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幸福手配師パーカー・パイン
「あなたは幸福ですか? 幸福でないかたは、 パーカー・パイン氏にご相談ください」と新聞に広告を出し、この通りの文句を入れた名刺を持ち歩くパーカー・パイン氏。だがこれは慈善事業ではなく、正真正銘のビジネスなのだ。さまざまな悩みを抱えた人物が訪れる。氏はたちどころに核心をつく質問をして、直ちに処方箋を見つけて提案する。これこれの金額でいついつまでにあなたを幸福にしてあげますと言い切るのである。むろん前金でいただく。だがもし失敗すれば返金しますと申し添える。氏は有能な専属スタッフを使って、直ちに「幸福を手配する」…氏は有能な素人探偵でもある。 -
ABC殺人事件
ABCというイニシャルを記したいたずらのような手紙が探偵ポワロのところに届く。だが彼の不吉な予感どおり、アンドーバー(A)でタバコ屋の老婆アリス(A)が殺害される。勝ち誇るかのように第二の手紙はベクスヒル(B)での事件を予告し、カフェの給仕女ベッティ(B)の死体が海岸で見つかる。図に乗った犯人はチャーストン(C)での殺人を予告、ポワロや警察を嘲笑うかのようにカーマイケル卿(C)を殺害する。そして次はドンカスター(D)だ…すべての死体のかたわらにはABC社の時刻表が。無差別殺人を趣味とし、ポワロに特別な恨みをもつ者のしわざなのか? 灰色の頭脳は悩みに悩む。脂の乗りきった時期のクリスティの傑作。 -
ザ・ビッグ4
南米アルゼンチンの自分の農場から久しぶりにロンドンへ戻ってきたヘイスティングスは、なにはともあれ、まず旧友ポワロを訪問した。ところがなんと、ポワロはアメリカの石鹸王の依頼を受けて、ブラジルのリオへと旅立つところだった! そのときである。一人の憔悴した男が窓から寝室へとはいったのであろうか、ポワロの前にあらわれた。男は失語症にでもなったように「ファラウェイ街十四番地、エルキュール・ポワロ氏」としか言わない。だが医師のすすめで紙と鉛筆を渡すと、男は「4」という数字を12回も書きなぐった……国際犯罪組織を相手のアクションとサスペンス、ポワロの魅力全開の痛快編。 -
釣魚大全
幻の釣り指南書、釣り人の聖書といわれているウォルトンの「釣魚大全(ちょうぎょたいぜん)」の初版本の完訳。釣り特有のゆったりとした気分、それぞれの魚の棲み家と四季の生態にあわせた釣るための作戦と周到な準備――餌の用意、竿や仕掛けのこまごまとした準備と工夫――自分の苦労ばなし、自慢ばなしを人に聞かせたいという釣り人の生態まで、「自然のなかで遊ぶ楽しさ」を楽しく披瀝した名著。「300年以上も昔から私の手許まで流れ漂ってきた釣りの楽しみの情感、ああ、はるばると伝わって来たものだな、という気持ちだった」これは訳者の言葉である。 -
砂漠の反乱
第一次世界大戦中、中東の砂漠を舞台に対トルコ・ゲリラ戦を指導して「アラビアのロレンス」の異名をとったT・E・ロレンスの自伝。アラブ独立の大義をめざしながらの歓喜と懊悩をつづったこの回想録は、人間の内面のすぐれたヒューマン・ドキュメントでもある。原題は「智慧の七つの柱」。 -
里見八犬伝
ときは戦国。安房国(千葉県)を領する里見義実《よしざね》は安西景連《かげつら》に攻められる苦戦のなかで、たわむれに犬の八房《やつふさ》に向かい、「景連の首をとってくれば娘の伏姫《ふせひめ》を与えよう」といった。この冗談が現実となったばかりか、八房はほんとうに伏姫を欲しがる。伏姫は犬を殺そうとする父を制して、八房と一緒に出奔する。二年後、義実は娘の救出にむかい、犬と一緒にあやまって娘をも銃で撃ってしまう。伏姫は死ぬまぎわに妊娠していることを告げるが、けっして八房に身を汚されたことはないと誓い、身の潔白のあかしに切腹する…と、白煙があがり、伏姫の「仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌」の八字を彫った数珠が天空にのぼって光を放って飛び散った。その後、各地に八つの玉のそれぞれ一つを持った八人の犬士が生まれる。本巻には「仁の巻」と「義の巻」を収める。早くも四人の珠の所有者があきらかになる。 -
男の切れ味
先の見えない時代に、男はいつ、どこで、どんな形で、自分の「切れ味」を発揮すればいいのか。時代と四つに組んだ稀代の切れ者たちの生きざまを描いたノンフィクション。昭和を駆け抜けた作家、小堺昭三の「男論…先見力・着眼力・行動力の研究」。 -
青蛙堂鬼談
青蛙堂(せいあどう)主人から案内が来て、行ってみると、「実はこのような晩にわざわざお越しを願いましたのはほかでもございません。近頃わたくしは怪談に興味を持ちまして、ひそかに研究しております。つきましては一夕(いっせき)怪談会を催しまして、皆さまの御高話を是非拝聴いたしたいと存じておりましたところ、あたかもきょうは春の雪、怪談には雨の夜の方がふさわしいかとも存じましたが、雪の宵もまた興あることと考えまして、急に思いついてお呼び立て申したような次第でございます」ということで、一席ずつ怪談話を披露することに…綺堂の怪異談12編。 -
毒蛇
史上最も風変わりな探偵…それが本書に登場のネロ・ウルフである。1日にビールを6リットルちかくも飲み、フランス料理の専門シェフを雇うくらいグルメで大食、おかげでぶくぶくに太って、大好きな蘭を1万株も栽培する屋上に行くのも専用エレベーターの世話になる。つまり自分では動けず、完璧な安楽椅子探偵。指示を仰いで動き回るのは有能な助手のアーチーだ。本書は47作にものぼるシリーズ処女作で、むろん最高の出来という折り紙つきの作品。そもそも本書巻頭で、見知らぬイタリア女の不意の来訪を受けたのは、49の銘柄のビールを一本ずつ賞味しているときであった! -
ある詩人への挽歌
舞台は寒風吹きすさぶスコットランドの人里はなれたエルカニー城。そこの当主で異常な吝嗇家ラナルド・ガスリーが、クリスマスの朝に胸壁から墜死しているのが発見される。ガスリーはかなり前から死に瀕した詩人ウィリアム・ダンバーの「詩人への挽歌」を憑かれたように口ずさんでいるところを目撃され、近くの村ではもっぱら気がふれたという噂が流れていた……全体を圧倒するゴシック・ロマンの雰囲気のなかに展開する謎につぐ謎、そしてどんでん返し。いち早く江戸川乱歩が第一級の名作として紹介しながら、翻訳されなかった古典ミステリ期の代表作。最初の一章は少し堅苦しいが、その後、テンポは軽快になり、クライマックスまで一挙に読ませる。 -
オデュッセイア
トロイアの陥落後、帰路についたオデュッセウスは単眼巨人ポリュペモスの島に着く。仲間を食われたオデュッセウスはポリュペモスの目をえぐって脱出するが、ポリュペモスの父親、海神ポセイドンの怒りをかい、以後故郷へたどりつくまで10年間の長い放浪苦難をよぎなくされる。女神カリュプソによる7年の幽閉、人を豚に変える魔女キルケ、美しい歌声で誘惑するセイレネス、恐ろしい怪物スキュレとカリュプデスらとの遭遇と闘い、そしてようやくたどり着いた故郷イタケでは、妻ペネロペイアに言い寄り、その家を我が物顔に占拠利用するやくざな求婚者どもと闘わなければならなかった。 だが、オデュッセウスは単純な勇士、不撓の航海者にとどまらない。策士であり、高貴であると同時に残酷・貪欲な人物でもある。「オデュッセイア」はそうした意味でも「最初の小説」「最初のすぐれた冒険小説」の名にはじない。
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