ①ソ連は非常に窮屈な全体主義体制だったこと
     ②ペレストロイカ直前のソ連はさまざまな問題を抱えていたが、崩壊の危機に瀕しているわけではなかった
     ③ソ連国民の最大限の要求は、経済改革、イデオロギー面、文化面での自由化、個人のイニシアチブがより多く発揮できるような変革であったこと
     ④ソ連社会は、欧米流民主社会に転換する準備ができていなかったこと
     ⑤ソ連には、「社会主義的連邦主義」という名での排外主義が存在したこと
     ⑥ゴルバチョフのペレストロイカが、ソ連の全体主義体制を維持するため部分的改革を行うという誤った選択をとったこと
     ⑦ロシアで、ネオ、ポリシェビズムという保守主義的傾向と、連邦構成共和国の反共主義的な自民族主義がともに、ともにゴルバチョフの政策に対して不満を高め、政権打倒を試みたこと
     ⑧エリツィン・ロシア大統領が果たした独自の役割
     ⑨ソ連崩壊は客観的必然性をもつものではなく、エリツィン派と連邦構成共和国の民族排外主義者との同盟によって起きたものであること

    ・エリツィンのいう地政学とは、ユーラシア主義:ヨーロッパとアジアにまたがるロシアは固有の空間を形成しているのでそこには独自の発展法則があるという考え方のことだ

    ・ソ連、ロシアには、マルクス主義はわからない、なぜなら、資本主義の時代を経由しておらず、労働の対価という概念を持ちえなかったから

    目次
    はじめに
    1 モスクワ大学哲学部
    2 アフガニスタン帰還兵アルベルト
    3 閉鎖核秘密都市出身の女子学生
    4 ソ連科学アカデミー民族学研究所
    5 エトノクラチヤ
    6 バクー事件
    7 主権宣言
    8 境界線上の人間
    9 もう一度マルクスへ
    あとがき
    プーチン論 甦った帝国主義者の本性―文庫版のための増補
    書名リスト
    人名索引

    ISBN:9784167802035
    出版社:文藝春秋
    判型:文庫
    ページ数:464ページ
    定価:850円(本体)
    2012年02月10日第1刷

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    2024年07月05日
  • 漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972-2022

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    165P

    日本共産党と創価学会ってマーケティング的には同じらしい。ルーツは同じなんだってほぼ

    佐藤 優
    一九六〇年東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。一九八五年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在ロシア日本国大使館勤務などを経て、本省国際情報局分析第一課に配属。主任分析官として対ロシア外交の分野で活躍した。二〇〇五年に著した『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』で鮮烈なデビューを飾り、翌二〇〇六年の『自壊する帝国』で大宅壮一ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞を受賞。二〇二〇年、菊池寛賞を受賞。『牙を研げ―会社を生き抜くための教養』『佐藤優の挑戦状』(ともに講談社現代新書)、『人生のサバイバル力』(講談社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『私のマルクス』(文春文庫)、『十五の夏』(幻冬舎文庫)、『池田大作研究』(朝日新聞出版)ほか著書多数。

    池上 彰
    一九五〇年、長野県松本市生まれ。ジャーナリスト。慶應義塾大学卒業後、一九七三年にNHK入局。報道記者として、さまざまな事件、災害、消費者問題、教育問題などを担当する。一九八九年、記者キャスターに起用され、一九九四年からは一一年にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。二〇〇五年よりフリーになり、執筆活動を続けながら、テレビ番組などでニュースをわかりやすく解説し、幅広い人気を得ている。また、九つの大学で教鞭をとる。著書に『相手に「伝わる」話し方』『わかりやすく〈伝える〉技術』(ともに講談社現代新書)、『伝える仕事』(講談社)、『なぜ、読解力が必要なのか?』(講談社+α新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)ほか著書多数。

    漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972-2022 (講談社現代新書)
    by 池上彰、佐藤優
    佐藤  序章で触れた「あさま山荘事件」と「テルアビブ空港乱射事件」はどちらも一九七二年の事件ですが、七二年というのは戦後日本左翼にとって重要な事件が他にも多数起きた年です。たとえば、日本共産党ではこの年の五月から九月にかけて「新日和見主義事件」が起きています。 池上  共産党史上最多の処分者が出たと言われる事件ですね。

    池上  権力と物理的に衝突するような場にあまり出てこない革マルとは違って、中核派は実際に機動隊とぶつかる闘争的なセクトであることを売りにしていましたしね。それが、自分たちよりももっと過激なことをやる党派が登場して脚光を浴びたことに衝撃を受け、そちらに引っ張られてしまった。 佐藤  だから爆弾も作ろうとしました。一九七五年九月には、中核派がアジトにしていた神奈川県 横須賀市のアパート「緑荘」の一室で爆弾を密造しようとしていたところ誤爆させてしまい、中核派同盟員の男女三人が亡くなっただけでなく、彼らの真上の部屋に住んでいた、中核派とは無関係の母娘も死なせてしまう事故を起こしています。この事件により中核派は一時爆弾闘争を諦めざるを得なくなりました。

    この「横須賀緑荘誤爆事件」が起きた当時は天皇の訪米が予定されており、中核派は天皇訪米を阻止しようとして皇室関連施設の爆破を計画していたと言われています。

    佐藤  実はこれもそれまでになかったパターンですよね。逮捕後に法廷闘争などを通じて世間に自分の革命思想を訴えるわけでもなく、普段から青酸カリを肌身放さず持ち歩き、逮捕された時点で自決するというのは。それだけ覚悟してテロにすべてを懸けていたということですが、こうした態度は左翼よりも右翼テロリストやアナキストのそれに近いです。

    佐藤  そもそも彼らの場合、警察からは「極左暴力集団」と位置づけられてはいるものの本当に左翼というカテゴリーに入れていいのかよくわかりません。  なにしろ彼らの場合、とにかく日本の帝国主義を打倒するという意味で「反日革命」を標榜してはいますが、新しい体制を打ち立てるという本来の意味での革命には何ら興味を持っていません。この徹底して破壊し尽くせばおのずから何かができてくる、なるようになるのだという考え方は、アナキズム(無政府主義) に典型的な発想です。

    池上  なるほど。「政治」なるものの役割を全否定したがゆえに、君民統治論は右翼思想だけでなくアナキズムにも強い影響を与えることになったわけですね。

     というのは、マルクスとエンゲルスの『共産党宣言』を読んでもわかるように、マルクスが考える革命の担い手は、基本的に組織された労働者だけだからです。組織されていない、個人としてバラバラに生きている労働者のことを、マルクスは「ルンペンプロレタリアート」と呼んでバカにしていました。彼らは権力に買収されやすい 塵 や 芥 のような層であり、到底革命の担い手になりえないと考えていた。 池上  略してルンプロ。あの頃は中核派も革マル派も相手方の陣営にいる労働者たちのことをルンペンプロレタリアートと呼んで、お互いに罵りあっていましたね。

    当時は左翼崩れが記者になるパターンはかなりあったので、「要注意」というお達しがあった記者に関してはそういうこともやっていたというんですね。

     ただそれでも太田竜が九〇年代以降に書いた本のいくつかは、陰謀論の愛好家には未だに基本書として読まれています。ある意味ではアメリカのトランプ現象などを先取りしていたのかもしれません。

     マルクス主義では政治体制のあり方(上部構造) は下部構造である経済体制に規定されるものと通常考えますが、吉本は戦前の日本が、天皇制のような宗教的なイデオロギーにあっさりと支配されてしまったことに強い疑問を持っていました。そして国家や法律、企業といった社会の公的な関係、つまりマルクス主義的な上部構造は詩や文学と同じく単なる虚構であり、共同の幻想であると考えた。その幻想の正体を『古事記』や『遠野物語』を紐解きながら考え、「国家とは何か」を本質的に探究することで、国家と個人の関係を見つめ直したのです。これが吉本の「共同幻想論」です。

    吉本隆明は、左翼的な志向を持っているけれどマルクス主義につきまとう教条主義的なイメージを嫌う層、「型にはまりたくない」と考える当時の若者には圧倒的な人気がありましたね。

     こうしたなか、一九七〇年九月から一〇月にかけて空港公団が予定地に立ち入り測量調査を行うと、反対同盟は人糞を詰めたポリ袋を「糞尿弾」「黄金爆弾」と称して公団の測量班や機動隊に投げつける激しい抵抗戦を展開。この通称「三日間戦争」では五九人の逮捕者が出ました。

     また翌七一年二月から三月にかけては、千葉県が反対派の土地を強制収用し、団結小屋も撤去する第一次行政代執行がのべ約三万人の機動隊を動員したうえで実施されたのに対して、反対派ものべ約二万人で竹槍や投石、火炎瓶などで抵抗する大規模な衝突が一三日間にわたって発生し、機動隊や空港公団職員、県職員、作業員の側は合計一〇七一人が負傷。反対同盟側も六〇六人が負傷し、四六一人が逮捕されたと言われます。しかしこの時点でも警察側は反対派に対する同情的世論を考慮し、逮捕した同盟員の大半を起訴せず数日で釈放していました。

    中核派じゃなくてもノンセクトの活動家でそのまま三里塚に居ついてしまった人は結構いますよね。  反対同盟が熱田派と北原派に分裂した時も、同志社大学三里塚共闘会議は熱田派として三里塚闘争に関わっていました。前巻で知人が中核派から「教育的措置」と称してバールで足を折られた話をちょっとしましたが、これは中核派から受けた暴力です。

    そうです。私の友人でも中核派に襲われ負傷した人がいる。こういう個人的な経験もあって、私は中核派に対してよい感情を持っていません。もっとも本書ではそういう個人的感情はできるだけ抑えるようにしていますが。  日本共産党に対しても嫌な思い出がありますよ。京都は共産党が強い土地柄なんですが、同志社は大学当局も学友会(同志社ブント) 外部の政党やセクトによって自治が侵されるのを嫌っていたため、学内には民青がほとんどいませんでした。それに対して立命館の民青が同志社の学生を装って入り込み、攻撃を仕掛けてくることがありました。しかも「暴力反対!」と口では言いながら、自分たちは釘を打ったプラカードを武器にして襲いかかってくるんです。

    第一章でも見てきたように、一九七〇年代の左翼史は、新左翼が最後のあがきのようないくつかの事件を起こし、世間との 乖離 をさらに深めた時代でした。  ただそれはあくまで新左翼の視点で見れば、ということであって、もっと大きな流れで見れば、 学生たちを主要な担い手とする政治闘争から、労働運動へ焦点が移っていった時代 でもありました。  この時代、日本の労働運動はかつてない高揚期を迎えました。これは戦後史において案外忘れられがちな事実ではないかと思います。

     だから「●日後に国労がストに突入」というニュースが流れると、翌朝の電車が動かなくなることを見越して、前の晩からみんなで会社に泊まり込むようなこともしていました。  今だったら「何もそこまでして会社に行かなくても」と言われてしまいそうな話ですが、当時の「企業戦士」の意識としては仕事を休むわけにはいかないし、かといって自宅から歩いて通勤するのも無理だということで、会社員たちは前の日から会社の床に布団を敷いて寝ていたわけです。そのための貸布団屋というのがあって、「明日の国電のストライキに伴い、オフィス街では貸布団屋が大繁盛」といったニュースも定番のネタでした。

    だから、郵便番号を書かない運動なんてものもありましたね。かつて郵便物の仕分けは郵便局で職員たちが目で住所を確認し、手作業で分けることで行われていたのを、一九六八年に郵便制度の省力化のために郵便番号制度が導入され、そこから機械が郵便番号を読み取って自動的に仕分けするようになりました。これに郵政省の郵便事業職員の労働組合である全逓が反発し、国民に「手紙やはがきを書く時に郵便番号を書くのをやめましょう」と呼びかけた。

    反合理化闘争は、産業革命期のイギリスで手工業者や家内制手工業の労働者たちが団結して機械の打ちこわしを行ったラッダイト運動のようなものとしてバカにする向きもありますが、資本主義社会においては仕事の効率化が必ずしも労働者のためにならないというのは普遍的な真実です。その意味で日本の反合理化闘争も非常に重要な問題を提起していたのは間違いありません。

    剰余価値を増殖する、資本の自己運動の必然的帰結が合理化であるわけですからね。もっともこの反合理化闘争に対しても、総評=社会党の影響力が強い運動でしたので共産党は反発していました。「合理化にも良い合理化と悪い合理化がある」といういつもの理屈で運動の意義を曖昧にし、足を引っ張ろうとしました。

     今でこそ過労死や過労自殺に対しては労働者をそこまで追い込んだ企業側の責任が強く問われるようになりましたが、あの頃はまだ、労働運動全体を見てもその部分に対する批判が弱い面がありました。ややもすれば自殺した労働者本人が「階級的に弱かったのだ」と見る雰囲気さえありました。  しかし私が通っていた社青同の学習会では、実際に自殺した労働者の例を学びながら、仕事の中で自殺に追い込まれるというのはそれ自体が合理化の最大の問題であって、これは疎外の問題なのだ、個人の責任ではないのだと丁寧に、明確に教えていました。その点では二一世紀に猛威をふるうことになる自己責任論に対する反撃を、先取りするような学習をしていたと思います。

     だから一九七三年に入局した私も、新人の頃は日本放送労働組合員として、休みの日に上田哲のポスターを抱えて各家を訪ねて、「すいません、社会党のポスター張らせてもらえませんか?」と頼んで回っていました。  当時NHKには私の一年先輩に、 橋本龍太郎 の実弟で後に高知県知事になる橋本 大 二郎 さんもいたのですが、彼も在職中は日放労の組合員として社会党の支援活動をさせられていましたよ。

     もちろん共産党だって本音では共産党を支持しろと言いたかったはずだし言えばいいのだけど、総評における共産党系の影響力は社会党と比べれば微々たるものだったので言うに言えなかったんです。  このあたりから社会党と共産党の関係がねじれていきましたね。共産党という政党は社会党より右寄りなんじゃないかというイメージを持たれるようになっていった。

    そうですね。なぜ総評の中で共産党の存在感がそれほどなかったのかについて一応説明しておくと、総評は第一巻(『真説』) でも話したように、もともとGHQが日本の労働運動から共産党を締め出し、労使協調路線に誘導する目的で財界に働きかけて作らせたナショナルセンター(労働組合の連合組織) でした。それが一九五〇年代に社会党が積極的に組織化に乗り出した結果、「ニワトリからアヒルへ」と当時言われたほどに急激な左傾化を遂げ、戦闘的な組合に性格を変えていった、という経緯があります。ニワトリつまり家畜として飼われているのではなく、自由に活動するアヒルだ、というわけです。

    社会主義協会の革命論の基本は、ソ連の力を背景としつつ大衆運動も併せて展開し、議会で多数派を形成することで革命を実現しようというものですが、少なくともこの時点では、計画の要であるソ連の国力が弱まる気配はいっこうにありませんでした。

     ですから革命なるものの現実味が七三年以降に急激に色あせていったというのは、あくまで新左翼側の視点でそうだというだけで、社会主義協会から見ると、むしろこれまでになく革命は近づいているように見えていたはずです。

    でも、実はこれも左翼運動の興隆と裏腹の現象です。左翼運動というのは基本的に組織された労働者と知識人の運動なので、本来ならば労働運動が組織すべき未組織労働者の中に左翼運動では救いきれない部分がどうしても出てくる。そうした層が創価学会に流れたわけです。だから共産党と創価学会はマーケティング的には一番ぶつかるわけですよね。

     今でこそ公明党は自民党と長いこと連立与党を組む間柄になっていますが、この頃は自民党こそが公明党と共産党にとって共通の敵でしたからね。

    ここ一年ほどの「赤旗」を読んでいると、公明党と創価学会の政教一致状態に対する攻撃をかなり頻繁にするようになっているんですよ。  だからそれだけ今の共産党には、創価学会によって追い込まれているという焦りがあるのではないでしょうか。

    この章で大いに関係のある話でもありますので、ここで右派系の労働組合の歴史についても簡単に触れておきましょう。  第一巻(『真説』) でも述べてきたように、総評はもともとGHQが日本の労働運動から共産党の影響力を排除するべく、財界に働きかけて一九五〇年に結成された「反共・労使協調」色の強いナショナルセンターでした。しかしレッドパージで共産党が労働運動への影響力を失うなかで戦闘的な労働運動の受け皿が総評以外にない状況となって、五〇年代初頭には早くも左傾化。そこからは社会党=社会主義協会中心に組織化が図られ、社会党を支持し、日米安保にも反対する左派的な組合となっていきました。

    しかし総評に加盟するすべての単産(=産業別単一労働組合。同一産業で働く労働者が会社の垣根を越えて組織する労働組合のこと) が左派路線を支持していたわけではありませんでした。それが最初に表面化したのが、一九五二年一二月に繊維産業の産別組合である「全国繊維産業労働組合同盟」(全繊同盟、のちゼンセン同盟) など、四つの単産が総評指導部の左派路線を「世論の支持を失い、政府にスト制限の口実を与え、ひいては労働運動を後退させてしまう」と公然と批判したことでした。

    私の場合は所属する日放労が総評の社会党系、民放の人たちが所属する「日本民間放送労働組合連合会」(民放労連) は共産党系だったので同盟系の労組とは接点がなく、彼らとの小競り合いも経験していないのですけど、こうやって意識的に総評を切り崩そうとする先鋭的な右派勢力は、六〇年代末から七〇年代にかけての時期にどんどん出てきましたよね。民社党だって社会党から分裂したばかりの頃はそれほどでもなかったのに、この頃から自民党以上に右寄りの政党になっていった。  それも結局は労働運動がかつてない盛り上がりを見せた結果、日本が本当に社会主義の国になってしまうのではないかという危機意識が政財界の中で強まったからでしょう。

    労働運動が七〇年代後半から少しずつ衰退していった理由としては、この頃から日本社会が本格的な大量消費社会の時代に入っていったことの影響も大きいでしょうね。労働組合のリクリエーションや、それらを通じての組合組織化よりもシンプルに楽しいことが、ほかにたくさん出てきてしまった。それこそ組合主催のリクリエーションよりも家族や恋人と遊園地やリゾート地に行ったほうが楽しいわけですから。

    そうですよね。企業の社員旅行や組合主催の慰安旅行のようなものが成立したのだって、昔は娯楽が少なかったからであって、今の時代の若手社員・組合員にとっては上司や組合の先輩と一緒に温泉に行くなんて苦痛でしかないでしょう。ましてや女子社員に浴衣を着ろだの、カラオケでデュエットしろだのなんて言い出せばハラスメントとして問題になってしまいます。

    昔はあれだけ順法闘争で頑張っていた日教組でさえ、時代が下るごとに新卒の先生たちが組織に縛られるのを嫌がるようになり、組合に入らなくなっていきましたからね。教育現場にイデオロギーを持ち込むことを嫌って総評から分離した「全日本教職員連盟」(全日教連) や、同盟系の新教職員組合連合(新教組) など反総評系の教職員組合もあったけど、そちらも含めてどこも組織率を低下させていきました。  前章で紹介した教研集会にしても、日教組の組織力が落ちてきた結果、労働組合が独自に開くことができなくなってしまい、今では教育委員会なり学校から業務として命じられて研究した内容を、組合の教研集会で発表するような状態になっているようです。

    社会党を除名された江田は七七年三月、やはり六〇年代に構造改革論を唱えて共産党を離党した 安東 仁 兵衛 や、婦人運動家・市川房枝 のもとでボランティアとして活動していた 菅直人 らと新政党「社会市民連合」(のちに社会民主連合に改組) を結成。同年六月の参院選出馬を目指しますね。しかし、江田自身はこの時点ですでに肺がんにかかっており、公示前の五月二二日に六九歳で亡くなってしまいました。代わりに出馬して当選したのが、当時判事補だった息子の江田 五月 です。五月は一九八五年に社民連の代表に就任するなど長く野党の大物の一人であり続け、非自民連立政権が発足した際には 細川 護 熙 内閣や菅直人内閣で何度か閣僚も務めました。

     要するに、理論的な活動にしてもオルグ活動にしても、いままでのようにはできないということがルールで決められてしまった結果、協会が主体的にできる活動といっても学習会くらいになってしまい、選挙などでもいまひとつ力が入らなくなってしまった。  この協会パージにより、社会党内における社会主義協会の影響力は年々低下していきました。

    向坂逸郎がどうしてここまでソ連ベッタリになってしまったかというと、結局はソ連を後ろ盾とした形での革命が現実的だと考えるようになったからだと思います。  共産党の「敵の出方論」のような、武力行使も辞さない革命を標榜したところで権力側との現実の兵力差を考えればあっという間に鎮圧されてしまう以上、ソ連の軍事力を背景に日本の議会で多数派を形成し、無血で社会主義革命を実行するしかない。そこから逆算した親ソ路線だったのだと思います。もっともこれも、明確なシミュレーションを行ったのではなく無意識のうちにソ連や東ドイツを理想社会とみなすようになったのだと思います。

    池上  あるいは、当初は革命を成し遂げるための「戦略」としての親ソ路線だったのが、時間が経つなかで自分たちが最初に考えていた以上のリアルな信念に変化していった面もあるのかもしれませんね。

    だから社会主義協会の場合、ある意味では日本共産党よりも直線的に社会主義革命を目指していたわけですけれど、それはあくまでもソ連に依存したものであって、これは実は社会主義協会のルーツである労農派マルクス主義の本来のありかたとも違っていました。労農派マルクス主義の特徴のひとつは、もともとソ連に対して一線を画す、という点にもありましたから。  つまり社会主義協会の構想は本来の自分たちのアイデンティティとも異なるところに築かれたものであり、だからこそ最終的には破産してしまった。突き放してみるとそういうことになるのだと思います。

    中曾根が目論んでいたのは、大きな意味では日本を社会主義革命から遠ざけるということですよね。そして、今から振り返れば実際に国労を切り崩した結果、社会党と日本の左翼は崩壊過程を辿っていった。あくまで右派の視点から見ればですが、要である国労から切り崩しを図った中曾根には先見の明と長期的な視点があった、ということになります。

     そもそも中曾根という人は右派的な意味での改革者であり、ある意味では「右翼革命」をやろうとしていた人でもあるわけですよね。そういう中曾根であればこそ、革命の怖さというものを自分自身よくわかっていたのではないかと思います。

    池上  そして国鉄民営化後の一九八八年から一九九一年にかけて、ついにソビエト連邦の崩壊が始まります。 佐藤  一九八九年のベルリンの壁崩壊を経て一九九一年にソ連が崩壊したことにより、社会主義協会も社会党も結局バックボーンとなるものを失ってしまったわけであり、バックボーンをもたなくなった党がその後に低迷したのは、ある意味では必然でした。

    池上  社会党に関して言えばソ連は間違いなくバックボーンでしたので、ソ連が消滅したのを境に衰退していったのは理にかなっているのですけど、一方で不思議なのは、日本の左翼にはソ連に対して批判的だった勢力が決して少なくなかったにもかかわらず、彼らまでがソ連が崩壊した途端になんとなく力を失っていったことです。  大学でも、ソ連崩壊前にはマルクス経済学が全国の相当に多くの大学の経済学部で教えられていたのが、少なくとも表面上は消えてしまいました。

     これは考えてみればかなり不可解なことですよ。「ソ連の体制はマルクス主義のそれではない」と言っていた人たちは新左翼でなくてもかなりいたはずなのに、実際にソ連が倒れるとなんとなく「社会主義なんてダメだ」「マルクスもダメだ」というようなムードがワーッと広がってしまった。その後、二一世紀に入って格差が広がったことによって再び資本論が再評価される時代も来るのだけど、一時は本当に、ものの見事に日本のアカデミズムからマルクスの影は消えてしまいました。

     スターリンは単に政治家だったというわけではなく、共産主義世界においては哲学者でも経済学者でもあり、言語学者でもあるなど、知の全体系に関してヘゲモニーを握っていた。しかし政治の面に限定された現在のスターリン批判はそこまで捉えきれていないゆえに、批判者もスターリニズムを継承してしまっている。だから脱構築しないといけないのだ、というのが黒田の思想の核心でした。黒田が率いた革マル派が現実の運動のなかでどれだけできているかは別にして、その問題設定自体は極めて正確でした。

    私が学生だった一九八〇年前後だと朝鮮語、韓国語を大学の正規科目として学ぶことはまだほとんど不可能で、ようやく朝鮮総連系の民間講座が少しずつ出始めた頃なのですが、あの頃に在日朝鮮人たちからよく言われたのが、「日本人で朝鮮語を喋れるという人に会うとぞっとする」という話です。なぜかというと日本人の朝鮮語話者のほとんどが公安警察か公安調査庁の人だからだというんですね。  この二つの役所は、あの当時にしては朝鮮語を喋れる人をたくさん養成していたわけですが、今後はロシア語もそうなるのでしょうね。つまり公安警察や公安調査庁、あるいは内閣情報調査室などで、日本にとっての脅威だからという理由で職員たちにロシア語を勉強させる。しかし民間で学ぶ人はほとんどいないという時代になっていくのだと思います。

    そうした苦しい状況で、先ほど佐藤さんが述べたように一九八六年七月の衆参同日選挙で社会党は惨敗しました。これで 石橋 政 嗣 16 委員長が引責辞任し、九月には 土井 たか子 17 さんが副委員長から昇格する形で委員長になりました。  当時は日本のメディアの一部に土井さんのことを「日本のサッチャー」と言う人たちがいて、「いや、新自由主義者のサッチャーと社会民主主義者の土井では百八十度違うだろ」と思ったものですが、とはいえ当時のジェンダー格差が凄まじかった日本にあって、野党第一党のリーダーに女性がついたことで、「これで日本の政治も少し変わるかもしれない」という期待を抱いた人が多かったのも事実でしょうね。

    佐藤  ご存じのように土井さんという人はもともと憲法学者なのですけど、彼女の同志社大学法学部時代の指導教授だった 田畑 忍 と同じく、大変な尊皇家でもあるんですよね。土井さんの元政策秘書だった 五島 昌 子 さんから以前聞いたのですが、土井さんは衆議院議長を務めていた頃、議長として宮中行事に呼ばれるのが嬉しくて仕方ない様子だったそうです。あまりに嬉しそうなので周囲が咎めても、「だったら私、田畑先生に相談する」と電話をかけ、「田畑先生が全く問題ないとおっしゃっていたので行きます」と宣言し、いそいそと出かけていったといいます。

    あと、「どうして政治家になったのか」と訊いたら、ジョン・フォード監督の『若き日のリンカン』を観て政治って素晴らしいと思ったからだと言っていました。

    だから、 楢 崎 弥 之 助 や横路孝弘などの、社会党の中の言ってみれば反マルクス主義的な系譜に土井さんも実は属していたということなんです。ただ、そういう土井さんが当時の社会党でトップまで上りつめたのは、党内、あるいは党の周辺にあってそれだけ多くの人たちが労農派マルクス主義にうんざりしていたことの表れでもありました。

     だからその意味において日本共産党はカトリック的なんですよ。カトリックの場合、最後の審判の日にキリストが再臨して裁きと救済を与えてくれるという聖書の預言はみな信じているけれど、しかしいつ再臨するのかは誰にもわからない。だったら復活の時に備えてまず教会を強化しておかなければいけない、と考える。だからカトリックは組織が強いんです。他方プロテスタントの一部教派では信徒たちが「すぐにイエスに再臨してほしい」と考え再臨待望運動を起こした例もありますが、こうした運動の場合、期待どおり再臨してくれなかったということで信徒たちが失望して終わるのが常です。

    でも、マルクス主義の影響の度合いという点ではもはや日本も似たようなものかもしれませんね。なにしろ選挙特番で池上さんに「『共産党宣言』を読んだことはありますか?」と質問された共産党の候補者が、「これから読みます」と答えてしまうくらいですから。ああ、 吉良 よし子 さんが初当選したときのインタビューですね(笑)。彼女は当時三一歳でしたので、『資本論』を読んでいないのは世代的に仕方ないかなと思って、せめて「『共産党宣言』読んでいますか?」と聞いてみたのですが、読んでいないということでしたね。

    私の頃だと記者という仕事はそれこそ学生運動崩れがなるイメージでしたし、実際活動家崩れがたくさんいましたからね。だから世間的にはちょっとバカにされているというか、少なくともエリートがなるような仕事じゃありませんでした。それがバブルの頃に、急激にエリート化していきましたよね。女子アナブームが起きたり、主人公を新聞記者に設定した民放のトレンディドラマが放送されたり、朝日新聞の給料が高いと話題になって、あれよあれよという間に人気職種になっていった。

    そういった社会の空気は「安倍政権」の七年八ヵ月で強まったとも言われますが、安倍政権といえば、この政権は本対談で私たちが何度も言及してきた「安保闘争」と「学生運動」を復活させたことも記憶に新しいですね。安倍政権は二〇一五年五月に自衛隊の集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法案を国会に提出し、それに反対する若者たちが首相官邸前に集まり抗議行動を繰り広げました。なかでも学生グループ「SEALDs(シールズ)」(Students Emergency Action for Liberal Democracy-s=自由と民主主義のための学生緊急行動) の抗議運動はメディアに取り上げられ大いに話題になりました。

    しかし私はSEALDsに関しては全く評価していませんし、彼らの運動は、結局のところ組織化されていない運動などほとんど意味がないことを示して終わったと思っています。  またあの運動に関わった若者たちがどの程度自覚していたのかは知りませんが、私は彼らの運動のあり方は非常に新自由主義的だったとさえ思っています。

     私があの運動を見ていてとりわけ嫌だったのは、たくさんの大人たちが子どもたちに 阿ったことですよ。そういった運動における嫌らしさや 狡 さのようなものについて、大人たちは嚙み砕いて教えなければいけなかったのにしなかった。だから私はああいう運動に対しては冷たいんです。  結局、思想がないんですよ。 左とか右とかは関係なくてすべて新自由主義なんです。 誰もが眼の前で繰り広げられている椅子取りゲームに勝つことしか興味がなくて、その場その場をどう振る舞えば自分にとって得になるかと考えている。そうした新自由主義的な振る舞いが学生運動にまで浸透しているということだと思います。

    だから私は、実はヴィーガニズムという思想・運動について部分的には共感できると感じつつ、一方ではこの

    思想が引き起こす社会との軋轢が、かつての新左翼に近いものになる可能性も十分あると思っているんです。これは環境問題でもそうですよね。  いずれにせよ、どのような運動をしていくのでも対話の力というのは本当に重要で、対立的な運動であれ、何らかのコンセンサスを見つけることを目指すのであれ、我々はそれを信じていかなければいけません。

     そして『構造と力』の刊行から四〇年経ってもうひとつはっきりしたのは、やはり人は「大きな物語」を必要とするということです。しかもその物語は、大きいものでありさえすれば、かなり乱暴な出来でも構わないということもわかった。

     だから「大きな物語」はその出来に関係なく、依然として人を動かす力を持ち続けていると思うんですよ。キリスト教がフラフラしながらも未だに生き残っているのだって、やはりこの教えには「大きな物語」があるからです。  いずれこの世の終わりが来て、その時にはイエスが再臨し最後の審判と救済が行われる。この「大きな物語」が維持されている以上はそう簡単には滅びません。

    そういう意味では、 現在の左翼の元気のなさというか影響力の弱さは、もはや彼らが「大きな物語」を語り得なくなってきていることにあるかもしれませんね。「いずれ共産主義の理想社会が到来する」という、かつて語られていた「大きな物語」を語り続けるのが難しくなっている。

    池上彰氏との共著『真説 日本左翼史』『激動 日本左翼史』『漂流 日本左翼史』が刊行されたことで、太平洋戦争後の日本左翼の歴史について検討するわれわれの共同作業は終了した。日本の左翼を日本共産党とそこから分裂した勢力と見る従来の見方に対して、私たちは別の切り口を提示した。わが国には日本共産党以外に戦前の合法マルクス主義者の流れ(労農派) を継承する日本社会党が存在した。この社会党のアンブレラの下で、新左翼が台頭した。共産党 社会党・新左翼という分節化に基づいて日本左翼史を論じた本は他にないと思っている。

     未来を切り開くためには、過去から学ばなくてはならない。日本左翼の歴史から、善きものを活かし、悪しきものを退けることの重要性が今後高まると私は考える。  キリスト教には左翼的な価値観も包摂されている。 〈そのうちの一人、律法の専門家が、イエスを試そうとして尋ねた。「先生、律法の中で、どの戒めが最も重要でしょうか。」イエスは言われた。「『心を尽くし、魂を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』これが最も重要な第一の戒めである。  第二も、これと同じように重要である。『隣人を自分のように愛しなさい。』この二つの戒めに、律法全体と預言者とが、かかっているのだ。」〉(「マタイによる福音書」 22 章 35 ~ 40 節)

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    2024年07月03日
  • グローバルサウスの逆襲

    Posted by ブクログ

    世界情勢が気になり、読んだ。

    自国主義のグローバルサウスの台頭、アメリカの内向き、ロシア・中国の支配拡大などの繋がりや背景をざっくり理解できた。長い歴史のサイクルを見ると、民主主義と独裁が交互に続いており、今はその民主主義・資本主義による格差拡大と停滞感に嫌気が差し、独裁(自国主義)へ向かおうとしているような局面らしい。今までの平和ボケした前提で世界を見るのは正しくないのかも

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    2024年06月28日
  • 世界史の大転換 常識が通じない時代の読み方

    Posted by ブクログ

    世界史の大転換
    常識が通じない時代の読み方
    著:佐藤 優
    著:宮家 邦彦
    PHP新書 1050

    おもしろかった。外交官の対話です。

    ■包括

    ・現代は、ポスト冷戦が終わり、世界が再びナショナリズムへ回帰している時代ととらえる

    ・近代国民国家たる西側諸国に対して、ロシアや中国を前近代的な帝国とみる
    ・米ソ超大国が対峙する冷戦時代は、各国のナショナリズムを抑えていただけではなく、資本主義の暴走をも抑えていたと説く。それは、資本家階級の利潤を減らしてでも福祉政策や失業対策などに目を向けて、労働者階級に資本を再分配していた時代であったからだ
    ・冷戦を戦うためには、どうしても、大きな政府、大きな軍隊が必要であった。これが冷戦時代の特長である
    ・冷戦が終わり、軍事力の維持・強化は、軍事・兵器のハイテク化で担保する方針に切り替えられて、戦争に投入できる人員が減っていったことは、アフガニスタン、イラクの占領政策、民主化プログラムに大きな影響を与えた
    ・また、社会主義革命の恐れがなくなれば、資本主義は遠慮する必要がなくなり、資本が暴走を始める。
     資本と国家が結びつき、帝国主義となるのです。
    ・1997年のアジア通貨危機がその一例で、タイ、インドネシア、韓国の富を、市場の強者が簒奪した。
     まさに、それが新自由主義であり、グローバリズムでした。

    ・賃金は利潤の分配ではなく、商品を生産するための対価として支払われ、利潤の分配を受けるのは、資本家だけになっていく。

    ・労働力商品の価値とは
     ①労働者が1カ月生活をするための費用
     ②労働者階級の再生産のための費用(結婚、家族、出産、教育)
     ③技術革新のための費用

    ・近代後、4つの大転換点を経験している
     ①第1次グレートゲーム 産業革命、パクス・ブリタニカの時代
     ②第2次グレートゲーム ロシア、ドイツ、日本、アメリカがイギリスに挑戦していく時代
     ③第3次グレートゲーム 冷戦時代
     ④第4次グレートゲーム 冷戦後の現代

    ・第4次グレートゲームとは、アメリカという一国主義を排し、多国間主義、ルールのない弱肉強食の時代であり、いま以上に厳しいサバイバルゲームである

    ■中東

    ・オスマン帝国滅亡、トルコ革命から、中東の相克・葛藤が始まった。
    ・対する欧州(EU)の価値観
     ①ユダヤ・キリスト教一神教の伝統
     ②ギリシア古典哲学
     ③ローマ法
    ・アラブの春が失敗した理由は、近代市民社会のような政治的成熟のない国に、欧米型の自由化による民主化プロセスを求めたため
    ・オスマン帝国の分割に関する密約、サイクス・ピコ協定(英・仏・露)が中東を不自然に分割してしまった
    ・国境を線で規定すること自体、近代欧州で生まれたここ、150年程度の思想です
    ・イスラム教の預言者ムハマンドが長生きしたばかりに、ムハマンドの言を採用した、コーランは、人間の理性、自由裁量の入る余地が極めて限定されている、宗教を作りだしてしまった
    ・アメリカの誤算、イランのように一度世俗化して、高度の消費文明を享受している国がイスラム原理主義化することなどありえないと高をくくってしまったことだ
    ・ロシアはシリアを通じて、中東覇権を有利に進めようとしている
    ・イランが核武装すれば、いずれ、サウジアラビアも核武装をする
    ・アメリカにとって、最悪のシナリオは、サウジアラビアが、ロシアから核兵器の技術を供与され、核兵器の開発をロシアの技術で行うことである。中東の核拡散が現実の脅威となっている

    ■中央アジア

    ・スターリンの「民族別境界画定」は中央アジアにおける、サイクス・ピコ協定だ
     テュルク系民族の地、トルキスタンを、ロシアと中国は分割し、5つの民族、国に分かってしまった
    ・ロシア革命でレーニンは、強くなりすぎた、中央アジアのムスリムを弾圧した
    ・分割して統治せよ クリミア、タタール人たちを、中央アジアに強制移住させ、複雑な民族問題をさらに複雑にした
    ・ソ連の崩壊で、中央アジアに空白が生じた
     ウイグルの民族活動家は、トルコとの一体感が強い
     トルコとの連帯巻が比較的強いのはトルクメニスタンで
     ウズベキスタンではかなり薄くて
     キルギズあたりに来ると、そうとう希薄化されている感じがします
     タジキスタンは自分たちをペルシア系民族としているから、トルコに対する親近感はありません

    ■ロシア

    ・ロシア・グルジア(ジョージア)戦争で使用されたレトリックがウクライナ危機で引き継がれ、過去に起きたチェチェン、アゼルバイジャン、アルバニアなどので宗教、民族紛争が現在の欧州、ロシア、中東問題に結びついている

    ・引き継がれたレトリックとは、「制限主権論」
    ロシアの安全保障を確保するためには、近隣諸国の主権は制限されるというもの
    ・プラハの春を阻んだ、ブレジネフドクトリンの焼き直しだ

    ・ロシアがクリミアを併合した理由は、経済的合理性ではなく、「ユーラシア主義」という世界観からだ
    ・日本語でいうロシア人とは、ロシア語では、ルスキーと、ロシヤーニンの2つがある
     ①ルスキー:血筋と言う意味のロシア人
     ②ロシヤーニン:王朝に忠誠を誓う臣民としてのロシア人
     歴史的には、ロシヤーニンが重要な意味をもっていました
     ロシアは必然的に帝国となる運命であり、ロシアは欧州やアメリカ、アジアとは異なった論理と発展法則をもっているというのが、「ユーラシア主義」です。中国でいう、中華思想に相当します

    ・ロシア正教である、キリル総主教は、バチカンと和解した
     ロシアにいる、土着した、内なるイスラム教とは対話を重視しているが、アラビアに起源をもつワッハービに対しては、ロシアから排斥すべきという立場を鮮明にしている

    ■欧州

    ・ブリュッセルのイスラムコミュニティ
     かれらは市民としての自由が保証されているが、いまなお、キリスト教白人社会に差別・疎外されている
    ・自らをベルギー社会の一員であるとは考えてはいない
    ・反セム主義 セム族には、ユダヤだけでなく、アラブも入ります。反アラブ、反ユダヤということです
    ・反セム主義の対極にあるのが、ナチスの人種主義です。「アーリア人は生まれながらにして優秀である」
    ・第二次大戦下のノルウェーでは、ナチのSS親衛隊の将校を集めては、ノルウェーの金髪女性と結婚させ
     優秀なアーリア人を生産するという、人間牧場をつくっていた
    ・イスラムとは、生活そのもの、であるから、宗教と生活とは切り離すことができない、労働力不足を補うために、トルコを中心に移民を受け入れたドイツも実際にベルリン郊外に行くと、彼らを同化させたとはいいがたい現実がある

    ・今や、アメリカや欧州は、イスラムとの併存がより困難になる方向に進んでいる

    ・国境のない欧州という理想は、いまや風前の灯だ
    ・長い19世紀と、短い20世紀という考えがある
     長い19世紀とは、1789年のフランス革命から、1914年の第一世界大戦勃発まで
      啓蒙、進歩n時代、理性によって認識できる合理的な世界と言う意味である
     短い20世紀とは、1914年の第一世界大戦から、1991年のソ連崩壊までをいう
      啓蒙、進歩、理性がもたらした悲惨な結果を見て、人々はいままでのあり方でいいのか、もう一度、見直しが必要だとの見直しの時代

    ■アメリカ

    ・ごく普通のイスラム系市民が突如としてテロの実行犯となりえるアメリカの現実
    ・自由で民主的、世俗主義的環境で生まれ育ったアメリカ人のなかから、テロリストが生まれるという現実が可視化された
    ・アメリカの伝統的エリートは、WASP(白人のアングロサクソン系プロテスタント教徒)であり、さらに貧困層の白人系アメリカ人:労働者層のプアホワイトも現在のアメリカは建国の理念とは異質の人々によって従事られているという被害者意識をもっている

    ・ハーバードでロースクールへ通うためには、5000万もの費用がかかる
    ・現実にアメリカのエリート大学のほとんどは超富裕層の子どもしか入れない。エリート大学を卒業すれば、年収2000万から3000万からスタートできるが、普通のアメリカ人には就職口がない

    ・そもそもアメリカの中東原油依存は2割程度しかない。現実問題として、エネルギーの安定確保が中東関与の動機である
    ・アメリカが中東から一定量の原油輸入をしているのは、戦略物資である自国の原油を温存する狙いである

    ■中国

    ・北京はイスラムを力で抑え込めると考えているが、それは勘違いです
    ・ほんとうに中国はイスラム教、イスラム教徒との付き合い方がわかっていませんね。
    ・中国のアキレス腱は、台湾や朝鮮半島だけではなく、中央アジアの状況次第では、新疆ウイグル自治区の動向もちゅうごくの安全保障にとって重大事項となる

    ・中国の歴史とは、漢民族と、周囲の国の勢力変遷図といってもいい
     中国は、西のチベット、ウイグル、内モンゴルも手にした

    ・フィリピンからアメリカ基地がなくなった、空白の期間に、中国は南シナ海に進出した

    ・日本は海洋国家ですから、これを絶対に認めることはできない

    ・日本が開戦の詔勅になかに、国際法を遵守するという言葉がはいっていないように、当時は、欧米人がつくった国際法は白人がつくったものだから守らなくてもいいと思った
    ・同じように、現在の中国も、国連海洋法条約を批准しているけれども、欧米に押し付けられたものだから守らなくてもいい、中国式でいけるところまで行くと考えているはずです

    ・そもそも中国人は共産主義の発想を理解していないのではないのか。
     人のものは、自分のもの、自分のものは、自分のもの、の人たちが社会主義などできるはずはない。

    目次
    はじめに 世界を一周しながら変化の本質を読む
    第1章 ポスト冷戦の終わり、甦るナショナリズム
    第2章 ISを排除しても中東情勢は安定しない
    第3章 中央アジアは「第四次グレートゲーム」の主戦場
    第4章 「国境のない欧州」という理想はテロで崩れるか
    第5章 トランプ現象に襲われたアメリカの光と闇
    第6章 中国こそが「戦後レジームへの挑戦者」だ
    終章 「ダークサイド」に墜ちるなかれ、日本
    おわりに 第一級の分析家との仕事に感謝する

    ISBN:9784569830711
    出版社:PHP研究所
    判型:新書
    ページ数:237ページ
    定価:820円(本体)
    2016年06月29日

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    2024年06月17日
  • 人をつくる読書術

    Posted by ブクログ

    人をつくる読書術
    著:佐藤 優
    青春新書インテリジェンス

    良書 おもしろかった 本を読むための地図を与えてくれる本
    何を読むか、で人生は決まるとある

    知の領域をいくつかの方向に発散・分散するためのガイドブックを兼ねています。

    世界標準の教養を身につけるためには、何を読めばいいかを解説する本です

    教養とは、想定外の出来事に対処する力である

    拘置所で役に立つのは学歴でも肩書でもない。頼りになるのは自分自身のそれまでの経験と読書などによって蓄積した知識だけで、そこから新たな解と行動を導き出す必要があった。

    本書で伝えたいのは、2つある。

    よい本を読み、よい友人を持つことだ

    気になったのは、以下です

    ・政治家への報告:その道のプロでない人が読んでもわかるように書くことを心がけていました

    ・公文書を読んでもらうためには:事実を曲げない範囲で、いかにわかりやすく、読みやすく、要点が
    読み手の頭に入るように書くかをいろいろ工夫しました。
    ・特に工夫したのは見出しです。できるだけ目を引くように、そして段階の内容が一目でわかるように、キャッチな見出しにしなければなりません。外務省の幹部に配布する文書には全体の要旨をつけます
    ・文章を書く際には、事実と自分の意見を分けることも大事です。
    ・文章が書けるようになりたい人は、自分が興味をもった文章や記事、名作の気に入ったフレーズなどを書きぬいてノートにまとめておくというのも効果的です
    ・あとはとにかく量を書くこと。一定以上の量をこなすことで質的な変化が生まれます。
    ・表現するということは対象化することです。対象化するとは、物事に対して一定の距離を置いて客観視することと同じです。
    ・表現にはげんごりょくが必要不可欠で、その力をつけるのが読書です。読書で養った読解力と表現力は表裏の関係にあり、読解力以上に表現力を高めることはできません。
    ・やはり、古典を読むことが一番だという結論になります。古典とは、文庫になって10年間書店の棚に残っている本です

    ・読書には、3つの読み方があります。それは、「精読・熟読」「速読」「超速読」です
    ・速読では、絶対に読み返さないという覚悟でよむこと
    ・1頁を15秒で読めるようになれば、速読はほぼ完成です
    ・1冊を5分くらいで読むのが、超速読です
    ・重要な部分をシャーペンでぐるりと囲んでおきます。その上で、付箋を貼るか、その頁の端を折り畳んでおく

    ・できるだけ客観的に事実を正確に伝えようとすると、必然的に形容詞を少なくし、事象だけを述べていくスタイルになる

    ・トップに立つ官僚や政治家は例外なく教養人だということです。
     歴史や地理、宗教や文化に詳しく、古典の小説もたくさん読んでいる。
     芸能や音楽なども通暁している
     そういう素養が根本にあるからこそ、深いところで人間理解ができるし、組織をまとめるリーダシップが身につくのです

    ・まず大切なのが己を知ること
     そのためには自国の代表的な古典を読むなどして国の歴史や文化、芸術に関する知識を増やします

    □ 古事記 □日本書紀 □ 今昔物語 □ 源氏物語
    □太平記 □ 平家物語
    □近松門左衛門 □ 松尾芭蕉
    □ 夏目漱石 □ 森鴎外 □ 太宰治
    □坂口安吾 □ 三島由紀夫 □ 安倍公房
    □村上春樹 

    ・インテリジェンスに携わる人間にとって、相手の国や民族の歴史、古典といわれる文学作品はまず押さえておく必要があります。

    □ショーロフ 「人間の運命」
    □ ドストエフスキー 「カラマゾフの兄弟」
    □ トルストイ
    □ワシリー・シュクミン
    □ミハイル・ブルガーコフ

    ・インテリジェンスの世界では、利害が対立する国や地域、組織や集団についての知見を持っていることが大前提となります。それには、相手の言葉だけでなく、歴史や文化、思想や宗教などの基本的な思考の形態、判断、行動の基準を知ることも含まれます

    ・「彼を知り己を知れば百戦危からず」という孫子の言葉そのものです

    ・日本人のマインドのどこかに敗者の美学、滅亡の美学、もっといえば死の美学がある
    ・「平家物語」にも「太平記」にもそれはあり、武士道における切腹や討ち死に、さらに玉砕や特攻といった日本人特有の精神構造にまでつながっています。
    ・私たちの精神構造や思考パターンを読み解くには、やはり過去の歴史、古典に立ち返らねばなりません。
     なぜなら、私たちは否応なしに過去から連綿と蓄積した時間、すなわち歴史の中に生きているからです。

    ・国語便覧には、日本の文学系譜が体系的にまとめられています

    □ 島崎藤村 □田山花袋 □国木田独歩 □ 夏目漱石 □ 森鴎外 □ 谷崎潤一郎 □佐藤春夫
    □武者小路実篤 □志賀直哉 □ 芥川龍之介 □ 菊池寛 □山本有三

    ・スパイ小説もちゃんとしたものであれば、大いにインテリジェンスの参考になります

    □ジョン・ル・カレ 「鏡の国の戦争」、「寒い国から帰ってきたスパイ」
    □グレアム・グリーン 「第三の男」、「静かなアメリカ人」、「ヒューマン・ファクター」

    ・哲学

    □フロマートカ 「召命」
    □ トルストイ
    □ ドフトエフスキー
    □カント
    □ヘーゲル
    □シェリング

    ・信頼関係が築けていない相手には、心を開いて話をしない
     慎重で気難しい人物にはその傾向があります
     ただし、一度心を開いて相手を認めたら、一気に関係は深く、そして、長く続くものになります

    ・本の面白さを教えてくれた一篇の小説

    □モーパッサン 「首飾り」
    □太宰治 「晩年」
    □島崎藤村 「破戒」
    □田山花袋 「蒲団」
    □夏目漱石 「こころ」
    □フローベル
    □カミュ
    □ツルゲーネフ
    □トルストイ
    □チェーホフ

    ・本を読むには、よいガイドが必要です。特に最初のころには導き手が必要です
     要約と、敷衍をすること
     文学の潮流を意識し、時代背景とともに作品を理解すること

    ・理解できない本を読まなければ読書力は上がらない

    □エンゲルス 「空想より科学へ 社会主義の発展」
    □マルクス/エンゲルス 「共産党宣言」
    □「マルクス・エンゲルス選集」 □「レーニン全集」 □「スターリン全集」 □「毛沢東選集」
    □フォイエルバッハ

    ・本の選び方:最初から絞り込まないこと、とにかく、幅広くいろいろな知識を取り入れること
    ・硬直化した考え方から抜け出すには、一度白紙に戻すこと
    ・考え方をリセットし、新たな知識や情報を受け入れること
    ・物事を絶対的な視点ではなく、相対的な視点で見ること

    ・本を読む順番を間違えてはいけない
    ・一番いいのは人類の歴史の流れにそって、それぞれの時代に生まれた思想や哲学、芸術に触れること

    ・今こそ知っておきたい「音読」の効果
     読解することが難しい本や文章は音読することをすすめています。

    ・世界のエリートに必要な能力
     
     英語力等の語学力
     数学力 偏微分の経済学数学モデル
     線形代数、統計、論理学、集合論、記号論理学、確率論
     哲学、倫理、弁証法

    □加藤周一 「読書術」
    □テオドール・アドルノ
    □マックス・ホルクハイマー

    ・影響を受けた本

    □トマス・クーン 「コペルニクス革命」
    □ローレンツ 「ソロモンの指輪」、「攻撃―悪の自然死」
    □ブルーバックスシリーズ 
      「素数入力」
      「数論入門」
      「不完全性定理とはなにか」
      「ゼロからわかるブラックホール」
    □ミニャエル・エンデ 「モモ」
    □コースタイン・ゴルデル 「ソフィーの世界」
    □ソクラテス
    □カント
    □ヘーゲル
    □ダーウィン
    □フロイト
    □バートランド・ラッセル 「教育論」「幸福論」「結婚論」「哲学入門」

    □三木清 「人生論ノート」
    □西田幾太郎
    □田辺元 「歴史的現実」
    □三枝博音
    □戸坂潤
    □エズラ・F・フォーゲル 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
    □松本清張 「黒の手帖」
    □ジュール・ベルヌ 「月世界旅行」
    □G・ウェルズ
    □伊藤潤二 「うずまき」
    □本谷有希子 「異類婚姻譚」
    □山崎ナオコーラ 「人のセックスを笑うな」
    □柚木麻子 「伊藤くん A to E」
    □「闇金ウシジマくん」「闇金の帝王」「難波金融伝・ミナミの帝王」
    □三浦綾子 「塩狩峠」
    □遠藤周作 「沈黙」
    □ラインホルト・ニーバー 「光の子と闇の子」

    目次
    まえがき
    第1章 作家をつくる本の読み方
    第2章 外交官をつくる本の読み方
    第3章 人間をつくる本の読み方
    第4章 教育者をつくる本の読み方
    第5章 教養人をつくる本の読み方
    第6章 キリスト教者をつくる本の読み方

    ISBN:9784413045636
    出版社:青春出版社
    判型:新書
    ページ数:208ページ
    定価:880円(本体)
    2019年02月15日第1刷
    2019年03月10日第3刷

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    2024年06月25日
  • イスラエル戦争の嘘 第三次世界大戦を回避せよ

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    博多から佐世保への高速バスの旅の道連れの本
    イスラエル戦争の嘘、米露中の打算と野望に巻き込まれるな!日本には停戦に導く力がある。

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    2024年06月04日
  • グローバルサウスの逆襲

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    手嶋龍一氏ほどではないが、池上彰氏と知の巨人・佐藤氏との対談もいつも示唆に富んだものだ。本対談はグローバルサウスを語る過程で、全世界を俯瞰するように過去・現在・未来を語ったもので深みは薄いが、全体把握には丁度良い。

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    2024年05月24日
  • イスラエル戦争の嘘 第三次世界大戦を回避せよ

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    日本を代表する稀代のインテリジェンサー(こんな言葉はないか)お二方の対談は、どの上梓作も蒙を啓かされる。本作も同様で、イスラエルとテロ組織ハマスとの紛争について、歴史からの学びとそれぞれの内在論理を喝破し、グローバル世界の今後の進路を示唆する羅針盤のような提言を繰り出す。バカな新聞や御用学者の言説など読まなくても、本作を読むだけで世界情勢の今がわかる。ミネルヴァの梟は夕暮れに飛び立つものだが、昼日中に飛び立っていると思わせる迫力ある分析力だ。

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    2024年05月15日
  • 自壊する帝国

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    四読目、かな?
    やはり今回もサーシャさんの印象が強い。
    神通力とでも言うべきか、深い知識と広い視野が基礎としてあれば、ここまで精度の高い未来予測が可能となるのか?
    なるほど、確かに「天才」だったのだろう。

    あとアルクスニスさん、ポローシンさん、シュベードさん辺りも印象に残ったかな。
    まあとはいえ、今作の「視点人物」である佐藤さんだからこそ、この「物語」は描けたのだろう。
    ソ連(ロシア)の大使館を拠点に現場で活動する外交官として、まずはモスクワ大学で、自らの専門知識と好奇心だけを携えて舞台を拡大していく。
    そういえば、「外交官には好奇心が必要だ」と、いくつかの外交本で読んだ気がする。
    そのことが本書で分かりやすく描かれていた、とも言えるであろう。

    当時のソ連の社会とか、ロシア人を含む様々な民族の人たちの生き様や人間模様、あるいは「歴史的な国際的大事件」を内側から観察し、何が起きているのかこれからどうなるのか分からない状況でリアルタイムで判断・行動しなければならない大変さを疑似体験できたりとか、まあ色々見どころはあるわけだけど……。

    かなりの良書なのは間違いないと思う。
    今回も良い読書をした。良い時間を過ごした。
    時間を置いて、また読み返したい。

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    2024年05月13日
  • 修羅場の極意

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    修羅場の極意
    著:佐藤 優
    中公新書ラクレ 500

    敵を作り、嵐に巻き込まれた時の対処方法、「うろたえるな!時を待て」

    修羅場とは、継続的に闘争が起きている場所のことをいう
    耐えず闘争が続いている状況では、普段は見えるはずのものが見えなくなってしまう
    逆に普段、見えないものが見えるようになることもある

    気になったのは、以下です

    ・チームリーダーや部長が無能だと、全体に悪影響が及ぶ、これは国家においてもおなじだ

    ・マキアベリ 性格がよい人よりも、疑い深く、国民から恐れられるような国王の方が、結果として国民に幸せをもたらすと考えた

    ・愛されるよりも恐れられるほうが、はるかに安全である

    ・修羅場で、守勢になった側での裏切り行為はごく普通の出来事だ

    ・マキアベリは、人間の本質は、悪であると考える
     こういう性悪な人間たちによって作られる世界は、基本的に悪だ

    ・マキアベリによれば、信義にもとる人の方が権力を握ることができるという

    ・イエス 受けるよりは与える方が幸いである

    ・食うか、食われるか、が、ヒットラーの基本思想だ

    ・生き残るためには何をしてもいい

    ・裏切者は敵より悪い

    ・ヒトラーたちは、言葉を自らの権力を獲得し、維持するための道具としてしか考えなかった

    ・これからの時代は、望むと望まざるとにかかわらず、ひとつの国、ひとつの組織、ひとつの仕事だけに頼れなくなっていきます
     そうした中では、自分の生き方、働き方、自分で決めていく、ことが求められる

    ・修羅場とは、世界的な大事件に遭遇したり、特捜検察に逮捕された場合だけを指す概念ではない
     第三者から見れば、よくあることだ、と映ることでも、本人にとっては深刻な修羅場であるという場合もある

    ・人脈を長期間維持することは、人脈構築の数倍難しい
     心底信頼できる友人がいるかいないかは、仕事と私生活の双方において死活的に重要だ
     高いレベルで維持できる人脈は、通常、片手に収まる範囲内だ

    ・最悪のシミュレーションだけすればいい

    ・修羅場が避けられても、それで幸せかどうかはわからない

    ・カネがないのが最大の修羅場

    <結論>
    企業、官庁でも、上司を選ぶことはできない
    無能な上司、性格に著しい偏りのある上司に遭遇したときは、時、を待って、行動に移る
    決して、時期尚早な戦いをしてはならない
    修羅場の作法の達人たちは、時、を見極める達人でもある

    目次
    はじめに―東京拘置所での谷底生活から
    1 偉人たちのサバイバル術
    2 反面教師たちの失敗学
    3 「獄中」の教訓は役に立つ
    4 ヴァーチャルな修羅場、リアルな修羅場
    対談 「最悪」のシミュレーションだけすればいい―西原理恵子
    おわりに―「時」を見極めるということ
    初出一覧

    ISBN:9784121505002
    出版社:中央公論新社
    判型:新書
    ページ数:224ページ
    定価:800円(本体)
    発売日:2014年06月10日

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    2024年05月08日
  • 世界史の分岐点 激変する新世界秩序の読み方

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    非常に面白かった。二人の対談形式で、経済、科学技術、軍事、文明について、過去の歴史を振り返りつつ、現状が語られている。今まで自分はなんと無知であったかを思い知らされる。危機感を持ちつつ、学び続けずにはいられない気持ちになる。巻末の文献リストも嬉しい。ぜひ読みたい。

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    2024年04月28日
  • 天才たちのインテリジェンス

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    佐藤優氏と村田沙耶香さんの対談とか想像できないわというワクワク感から購入。本書自体が新書としても薄目で1人1人の対談はかなり短めだったが、興味深い対談もあった。ただ、タイトルのインテリジェンスという言い方はどうなんでしょ・・・。

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    2024年04月19日
  • 国語ゼミ AI時代を生き抜く集中講義

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    国語力(特に読解力)の養い方を説いた本。

    レベルは高いが、本書を通して国語力を磨くことで、思考の幅が拡がるのは間違いありません。国語力を磨くために何をすればいいのかを段階的に教えてくれます。

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    2024年04月14日
  • 悪の処世術

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    「13歳からの地政学」と並行して読んだが、重複する内容が多くて驚いた。著者は元外務省のロシア関係外交官、佐藤優氏である。彼の洞察力、文章力はすごいと思う。
    本書は、近現代の独裁者11人の政治手法、信条、人柄、失敗などを簡潔に説明した本であるが、とても明確に書かれている。
    特に興味深かったのは、プーチン大統領、金日成総書記、ヒットラー総督、カダフィ大佐である。本書で初めて知ったこともたくさんあり、面白かった。
    独裁政権というと、国民は自由が無くて窮屈な生活を強いられるイメージだったが、その方が政治が落ち着いて良いとする考え方も、特にイスラム教の国ではあると知って、目からウロコだった。自分たちの正義で民主主義を押し付けようとする西側と対立する背景も良く分かった。
    こういう本を出版するのはリスクを負うことで、北朝鮮やロシアから著者が狙われないか心配になってしまった。

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    2024年04月10日
  • 国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―

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    ネタバレ

    佐藤優氏が逮捕勾留される事になった事件の回顧録。この本に初めて興味を持ったのは週刊新潮に連載されていた「頂上対決第182回」の対談相手が取り調べを行った元検事、西村尚芳氏だったからである。
    事件当時、鈴木宗男議員と田中真紀子議員と佐藤優氏がTVニュースに映りまくり、良くは分からずとも何やら大変な事件が起こっており「外務省は悪い人たちのいるところだ」みたいな印象を子供ながらに抱いていた。ので、長らくきっと事件の弁明みたいな事が書いてあるのだろうくらいにしか思ってなかったのだが「悪い人」であるはずの佐藤氏の名前をアチラコチラで頻繁に目にすると、流石にこの認識は大分違うらしいと気にはなっていた。文章を読むと俗悪さの欠片もない。凄い。ではなぜこんな凄い人が捕まったのか。またなぜ評価をくれているのか。知りたくなった。

    元外交官とは知りつつも、よもやここまで世界情勢が絡んでくるとは思わず、イスラエルの知識まで増えるとは思わなかった。事件のみならず現在を理解するうえでも大変役に立ったし、僅かな海外経験の肌感覚も記述と合致してかなり納得できた。
    事件の専門的な細部までは分からないし、伏せられていることもあって全容では無い。ただ、私の実質識字率は5%からは少し上がったと思う。今後も上げ続けていかなければ。
    「利害が激しく対立するときに、相手とソフトに話ができる人物は手強い」激しく同意。西村検事はずっと敵なのに、信用できる人。小説ならば胸熱なキャラだけど、実在する人で、20年後の対談でもそれは揺らがない。「国益」という言葉が多用されていたが、つまるところ、命がけで挑める何かがあるか。そんなものを持つ人は明治大正時代あたりで消えたと半ば本気で考えていたが、私の視野が狭窄だっただけだった。破廉恥事件ばかりに目が行くが、こんな真剣な大人たちがいてくれることに救われる想いがする。
    『自壊する帝国』もあまり時間を開けずに読むつもりだし、今後氏の著作は極力読んでいきたい。

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    2024年04月10日
  • 還暦からの人生戦略

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    還暦を過ぎると最後の直線。人生をどう締めくくるか考えさせられました。新宿御苑のベンチで満開の桜を見ながら、あと何回桜を見る事が出来るのかと思いながら最終章を読み終えました。

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    2024年04月07日
  • ウクライナ戦争の嘘 米露中北の打算・野望・本音

    Posted by ブクログ

    ウクライナ戦争の分析をするのにこれほどの適任者はいないですよね、という2人の対談ならば読まない手はないと、書店で目にして即購入でした。
    期待を裏切らない内容です。

    ロシア語・ウクライナ語・ベラルーシ語に堪能な佐藤優氏は、ヴァルダイ会議でのプーチン発言を丸々翻訳したなかから貴重な知見を提示してくれますし、
    英米の諜報活動に詳しい手島龍一氏は、侵攻を予告したバイデンの失策を手厳しく批判します。

    ゼレンスキーの国内での立場や大統領になった経緯等にも詳しく触れられていますし、
    ウクライナを利用してロシアの弱体化を目論むアメリカの戦略も生々しいです。

    最後、歴史・宗教が異なるウクライナの3つの地区での分断による戦争決着の可能性等、日本から見える情報だけではなかなか思い至らない景色を見せてくれるのが、この本の素晴らしいところだと思いました。

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    2024年04月06日