あらすじ
公安調査庁は謎に包まれた組織だ。日頃、どんな活動をしているのか、一般にはほとんど知られていない。それもそのはず。彼らの一級のインテリジェンスによって得られた情報は、官邸をはじめ他省庁に提供され活用されるからだ。つまり公安調査庁自身が表に出ることはない。日本最弱にして最小のインテリジェンス組織の真実を、インテリジェンスの巨人2人が炙り出した。本邦初の驚きの真実も明かされる。公安調査庁から目を離すな!
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Posted by ブクログ
「想像を絶するような事態を覚悟して備えておけ」
911同時テロや、福島原発事故を予測して対応する組織、それが、公安調査庁である。
公安調査庁は、国際的にも認知された第一級のインテリジェンス機関であること、公安調査庁でつよいのは、ヒューミント(人によるインテリジェンス)、とオシント(公開情報諜報)である。が結論です。
・インテリジェンスとは、国家が生き残るための選り抜かれた情報である。国家の舵取りを委ねられた政治リーダーは、彫琢し抜かれ、分析し抜かれたインテリジェンスを拠り所に、国家の針路を決める。
・米ソ両陣営は国際条約で生物化学兵器の製造使用が禁止されても、細菌・ウィルス兵器で襲われる事態に備えて、感染症の専門家を養成し、防護策を研究することをやめなかった。
・公安調査庁は、かつてオウム真理教が起こしたサリン事件を手掛けた経験を持ち、生物化学兵器に対する豊富な情報を蓄積している。世界の感染症とウィルスの専門家から貴重なヒューミント(人的情報収集)を集めて収集分析し政治の意思決定に貢献できる潜在力を秘めている。
・金正男身柄拘束事件は外交カードとして横田めぐみさん拉致被害者を取り戻せる可能性があった。
・サード・パーティー・ルール:情報機関というのは、基本的に自前でとってきた情報しか、横には流せない。
・相手国が嫌がる、出したがらない情報を入手するのが、インテリジェンス・オフィサーの仕事である。
・公安調査庁の職員すべてが、基本的に調査官。このためかなりフラットな組織である。
・公安調査庁には逮捕権がない。それは、警備公安警察とバッティングしてしまうから。第二警察となってしまう恐れがあったから。
・公安調査庁は、法務省の下部組織であり、そのトップは検事で、幹部クラスには、警察官もいる。
・国家のインテリジェンス活動におけるクライアントはただ一人。日本では、内閣総理大臣であり、アメリカでは大統領である。
・外国情勢も公安調査庁の対象となっている。もはや、外務省の選管事項という時代ではない。
・日本で問題を起こすかもしれない危険人物を、監視対象とみるだけでなく、逆に情報提供者として協力してもらえる存在と認識することが大切
・やがて母国に帰った時には、地道に情報の収集活動をしてもらえ、何らかの形で連絡してもらえれば、貴重な情報が入手できる。
・調査官は記憶力と再現力の訓練を徹底的にやっている。聞いた話を正確に記憶する訓練を徹底してやる。
・インテリジェンス・オフィサーに必要な言語力は、日本語である。語学力は、新聞を正確に読むことができニュース番組を聞いて理解できる。
・高度な言語力をもつ専門官をつくるためには、3000万から5000万が必要となる。
・AI全盛時代になっても、ひとの心の襞に分けて入っていく質の高いヒューミントは欠かせない。
・公安調査庁発足当初は、右翼が対象だったが、共産党、左翼が対象になっていく。
・日本の暗号技術が各段に進歩したのは、ポーランドの協力のおかげ。ソ連を仇敵にしてきたポーランドは親日。
・日本共産党と朝鮮労働党は、実は一体。日本国内をかく乱して、朝鮮半島を丸ごと共産化する意図。
・警察権をもっていないからこそ、人間関係を大切にして情報活動をやらざる得ない。こうした諜報技術、経験を軍から公安調査庁が引き継いだことは大きな意味があった。
目次は次の通りです。
まえがき
第1章 金正男暗殺事件の伏線を演じた「最弱の情報機関」
第2章 コロナ禍で「知られざる官庁」が担ったもの
第3章 あらためて、インテリジェンスとは何か?
第4章 「イスラム国」日本人戦闘員の誕生を阻止
第5章 そのDNAには、特高も陸軍中野学校もGHQも刻まれる
第6章 日本に必要な「情報機関」とは
あとがき
Posted by ブクログ
この二人の対談でハズレがあるわけなし。然もお題が「公安調査庁」。面白くないはずがない。お二人の博覧強記ぶりと経験に基づくあらゆる角度からの分析力は圧巻。共著を定期刊行してほしい程。
Posted by ブクログ
金正男暗殺の事件から公安調査庁の存在を掘り下げ、日本における諜報機関、諜報能力を解説する。それを対談形式で手嶋龍一と佐藤優が行うのだから、情報量、質ともに請け合い。やや手嶋が佐藤をラスプーチンラスプーチンと阿諛追従っぽく、相手が何にも言ってないのに過大解釈するような蒟蒻問答な雰囲気もあり、読者としてもその雰囲気に飲まれ、この人はもっと深い真相を知っているが、全てを明かしていないのでは、というムードになってくる。実力は間違いないのだろうが。
話題は諜報の対象としての共産党、外国人、ISIL、逮捕権などの諜報機能、各国の諜報機関などに膨らんでいく。どれもが面白いが、やはり本書では、北朝鮮に対する日本政府の諜報に絡めた動きの話が白眉。褒め言葉になるのか分からないが、週刊誌みたいである。
成田空港で金正男が拘束された2001年当時、金正男はディズニーランドに行きたかったみたいな報道があったと思うが、本当は何が目的だったのか。また、日本入国の情報は誰がどのように入手したのか。入手した情報を政府はどう使ったのか。あるいは、どう使うべきだったのか。
勉強になるし、前述の通り、週刊誌みたいで読み物としても面白かった。
Posted by ブクログ
公安調査庁が2001年5月の密入国事件で秘密裏に手柄を挙げていたというストーリーを皮切りに、公安調査庁の歴史や役割について手嶋さんと佐藤さんの議論形式で論を進めていく。
珠玉は、公安調査庁の歴史を紐解いた5章と方向性を論じた6章かなと。特に、6章において、情報機関への国会の監視、情報機関員の身分保証、情報機関のメディア戦略の必要性というところはとても説得力があった。前半は少しダラダラ長すぎる感あり。
Posted by ブクログ
公安調査庁は組織として小さいながらも、ヒューミントをはじめとした非常に優秀な情報収集能力をもった組織であることが分かる。
その他、日本のインテリジェンス組織についての知識を色々と得ることができた。
Posted by ブクログ
やはり世界の動きや流れを掴む上で参考になり、あまり知られていない公安調査庁というCIAやMI6のようなインテリジェンス機関の役割、それが日本に必要な機関であることが論じられている。
公安調査庁は戦後共産革命の阻止を目的に活動を行うも、そのノウハウと世界の変化から海外に重点を置き活動を行う。
北大生のISIL入国阻止は当時耳にしたことはあったが裏側を知れた。
Posted by ブクログ
「インテリジェンスオフィサーは語らず。」(p38)
これは人の身体のシステムも同じでしょうね。健康な時にお腹も歯も存在を忘れているがしっかりと機能してくれているわけで巣から。ところが、一度不調になると痛くなり気になって、不調な時ほど主張は激しくなっていき仕事が手につかない、勉強が手につかない。そんな経験は誰しもありますよね。
縁の下の力持ちほど目立たないですが、機能はしっかりしていることを私たちは意識しておかないといけません。主張がないということで良い組織でも理解のないアホな議員は人気取りのために予算を削ろうとしてしまったりします。杉を植えると助成金が出たりしますし、他に削るところはあるのにです。
最近田中角栄のご息女を見かけなくなった理由が本書を読むとよくわかります。二世議員に期待はしない方が良いというのも痛感します。そして、官僚システムは大臣次第でかなり機能が落ちることもよく理解できます。本来の仕事ができなくなるんですね。煩いだけで、仕事ができない上司ができると割りを食うのは下の人。困ったもんです。
日本には複数のインテリジェンス機関があるようですが、我々はそれぞれを詳しく知りません。公安はその中でもとりわけ少数で、精鋭ぞろいのようです。
外務省の領分で機能不全が起きていた当時、公安は金正男入国の情報をキャッチしていたようで、ちゃんと他の組織にも情報をシェアしたにも関わらず、当時の外務大臣はパニックをおこしたゴジラのように暴れるだけで的確な対応を取らず、好カードをみすみす捨ててしまった実情に、本書二人の言葉から残念さより怒りすら感じてしまいました。
そーいえば「このハゲー」のおばさん議員も、「私の人気を落としたいのかー!!」と怒鳴り散らしていた音声が流出したけれども、小泉元総理の初期人気はマキコ人気だったのが諸悪の根源だったのかもしれません。そうなると、そろそろ私たち有権者も人気があるより政策とそれを本当に実行できるか具体的な施策を持っているのか、そういうところを丁寧に見ておく必要があるとも思いました。実現が不可能な話を平気で公約にならべたてて盛り上がる前に、人気だけで政治家になった人がのし上がってしまうと、どういう悲惨な結末になるのか本書を読んで私たちはよく理解をしておく必要があるでしょう。
また、よくある陰謀論などの「実は・・」「本当は・・・」みたいな真実は他にあるという話がネットに散見されますが、だいたいそういうのはフェイクと思っていいということも本書で指摘されています。OSintの分析を軽視してる人が多いからと佐藤さん手嶋さんともに見解は一致していて、むしろWebintとOSintの力をつけておくことで、フェイクニュースを弾く力を日頃から鍛えておくことを指摘します。僕自身もたまに知人に「新聞やテレビのニュースは騙してくる」というようなことを言う人がいるんですが、こう答えています。
「嘘くさいと思ったら自分で弾けばいいんじゃないの?騙してくるってわかってるなら疑いつつ、全部が嘘だったら新聞も商売にならないから事実と思うところを取捨選択するくらいに思っておいて、それで変なニュースには引っかからないと思うよ。あとは別の新聞をいくつか気になったところだけでいいから読み比べてみるとか。」
本や雑誌も組み合わせると嘘をオープンソースを扱うメディアが維持し続けるのはそれこそ不要なコストが膨大になっていくので、ネットにしか真実がないみたいなことを言うのは如何なものかと思います。個人的にはそう言う人の話は聞かないようにしていますw当人が最新のニュースと思っていても噂話に引っかかってるだけって言うパターンが多いので。。
こう言う地道な作業を丁寧にやったりその他必要なことを全てやって手に入れた情報から、必要な情報量を的確に適切なところに伝えているのが、公安のようですね。近未来の予測を精緻に行えているからこそ信頼を勝ち得るわけで、よく刑事ドラマで刑事が操作中に邪魔しにくるみたいな公安のイメージはそろそろ払拭した方がいいですね笑。とても失礼ww
もともとが敗戦後の治安悪化に伴い、共産主義革命の危険が出てきた時に、治安維持強化のためにできた組織の一つだったそうです。スパイゾルゲのエピソードを入れつつ本書はその辺も面白く解説してくれています。
その一方で、現在は対テロ組織にと、共産党や共産主義に傾倒する人たちよりも、テロリストは分かりづらい性質を持っているので、諜報活動をどこまで許すのかと言う問題にも触れていました。
この対象の変化に対して早急な対策法案を出す必要が政治家にはあること、そして私たち一般の人も対テロの危険を理解しどこまで許すべきなのか、そういった線引きを一人一人が理解した上で、政策の支持・不支持を考えるように促しているように感じました。諜報活動と人権侵害の問題はある種表裏なところがありますが、人権の問題は私たちが日常生活を安心して暮らせると言う前提があるのもまた事実でしょう。
諜報活動の規制をどうするかと言う政策が上がった時に、うわべの深イイ話程度で喚き散らす連中に引っ張られないよう、常日頃からしっかりとOSに触れて、自分が取り入れるニュースはどう言うものなのか基準を作って鍛えていく必要を感じます。
そのためにはどうニュースを読めばいいのか、どの程度の深読みが妥当で、どこで歩留まりをつけるか。二人は対談の中でそれを実践してくれている。
その一方で、アメリカの議員は秘密情報に対する自身の責任があり、表にリークすると言うことは滅多にない一方で、日本の議員はペラペラ喋るらしいです。こういった問題も加味しつつ有権者が投票すると言うことを考える上でも有益になる一冊でした。
Posted by ブクログ
日本のインテリジェンスの一角を担う、公安調査庁についての、論者二人の対談。
若い人は知らないかもしれない、キム兄さまの東京ディズニーランド来たけど捕まって、当時の外務大臣発狂事件の裏に、公安調査庁があったようだ。
その辺の、インテリジェンスの考え方、組織による対応の違い、で、あんなアホな結果になった顛末は面白かったが、あとはどうかね。
著者のお二方ともなんか胡散臭いと思っていて、インテリジェンス好きな叔父さんが、嬉しそうにお話ししてるのをただ本にした様にしか見えなかった。
残念。
Posted by ブクログ
インテリジェンスに造詣の深い二人による対談集。
インテリジェンスの手法に、「コリント」(諜報協力)、「ヒューミント」(人的情報収集)、「シギント」(通信傍受)、「オシント」(公開情報分析)、「ウェビント」(ネット分析)、「ヴィジント」(画像分析)などがあるという。
ビジネスにも使えそうだ。
Posted by ブクログ
【268冊目】手嶋龍一さんと佐藤優さんの対談形式で、公安調査庁が日本のインテリジェンス・コミュニティで中核的な役割を担っている・担っていくという内容の本。
とはいえ、公安調査庁の実績として述べられているのは、2001年の金正男入国事件と2014年の北大生シリア渡航未遂事件のみ。前者は、MI6が公安調査庁に事前情報をもたらしたんじゃないか?後者は、公安調査庁が間接的に警察に通報したんじゃないか?という話。とはいえ、佐藤さんの憶測という形で示されており、秘密の話だからハッキリ言えないとも解釈できるが、本当のことは知らないけど無理やり公安調査庁の手柄ってことにしてる、とも解釈可能……
そういうわけで、昔からある「公安調査庁解体論」を覆すだけの説得力ある議論にはなってない。
勉強になったのは、公安調査庁のルーツ。1945年9月の内務省調査部。それが内務省を警戒するGHQによって内務省ごと解体された後、1948年2月に法務庁特別審査局として生まれ変わった。これが公安調査庁の前身。当初、GHQが警戒するウルトラ・ナショナリズム、つまり極右を警戒対象としていたが、いわゆる1947年の「二・一ゼネスト」あたりを境目にして占領政策の転換が図られたこととともに、共産主義をその対象として変えていったとのこと。なるほど。