萩尾望都のレビュー一覧
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ネタバレ最近まとめて萩尾望都短編集を読んでいて感じるのは、一冊の中が統一されていないというか、バラエティがあるというか。
いや萩尾望都は似たテーマや似たモチーフを深化させる人だろうから、発表年が一冊の中でバラバラなので絵柄も語り口も様々に見える、ということなのだろうか。
しかしたとえば「半神」を読んで感銘を受けた入門期の人が、いい意味でも悪い意味でも玉石混淆の本を通読して、どう感じるんだろうか。
と要らぬ想像をしてしまう。
■半神 16p
若いころに衛星放送で野田秀樹が深津絵里主演で舞台化していて、漫画が至高なのに何で、と意地を張って見なかったのを思い出すが、頑なだったなあ。
今回集中的に読んでいて知ったのは「モザイク・ラセン」のチョイキャラが発展してできているということ。
凄いの一言。
「愛よりも もっと深く 愛していたよ おまえを。憎しみも かなわぬほどに 憎んでいたよ おまえを。わたしに 重なる 影―― わたしの 神―― こんな夜は 涙が 止まらない」
■ラーギニー 16p
オリエンタリズムとSFが融合するのはいつもだが、とりわけ独特な美しさ。
扉絵がまた美麗。
■スロー・ダウン 16p
感覚遮断実験から着想を得ていることは明白だが、そこから孤独と愛と異世界へシフトするのが、凄い。
山岸凉子とも通じる読後感。
■酔夢 21p
「ラーギニー」と通じ、長編へも発展する作り。
メイルーフィメイル問題、夢ー現実問題、ファンタジーーSF問題、どうまとめられるんだろうか。
■ハーバル・ビューティ 57p
比較的コミカルで気楽に読める。
「11人いる!」っぽさもある。
■偽王 50p
記憶からすっぽり抜けていたが、これは大傑作!
寓話性も高く、ロード・ダンセイニにでもありそうな、しかし存分に残酷な……。
■温室 41p
「ハワードさんの新聞広告」と同じくイケダイクミさんの原作だとか。
曲線が風のようで流麗。
■左ききのイザン 16p
これは、うーん……なんともいいがたいコント。
とはいえ「銀の三角」にブール博士が受け継がれたり、「ヘルマロッド殺し」という前日譚を小説で書いたりしているので、作者にとっては意義のあるものだったんだろうけれど。
■真夏の夜の惑星(プラネット) 32p
中盤くらいでシェイクスピアの「真夏の夜の夢」まんまだなと気づく。
だんだん綺麗で可愛く見えてくるのが、マジック。
■金曜の夜の集会 32p
レイ・ブラッドベリっぽい。
「もしも僕が星を見つけても自分の名前をつけないんだ、セイラの名前をつけるんだ」と頬を赤らめる少年が可愛すぎる。
本書の中でも結構好き。
◇エッセイ―南の国の鳥を待つ:佐藤嗣麻子(映画監督) -
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ベリンモンを盗んで逃げだしたアリアドを追って、仁木次郎(にき・じろう)と名乗る調査員が地球にやってきます。アリアドは、アベルのなかに入り込んだベリンモンが奏者である自分と共振すると主張します。アベルは否定しますが、共振の事実が明らかになり、やがてアリアドとともに宇宙へ帰ると仲間たちに告げます。
ところが、アリアドとともに無人の惑星へ向かい命を落としたダリダンの妹リリドが地球へとやってきたことで、アリアドの過去の秘密にアベルの目が向けられるようになります。
前巻では、ややストーリーの中心的なテーマが前面に出てくるまで若干の助走があったように感じましたが、後半ではアベルとアリアドの関係がストーリーの中軸に据えられて、緊密な構成になっています。 -
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光をうしなったグリンジャは、ふたたび都市をめざします。キラもアシジンのもとから抜け出し、その後センターのメイヤードに身柄を確保されることになります。一方で、地球へやってきたゴー博士は、かつての親友だったイワンが地球でおこなっていた実験についての情報をメイヤードにもたらし、キラがどのようにして生まれたのかが明らかになります。
また、シティの市長の息子であるミカルは、図書でこれまで知らなかった多くの情報に触れることになり、彼らの暮らす世界の仕組みに対する疑問にさいなまれます。
メイヤードのバックに控える「カンパニー」の存在と、彼自身の置かれている立場がすこしずつ見えてきたことで、第一巻よりもはるかにストーリーに奥行きが出てきたように感じました。 -
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男性ばかりが暮らす世界となった2999年の地球を舞台にしたSF長編作品です。
ただ一人の女性である「聖母」(ホウリ・マザ)が人びとの前にすがたを現わす日に、目もとに青い刺青をもつ青年グリンジャが「都市」(シティ)を訪れ、マザの暗殺計画を実行に移します。都市を抜け出し砂漠を旅する途中で、グリンジャは行き倒れになっていたキラという少年を救います。その後、死にぞこないのアシジンと名乗る青年にキラの身柄を売りわたしたグリンジャでしたが、キラが盗賊にさらわれ、アシジンとともにキラの救出に向かいます。
『スター・レッド』と同様に、特殊な来歴と能力をもつ登場人物がその来歴ゆえに過酷な運命に翻弄されるという物語です。生殖の管理という、現在では相当にあつかいのむずかしくなっているテーマに挑戦した作品ですが、少女マンガの表現の可能性を大きく切り開いてきたキャリアをもつ著者の先駆性には目をみはらされました。 -
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短編作品10編を収録しています。
表題作「半神」は、腰のところでつながった状態で生まれてきた双子の少女ユージ―とユーシーの物語です。美しいけれどもなにもできないユーシーをうしなったことがきっかけで、ユージーのアイデンティティが揺らぎ出します。
「偽王」は、旅をつづける青年エジカが、国を追放され「贖罪者」となった、かつて王だった男と出会う物語です。狂気のなかにあった彼は、エジカについて旅をつづけるなかで、辛い過去の記憶を呼び覚まされてしまいます。
「真夏の夜の惑星」は、SFものの短編です。舞台は異なるものの、『ゴールデンライラック』に収録されている「ばらの花びん」を思い起こさせる内容ですが、やや皮肉の利いた結末が用意されていた「ばらの花びん」とは異なり、シンプルなハッピー・エンドで締めくくりを迎えています。 -
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23世紀のニュー・トーキョー・シティで生活をしているレッド・星(せい)は、火星に移住したあと見捨てられた人びとの子孫です。赤い瞳に白い髪をもつ火星人たちは、超能力をつかうことができ、その力を怖れる地球人たちに迫害されていました。
正体をかくして生活していた星でしたが、エルグという青年に赤い瞳を見られてしまいます。しかし、彼女が火星人であることを見抜いたエルグは、星に協力して火星に潜入しますが、彼女に不審をおぼえた情報局のペーブマンがそのあとを追います。やがて星は、火星に暮らしている火星人たちに出会いますが、彼らが未来を占ったところ、星は災いをもたらすというお告げが示され、星は彼らのもとからも逃げ出すことになります。
地球人たちに迫害された火星人たちの歴史に心を寄せる星が、彼女たちの能力は人類の退化の証であると主張して彼女を捕らえようとするペーブマンから逃げつつ、地球人と火星人の悲劇的な運命によって翻弄されるストーリーは、読者を引き込む魅力をもっています。ただ、エルグの正体が判明したあたりで、星を取り巻く基本的なテーマはすでに出そろっている感もあり、それ以降のストーリーがやや著者のコントロールのもとを離れてしまったような印象を受けてしまいました。 -
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■少女マンガの岸辺で――まえがきにかえて 矢内裕子
■Ⅰ章 イタリアでの少女マンガ講義録
・少女マンガの歴史
・自作についての解説「半神」「柳の木」「ローマへの道」「イグアナの娘」
・質疑応答――イタリア人聴講者からの質問
・ドナテッラ・トロッタ氏によるインタビュー
■Ⅱ章 少女マンガの魅力を語る
・少女マンガは生きている
・私の創作作法
■Ⅲ章 自作を語る 『なのはな』から『春の夢』へ
□萩尾望都氏との初対面 ジョルジョ・アミトラーノ
□イタリアの秋 矢内裕子
□著者あとがき
□解説 中条省平
この数年萩尾望都界隈が滾っている。
個人的には「残酷な神が支配する」で凄まじい漫画に対面させてもらったあとは、そのフィナーレを作家への興味の終わりのように錯覚したせいもあり、熱心な読者ではなくなってしまった。
が、萩尾望都は常にナウなのだ。
ということで未読だった「バルバラ異界」を初読、「なのはな」を再読してこの本に向かったが、居住まいを正すとはこのこと。
記事は多様なものだが、常に貫かれているのは萩尾望都の真摯さ、生真面目さ、文化への愛。
個人的には「イグアナの娘」「残酷な神が支配する」で親を描くことで、作者自身が救われた、という記述に、感慨ひとしお。
こういう形で読者を救い作者を救う、やはり稀有な作家だ。
今後は中川右介「萩尾望都と竹宮惠子 大泉サロンの少女マンガ革命」、竹宮惠子「少年の名はジルベール」、萩尾望都「一度きりの大泉の話」と読み継ぐことで、じゅくじゅくした気持ちに自らなっていこうと計画している。 -
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萩尾氏のナポリ大学での講義内容他。
テーマは 日本における少女漫画史。
漫画については私もあれこれ考察することはあるけれど、「日本における女の子の社会的在り方」に対しての自由への渇望であるとの見方は、「なるほどーーーー」と感じ入りました。
なぜ我々はあらゆるジャンルを漫画に求めるのか。コマの間に何を探って読んでいるのか。なぜBLが確固たるジャンルとして座を占めているのか。
窮屈な日本においてなんだって許される世界が少女漫画!
すごいなー、この「みんなと同じ形」を重んじる日本において、よくこのジャンルが存在を許されたなと感動すら覚える。
ある意味「少女漫画」は少女にしか理解できない謎世界だが、しょせん少女だし大した脅威でもないのでほっとこう、というのが真実だろうか。
その結果、立派に根を張って、その文化を樹立してしまったなんて、奇跡じゃないですか。
結果的に「漫画で覚える日本史」的なものも隆盛を極めている。そんで確かに漫画としてのストーリーがあるから記憶に残るんですよね。
漫画・・・スゴいな・・・。
わたしはコミックス派です。(だからなんだ -
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ネタバレ「トーマの心臓」の前日譚。9歳のオスカーのパパ、グスタフは売れない写真家でママ、ヘラとはケンカばかりだった。ある雪の日グスタフは夫婦喧嘩の末ヘラを射殺する。オスカーがグスタフの本当の子ではないと打ち明け離婚を切り出したからだ。真実を悟ったオスカーは警察に疑いの目を向けられるグスタフをかばい、グスタフはオスカーと犬のシュミットを連れて旅に出発する。グスタフの精神が不安定な中オスカーは必死で旅を続けるが、シュミットの死によりグスタフはオスカーの本当の父親が校長を務めるギムナジウムに彼を残し南米へ旅立つ。
「たとえあなたが裁きをおこなえる神様でも子どものいる家にきてはいけないんだよ」「ぼくは悪い子だったけど、どんな悪い子でも家にいていいんだって。」
他に「城」「エッグ・スタンド」「天使の擬態」を収録。第二次世界大戦下のパリを舞台に、ドイツからパリに逃げてきた不法移民のユダヤ娘ルイーズ、無垢な殺し屋の少年ラウル、ドイツ軍に抵抗するレジスタンスのマルシャンの3人を描く「エッグ・スタンド」は短編ながらも映画のように深い。
「戦争は人間の心の中にある欲望か何かの炎が狂ったように次つぎと人から人へ引火してとめどなくもえひろがる大火事だ」「大火事はすっかりもえつきないと消えないね」
「戦争はいちど始まったら終わりだ。平和!正義!そんなものじゃない。戦争は戦争。破壊だ。平和は平和の中にしかない」