あらすじ
ウクライナ戦争が始まって1年が過ぎるが、終結の見通しが立たない。ロシアのねらいは何か。戦争の行方は。核戦争の危機は現実となるのか。日本の立ち位置は。様々な情報が飛び交う中、本書では20年以上にわたるプーチンの発言や論文を読み解き、ロシアの内在的論理を冷静に分析することで、ウクライナ戦争の背景を探る。歴史、民族、宗教、社会、政治など幅広い視野からアプローチした本書は、情報戦が激しさを増すいま、現状を正しくとらえ戦争の本質を理解する目を養う一助となる貴重な作品である。巻末附録として1999年から2023年までのプーチンの主要論文・演説の全訳と、2022年のゼレンスキー大統領による日本・アメリカ・イギリス国会演説の全訳を収録。
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Posted by ブクログ
ロシアによるウクライナへの侵攻は、国際法上はもちろん、許される事ではない。
しかしこの侵攻についてロシアからの視点で見た場合についての解説は、納得できる部分はある。
そして経済制裁を科されてても、ロシアが戦争を継続できる理由や、ウクライナの実態、そしてこの戦争の本質について、本書を通して理解できたと同時に、この戦争に対しては暗い結果しか想像できない。
プーチンは凄い。
そして恐ろしい。
Posted by ブクログ
ロシアに関することは佐藤優さんに聞くのが一番信用できると思っている。
ウクライナ戦争については、いろんな人が様々な意見を述べているが、佐藤優さんの意見はメディアでは聞かない。
最近ではマスコミがイスラエル戦争の報道に一斉にシフトしてしまい、ウクライナ情勢は報じられなくなっている。
なぜウクライナ戦争が起こっているのか一度理解を深めようと思っていた。
ロシアとの関係については、日本では北方領土問題が永続的に未解決のままで進展はない。
中国と香港の関係はご存じのとおりだし、中国と台湾の関係はロシアとクリミア半島の関係に似ていると感じていた。
だが、本書を読んで、日本とロシアの北方領土問題、中国と台湾の関係は、ロシアとクリミア半島(ウクライナの南東部)の関係とは全く違うことがわかった。
これまで「ロシアの論理は危険」と決めつけ、「ロシアは悪」と何でも否定していた態度を一度改めて、ロシアに対する理解を深めることは大事だ。
プーチンだけでなくロシアの人達の思想を知らずに非難ばかりしていても解決に至らない。
これまでの歴史を見直すと、ウクライナにも相当の卑劣な行為があり、ロシアを怒らす原因を作っている。
プーチン・ロシアが一方的に悪く、ウクライナが可哀そうという(設定に固執した)日本のマスメディアの報道姿勢も問題だ。
日本の有識者のコメントや、報道内容に嘘も多いことがわかった。
西側諸国の都合や倫理観による、事実にもとづかない誤った情報が真実のように伝えられている。
本書を読む前は、現在ロシアが支配しているウクライナ領土を全て奪回せずに戦争終結はないと思っていた。
米独を中心とする西側諸国がもっと援助して、ウクライナからロシア兵を早く追い出せと思っていた。
しかし本書を読み終わった今は、早く終戦(停戦?)合意をするのが良いだろうという考えに変った。
とはいえ現実には、停戦に導く指導者は何処にもいない。
ロシアに停戦の提案をしたイスラエルが内戦をはじめちゃったし、人災以外の天災も多いし、地球はいい状態じゃないね。
Posted by ブクログ
知の巨人2人のロシア分析対談集。ウクライナ戦争の薄っぺらで、上っ面だけ舐めてるメディア報道に冷や水を浴びせる評論に、改めて蒙を啓かれた。佐藤氏のロシア関係評論はほぼ読んでるので新味がない箇所もあるが、2章の7本の論文・演説からプーチンの思考回路を読み解く150頁強は必読箇所だ。プーチンばかりでなくロシアとしての歴史的経緯からの思考回路とウクライナとの関係性が、驚くほどよくわかる。戦争が一日でも早く終結するためには、当事国の偏見のない分析が絶対的に必要で、その分析に基づく落としどころをいち早く提案できる被爆国・日本であってほしいものだ。そのためには、佐藤氏のような超一流のロシア通が育つことが急務。
Posted by ブクログ
読み始めた時は、鬼ヶ島の子守唄を思い出した。
「お母さん怖いよ、桃太郎が来るよ」
昔話の英雄も見方を変えれば侵略者。
読み進める内にそんな単純な話じゃないって事は理解したけど。侵略行為、軍事行為は決して許される事ではないけれど、ロシアにも言い分はある、アメリカを筆頭とする西側諸国の振舞いに配慮が足りない部分はあった、何よりコミュニケーションが成立していない、そんな事は理解したと思う。
公式ホームページに原文が掲載されているから誰でも当たれる、って言うけど、読むのも理解するのも大変。背景まで理解して解説してもらっても充分に理解出来る自信はない。報道してる側でチェックしてるもんだとばっかり思ってたけど、そうでもないのね。
「グローバリゼーション」と呼ばれるものは普遍的価値観ではなく、アメリカにとって都合がいいゲームのルールに過ぎない
西側にいてロシアやそれ以外の国の立場を理解しようとするのは、地球にいながら地動説を理解するのが難しかった中世の民衆と同じくらい難しいかもしれない、という事を肝に銘じつつ、せめてこういった良書に当たっていく努力は惜しまずにいようと思う。
関係ないがトルコ、という国にとても興味を持った。海難事故の救助活動をきっかけに親日感情を持って下さっているという彼の国は、外交の場でとても存在感があるイメージ。トルコの事も知りたくなった。