【感想・ネタバレ】野中広務 差別と権力のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年08月25日

野中広務は、1925年10月に生まれ、2018年1月に、87歳で亡くなった自民党の政治家。被差別部落出身で、大学教育も受けていない。町議会議員から政治家のキャリアをスタートさせ、最後は国会議員・大臣まで昇りつめた、たたき上げの政治家である。2000年の自民党総裁選挙で、野中の推す橋本龍太郎が、小泉信...続きを読む一郎に大敗を喫し、政治的影響力をなくす。2003年に引退宣言をし、政治の表舞台から姿を消した。
本書は、そのような経歴を持つ野中広務の評伝である。
普通の評伝と異なるのは、筆者が評伝を書くことに対して野中の了解を得ていないことだ。逆に、本作品の月刊誌への連載が始まった頃、筆者は野中から抗議を受けたことを、本書中に記している。
野中広務が、自民党の中枢で仕事を始めた頃から、日本の政治は大きく動き始める。長年続いた自民党政治が終止符をうち、細川連立政権が成立する。羽田首相を挟んで、自民党が巻き返し、自民党と社会党という当時考えられなかった連立が成立し、社会党の村山委員長が首相に就任する。その後、橋本・小渕・森と繋がった後の総裁選挙で、上記の通り、橋本が小泉に敗れ、野中の影響力は急速に衰えるのである。

本書は、色々な読み方が出来る。
自民党、あるいは、広く、日本の政治の歴史、あるいは、日本の政治家の暗闘の歴史の物語として読むことが出来る。京都府の革新府政との闘い・部落解放同盟等の被差別部落関連の政治との関係・田中角栄との関係・公明党との関係、等、野中が関わった政治家や政治団体の物語も知ることが出来る。
また、評伝なので当然であるが、政治家・野中広務の物語としても抜群に面白い。野中が様々な闘いを勝ち抜きながら立身出世していく様子、最後には野中自身の政治家としての限界により挫折してしまう、その様子。

上記した通り、本書を書くことを筆者は対象である野中広務から了解を得ていない。従って、取材は書籍・資料、あるいは、関係者へのインタビューによってなされている。膨大な取材量を、このような物語とした筆者の力量にも驚く。

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Posted by ブクログ 2022年05月03日

被差別部落に関する人達への直当たり取材ができていることが素晴らしい。さぞ骨が折れた事と思う。野中氏本人はほとんど語っていないのは致し方ないのか。
解放運動、とざっくり認知していたが、その中にも解放運動と融和、共産党がらみなど、スタンスの違いがあることが知れた。
その中を巧みに泳ぐ政治家としての野中氏...続きを読むの、ゆらぐように見える政治理念の精神的背景が想像できて、とても興味深かった。
自分の信念を体現する手段として政治活動があり、政治理念が一貫することがないのは当然とも言える。それを本人も自覚している所が、彼の懐の深さだと思う。
これらのゆらぎを踏まえても、地力の強さは今の政治家の何人分以上であることは間違いない。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年10月23日

10年前に買ったのを、今になって読む気になりました。野中さん、すごい人だった。
大物政治家がバンバン出てきて政治史を知る上でも面白いし、被差別部落史としても興味深いし、野中さんかっけー。田中角栄なんて「悪の権化」みたいな印象持たされてたけど、地元の人や民衆にとってはありがたい政策をやってきた人なんだ...続きを読むね。金のある時代だからできた政治手腕だろうとは思うけど。

あとがきに「彼の引退は(中略)平和と繁栄を志向してきた戦後の終焉を象徴する出来事だった。新たな時代には平等と平和の四文字はない。」とあり、文庫が出て10年後の今、確かにそんな世の中になっていてゾッとする。

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Posted by ブクログ 2017年05月07日

野中広務氏の政治家引退までを描いたノンフィクション。
この本を読んで、野中広務氏の見方が180°変わりました。
究極の叩き上げ人生ですね。
逆に究極の実践力がないと、ここまでのし上がることは出来ない。
鈴木宗男氏が、頭に浮かびました。
もちろん、全く出自が正反対の麻生太郎氏とは所詮水と油。
著者の綿...続きを読む密な取材力には舌を巻きましたが、巻末の佐高信氏の解説を読んで、ジャーナリズムの道徳観というものについて、考えられさせられました。
本人や血縁者の意向に関わらず、結果として暴かれてしまうということの意味を。
そういう意味で、今回は野中広務氏の肩を持ちたいと思います。
でも著者をけして全否定している訳ではないです。
そして、我々読者にも、一定の品位や謙虚な心が必要だという事も改めて感じました。
いろいろな意味で、得ることが大きかった読書でした。

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Posted by ブクログ 2014年06月05日

1990年代前半、私は永田町界隈が仕事場でした。その間、多くの政治家と接する機会がありました。そうした中で、最も印象に残っている政治家が野中広務氏です。当時、彼は年齢こそ60歳を超えていましたが、当選回数は2-3回。まだ陣笠、その他大勢の1人、というポジションだったのですが、既に永田町周辺居住者の間...続きを読むでは一目置かれる存在になっていました。
それは彼の情報収集能力の高さが大きな理由だったように思えます。下手な党幹部、派閥幹部に接触するよりも、彼と話をした方が有益な情報が得られました。彼の情報の扱い方のうまさもあったと思います。
そうやって接する機会が増えるほどに、人間的魅力も感じるようになりました。優しさとか思いやりとか、一面的なものではなく、人間的な深みを感じることがよくありました。
今回、本書を読み、様々な思いが去来しました。著者の魚住氏の分析は正確だと思います。政治家として功利的な面もあり、恫喝的な手法で政局を回していったことも確かです。
また、政策的課題をこなすことは得意でも、長期的ビジョンを構築することはできない、というとらえ方もその通りだと思います。
ただ、私にとっては、やはり非常に魅力的な人物でした。
記述に関して言えば、野中氏を軸に描かれた政界の動きの記述は、非常にわかりやすく、正確でした。(時折、政治家を取り上げた書物でも、書いた本人が正確にわかっていないのか、政策や政局の記述が非常に生硬で分かりにくいものもあります)
私が野中氏に接していたのは3年間ほどでしたが、いまだに印象深い政治家です。その野中氏の出自も含めて、政治家としての行動原理を解き明かし、さらに人としての思いにまで踏み込んで描いた本書は、ノンフィクションとして多くの人に読まれるべき傑作だと思います。

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Posted by ブクログ 2013年11月27日

先日、これを読んでいたおかげで面白い機会に出会ったので二度目の読み返し。とにかくやはりこれは面白い。政策的にとか歴史的にどうかというのはまあそこまでなのかもしれないが、ドラマとしては素晴らしいなあと思う。

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Posted by ブクログ 2011年11月06日

イマドキ、野中さんですか?という感じだけれど
これがどうして、とても面白い。野中さん自体は過去の人でもあるが、
今、議会で跳梁跋扈している人の名前も多数。
(特に小沢一郎の動きは中盤の見どころですね)
(あと、小渕が想像以上にかわゆい)

今読んでも、日本議会の流れ、についていくらかの視野を与えてく...続きを読むれる。

時局上の問題だけでなく、
この本はあるタイプの政治家についての示唆も行っており、
野中のような媒介タイプの政治家の威力と限界を検証しているものとなっている。
(とはいえ、そのような道筋でしか、彼は出自の問題故に政治家たりえなかっただろう)

総じて、ネタとして面白く、かつ時期を過ぎても
政治についての思考材料として十分耐用に足るものだと言える。

ただ、正直に言えば最後の対談で
「野中がこの本を不快に思いつつ、訴えれば勝てるだろうに訴えないことが、この本の内容を保証し、彼が一流であることを証だてる」
という内容のことを言っているがこの内容は文章にして書くのは厭らしすぎる。

この佐藤という男はおそらく魚住君より下品である。

そして、最後に佐高君という先輩的な人物が
解説という名前の要約を書いているが、しがらみというしがらみは
議院などとは関係なく、社会のすみずみにあるということを証明している。

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Posted by ブクログ 2011年06月11日

これは力作!
政敵を葬るためには共産党も利用する、権力闘争とは何かがわかる本。部落差別の歴史もわかりやすく解説されている。

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Posted by ブクログ 2011年05月17日

政治家人生の後期(晩年?)しか知らなかったし、テレビを通しての印象としては権力を笠に着たたぬきジジイという印象だったのが、少し変わった。

出自への同情ではなく、上り詰めるというあくなき執着は一般の社会人に置き換えれば「向上心」とも言えると思う。ただし、その手段が何でもあり、ポリシーも一貫してない、...続きを読むというところにやはりずるさ、汚さを感じてしまう。

政治家としては基盤をもたない中フィクサー的役割を演じられたすごさと最終的にはよりどころがない故に足元ををすくわれて賞味期限が来てしまったというわかりやすい話だった。

手法、目的の是非はあれば野中とか亀井とか古賀とかが暗躍しながら「推進力」と「実現力」があった時代の政治だったらいまの原発対応はどうなったのかはちょっと興味がある。

そして、著者の魚住さんはノンフィクション作家としてはやはりピカイチだと思う。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

このルポの凄いところは、「抵抗勢力」「闇将軍」「影の首相」と呼ばれた野中広務を丸裸にしている点だ。あんな強面の政治家がまさか部落出身者であるとは。田中角栄をミニ版にした感じの、政治の舵取りがとてもよく理解できた。両者に共通するのは、金作りのうまさ・多数派工作の巧みさ、そして意外ことに、と言うよりも、...続きを読む両者の出自から当然のことだが、弱者に対する優しさがある。この作品の中でハンセン病患者たちの厚い信頼が紹介されているが、小泉政権がやったかのように思えた政府の方向転換も、野中氏の仕事を小泉が美味しい処取りしただけだった。よく考えたら、小泉や安倍のように出自の良い二世・三世首相はもともと権力側なので,何でも思い通りが当然の政治家たちなのである。苦労が無い分、優しさも無いということか。ただ如何せん野中氏は田中角栄と違い、政治の方向性・理想型・ビジョンが無かったのが悔やまれる。
(日頃は威勢が良いことばかり言うが)麻生太郎のような出自の良い政治家には、偽物のニオイがぷんぷんする。口先だけの「国民」「政治」「国家」。この本は野中広務という土着な、いかにも日本を体現する一人の政治家を追いかけるとともに、政治のありよう、国家の品格、真に国民中心の政治のまだまだ遠いことを知らせる一冊である。文庫版には元外務官僚の佐藤優氏と筆者の対談が収録されていてお奨めである。

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Posted by ブクログ 2023年10月13日

部落出身の為政者、野中広務の政治動向はイデオロギーよりも政局に注視する。ある時は弱者救済に力を入れ、ある時は政敵の凋落を画策するあまり弱者への視座をやり過ごす。そのバランスは果たして政治能力として一筋縄ではいかない。政(まつりごと)は本来弱者へ寄り添うことが必然であるのに権力という魔物が彼を含めて局...続きを読む面を狂わせる。だが、部落差別をなくすのが自身の政治生命だと語る老獪な為政者は今後この国に現れるのか、このままでは現在腐敗する政局を打破できないのではないかと嘆息する。

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Posted by ブクログ 2023年09月09日

自民党の代議士として強大な権力を持ちながら、小泉政権の誕生によってその力を削がれ、2003年に政界を引退した野中広務の生涯に迫ったルポルタージュ。

野中広務という政治家の背景として最も重要なのは、やはり被差別部落の出身であるという点である。本書では、そうした点も包み隠さずに書こうとしたことから、あ...続きを読むるときに野中広務本人に呼ばれ、彼の涙と共に著者はこう告げられる。

「君が部落のことを書いたことで、私の家族がどれほど辛い思いをしているか知っているのか。そうなることが分かっていて、書いたのか」

それくらいに、野中広務の出自に関する本書での調査は微に入っており、野中広務という人間の全体像が浮かび上がってくるかのような作品に仕上がっている。
どうしても世間のイメージというのは、権力を用いた老獪な政治家、というあまりポジティブではないものだと思うが、一方で弱者に対する優しさに溢れた一面も持ち合わせており、この二面性が本書を貫く通奏低音にもなっている。

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Posted by ブクログ 2021年11月22日

kotobaノンフ特集から。名前くらいしか知らなかった政治家の人物評伝。少なくともいま現在、”自民党”の響きにポジティブな印象は持ち得ないんだけど、それは歴史全てを否定したい感情ではなく、寧ろ第一政党を走り続ける舞台裏とかは、大いに興味あり。55年体制を俯瞰する書も手元にはあるんだけど、特定の人物に...続きを読むスポットを当てつつその歴史を総括する、みたいな本書の方が、より取っ掛かりやすいのでは、と思ってまず本書に当たることに。そしてその思惑は、まあ正解だったかな、と。本書は、戦後政治史としても良くまとまっていて、適度にビッグネームの名前も挙がってくるし、入門書としても機能するものだった。当人物については、差別に対し断固立ち向かう精神などは注目すべきものがあるけど、反面、沖縄問題とか国歌の法案とかについての姿勢は大いに疑問で、正直、良い印象は抱けんかった。でもそれについては、他の視点も必要かも。当然、別の同系統本にもあたっていこうと思います。

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Posted by ブクログ 2020年05月14日

部落差別問題を真正面から語ろうとすると、色々な壁にぶち当たってしまうのか、どうも本当に知りたいことを知れないというジレンマに陥る(そしてそれが場合によっては新たな差別を呼ぶ土壌にもなりうる)。

この本は政治家・野中広務氏のその政治家としての人生を描くことによってこのテーマに切り込んだ作品。イデオロ...続きを読むギーが先行せず、非常に考えさせることが多かった作品。途中、自民党内の政治のやり取りが続く場面は少々読みづらかったが、野中氏が政治家を引退する時、当時総務大臣だった麻生太郎氏に向けた発言は圧巻。この部分を読むだけでも部落差別問題を学ぶべき意義を理解できる。

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Posted by ブクログ 2021年08月08日

前半は野中氏の生い立ちについて書かれ、後半は権力を握っていく過程と最後について書かれている。自民党の権力史みたいな感じで思いのほか面白かった。今だったら考えられないような無茶苦茶なこともやっていたようだが、とにかくその行動力と相手を動かす能力に目が覚める思いがした。自分を含めて今の若者に一番欠けてい...続きを読むるものが野中氏にあるような気がする。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年06月23日

この本はいくつかに分けることが出来る。
「野中広務とはなんなのか」「政治(パワーゲーム)」の
2つに分かれ、実際のボリュームは後者となる。
ただ、終盤となり権力を失っていく時、野中広務という
人物が非常に色濃く映ってくる。
もともと野中広務のことは殆ど知らなかった。
自民党の、まさに裏で糸を引く人物...続きを読む、という存在だ。
だが実際のところは「調停役」にすぎない。
調停するために様々な情報を握る中で結果的に権力を
握っていくことになる。だが、この著者で何度かでる
メッセージとして「彼にイデオロギー、政策信念はない」
「そのためには平気に180度違うことを発言する」
である。野中広務は与えられた責任、役割を全力でこなし
ていくにすぎない。そして、自分でそれを理解している。
No2として支えていくことに強みを発揮するのだと。

野中広務という人物は、その手段に関しては好きには
なれないが、闘い続けた、その姿にどこか共感せざるを
得ない

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Posted by ブクログ 2014年05月19日

京都府園部町に生まれ、不当な差別を受けながら政治家としてのキャリアを歩み始め、57歳で中央政界に初進出し、自民党の黒幕としての地位を築くまでの、野中広務の生き様を追ったノンフィクションです。

不当な差別を受け続けてきたがゆえに、弱者に対する優しいまなざしを持つ反面、差別に抗して自分の居場所を切り開...続きを読むいてきたが故に、ライヴァルたちの弱みを握ってみずからの影響力を強めていく政治手法に長けていた、複雑な政治家の実像を、みごとに描いています。

また、高邁な理念を掲げる政治家ではなかったにしろ、土着的な共同体理念に根づいた優しさを体現していたという意味で、55年体制の終焉を象徴する政治家として野中広務を位置づけており、戦後政治史の一幕を見ることができたという意味でも、興味深く読みました。

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Posted by ブクログ 2013年06月05日

 被差別部落に生まれながら、老獪な政治手法を用い、内閣の中枢に登りつめ、「影の総理」とまで言われた野中広務の姿を描いた一冊。「潮目を読むこと」に長け、一貫した政治姿勢がないようにも見える野中には、弱者への優しいまなざしと差別の再生産を憎む気持ちがあった。
 野中はときに政敵を恫喝し、ときにトリッキー...続きを読むな手法を駆使しして政界を生き抜いてきた。その姿だけをみると、決して評価されるべき政治家ではないようにも思える。しかし、ハンセン病患者らによる裁判での国の控訴見送りは野中の尽力なくしてはあり得なかった。不当な差別を受け続けてきた野中の心には、弱者に対する思いやりと弱者を虐げる社会への強い憤りが生まれていたのだと思う。

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Posted by ブクログ 2011年11月24日

普段ノンフィクションなんか読みつけない人間をぐいぐいひきつけるこの文章力はピカイチ。
類稀なる力作だ。

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Posted by ブクログ 2011年05月18日

部落出身者なのに権力に食い込んだとうことぐらいしか知らなかったから、どんな人だったのかと思い読書。

かなりのボリュームだったから途中で終了。

 部落を黙らせることができる政治家として、部落出身だった野中広務は頭角を現してきた。
地方の主要産業は公共工事だと言われるが、企業献金の額と票の量によって...続きを読む公共事業を割り振るというあからさまな構図があり、それを当然としていた時代があったとうこと。
政治的能力とは、結局は金の流れを作ることなんだと実感したしだい。
そのやり方は泥臭くスマートじゃないけど、その根っこに勉強家で努力家という素質があったのだなと感心。
被差別階級に対する親身な暖かいまなざしは、被差別部落出身であるという出生を利用し成り上がってきた野中からすれば、至極当然の姿なのかもしれない。
権力の仕組みって普遍的なものなんだと勉強になりました。

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Posted by ブクログ 2010年10月14日

小渕政権の官房長官であり、自民党幹事長であったコワモテで老獪なイメージだった政治家野中広務。彼の出自について知ったのは、辛淑玉さんとの対談本である『差別と日本人』(角川oneテーマ21)で、その「いかにも老獪そうなニッポンの保守派政治家」といったイメージの一方、辛淑玉さんとの対談の中で語った、その人...続きを読む生を通しての差別との戦いに圧倒され、第四章は野中氏と辛淑玉さんの二人の言葉に、涙でページを繰る手も止まったガブ。今回、同書を貸した友人から、返礼のように(?)貸してもらったのが本書である。

対談本とは異なり、本書はプロのジャーナリストが綿密な取材と、巧みな構成によって紡ぎ出した、いわば現代政治史ノンフィクション(講談社ノンフィクション賞受賞作)、野中広務の政治家としての来し方を描くと同時に、ガブが実際に日々ニュースで見聞していたはずの、当時の政治の舞台裏を見せてくれた同時代の政治ルポでもあり、冒頭の数ページから最後まで、読者を引きつけてやまない
ノンフィクションの力作となっている。ここ数年取り替えひっかえ首相に就任した自民党総裁たちの誰よりも、日本の政治史にとって野中広務という政治家が残した足跡は大きく、私たち日本人に突きつけた「差別を生む構造」(それも古い時代そのままのものから、時代に合わせてバージョンアップしたものまで)をどうしたら解体していけるのか・・・という命題を考えさせられずにはいられない。

この本に興味を持った方には、上記の『差別と日本人』もぜひ併せて読んでいただきたい。

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Posted by ブクログ 2010年04月21日

被差別部落で生まれてから、市議、県議、副知事、国会議員と成り上がり「影の総理」と言われるまでの野中広務の半生。

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Posted by ブクログ 2009年12月14日

元共同通信社記者である著者による、講談社ノンフィクション賞受賞作。
被差別部落出身でありながら、様々な苦難にぶつかりながらも自民党の幹事長まで務めた野中広務という政治家について、その軌跡を赤裸々に綴ったノンフィクション作品。

野中自身も、この著書の出版にはかなり嫌な思いを持っていたようである。

...続きを読む野中広務といえば、ありとあらゆる権謀術数を駆使して権力を握ってきた印象が強いが、その出自のためか、反面弱者に対する慈しみの思いも強く持っていることがわかる。

部落問題という、腫れ物に触るようにして扱われてきた非常にデリケートなテーマ(私はそうは思っていないが)ではあるが、ジャーナリストとして中立的な観点から書かれており、ノンフィクションとして非常に秀逸である。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

一般社会の裏側に存在する権力社会と被差別社会
被差別社会の苛烈な環境で育ったことで身につけた裏側社会での生き方は、
同じく裏側社会である権力社会で生き抜く術となり、
野中を権力の中枢へと導いた、のかな
生々しい政治の世界が垣間見られる良書
ただし、権力者に認められるクダリがことごとく浅く、さらに裏側...続きを読むがあるのではと思ってしまう

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Posted by ブクログ 2011年09月03日

京都出身ということもあり、へえ、あの時はああだったのかと思うこともあり、おもしろかった。政治にそれほど詳しくないのだけれど、これを読むと、政治家は権力闘争や利権争いが本当に好きで、国のことや国民のことを考えてるのだろうか?と思ってしまう。しかし、野中氏には人のために社会を改革するという熱い部分と、狡...続きを読む猾な部分の両方があって、そこが本書の魅力であり、野中広務の魅力なのだろうと思う。

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