献本御礼。
タイトルパッと見では、深海に纏わる知見が想起され、深海魚好きとしての興味が湧く。しかし、サブタイトルの"海底下"や"生命存在の限界"といった文言に触れ、自己理解の上を行く(この場合は下を行く、か?)ものと気付く。この時点で、本書に対する好奇が増す。
まず、プロローグで提示された、堆積層やらマリンスノーやらの図を見て、何となく小説"八月の銀の雪"を思い浮かべる。『そういえば、同作でも海底よりもっと深い、未知の世界が魅力的に描かれていたっけ』みたいな。全然本筋と関係ないけど。
そこから、宇宙開発と並行して進められた海洋掘削の歴史が書かれるんだけど、華々しい宇宙に比べると、何となく地味な印象。後半に書かれているように、そのイメージは間違っておらず、やっぱり開発費はだいぶ違うみたい。もったいない。
専門家ならではの見解だなって思えたのは、海底下微生物にしてみれば、地表の世界はエネルギー競争と自然淘汰が繰り返される世界で、全く穏やかでないと見えるかも、ってところ。どちらが幸せなんでしょ。
通読しての展望は、人類史上初のマントル到達は、大きなパラダイムシフトになるってこと。生命の起源としての微生物研究のみならず、資源開発とか地震対策とか、期待される方面は多岐にわたる。地学って、本当に学ぶ機会を逸し続けてきた分野だけど、今後は要注目だな。