ウィリアム・シェイクスピアのレビュー一覧
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福田恆存、小田島雄志の訳では読んでいたが、今回初めて松岡和子訳を読んだ。少し中だるみがあるし、変装すれば親兄弟でも分からなくなるのかといった突っ込みどころも多々あるが、やはりシェイクスピアの最高傑作はこの『リア王』で間違い無いだろう。途中経過がどうであれ、全ての希望が崩壊し、底なしの暗黒が世界を覆い尽くすかのごとき終盤のドラマチックさは、他の作品の比ではない。
あらためて胸を打たれるのは、グロスター伯爵の死がエドガーの口から伝えられるところ。その前にエドガーの作戦でグロスターが生きる意欲をわずかながらに取り戻し、親子が再び手を取り合う兆しを見せていただけに、死の場面すら描かれず、突然二度と会えない人になってしまった不条理さに胸が突き刺される。その不条理は、さらに壮大な形でリアとコーディリアのもとにも訪れる。本作の悲劇性は、登場人物がどん底から這い上がり、自らの過ちを認め、分厚い雲の隙間から光を見いだした瞬間に、その光が容赦なく叩きつぶされる点にある。『ハムレット』にせよ『ロミオとジュリエット』にせよ、ここまで用周到な残酷さは無い。
松岡和子の訳は相変わらずこなれていて実演向きなのだが、他の作品の訳に比べると微妙な体温の低さも感じる。あとがきで『リア王』に流れる女性嫌悪について書いていて、なるほどと納得したのだが、やはり彼女は根本的な部分で『リア王』という作品に共感しきれなかったのではなかろうか。また、この点を踏まえて黒澤明の映画『乱』を思い出すと、オリジナルに存在しない楓の方というキャラクターは、本作に流れる女性嫌悪のモチーフをより分かりやすい形で描いた、非常に優れた脚色だったのかもしれないとも思う。 -
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シェイクスピアで最も有名な戯曲。学生時代に読んで以来、久し振りに読み返してみた。
ハムレットのストーリーはよく知られていて、映画やオペラにもなっており、この戯曲について書かれた本も多い。初めて読んだ時は新鮮で面白かったが、改めて読んでみると話の展開にスピード感がなくて、イライラするような独白や会話が延々と続く感じがした。おそらくストーリーが判っているので、そう感じたのかもしれない。ハムレットは優柔不断で悩み多き王子で、様々な言葉でその時の気持ちを表現する。それが多くの箴言となり、欧米人がよく引用する。最も知られた”To be, or not to be, that is the question."という独白の言葉だが、これは学生の頃、「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」と習った記憶がある。小田島訳では、「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」となっている。確かに文脈から読むと、そのほうが自然でわかりやすいと思う。ちなみに以前読んだ彼のエッセイに、この一文の過去の翻訳が記載されていた。過去に遡ると、
昭和46年 木下順二訳「生き続ける、生き続けない、それが難しいところだ」
昭和43年 小津次郎訳「やる、やらぬ、それが問題だ」
昭和35年 三神勲訳 「生きる、死ぬ、それが問題だ」
昭和24年 市川三喜訳「生きるか、死ぬか、そこが問題なのだ」
昭和10年 坪内逍遥訳「世に在る、世に在らぬ、それが疑問じゃ」
明治27年 岩野泡鳴訳「死のか、死のまいか、一思案」
明治7年 イエロー・ヨコハマ・パンチ 「アリマス、アリマセン、アレハナンデスカ」
ハムレットの言葉は易しいが、訳すのが難しい。翻訳家の先人達の苦労が偲ばれる。ハムレットを読むと、少し自分が賢くなったような気がする。(気のせい?) -
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ネタバレ【本の内容】
裕福な貴婦人ポーシャへの恋に悩む友人のため、貿易商アントニオはユダヤ人高利貸しのシャイロックから借金をしてしまう。
担保は自身の肉1ポンド。
商船が難破し全財産を失ったアントニオに、シャイロックはあくまでも証文どおりでの返済を迫るのだが…。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
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「ブルータス、お前もか」で有名なカエサル暗殺。
タイトルはジュリアス・シーザーとなっているが、シーザーによる、ブルータスのための劇のように感じる。
『ハムレット』『マクベス』『オセロ―』『ロミオとジュリエット』など、シェイクスピアの悲劇はたくさんあるが、このジュリアス・シーザーはそれらとは一線を画する。
たしかに、役一人あたりの発言量は多い。それはどの悲劇でも大抵そうだ。だが、他の悲劇とは違って、ジュリアス・シーザーでは、すべての発言が重みをもって迫ってくる。歯切れのいい洒落や猥談は全くない。
そして、振る舞いによる対比が見られない。多くの悲劇では、身分が低い場合には、とことん猥雑な振る舞いで、悲劇に関わる人物の流麗さを際立たせていた。ところがそれがない。どの役も勇ましく、美しく、哀しい。
さらに、悲劇さも、偶然や神妙なものによってもたらされるのではなく、かなり人に密着して起こる。
シンプルなのに、でも他の作品にも劣らない、あふれるほどの悲劇。そんな感じ。
それにしても、ブルータスは、人間としてのシーザーを愛していたのではなく、ローマとしてのシーザーを愛していたのだと知る。キャスカをはじめとする、他の共謀者が人間シーザーを殺したのだとすれば、彼が殺したのは野心や独裁。
作戦からすれば、確かにブルータスのものは下等だ。だが、憎しみに駆られて殺したり、人民を盾に戦争をしたりということは、徳や正義を汚すことに他ならない。目先の生に囚われず、最も深遠なものを見つめていたのだから、彼の作戦は何よりも上等だ。
役割をすべて終えたからこそ、彼はその胸に剣を突き刺せた。見事なまでの幕引き。正義の人にもっともふさわしい最期であった。 -
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ネタバレ最初にこの本を手にとったときは、
てっきり、シーザーの暗殺で
すべてが終わると思っていました。
だけれども、ある意味いい意味で
裏切られることとなりましたね。
メインとしては、シーザーの信頼していた
ブルータスです。
彼は彼の怠惰さに
疑問を覚え、なすがままにシーザー暗殺へと
加担していくこととなります。
しかし、その後に待っていたのは
彼らの意図する事柄ではなかった、ということ。
そして、人を束ねる存在は
苦心をするものの、
それを享受する側の心は変わりやすい、
ということ。
それがアントニー側の人間の発言のくだり。
人とは何なのでしょうね。 -
Posted by ブクログ
【本の内容】
デンマーク王が急死し、王の弟クローディアスが王妃と結婚して王の座に就く。
悲しみに沈む王子ハムレットはある日、父の亡霊と会い、その死がクローディアスによる毒殺だと知る。
ハムレットは狂気を装い、復讐を誓うのだった…。
シェイクスピア四大悲劇、最大の問題作。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
シェイクスピアの4大悲劇の一つであり、多数の名台詞があるとされる『ハムレット』。戯曲ということもあり、非常にすらすらと読めますが、その真意はなかなか掴みづらい印象を受けました。
ハムレットの復讐は最終場面において成就しますが、それ以前にも殺せる機会があったにも関わらず、何故ずるずると自らの死を迎えるまで実行しなかったのでしょうか。「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ。」というように、ハムレットの心には不決断が渦巻いていて殆どの行動は極めて中途半端に終わっているように思えます。また、母である王妃に対する姿勢も曖昧模糊としており、ハムレットの本心が謎というベールに包まれていると感じました。
だからこそ、ハムレットやその他登場人物の心情を理解したくなるし、理解出来れば人間とは何かというテーゼの答えを知ることができるという点で評価が高く、是非実際に劇を見てみたい作品です。 -
Posted by ブクログ
さすがにシェイクスピア作品だけあって、非常におもしろかった。とくに「人肉裁判」の場面は白眉で、こういうロジックがあるのかと関心すらさせられた。しかし、いっぽうでたんなる喜劇としてみれない部分があることも事実である。シャイロックが一転窮地に追い込まれるシーンは、たしかに快哉を叫びたくなるし、実際舞台で観たら痛快このうえないと思う。しかし、人種差別的な要素も含まれており、シャイロックに対する同情の余地もすくなくない。たんなる喜劇とは違った深みがあり、そこもまたやはりシェイクスピアが書いた作品なのだと感じさせられる。喜劇をたんなる喜劇にしないところが、文学の文学たる所以なのだろう。