あらすじ
人々を幻惑した平成の毒婦。死刑で事件は終わらない! デブでブス。だが完璧な美肌と優雅な美声。魔力に魅せられ殺された男たち……。人は彼女を平成の毒婦と呼んだ。佐藤優との最新対談を緊急収録! 孤独な男たちを籠絡し殺人を重ねた木嶋佳苗の裁判に、著者は惹かれるように通い続けた。裁判でも拘置所でもなぜ彼女は自己表現を続けるのか。「週刊朝日」連載時から話題を呼んだ瞠目の傍聴記。
◎デブでブス。だが完璧な美肌と優雅な美声。魔力に魅せられ殺された男たち。人は彼女を平成の毒婦と呼んだ。佐藤優との最新対談を緊急収録!
◎私があの事件に強烈に惹かれ、囚われてしまったのはなぜなのか?―北原みのり
◎彼女をこの世界から抹殺し、この物語を終焉させてしまっていいのか?―佐藤優
◎孤独な男たちを籠絡し殺人を重ねた木嶋佳苗の裁判に、著者は惹かれるように通い続けた。裁判でも拘置所でもなぜ彼女は自己表現を続けるのか。死刑が確定した魔性の女の本性を、佐藤優との対話で更に掘り下げる。「週刊朝日」連載時から話題を呼んだ瞠目の傍聴記。(『毒婦。木嶋佳苗100日裁判傍聴記』を改題)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『なぜ、男たちは彼女の『毒牙』に次々とかかっていったのか?―』本書は「稀代の婚活詐欺師」「平成の毒婦」と呼ばれた木嶋被告の100日間にも及ぶ裁判の傍聴記録を筆者からの『女性からの目線』で綴った物です。
彼女の事件については朝や夜のニュース番組で断片的に少し知るくらいでありました。裁判のイラストでの木嶋佳苗の着ている服ですとか彼女の赤裸々なまでの『ヰタ・セクスアリス』についてですとか、『男性からお金をもらうのが、当たり前だと思っていました』などの発言を聞くくらいで、特に関心は払っていなかったのが正直なところでございました。
しかし、こうしてまとめられたものを読むと事件の裏にある男女の深い『業』といいますかなんと言うのか…。ノンフィクション作家の佐野眞一氏は『名前以外は全てがウソ』と切り捨てつつも『東電OLを超える存在』とうなっていた理由がなんとなく判るような気がしました。
事件のあらましは肉体と結婚をちらつかせて男たちから1億円以上もだまし取り、3人の男を練炭で殺害したとして死刑判決を受けた木嶋佳苗被告。本書は彼女の100日間の裁判の様子を傍聴した記録です。
「稀代の婚活詐欺師」「平成の毒婦」と呼ばれた木嶋被告とは、どんな人物なのか。それを同じ女性からの視点を軸として裁判の様子と彼女の故郷である北海道別海市への取材を重ねた上でかかれており、すらすと読めはするのですが、男女問わず誰かもが思っているであろう疑問『決して美人とはいえない容姿で、何人もの男を手玉に取れた理由』は結局わからずじまいでありました。
しかし、彼女に『籠絡』された男たちには同じ男として大いにシンパシーを感じつつも、まるで蟷螂の交尾よろしく『がんばって』いるオスを頭から食い殺すがごとく、自分の性をはじめとして料理のスキルからなにから使える武器は全て使い、『自分を大切にすることとはカネを出すことだ!』といわんばかりにキャッチセールスのクロージングのように自分と交際を迫る(お金を引き出す)手練手管の数々には、正直言って度肝を抜かれました。
さらに、北海道別海市に飛んで木嶋香苗被告家族及び18歳までの生育暦になると、『保守的で排他的で閉鎖的な環境』からなにが何でも抜け出したいという叫びにも似た欲求と家族や周囲との不協和音。そして早熟な彼女の『性』に関するうわさ…。
心底彼女は生まれ故郷が嫌いだったんだなと。そこから抜け出して二度とそこへ戻らないために自分の『性』を商品化して「デイ・トリッパー」よろしく男から男へ…。というなりふり構わない人生へと突入したのではなかろうか…。
彼女がとった手段に関して決して同調できませんが、おそらくはこういうことなんだろうなというのが現段階の彼女に対する『思い』です。
そして、驚いたのが『東電OL』のときもそうだったように彼女の生き方に『共感』を覚える女性が一定数存在してこと。これにはしばらくの間腕組みをして考え込まざるをえませんでした。本書の最後の方で、フェミニストで有名な上野千鶴子女史が彼女の事件を評して
『援交世代から思想が生まれると思っていた。生んだのは木嶋香苗だったのね』
とおっしゃっていたのがとても印象に残っております。
彼女の起こした事件は今後も繰り返し扱われると思いますが、彼女への理解は別として、この本にはぜひとも一度は資料としても目を通す価値はあるかと思われます。
※追記
本書は2017年9月13日、講談社より『佐藤優対談収録完全版 木嶋佳苗100日裁判傍聴記 (講談社文庫 き 63-2)』として文庫化されました。
Posted by ブクログ
この事件は、「よくある」結婚詐欺事件を超えている。
木嶋被告は相手からお金を引き出すだけでなく、次々と殺人を犯していく。
それも、愛ある手料理を振る舞い、まめにメッセージを送り、相手の心を魅了しながら…
連続殺人事件という点ではなく、「なぜこの女が?」という、被告の容姿や言動に注目して集まった。
だいぶ前の事件であり記憶が薄れていたが、本書を手に取り、事件を知った際に受けた衝撃が蘇った。
事件の詳細だけでなく、裁判における被告の言動や、開設していたブログの内容、子どもの頃の作文の内容や後から公開された手記についてなど、被告の人間性に迫る記録となっていて、大変興味深かった。
Posted by ブクログ
形容する言葉がみつからない。
そのヒトコトです。
「運命の人」に出会った、と思ったまさにその人に命を奪われることを、一方的に気の毒だとも思えなくなる瞬間があります。
男とは、女とは、寂しさとは、生きるとは・・・?、と、命と性について深く考えさせられる瞬間があります。
裁判傍聴を通じて、ごくごく少数の被告本人に「書き手として認められた」であろう著者が描く被告像。
心のそこからの「恐怖」を感じる本でもあります。
Posted by ブクログ
北原みのり『佐藤優対談収録完全版 木嶋佳苗100日裁判傍聴記』講談社文庫。
ムムムっ。ヤられた!読んでいて気付いたのだが、『毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記』を改題し、巻頭に佐藤優との対談を追加しただけではないか。
証拠が少ない中での死刑判決。男女の生臭い関係を背景にしたセンセーショナルな事件。
巻頭の対談はオマケ程度で、大したことがない。
女性コラムニストによる木嶋佳苗事件裁判の傍聴記録。週刊誌のゴシップ記事レベルのソフト・ルポルタージュといったところか。
本編では特に男達をセックスと嘘で騙し続けた木嶋佳苗の生々しい記述ばかりで、事件の核心に斬り込むこともなく、上辺だけしか描かれていない。
その点、真梨幸子さんによる解説は独自の視点から事件を客観的に分析しており、さすがだと思った。
Posted by ブクログ
婚活殺人事件と言われた裁判の傍聴記録。
状況証拠しかなく被告人は殺人については終始否認。
不審死は6件あったが自殺と判断され3件の殺人により死刑判決。
シリアルキラーと裁判所から判断された被告人であったが裁判中は冷静であった。