アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ミステリ―と言えないような作品も含まれている短編集。メダウォーによる「まえがき」や「あとがき」も、作品を理解するうえで参考になる。個人的には、風刺の利いた「孤独な神さま」が最も印象に残った。
「夢の家」
「白亜の美しい家」と「美しい女性」。「家」と「人間」の持つ類似点が示唆されている。外見と内面は違うこと、その違いは中に入る人、その人の気持ちの持ち方や病気に影響されることなど。内面をのぞくことの恐ろしさを感じさせる作品。
「名演技」
大女優の過去に気づいた男がそれをネタに揺すろうとする話。女優の持ち前の演技力が功を奏する。
「崖っぷち」
好きだった男性ジェラルドの妻が浮気をしていることを知ったことで起こる、クレアの心理的葛藤が描かれている。
「クリスマスの冒険」
「クリスマス・プディングの冒険」のもとになった話。子供たちがいたずらでポアロをかつごうとするが、実際に騙されたのは誰だったのか。
「孤独な神さま」
ファンタジックで風刺の利いた話。「孤独な神さま」に惹かれて博物館を訪れた男と女。やがて、二人は親しくなっていく。その二人の間をとりもった神さまが最後に見たものは何であったか。
「マン島の黄金」
実際に行われた宝探しの企画のヒントが小説中に盛り込まれているという異色作。ストーリー自体はありきたりで平凡。
「壁の中」
画家アラン、その妻イザベル、二人の娘の代母のジェインの心理的な三角関係。あとがきに書かれているように解釈の難しい話。ジェインはなぜイザベルにお金を渡していたのだろうか。アランの心を掴んでいたことの償いだったのだろうか。
「バグダッドの大櫃の謎」
「スペイン櫃の秘密」のもとになった話。犯人の仕組んだ罠はなかなか巧妙。ポアロの自意識過剰、自信満々の発言が印象的。
「光が消えぬかぎり」
恋人が戦死したと聞いて、裕福な男性と結婚したディアドリ。その恋人は実際は死んでおらず、再開する。ディアドリは裕福な今の暮らしと元恋人との愛のどちらを取るのか。ラストの場面の描写は曖昧で、作者の真意がよくわからなかった。
「クイン氏のティー・セット」
「謎のクイン氏」の番外編で、クイン氏はいつものようにサタースウェイトにヒントを与えるだけで去っていく。かって親交のあった家族に招待されたサタースウェイトはそのヒントを手掛かりに邪悪な企みを見抜く。 -
Posted by ブクログ
ネタバレやや長めの短編3作と短めの短編1作から成る短編集。
「死人の鏡」が、物語としては一番よくできていると思うが、真相に疑問箇所がある。個人的に一番面白いと感じたのは、最も短いが、見事なミスディレクションの「砂にかかれた三角形」。
「厩舎街の殺人」
プレンダーリース嬢が田舎から戻ってくると、同居人のアレン夫人が死んでおり、当初は自殺と思われたが、他殺を裏付けるような事実が次々と見つかる事件。ポアロが現場を見て気づいたことが真相に活かされている点は見事で、動機にも捻りがあり、アタッシュケースの謎も面白いが、真相はイマイチ切れ味に欠ける。
「謎の盗難事件」
機密事項である爆撃機設計図が盗まれ、ポアロが調査を依頼される話。ポアロは、犯行可能性と必然性から、犯人を推理する。女中の悲鳴、メイフィールド卿の目撃証言など、色々と話を膨らませているが、やや肩透かし気味の真相。
「砂にかかれた三角形」
周囲の男性を虜にする魔性の女を巡る三角関係。それが原因と見られる毒殺事件。そう思って読んでいると、最後に見事にうっちゃられる。
最後まで読むと、「手遅れにならないうちに島を離れろ」というゴールド夫人へのアドバイスや、「犯罪者には、自惚れという共通の悪い癖がある」というポアロの言葉には、深い意味が隠されていることがわかる。
「死人の鏡」
ゴア夫妻のエキセントリックな性格設定をはじめとする絶妙な人間関係の構築や、関係者の聞き込み調査を通じて次々と意外な事実が明らかになっていく過程、最後に明らかとなる意外な犯行動機など、クリスティーらしい技巧を感じさせる作品ではある。しかし、真相を複雑にしすぎたために、ややわかりにくく、また、犯人が仕掛けたトリックが手が込み過ぎていて、そんなにうまくいくのかなと逆に思ってしまった。
(ネタバレ)
銃声の偽装の方を多くの人間が聴いているのに、実際の銃声を誰も聴いていないというのは、不自然ではないだろうか。 -
Posted by ブクログ
古き良きエドワード王朝の面影を残すバートラム・ホテル。そのホテルでの偶然の再会が契機となって起きる殺人事件。殺人事件が起きるのは、小説の3分の2以上が過ぎてからであり、それまでは周辺で頻発する強盗事件、牧師の失踪事件、列車強盗事件の調査が中心となって、物語は展開される。
本事件でのマープルの役割は探偵ではなく、事件の重要な証言者。強盗事件の謎を追うデイビー主任警部らの警察の調査が中心の話。最後まで読むと、マープルの役割が何とも皮肉なのが印象的。
バートラム・ホテルという舞台やセジウィックという冒険好きの女性の人物造形は良くできているし、エルヴァイラが一時姿を隠して自分に関する謎を調査しようとした理由にも説得力がある。
殺人事件の真相には二重のひねりがあるが、強盗事件の背景にある真相は大掛かりすぎて、リアリティーに欠け、全体の印象を損なっている。