【感想・ネタバレ】国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年04月10日

佐藤優氏が逮捕勾留される事になった事件の回顧録。この本に初めて興味を持ったのは週刊新潮に連載されていた「頂上対決第182回」の対談相手が取り調べを行った元検事、西村尚芳氏だったからである。
事件当時、鈴木宗男議員と田中真紀子議員と佐藤優氏がTVニュースに映りまくり、良くは分からずとも何やら大変な事件...続きを読むが起こっており「外務省は悪い人たちのいるところだ」みたいな印象を子供ながらに抱いていた。ので、長らくきっと事件の弁明みたいな事が書いてあるのだろうくらいにしか思ってなかったのだが「悪い人」であるはずの佐藤氏の名前をアチラコチラで頻繁に目にすると、流石にこの認識は大分違うらしいと気にはなっていた。文章を読むと俗悪さの欠片もない。凄い。ではなぜこんな凄い人が捕まったのか。またなぜ評価をくれているのか。知りたくなった。

元外交官とは知りつつも、よもやここまで世界情勢が絡んでくるとは思わず、イスラエルの知識まで増えるとは思わなかった。事件のみならず現在を理解するうえでも大変役に立ったし、僅かな海外経験の肌感覚も記述と合致してかなり納得できた。
事件の専門的な細部までは分からないし、伏せられていることもあって全容では無い。ただ、私の実質識字率は5%からは少し上がったと思う。今後も上げ続けていかなければ。
「利害が激しく対立するときに、相手とソフトに話ができる人物は手強い」激しく同意。西村検事はずっと敵なのに、信用できる人。小説ならば胸熱なキャラだけど、実在する人で、20年後の対談でもそれは揺らがない。「国益」という言葉が多用されていたが、つまるところ、命がけで挑める何かがあるか。そんなものを持つ人は明治大正時代あたりで消えたと半ば本気で考えていたが、私の視野が狭窄だっただけだった。破廉恥事件ばかりに目が行くが、こんな真剣な大人たちがいてくれることに救われる想いがする。
『自壊する帝国』もあまり時間を開けずに読むつもりだし、今後氏の著作は極力読んでいきたい。

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Posted by ブクログ 2023年11月01日

知力を尽くした情報戦、そして、獄中での検察官との対峙、人間にとって、大切なのは、自分を保ちながら、筋を通すこと、そして相手を理解することで信頼関係を得ること
臨場感、細かい粒度、緻密な論理、意を尽くして事に当たれば、なんらかの道が開いていく、そんな思いを感じた書でした。

人間はまず内側から崩れる ...続きを読む決して自暴自棄になってはいけない 常に冷静さを失わないことだ

■外交

鈴木氏は類まれなる「地アタマ」をもった政治家であった
鈴木宗男氏はひとつの特徴があった。恐らく政治家としては欠陥なのだと思う。しかし、その欠陥が私には魅力だった。それは、鈴木氏が他人に対する恨みつらみの話をほとんどしないことだ。

何があっても取り乱してはならない と自分に言い聞かせた。

冷戦構造の崩壊を受けて、外務省内部でも、日米同盟を基調とする中で3つの潮流が形成されてくる
 1 日本はこれまで以上にアメリカとの同盟関係を強化する
 2 アジア主義、地理的にアジア国家であることをもう一度見直し、中国、アジア諸国と安定的な地位を得る
 3 地政学論

政治家は長時間待たせた客のことを決して忘れていたわけではない。内心では何時間も待たせて済まないと思っている。私は逆転の発想で、待ち時間が増えることはその政治家に対して貯金をしていることと考えるようにした。

鈴木邸を辞去するのは午前2時頃で、それからメモを整理し、その時、鈴木氏に依頼された資料を準備する。これが終わるとだいたい朝の4時近くになる。そして、午前9時には、鈴木氏に依頼された資料を届ける。
もちろん鈴木氏とのやりとりの概要は外務省の上司にも報告する。こんな毎日が続いた。

ロシュコフ次官が言う。「佐藤さんはたいへんな愛国者だ。僕たちも愛国者だから、タフネゴシエーターでも愛国者と尊敬するんだよ」

政治家にはスイッチがある。スイッチが入っていない時に、話をもっていっても政治家の頭には入らず、感情的あ反発を買うだけだ

ロシア人とは原理原則を大切にする相手とだけ真剣な取引をするのである

ナショナリズムには2つの特徴がある
 1 より過激な主張が正しい という特徴
 2 自国・自国民が他国・他国民から受けた痛みはいつまでも覚えているが、他国・他国民に対して与えた痛みは忘れてしまうという非対称的な認識構造をもつことである

ロシア人は、信頼する人にしか、お願いをしない

同じことでも言い方によって相手側の受け止め方は大きく異なる お前、うそをつくなよ といえばだれでもカチンとくるが、お互いに正直にやろう といえば、別に嫌な感じはしない、伝えたい内容は同じである

■国策捜査

日本の裁判の現状では黙秘は不利です。黙秘をすると裁判官の心証は「やった」ということになります。実態を話して最後まで否認することです。それをお勧めします

検事は官僚なので、組織の意志で動く。しかし検事も人間だ。この要素を無視してはならない

情報の世界では、第一印象をとても大切にする。人間には理屈で割り切れない世界があり、その残余を捉える能力が情報屋にとっては重要だ。それが印象なのである

クオータ化の原則;全体像に関する情報をもつ人を限定することである 檻の中にいる者には極力情報を与えず、檻の中から得る情報については弁護団だけが総合的情報をもつようにするという考えである

西村検事に対しては、本捜査に関して4点のこだわりを伝えた
 1 国益
 2 特殊情報に関することが外部に出ないようにすること
 3 チームメンバーにこれ以上の犠牲者を出さないこと
 4 私の事件を鈴木宗男氏逮捕の突破口にしないこと

私はプライドこそが情報屋の判断を誤らせる癌と考えている。別にプライドをかなぐり捨てて、大きな目的が達成できるならばそれでよい

自分の盟友を「犯罪者だ」となじり、自己の無罪主張をすることになれば、私と親しくする人々は私についてどう考えるであろうか

人数は少なくてもいい。ただし、ほんとうの友だちを失いたくない

性格だと思う。自分で納得できないとダメなんだ。

クロノロジー(日付順の箇条書きメモ)をつくってこい

情報は人につく

私の記憶術は映像方式だ。手帳のちょっとしたシミ、インクの色を変えること、文字の位置を変化することで記憶を再現する手がかりが得られる

外交に触れたばかりの政治家は極端な自国中心主義、排外主義的なナショナリズムに陥りやすいが、だいたいこれは一時的現象で、国際政治の現実に対する認識を深めると極端な自国中心的なナショナリズムが日本の国益を棄損するとの認識も強くもつようになる

談合というのは日本の文化なんで、絶対になくならないんです。本気で価格競争でたたき合ったら、会社ももたないし、それに手抜き工事が起きたりしてみんなが迷惑する

国家権力が本気になれば何でもできるのだ

目次
序章 「わが家」にて
第1章 逮捕前夜
第2章 田中眞紀子と鈴木宗男の闘い
第3章 作られた疑惑
第4章 「国策捜査」開始
第5章 「時代のけじめ」としての「国策捜査」
第6章 獄中から保釈、そして裁判闘争へ
あとがき
文庫版あとがき
解説 川上弘美

ISBN:9784101331713
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:560ページ
定価:850円(本体)
発売日:2007年11月01日発行
発売日:2008年04月25日7刷

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Posted by ブクログ 2023年05月12日

フィクションかと思うほど自分の生活からかけ離れた世界だった。
ロシアとかソ連に全然詳しくないから最初は読むのが苦しいけど、そこを乗り越えるとすごく面白いし、何より勉強になる。
北方領土辺りの情勢を知りたい人にはいい本ではなかろうか。
外交官って思っていたより何倍もタフで頭が良くてコミュニケーションが...続きを読む上手くないとやっていけないんだろうなと感じた。
ページ以上に中身のある本。

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Posted by ブクログ 2023年03月15日

面白かった!
この本から得られる知識は次の3つだろう。
1. 外交のやり方(日露外交について、細かく書かれている)
2. 国策捜査について(政治家の不正がどうやって明るみに出るのかわかる)
3. 拘置所の生活について(著者が勾留されていた時の話を書いている

どこも馴染みがない世界の話で、とても面白...続きを読むかった。
ただし、著者の主観で書かれているので、本書の内容を全て事実として信じるのは軽率な行動だと思うが。

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Posted by ブクログ 2022年05月14日

時折、本の内容などわからないまま、手に取ることがあります。そして、読んだ後に自分の予想を裏切る本に出会うことがあります。本書はまさにそんな一冊です。
著者が記す外務官僚のリアルや背負っている仕事内容、検察との闘いなど我々の仕事とも異なる独特な世界が広がっていました。
面白い一冊でした!オススメ!

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Posted by ブクログ 2022年04月27日

佐藤優さんの本はとても面白く、いくつか読んでことがあったのに、佐藤優さんとは何者なのか全く知らなかった。元外務省職員だったということすら知らなかったことに気づいて、この本を読むことにした。

内容は想像もしていなかった世界について書かれていて、国策捜査という概念があることも知ったし、絶対に争うことの...続きを読むできない国家権力の強大さに関係ないはずの自分でも背筋が凍る思いをした。
とはいえ、怖いマイナス面だけでなく、国益のために頑張っている役人たちがいることに嬉しくなったし、何よりも佐藤優さんの信念の強さや人と人との関係を大切にする人柄を知って、より好きになった。

もっと他の本も読みたいと思った。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年12月12日

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―(新潮文庫)2007/11/1

国策捜査は「時代のけじめ」をつけるためにおこなわれる
2019年6月22日記述

佐藤優氏による著作。
2007年11月1日発行。
単行本としては2005年3月新潮社より刊行された。
鈴木宗男氏にまつわる騒動で著者も逮捕され...続きを読むた。
もうかなり前のことではあるけれども、当時のニュース等を思い出す。
当時何が起きたのか、著者の体験を元に書かれている。
言わゆる経験者しか書き得ないものばかりで面白い。
今でも中央官庁や政治家と絡む仕事をするなら読んでおくときっと役に立つを思う。
一般人も東京拘置所とはどんな所か勉強になるだろう。

また当時熱狂的に支持された小泉内閣、特に田中真紀子氏がいかに国益を毀損する存在であったか・・・
反面教師にしなければいかない。
また当時TVを通じて田中氏に好意的な印象を持っていた自分を恥ずかしく思った。

印象に残った部分をあげていきたい。

強い者の方から与えられる恩恵を受けることは構わない。
しかし、自分より強い者に対してお願いをしてはダメだ。
そんなことをすると内側から自分が崩れる。
矯正収容所生活は結局のところ自分との闘いなんだよ。

ロシア共産党守旧派の政治家たちは、日本の自民党の政治家に似ている。
人間関係を大切にし、物事は何であれ事前に根回しする体質をもっていた。

外務省では、語学別に「スクール」というグループがあり、「スクール」を異にすると親しくなる機会はなかなかない。
親しくもない人間がなれなれしく話しかけてくるときには何か意図がある。

人間には学校の成績とは別に、本質的な頭の良さ、私の造語では「地アタマ」があるということを私はソ連崩壊前後のモスクワで体験を通じ確信するようになった。

鈴木宗男氏の魅力・・他人に対する恨みつらみの話をほとんどしないこと
裏返して言えば、このことは他人がもつ嫉妬心に鈴木氏が鈍感であるということだ。

公判の現状では黙秘は不利です。特に特捜事案では黙秘しない方がよいと思います。 
事実関係をきちんと話し、否認することです。

この事務官は経験不足なのか、自己陶酔癖があるのか、仕事に酔って興奮しているだけだ。こういう手合いはたいしたことはない。
過去の経験則から、私は利害が激しく対立するときに相手とソフトに話ができる人物は手強いとの印象を持っている。
その意味で、この検事の方は相当手強そうだ
→ 西村 尚芳 (にしむら ひさよし)

指印は黒色の朱肉で押す

日本という国の根本的な方針が、小泉政権の登場前と後では大きく変貌を遂げたというのが、私の分析である。
歴史を振り返った時、あの時が、ターニングポイントとなったという瞬間がある。
「小泉内閣の誕生」は日本にとってまさにそんな瞬間だったのではないだろうか。

組織内部に異なる潮流が存在するのはよくある現象であり、これが組織を活性化する基盤となることも少なくない。
そして同じ考えを持つ人同士がグループ、つまり派閥を作るというのもごく自然な現象である。
派閥があれば必ず抗争が生じ、それはまた必然的に人事と結びつく。
しかし、派閥の存在が肥大化すると、往々にして抗争自体が自己目的化しはじめることになる。
そうした動きを組織が抑えきらず、組織の目的追求に支障を来すようになった時、組織自体の存亡にかかわる危機となるのである。

能力がなくて、やる気があるのが、事態を紛糾させるのでいちばん悪い

日本人の実質識字率は5%だから、新聞は影響力を持たない。
ワイドショーと週刊誌の中吊り広告で物事は動いていく。

国際情報屋には、猟犬型と野良猫型がある。
猟犬型の情報屋は、ヒエラルキーの中で与えられた場所をよく守り、上司の命令を忠実に遂行する。
全体像がわからなくても危険な仕事に邁進する。
野良猫型は、たとえ与えられた命令でも、自分が心底納得し、自分なりの全体像を掴まないと決してリスクを引き受けない。
独立心が強く、癖がある。
しかし、難しい情報源に食い込んだり
通常の分析家に描けないような構図を見て取るのも野良猫型の情報屋である。

野良猫型だけだと組織は機能しなくなる。
猟犬型だけでは、組織が硬直と緊縮を起こし、応用問題に対応できなくなる。
結局、両方が必要なのである。全体として見れば、
国際情報屋は、猟犬型9割5分、野良猫型5分くらいに分かれる。

冷戦後存在した3つの外交潮流は一つに、すなわち「親米主義」に整理された。

日本人の排外主義的ナショナリズムが急速に強まった。
私が見るところ、ナショナリズムには2つの特徴がある。
第一は「より過激な主張が正しい」という特徴で、
もう一つは「自国・自国民が他国・他民族から受けた痛みはいつまでも覚えているが、他国・他国民に対して与えた痛みは忘れてしまう」という非対称的な認識構造である。
ナショナリズムが行き過ぎると国益を毀損することになる。
私には、現在の日本が危険なナショナリズム・スパイラルに入りつつあるように思える。

ロシア人は、信頼する人にしか「お願い」をしない。

そもそも外交の世界に純粋な人道支援など存在しない。
どの国も人道支援の名の下で自国の国益を推進しているのである。

日本の裁判の現状では黙秘は不利です。
黙秘をすると裁判官の心証は「やった」ということになります。

Ⅰ種職員は能力や性格に相当の問題がない限り大使ポストを保証されているが、
専門職員(ノンキャリア)で大使になる人は5%程度で、しかも中小国の大使だ。
大学で机を同じにし、能力的には
それ程違わなくても外務省内での出世街道は大きく異なる。
もっとも小国語の専門家として結構楽しく仕事をしている東大卒の専門職員もいるので、要はその人の価値観である。
私は1996年から2002年まで東京大学教養学部で「ユーラシア地域変動論」という科目を教えていたので、東大生気質はそれなりにわかっている
つもりである。ときどき「あえて外務省の専門職員になり、佐藤先生のように外交官と学者を両立させたい」という相談を受けたが
私は「東大生に関しては、ほとんどがⅠ種職員だからあえて違う道を選ぶことは勧めない。2つの世界に足をかえていても僕みたく両方とも中途半端になるから・・・・」と答えていた。

これは国策捜査なんだから。
あなたが捕まった理由は簡単。
あなたと鈴木宗男をつなげる事件を作るため。
国策捜査は「時代のけじめ」をつけるために必要なんです。
時代を転換するために、何か象徴的な事件を作り出して、それを断罪するのです。

評価の基準が変わるんだ。何かハードルが下がってくるんだ。

僕たち(検察)は適用基準を決められない。時々の一般国民の基準で適用基準は決めなくてはならない。

冤罪なんか作らない。
だいたい国策捜査の対象になる人は、その道の第一人者なんだ。
ちょっとした運命の歯車が違ったんで
塀の中に落ちただけで、歯車がきちんと噛み合っていれば、社会的成功者として称賛されていたんだ。
そういう人たちは、世間一般の基準からするとどこかで無理をしている。
だから揺さぶれば必ず何かでてくる。
そこに引っかけていくのが僕たちの仕事なんだ。
だから捕まえれば、必ず事件を仕上げる自信はある。

ナショナリズムには、いくつかの非合理的要因がある。
例えば、「自国、自民族の受けた痛みは強く感じ、いつまでも忘れないが、他国・他民族に対して与えた痛みについてはあまり強く感じず、またすぐに忘れてしまう」という認識の非対称的構造だ。
またもうひとつ特筆すべきは、
「より過激な主張が正しい」という法則である。

国際協調を考慮し、時には自国中心のナショナリズムを抑えることが日本の国益を増進することもある。
真に国を愛する政治家、外交官はこのことをよくわかっている。

31房の隣人=死刑囚坂口弘

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Posted by ブクログ 2021年05月04日

佐藤優、読めば読むほど興味をそそられる。それにしても、鈴木宗男事件、そして外務省の内部事情が垣間見られて興味深い。国家捜査にひっかかって運が悪いといって済まされる問題ではないと思うが、それを受け入れる佐藤優。本当に強く、頭がいい人だと思う。そんな人が書く文章だから、惹き込まれるしおもしろい。ここに出...続きを読むてくる人たちのその後がとても気になる。事件の真相は、2030年に関連文書が公開されることに明らかになるとのことで、それはとても楽しみだし、それに対して佐藤優に改めて書物に纏めるなどし、改めて総括してもらいたい。

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Posted by ブクログ 2021年02月27日

遅まきながら国策捜査というものの真髄を知った。当時の政治的社会的背景から見ることにより、あの事件はなんだったのかということも、遅まきながら理解した。

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Posted by ブクログ 2021年01月09日

今さらながら。
鈴木宗男氏と佐藤優氏については当時のワイドショーレベルの知識しかなく興味もなかった。
ふと対ロシア外交と佐藤優氏に興味があり読んでみたところ…
何だこの内容の濃さは、ほとんど小説ではないかと驚愕。いろんな驚きと学びが去来する異様な読者体験となった。
ロシア外交とインテリジェンスの世界...続きを読む、政争と国策操作、拘置所と刑事訴訟手続きなど、それぞれ1テーマで出せそうな内容が出るわ出るわ。しかも内容が具体的かつ理論構成が整理されているので、素人にも分かるように書かれている。
佐藤優氏の怪人ぶり(驚異的記憶力と博覧強記)とストイックな人生観に妙な感動を覚えます。
戦争と平和があるのではなく、戦争は外交の延長にあるのが現実なのであれば、安全保障、食料、エネルギーを海外に依存している日本にとって外交は生命線であるはずで、ロシアや中国といった強大かつ文化的共感のない敵性国家とどう付き合っていくかは死活問題と思われる。
氏の他著作を読んで勉強したい。

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Posted by ブクログ 2020年12月24日

鈴木宗男氏絡みの事件で実刑判決を下された、元外交官がその顛末を書いた本。

誰かからの指示で、国策捜査として鈴木宗男氏を逮捕することが決まり、それに捲き込まれてしまった著者。ちょっと信じがたいのだが、この本を読む限り恐らく事実だと思う。なんとも恐ろしい世界。

北方領土の返還を実現させるべく、高い知...続きを読む性と熱い情熱を持って仕事をされていた著者が、このような顛末になるとはなんともやるせない気持ちになる。

ロシア要人たちとの外交や拘置所ないでの生活など、知らない世界を知る意味でも面白い。

面白いしためになる、誰にでも一度は読んでもらいたい素晴らしい本でした。

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Posted by ブクログ 2020年08月24日

プライドは邪魔なので持たない。 
悪かった、悪かった、運が悪かった。
国民の雰囲気が罪を決める。

内容は言うまでもなく面白い。こんなすごい作家が元官僚で、しかもノンキャリアだったことに日本の官僚は凄いと思ったものだが、国策捜査の恐ろしさ、検察の取り調べ、留置所の生活を冷静な視点で描いているところも...続きを読む斬新であったし、ロシアとの北方領土問題についてもこんなに詳しく書かれたものは読んだことが無かった。それもそうで、条約交渉は外交機密のため、下手な事を書くと国益を毀損する恐れがあるので、ほとんどの人が書く事ができないのだ。著者によると情報(インテリジェンス)関係者から許しを得て詳しく書けない部分はありながらも、かなりわかり易く書かれているのだ。
 
 「国策捜査は時代のケジメ」確かに私にも振り返ってみると得体の知れない高揚感や嫌悪感を感じたことがある(小泉政権誕生や、ホリエモン騒動など…)。              
 初めて本書を読んだ時に著者の博覧強記に驚いたが、その後の作品を読む毎に、これがヨーロッパのエリートが持っているべき教養なのかと恐れのようなものを覚えた。
 キリスト教に基づいた教養というものは、私にはピンとこないし、哲学、語学、歴史もちょっと本を読んだくらいでは身につくものではない。きっと上流階級の方たちはそのような教養を身につけているのだろうが、こんなにさり気なく教養をまぶしてくる著者は一般家庭て、団地出身である。
本書を読み、興奮し、その後著者の本をかなり読み漁ったが底知れない知識に佐藤優さんとは凄いものだなと思い知らされた。
 

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Posted by ブクログ 2020年01月11日

ノンフィクションであり、当時の外交状況から拘留中の取り調べなど、詳細に書かれていてる。国策捜査の中で、著者が優先したことは日本の国益であり、そのためには自らを犠牲にし筋を通すところは尊敬に値する。外交官時代、日本の首相やロシアの官僚が認めた人物であったことは納得できる。

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Posted by ブクログ 2019年12月11日

面白い。
佐藤優氏の人生の岐路となった一冊。他の対談本などで語られているように、その後の人生を物書きとして生きる為に絶対にホームランを打たなければならなかった著者の渾身の一冊。ポイントは3点。
・ミクロとマクロの書き分けが絶妙。外交官の背景、ロシア外交の裏話などは詳細に、細かい罪状などはあっさりと読...続きを読む者を置いていかないようにペース配分が非常に練られており良い。
・小説的表現が秀逸。西村検事との掛け合いはドストエフスキーの罪と罰を彷彿とさせる会話劇で、非常に愉快。
・国策捜査は時代のけじめ、として本事件をまとめているが13年後の2019年を予言しているとしか思えない。この頃から新自由主義に舵を切った日本は格差拡大とナショナリズムに苦しんでいるように感じる。この時代に知識人はそこまで予見出来ていたのならば驚愕だ。しかし、本書を読み終えたときには当てずっぽうで買いているとは思えないだろう。

マイナス点としては、当時のニュースを知らない若い世代の人間が読んでもワイドショーも見ていないのでなんのことやら分からないが、本書は元々13年前の大人をターゲットにしているので仕方ないだろう。宗男ハウス、ググっちゃいましたよ、ネーミングセンスあるなぁ。

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Posted by ブクログ 2019年12月09日

【これは国策捜査なんだから】(文中より引用)

日本中が騒然とした「鈴木宗男事件」とはいったい何だったのか。「外務省のラスプーチン」と呼ばれ、自らも逮捕された人物が語る「国策捜査」の内幕とは......。著者は、本書で毎日出版文化賞特別賞を受賞した佐藤優。

本当に久しぶりに再読したのですが、国家権...続きを読む力というものを知る上でここまで優れた著作にはそうそう出会えないのではないかと思います。驚くべき情報量だけでなく、その一つひとつが濃密であることに驚かされるばかり。また何年かしたら戻ってきたい作品です。

行間から匂い立つものが凄まじい☆5つ

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Posted by ブクログ 2018年02月08日

2018.2.8
国策捜査の対象が何故鈴木宗男になったのかという考察が大変面白い。大きなパラダイスシフトのシンボリックとして、運悪く選ばれてしまった。このパラダイスシフトは、今にも連なる流れだ。自由主義経済と、ナショナリズム。そして、個人と国家をそれぞれ志向する両者は、実はベクトルが違う。これ、まさ...続きを読むに今にあてはまるのではないだろうか。

日露の北方領土問題は勉強になった。領土の帰属を解決するまで平和条約は締結しないと。国際ルールか。

北方領土にディーゼル発電機を供与することで、日本への依存を高めようとする戦略。ロシアとイスラエルの関係。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年01月10日

佐藤優氏が捕まるまでと逮捕された後の刑務所の実態が書かれている。外交官という仕事をより深く知ることができる良書であり、佐藤優氏を含めた外交官は相当な努力に加えて、官僚内の社内政治の中を生きてきたのだと知った。
鈴木宗男氏や田中真紀子氏について、当時のマスコミの報道から受けた印象とロシアの第一人者とし...続きを読むて活躍する鈴木氏では全く印象が違い、いかにマスコミが無能で事実を報道していないのか、その差に驚く。

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購入済み

感服

2017年08月17日

長い拘禁生活に耐えてかつ自分の信念を貫いた氏に感銘し尊敬する。
自分に置き換えても、とても我慢ができず耐えきれないだろう。

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Posted by ブクログ 2022年01月13日

当時は鈴木宗男さんが捕まったというニュースを見た記憶があるくらいで、田中眞紀子氏もモノマネでしか見ていないから、いろいろビックリした。
世の中の多くのものごとは、どんなに声が大きく聞こえても浅い話にすぎず、当事者が発信しないと伝わってこないものなのかもしれない。
あと地味にこの当時から日本の実質識字...続きを読む率5%という認識があったことに驚いた。

いつもなんでそんなによく覚えているんだろうと不思議だったが、記憶の定着のさせ方が出てきたのでなるほどとなった。でも私と認知特性が違うので全然真似できない芸当だったw

検事さんの様子から察するに、自己保身が当たり前の世界で、信念や長期的視野というものに出会う機会は少ないのかもしれない。
三権分立とは…と考えさせられる。
捕まるニュースのインパクトって大きいけど、誰が捕まったかより、判決結果や中身のほうが肝心なんだなぁ。
ちっちゃな視野で叩いた結果、自分の首を絞めている構図がえぐいなぁ…。

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Posted by ブクログ 2021年11月12日

佐藤氏を罠にはめたのは誰なのか?
それは存在のない国家ということか?
特定の誰かでは無い組織の意思というものがあるのかもしれないし
国策捜査なるものが、その組織の意思に沿って行われることがあるのかもしれない。
これに対して国益を第一に考え、敵対するものと対決し屈指なかった佐藤氏の強靭な心と知識、経験...続きを読む、人間力に尊敬の念を抱く。
鈴木宗男氏の著、闇権力の執行人を先に読んで疑問に思っていたことも、この本を合わせて読みことで納得のいく部分があった。
外交の複雑な事情や駆け引きは、難しくて理解にはほど遠いが、北方領土問題とはどんな問題があるのかなど、なんとなくではあるが分かった。
自分のスキルを大義のために使うのか、自己の利益に使うのかは、その人の魂のあるところに依るのであろうか。

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Posted by ブクログ 2021年03月21日

ロシア外交、鈴木宗男事件、田中真紀子外相の更迭、小泉政権下の「国策捜査」による佐藤氏の勾留。新聞やTVで報道されていることが真実とは限らない。鈴木宗男氏の印象は180度変わったほどだ。この本は、情報を鵜呑みにしてはいけない、よく観察しよく考えて、多面的に物事をみる事の大切さを教えてくれた。

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Posted by ブクログ 2019年01月08日

鈴木宗男と佐藤優は、ロシアを見ながら、日本の国益に忠義を尽くした人達だったと、初めて知った。ヤワな裁判懺悔録とは一線を画す佐藤優の獄中録。
拘置所での検察官との対話を通じて国策捜査を読者に教えてくれる。
自らの困難を客観的に著述できる著者の教養本は、今後も売れるはず。

佐藤優って、胡散臭い元外交官...続きを読むのオッさんでしょ?という人にはまず読んで欲しい作品である。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年01月20日

国策捜査がどう生まれどのように行われるかが良く分かる。後半の西村検察官とのやり取りがハイライト。
独特の風貌もあり何となく怖い人、悪い人という印象だったが一変。明晰な頭脳で国家の為に尽くした外交官であったのだろう。もちろん自身に有利なように書いている部分はあるのだろうが、それでも抜群の頭脳と豊富な知...続きを読む識量を持つことに疑いの余地はなく、こういう人を外交官から失ったのは明らかに国家の損失。現代の知の巨人。

・ナショナリズムには二つの特徴がある。第一は、「より過激な主張が正しい」という特徴で、もう一つは、「自国・自国民が他国・他民族から受けた痛みはいつまでも覚えているが、他国・他民族に対して与えた痛みは忘れてしまう」という非対称的な認識構造である。ナショナリズムが行き過ぎると国益を毀損することになる。
・国策捜査は時代のけじめをつけるために必要なんです。時代を転換するために、何か象徴的な事件を作り出して、それを断罪するのです。法律はもともとある中で、その適用基準が時代によって変わってくる。特に政治家に対する国策捜査の適用基準のハードルは驚くほど下がっている。適用基準を決めるのは検察ではなく一般国民が決めている。

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Posted by ブクログ 2018年11月09日

日露外交の発展のため、命を賭して戦った佐藤氏と鈴木宗男氏のドキュメンタリーである。国策捜査によって理不尽な獄中生活を送った佐藤氏が、情報分析官として、検察や外務省との当時の記録が具体的に残されている。
自身の信念を曲げず、国家権力と戦う佐藤氏の姿勢に感銘を受けるとともに、ひたむきに努力を続け、必死に...続きを読む生きる人には、次に進むためのステップが用意されているように感じた。

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Posted by ブクログ 2017年12月25日

国のために仕事してたのに、国策逮捕された著者の拘置所での話。検察官とのやり取りが興味深い。 検察官も著者がそれほど悪くないのは解ってるけど…ってのがやりきれない。 著者側の視点だし、機密もあるから全部が明らかになってるわけじゃないけど、一時期の鈴木宗男バッシングは完全に政府側にコントロールされた話だ...続きを読むったんだな、ってのが解る。 自分も何も知らないけど彼は悪い奴なんだって認識だったからな。一度鈴木宗男の著作も読みたいと思った。 ところで今の外交はそんな評判悪くないみたいだけど、著者の意見を聞いてみたい

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Posted by ブクログ 2017年08月20日

いかに官僚の世界が高度であり、一般人にはなかなか類推しがたいほど複雑に動いているかが分かった点でとても面白かった。
どれほど内容が正確かは確かめようがないが、ここまで詳細に状況を記述できる著者の記憶力と描写力に感動した。

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Posted by ブクログ 2017年07月01日

佐藤優氏の著作を多く読んでいるうちに、今更ではあるが原点の著書を読み返してみた。
外務省時代の彼の仕事ぶり、そして逮捕後の拘置所内での検察とのやりとりなど、非常に興味深い内容であった。
自分も当時はメディアの情報を丸呑みしていた者として恥ずかしく思った。彼ら(鈴木宗男氏や著者たち)がどれだけ真剣に日...続きを読む本そして北方領土問題を解決しようと奔走したのか、そしてそれを政治的な理由だけで検察に捉えられたしまったことがどれだけ今の日本にマイナスになっているのかを悔やまれてならない。
あれから数十年も経っているのに、このような本気で国のことを考えて奔走している人たちが政治に利用されることがないような仕組みを日本という国が作れていないことに恐怖さえ覚えた。
微力ながら時分ももっともっと知識をつけて、声を発していかなければいけないと考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2017年08月15日

 鈴木宗男氏が逮捕されたとき、テレビでもよく紹介された「ムネオハウス」 当時からなぜプレハブなのか不思議に思っていたのだが、謎が解けた。
 北方領土は実質的にはロシアが支配しているけれど、日本は日本の領土と主張しているから、恒常的で頑丈な物は建前上造れない、ということらしい。。
 宗夫は収賄で金儲け...続きを読むしているのに、こんなケチ臭いものしか造らないなんて、とんでもない守銭奴だ!と思っていたが、全然違う真相だった。


 そもそもテレビのワイドショー的なニュースにまんまと騙されていた自分は、鈴木宗男氏が悪い奴だと思い込んでいた。この本を読んで真相を知ってからは自分の馬鹿さ加減が嫌になった。
 鈴木宗男氏ほどロシアと日本の政治に通暁していた政治家はいない。それが田中真紀子というパフォーマーが外務大臣になったことにより、悪役にされてしまった。
 そしてワイドショーは二人の口論を面白おかしく報道する。それに洗脳された自分…つくづく腹立たしい。


 田中真紀子によってズタズタにされた外交政策は、さながら年々と積み上げられてきたジェンガが一瞬にして崩壊したようなもの。この暴君がいなければ北方領土問題ももっと進展していただろうに。小泉元首相が田中外相を更迭したのは正しい判断だった。


 それにしても国家が罪のない人を犯罪者に仕立てるなんて、戦前の話かと思ってたけど、今でもやることにびっくりした。


 感想ばかりで申し訳ないが、内容が盛りだくさん過ぎて要約なんてできそうにない。
 悪しからず。

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Posted by ブクログ 2018年10月14日

とても面白い。佐藤氏がこんなに頭脳明晰、深遠な思考力分析力の持ち主とは新聞報道だけ見ていたら決してわからなかった。文章力も素晴らしい。

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Posted by ブクログ 2019年06月13日

例の「ムネオさんの犯罪」辺りに連座して、背任、偽計業務妨害で起訴された著者である。

この本は、田中真紀子外相(当時;「外務省は伏魔殿発言」などで旧弊にクサビを打ち込む正義の味方に見えたっけ) vs ムネオさん戦争の裏事情や、北方領土を巡って、ソ連~ロシアとの間で水面下の交渉が進められていた頃の内幕...続きを読む、逮捕拘留されてからの検察官とのやりとりなどが迫真の筆致でえがかれている。

そして、外交とはどういうものか、検察とは(あるいは国策捜査とは)どういうものかについてアウトラインを教えてくれる。さらに、小泉政権を境に日本はいったいどう変わったのか?についても理解を与えてくれる。(それがつまり、傾斜配分:格差社会の始まりと、国際間協調ではないアメリカ偏重外交の始まりである)

たいへん感銘を受けた。

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Posted by ブクログ 2017年02月21日

恐らくは未だ口外できないことが多いのだろう、何故著者が逮捕されたのか、どのような力が働いたのか…言おうにも言えないもどかしさを感じた。あと、著者の恐ろしいまでの記憶力と再構築力には畏怖すら感じる。知性の構成要素で最も重要なのは記憶力だと思う。

この本で最も印象的なフレーズは「日本人の実質識字率は五...続きを読むパーセントだから、新聞は影響力を持たない。ワイドショーと週刊誌の中吊り広告で物事は動いていく」。

かといって「いや、俺は様々な情報をベースに世間を見ているぜ」というポーズをとる輩も危うい。そして、冷静なふりをしつつ、一方的な主張を繰り返す人間が最も危うい。

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